オートサウンドウェブグランプリ2019で、シルバーアワードを獲得したドイツブランド「イートン」のフラッグシップスピーカーCORE-S3。COREシリーズは同社創立35周年を記念したモデルで、2018年に2ウェイスピーカー及び2チャンネルパワーアンプをリリースしている。2019年に追加発売されたミッドレンジを組み合わせた3ウェイスピーカーのセットである。ここでは、オートサウンドウェブグランプリの選考メンバーによる座談会をご紹介する。CORE-S3の音の印象をはじめ、その魅力がどのように語られたのか、じっくりお読みいただきたい。[編集部]

パネラー・オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー
[石田功、鈴木裕、藤原陽祐、黛健司、脇森宏、長谷川圭]
(まとめ=ASW編集部/写真=嶋津彰夫)

受賞製品の魅力を語り合うオートサウンドウェブグランプリ選考メンバー。左から鈴木裕氏、脇森宏氏、長谷川圭氏、石田功氏、藤原陽祐氏、黛健司氏。

ASW:では、シルバーアワードを獲得しましたイートンのCORE-S3、3ウェイスピーカーについてどんなところを評価されたのか皆さんのご意見を聞かせてください。このモデルは、2018年のグランプリを獲得したCORE-S2にミッドレンジユニットが加わった構成のスピーカーです。振動板がすべてマグネシウムで統一されているといった特長があります。

藤原:値段が……70万円するんですよね。

石田:2ウェイのCORE-S2だと50万円ですよね。

藤原:2ウェイで50……とても有難味を感じますね。

:僕はこのスピーカーを聴いたとき『あぁ、本当にいい音のスピーカーを久しぶりに聴いたな』と思ってホッと安心したんです。でも値段見ると『こんなにするの!』と思わず……。昔は高い値段のスピーカーにそれほど抵抗なかったと思うんだけれど、最近は安いモデルが多くなっているせいか抵抗感があるんですよ。

 でも、高いといっても、あの音はこのスピーカーでしか出ないから、この値段でもしょうがないと思う。ただ、クルマに着けるとなったら大変ですよね。空間的に余裕のあるクルマにうまく着けない限り、運転中の視界に入ってきてしまうだろうし。

 いい音のスピーカーで聴きたいけれど、クルマがいいところにスピーカーを着けさせてくれなくなってきている現状もある。この悩みをどうしていいものだろうかと思いますね。

黛健司

長谷川:なかなか切ない悩みですね。

鈴木:このイートンCORE-S3は素晴らしいスピーカーですね。各ユニットのマグネシウム素材振動板ですが、トゥイーターだけ表面処理方法が変えてあったりとか、エッジがシルクであったり……そのあたり開発に対するやる気というか、これだけ新しいものを盛り込んだ開発をしていながら、よくあれだけまとまりのいい音に仕上げていてさすがだなと思います。

脇森:試聴取材の時にブラックスのDSPと組み合わせて鳴らして、数値を変えたりしながら聴いたんです。するとスピーカーの反応が穏やかなんだけれど、明らかに音が変わるんです。ガラッと変わってしまうようなことはないけれど、でもわずかな設定の変更にしっかり反応して音が出てくる。さすがにうまく造っているなと感じました。

鈴木:固有の音の世界を持っているんだけれど頑迷ではないというか……。

脇森:そうですそうです。

鈴木:ちゃんと変化しますよということですよね。

脇森:それぞれのユニットがちゃんと造ってあるのだろうなということが、音に現れている。ただ、うまく鳴らすためのポイントを探し出すのが難しいかもしれない。ブラックスのチャンネルごとのゲイン調整って細かいんですけど……。

脇森宏

ASW:0.25dBステップですね。

脇森:その0.25dBの違いがちゃんと出る。

長谷川:自分も脇森さんと同じように、クロスポイントを変えたり、ゲインレベルを変えたり、あるいはスロープを変えてみたりと試しましたが、本当にわずかな変化なんですけれどその変わり方がちゃんと音に出るんですね。これはとても興味深い体験でした。そして、そうなる理由というのを考えてみると、ユニット間の音色の統一であるとか、そういったものがちゃんと管理できていないと、ああいう音の出方はしないんじゃないかなと思いました。

鈴木:それはもうしっかりとユニット間のつながりを考慮して造ってありますよね。そこは僕も聴いてすぐ気付きました。

:いまホームオーディオのスピーカーだと、とても高額なモデルってあるじゃないですか。構成している素材が高価なんです。残念ながら日本のメーカーではそんなに高価な素材を使って造るところはなくなってしまっているけれど……。

 スピーカーの話ではなくてカートリッジなんですが、DSオーディオって光カートリッジを製造しているメーカーがありますけれど、そこがほんの小さな板状のエキゾチックマテリアルを購入したんです、1枚が100万円くらいするのだそうです。ひじょうに軽くて丈夫な素材です。光カートリッジだからフォトダイオードの光を遮るシャッターをその素材で造ろうとしたんですね。そして、その素材を切って、シャッターがいくつ造れるか……最初はためらったらしいですけれど、試しに制作してみたら音が素晴らしかったという話を聞きました。

藤原:カートリッジは素材の差が音に出ますからね。

:僕の自宅にいま、DS-W2というモデルのシャッターだけそのエキゾチックマテリアルに換えたものがあるのですけれど、聴かせてもらって思わず「もう返したくない」と言ってしまいました。

藤原:そんなに違う?

:まるで違うんです。だから、スピーカーの素材でも使っている量は少なくてもとても高価なものがあると思う。CORE-S3をさっき高いとは言ったけれど、ホームオーディオのスピーカーだと1,000万円を超えるようなモデルもあるから、それと同じようなレベルのものをカーオーディオではよくぞ70万円で造ってくれたとも思える。

長谷川:COREのスピーカーだと、振動板はマグネシウムですけれど、ミッドとウーファーは同じですがトゥイーターはマグネシウムを加工して搭載してますし、ミットレンジとウーファーのコーンはディンプル形状に加工されていたりします。このあたりもなかなかコストがかかっているように見えますね。

鈴木裕

鈴木:トゥイーターはケロナイト加工マグネシウム振動板って……。

長谷川:マグネシウムの表面をプラズマで加工するというものだそうですね。

鈴木:ミッドとウーファーは陽極酸化被膜加工マグネシウムという素材なんですよね。

長谷川:アルミニウムに対するアルマイト処理に近い加工のようです。

鈴木:そうなんです。だから相当ちゃんとやっていますよね。

長谷川:それにバスケットフレームの構造も凝っていますしね。

:イートンの工場で、このユニットが組めるのは一人しかいないとか、専門の女性エンジニアがひとつひとつ組み上げていたりするのかもしれないですよ。

藤原:振動板はすべてマグネシウムなわけですけど、音を聴くと新素材っぽくないというか、馴染みのいい音してますよね。すごいハイテク素材を使っているのに、音は“紙か?”というような……紙はちょっと大げさですけど……ナチュラルな音で聴けますよね。厚みがあって面で包み込んでくるようなイイ感じの音圧感でね。ブラックスのDSPがよかったこともあるんだけれど、耳に馴染む聴きやすい音が印象的でした。

藤原陽祐

鈴木:マグネシウムって、100%になるとああいう感じになりますね。フォステクスのスピーカー振動板でアルミが混ざっていた時代のものと100%マグネシウムの振動板をこう(10cmほどの高さから)落とすと、アルミが混ざっているものは「ちゃりーん」と金属的な音がするけれど、マグネシウム100%は「ポソッ」と紙のような音がするんです。

:確かにそういうですね。

藤原:内部損失の関係で、そういう音になるんですね。

:イートンって、初めて日本に上陸したときの音を聴いてびっくりしたじゃないですか。そういうレベルの製品を作り続けてきているって凄いことですよね。いつの時代でも聴く人を納得させる、この値段ももっともと思わせてくれるクォリティのスピーカーを造っている。安定したクォリティでものを作り続けているブランドってなかなかないですからね。信頼のおけるブランドの最上位モデル、それにふさわしい製品だと言えるでしょう。

石田:実は、岩手のサウンドフリークスというプロショップが、このスピーカーを装着したデモカーを持っていて、イベントのときに聴く機会があったんですけれど、すばらしい音をさせてました。

長谷川:同じイベントで私も聴きましたけれど、音は抜群によかったですね。

石田功

石田:システムは、ブラックスのDSPとアンプでドライブしていたので、オートサウンドウェブで試聴取材した時とひじょうに近いですね。僕はこのクルマで聴いた音は、クルマで初めてじゃないかと思うほどの体験でした。

長谷川:実際にクルマへ搭載して、あの音が出せるというのはスピーカーとして高価値だと感じます。大いに評価できるし、シルバーアワードを獲るべくして獲ったと思います。

ASW:試聴機会があれば、多くの人に体験してもらいたいですね。

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