ダイヤトーンの車載用2ウェイスピーカー「DS-G300」(税別¥80,000)。

オートサウンドウェブグランプリ2017を受賞

 2017年のカーオーディオ優秀モデルを選出したオートサウンドウェブグランプリにおいて、堂々の受賞を果たしたのがダイヤトーンの2ウェイスピーカーDS-G300。グランプリ選考にあたった評論家諸氏は、いずれもそのサウンドパフォーマンスを高く評価した。では、それほどの高評価はなぜ得られたのか、本記事では製品を技術的な側面から詳細にご紹介する。

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 DS-G300は、車載用ダイヤトーンスピーカーにおけるスタンダードモデルである。スタンダードとはいえ、価格は税別¥80,000と、市場全体でみれば充分な高級機だ。同ブランドの現行ラインナップでは、DS-G500(税別¥160,000)、DS-SA1000(税別¥670,000)という上級モデルが存在するので、DS-G300はスタンダードな位置づけになる。

 DS-G300を技術的に紐解くにあたり、覚えおきたいことがある。スピーカーは、発明当時から基本的な仕組みに大きな変化がないコンポーネントであるということだ。スピーカーは誕生以来、変換器としていかに正確に動作するかが追求されてきた。そのため、構成するパーツの形状や素材についての吟味が常に行われてきている。ダイヤトーンの現行ラインナップ最大の特長はなんといってもカーボンナノチューブを採用した振動板技術、NCV(Nano Carbonized high Velocity:ナノ・カーボナイズド・ハイベロシティ)だろう。このカーボンナノチューブは高価な材料ではあるが、理想的な振動板素材として加工した同社の技術力には感心することしきりである。

新世代素材NCV

 NCVは、ダイヤトーンが追求するスピーカーの性能のためにカーボンナノチューブが必要であり、そのために開発された新素材だったのだ。振動板素材は紙や布のほか、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、各種金属とさまざまな素材がもちいられ、ときに複合素材として使われたりもした。いずれも20世紀に発明された振動板である。カーボンナノチューブを使った振動板は21世紀になってから発明されたもので、最新のマテリアルといえる。NCV採用の初モデルはDS-G50(2011年発売)、翌年にサブウーファーSW-G50(税別¥80,000/1本)がリリースされ、現在でも発売中だ。

 NCVの特長として挙げられるのが、高硬度かつ適度な内部損失を持つこと。このことで、類い稀な高い伝搬速度を実現しつつ素材固有の音がしにくい特性を獲得している。また、マルチウェイスピーカーのいずれのユニットでも同素材で構成できるところだ。高音を受け持つトゥイーター、中音を受け持つミッドレンジやウーファー、低音を受け持つサブウーファーと、全帯域をNCVがまかなえるのも特長のひとつといえるだろう。DS-G300においては、トゥイーターをドーム&コーン振動板、ウーファーでは従来のカーブドコーンにリブ構造を採用している。低音から高音まで統一感のとれた音で、ハイレゾ対応を果たした。

 ドーム&コーントゥイーターは、ドーム型ダイアフラムとコーン型ダイアフラムのいわば“いいとこ取り”で、NCV採用当時に登場したものだ。DS-G300のトゥイーターでは、旧モデルのDS-G20から進化した振動板形状としている。それがYコンタクト構造だ。電気信号を運動エネルギーに変換するボイスコイルからの力を、損失なく振動板に伝達するための工夫であるが、見た目にはなかなか認識しづらいうえ、製品を外から見てもわからない部分の改良だ。しかし、サウンド面においては、エネルギー感の高い高音を送出することに成功している。

トゥイーターダイアフラムは内周をドーム形状、外周をコーン形状としたドーム&コーン型を採用。高音はもちろん、超高音までスムーズに放射する。

トゥイーターダイアフラムの裏側。写真ではわかりづらいかもしれないが、ドーム部とコーン部の境目部分にぐるりと壁のような形が形成されている。ここがYコンタクト構造と名付けられた技術で、ボイスコイルの動きを忠実に伝える。

 トゥイーターの設計上見逃せないのが、ユニットと取付け用アタッチメントの固定部分である。トゥイーターユニットのハウジング裏にボルト留めされるのだが、実はアタッチメントとユニット自体の接点はこの1箇所のみである。NCVが採用されて以来、ずっと踏襲されているこだわりのデザインといえよう。

トゥイーターユニットの磁気回路などが収められるハウジング。中央部のくぼんだ部分に強力なネオジウムマグネットが配置される。1番奥底にはユニットを固定するためのねじ穴が切られている。

トゥイーターユニット(手前)と車両装着用アタッチメント。ユニットは写真左のアタッチメントとネジ一本で固定され、しかもユニットアタッチメントの接点はネジ留めされる部分のみという構造。角度調節可能なスタンド(奥)とガード付きダイレクター(右)が付属する。

ウーファーサイズを超えた低音のために

 ウーファーも進化している。NCVという理想的な振動板素材を得たが、その優位性をさらに高めるべく開発されたのがWサイド・ソリッドライン構造だ。リブ構造を持たせたソリッドライン構造は、上級モデルのDS-SA1000とDS-G500で採用された技術だが、同機においては背面に5つ(この奇数構造もポイント)リブが入っている。これに対してDS-G300では、背面だけでなく外周部には表面にリブを入れた構造とした。しかも、表裏のリブは構造的に繫がっており、これによって最内周から最外周まで強度を高めることに成功している。

DS-G300のウーファーコーン。内周部は裏面に、外周部は表面にリブが通ったWサイド・ソリッドライン構造を開発、採用している。

 ウーファーの進化した点はまだある。DCT低歪大型フェライト磁気回路の採用だ。スピーカーにおける磁気回路とは、いわゆる電気回路のようなパターン基板があるわけではない。電気回路が電気の通り道を形作るのに対し、磁気回路はその名の通り磁気の通り道を形作ったものとなる。磁気回路を構成するのは、磁石とヨーク、そしてトッププレートだ。もっとも肝心なのは、ボイスコイルが位置するギャップ内に、どれだけ強く整った磁界を形成するかということで、この部分が歪みの少ない再生音を作り出す重要な要素になっている。

DCT低歪大型フェライト磁気回路は、このサイズのユニットにしては大型のフェライトマグネットを搭載しており、最適化された磁気回路設計により聴感上高いS/N感を実現したという。

 DS-G300のウーファーでは、振動系の設計とのバランスを考慮して最適化された磁気回路を形成している。その結果、大型のフェライトマグネットの採用や、磁気ヨークおよびトッププレートの形状検討、磁気ギャップの間隔などを細かく精査し、歪みの少ないDCT低歪大型フェライト磁気回路を完成させたという。これに加えて、リジットなアドバンスドHDフレームを採用、振動板の動きをしっかり支えている。これらのファクターが、前述のWサイド・ソリッドライン構造と相まって、サイズを超えた低音再生を実現している。

一般的な磁気回路構成パーツは、トッププレート、磁石、磁気ヨークで構成される。ヨークの中央には振動板背面のエアを抜くための穴が貫通しているものも多い。

磁石から出ている磁力線を磁気ヨークとトッププレートでボイスコイルギャップに集中させる仕組みが磁気回路だ。ボイスコイルギャップに発生する磁界の中で、ボイスコイルへ電流が流れると、コイルが上下運動する。この動きが振動板に伝えられて空気の粗密波を生み出し、音として聞こえるようになる。

幅広い車両に組み込みやすい設計

 DS-G300は、車両純正スピーカーとの互換性も強く意識されている。トゥイーターは仰角が調整可能なスタンドタイプのアタッチメントが付属するため、ダッシュボード上への配置がスマートにしかも行いやすくなっている。ウーファーでは、フレーム形状の見直しが図られて、ネジで固定する箇所を従来の6箇所から4箇所へと変更、より多くの車種あるいはインナーバッフルへの親和性を高めている。また、端子部には、本格的ネジ留め端子にファストン端子でも接続可能な形状とすることで、シンプルなユニット交換にも対応させている。

樹脂ながら高密度&高剛性を実現したアドバンスドHDフレームは、スピーカーの動きをリジットに支え、豊かで引き締まった低音再生に貢献している。また、マウント用のネジ穴を4箇所とし、車両への取付対応力を向上させている。

ウーファーコーンを支持するサラウンドエッジは、音質と耐候性を兼ね備えたさまざまな素材を検討した結果、発泡ウレタン系(画像手前)がもっとも相性の良いパーツとして採用されている。

 なお、パッシブネットワークでは、トゥイーター用のハイパスフィルターとウーファー用のローパスフィルターをセパレート化することで、バイアンプ接続にも対応、より高品位なサウンド追求がしやすいパッケージとしている。巷では「元々着いているスピーカーでも音楽が聴けているよ」というドライバーも少なくないが、スピーカーの変更による音質アップは、経験してみないとわからないもの。AVナビの交換をした方、あるいはこれから交換を検討している方、いい音と走りたいドライバーにとって、幅広くお勧めできるスピーカーといえる。

製品に関する問合せ先:
三菱電機カーインフォメーションセンター
電話番号 0120-182710(フリーダイヤル)
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