[photo:Akio Shimazu]

一体感ある3ウェイとは思えないまとまりのよい音が印象的
DSPの調整にもリニアに反応するスピーカー

文=石田 功

 実は、このスピーカーの音を聴いたのは今回で2度目。1度目は9月の新潟・胎内スキー場で行われたイベントでのことだ。はるばる岩手からやってきたサウンド・フリークスのデモカーに搭載されていたのだが、このクルマの音が凄かった。音色はあくまでもナチュラル。ところが、その音が生々しい。まるで、生の演奏を聴いているんじゃないかと思えるくらいのリアルさ。今まで聴いてきたデモカーやユーザーカーの中でも1、2位に入るんじゃないか? と思えるほどの素晴らしい音だった。パワーアンプとDSPにブラックスを使用していたので、その時は「ブラックスすげえ!」と思っていたのだが、試聴室でイートンのスピーカーを聴いてはっきりわかった。このスピーカーだからこそ、ブラックスの能力を引き出しているのだと。

 とにかく自然。その自然さは質の良い紙のコーンを使ったスピーカーのようだ。なんの色付けもなく、素早いレスポンスで解像度たっぷりに音楽を描いてくれる。紙と違うのは破綻のなさ。大音量で聴いても、小音量時と同じように付帯音を出さずに描いてくれるし、小音量でも解像度の高さは変わらす。ウーファー、ミッドレンジ、トゥイーターともにマグネシウム振動板を採用しているおかげか、音に一体感があり3ウェイとは思えないまとまりのある音を出していたのも印象的だ。

 あいにくDSPからなぜか2chのみ音が出なくて(編注)、トゥイーターはダイヤトーンサウンドナビの内蔵アンプで、ミッドレンジとウーファーはブラックスのパワーアンプでという変則的な聴きかたをしたのだが、レベル調整などままならない状態でも音はなんとなくまとまり、少しずつレベルを合わせていくうちにどんどん良い音に変化していくあたりを見ると、DSPの調整にもリニアに反応してくれるだろうし、好みの音に変えていくのも楽しそうだ。それができそうなスピーカーなのだ。

 70万円は確かに高く、おいそれと手が出るものでは無いしオススメできるものでもないが、これでしか味わえない音があるのも事実で、予算に余裕がある人には勧めたいモデルだ。

編集部注:BRAX DSPの設定ミスにより、音が出ないチャンネルを作ってしまったためイレギュラーな条件での試聴を行いました。

2ウェイより3ウェイ、さらに……
音への果てしない欲望を掻き立て夢を抱かせるスピーカー

文=脇森 宏

 昨年、2ウェイのCORE-S2とCORE-A2アンプによって嬉しい驚きを与えてくれたイートンは今年も新たな喜びをもたらしてくれた。最上級セパレート3ウェイCORE-S3。28mmドームトゥイーターおよび160mmミッドバスはCORE-S2と同一のユニット。この2ウェイに80mmミッドレンジのCORE-80を加え3ウェイ構成にしたものだ。フレーム外径94㎜の小さなユニットが、きわめて大きな役割を果たすことは3ウェイユーザーならとっくにご存じのはずである。

 CORE-80は、160mmユニットと同じく細部まできれいに仕上げられたフレームをベースに、マグネシウム振動板とシルクのセンターキャップ、ネオジウム磁気回路を搭載。全ユニットの振動板素材の統一を実現している。パッシヴは開発中とのことで、今回はマルチ駆動。クロスオーバーはもちろんBRAX DSPを使用。宝が目の前にあるのに使わない手はない。

 ひたすらにナチュラル。3ウェイの特質として中域の充実ぶりがよく挙げられるけれど、それさえも感じさせないほどに自然で折り目正しい音の佇まい。よくある中域の張った我の強い音とは無縁。それでいながら全帯域にわたって驚くばかりの情報量を備えたウルトラスムースな極上のサウンド。透明度高くしかも仄かな色香と温かみを宿した音色が実に心地よい。オーディオのための3ウェイではなく、音楽のための3ウェイとなっているところが素晴らしい。

 2ウェイのCORE-2状態でも聴いてみたが、ナビヘッドのクロスオーバーを使った昨年とは音質のみならず気配がまるで違う。全帯域にエネルギー感が漲る3ウェイに対して、半歩下がったような奥床しい趣の2ウェイも捨て難い魅力がある。このレベルまで来ると優劣はつけられない。ただ聴き手の好みがあるばかり。なんと贅沢な世界であることか。

 CORE-S3を聴いているとサブウーファーが欲しくなる。3ウェイ帯域が充実しているため、その下もという訳だ。しかし、もしサブウーファーを追加したら、総額おいくら万円のシステムになることやら。音への果てしない欲望を掻き立て夢を抱かせてくれるスピーカーである。

イートン eton
Speaker
CORE-S3
¥700,000(セット/税別)

SPECIFICATION
●使用ユニット:ウーファー・160mmコーン型、ミッドレンジ・80mmコーン型、トゥイーター・28mmドーム型
●定格入力:90W
●再生周波数帯域:40Hz~35kHz
●出力音圧レベル:88dB
●インピーダンス:4Ω(ウーファー、ミッドレンジ)、8Ω(トゥイーター)
●ウーファー取付サイズ:口径・φ146mm、深さ79.5mm
●ミッドレンジ取付サイズ:口径・φ77mm、深さ42mm

■問合せ先:
株式会社エムズライン
電話番号:048-642-0170
Eメール:office@ms-line.co.jp

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