このパワーアンプでなければ聴けない音があり、それが途轍もなく魅力的
しっかりした音で、音場空間の拡がりを再現する能力には驚くしかなかった

文=黛 健司

 1980年代初頭、超弩級パワーアンプ、オーディソンHR100の登場に衝撃を受けたが、マイクロプレシジョンを聴いていて、あのころの感動が蘇ってきた。同社代表のトーマス・ホフマン氏のオーディオ機器開発にかける情熱、拘りは尋常ではなく、Z-Studioシリーズのスピーカーではそれが遺憾なく発揮されていた。

 スピーカーでの成功に自信を得て、超弩級パワーアンプの開発に着手。Z-Studio Amplifier-1 version 1.0 を発表したが、約30台で生産終了。すぐさま改良版の version1.1 が登場した。カーオーディオ機器としては異例とも言える価格の製品だが、内部を見るとそれも納得できる。アンプを構成するパーツ類は、いずれも超一流の高音質・高精度を誇るものばかり。さらに内部コンストラクションも、パワーサプライからの増幅回路への悪影響を防ぐ工夫が凝らされていたり、各回路間の配線を最短化するなど、音質追求は徹底している。

 このパワーアンプでなければ聴けない音があり、それが途轍もなく魅力的なのだから、わたしのようなオーディオマニアにはたまらない存在と言える。この音に共感を覚えたなら、アンプのサイズや価格、クルマの電源事情などの難関があろうとも、なんとしてでも取り付けたくなる、そんな不思議な魅力をもつ製品だ。とにかく構築のしっかりした音で、音場空間の拡がりを適確に再現する能力には驚くしかなかった。

音像、ステージ、リアリティ、そして音の持つ説得力、あらゆる項目が、すべて「よし」
夢を与えてくれる至高の一台

文=脇森 宏

 マイクロプレシジョンは1999年に設立されたドイツのハイエンドブランド。その名のとおり、真実は細部にこそ宿るとばかり桁違いの製品精度を追求。既に日本市場に導入されているZ-Studioスピーカーはその精華というべきもので、超精密な加工が施されたユニットは見る者を圧倒する。

 そのZ-Studioの名を冠した同ブランド初の量産パワーアンプがZ-Studio 4ch Amplifire version1.1。同ブランドを率いるトーマス・ホフマン氏と4人の技術者によって長い年月をかけ開発されたという。

 585×325×90㎜の大きな筐体内には夥しい数の素子が整然と並ぶ。10㎜厚のアルミケースを備えたトロイダルコアトランスをはじめ、お馴染み独Mundorf社や米Caddock Electronics社の精密抵抗等々、世界の名だたるパーツが一堂に集結。透明アクリルパネルを通して、日本のサンケン製トランジスターの姿を確認することもできる。

 大型アンプは大パワーを入れて初めて本領発揮というイメージがあるかもしれないが本機は別。小音量時には小型アンプのごとく軽々と振舞い、ジャストフォーカスの小気味よい音を送出。上質な織物のように目が揃ったシルキーサウンドが楽しめる。そして音量を上げると、精緻な音はそのままに膂力溢れる音が湧出。全身で浴びるほどの大音量再生を行なっても、音の形は微塵も崩れずハイパワードライブの醍醐味を堪能できる。さらに音像、ステージ、リアリティ、そして音の持つ説得力ーーあらゆる項目が音を聴きながら指呼確認することさえ可能だ。もちろん、すべて「よし」。組み合わせて聴いたDS-SA1も本機には喜んで付き従い鳴っているように感じられた。夢を与えてくれる至高の一台。

マイクロプレシジョン MICRO PRECISION
Power Amplifier
Z-Studio 4Ch Amplifier version 1.1
¥1,800,000(税別/受注生産品)

SPECIFICATION
●定格出力:150W×4(4Ω)、260W×4(2Ω)、580W x 2(4Ω)
●周波数特性:5Hz~70kHz(-1dB)
●全高周波歪率:0.002%
●SN比:90dB
●ダンピングファクター:2,700(10W,4Ω負荷)
●入力インピーダンス:20kΩ
●動作電圧:9~16V
●アイドリング電流:±5A
●サイズ:W325×H90×D585mm
●重量:11.4kg

■問合せ先
株式会社イース・コーポレーション
電話番号:055-991-5130
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