finalから、新開発のトゥルーマグネシウム振動板を搭載した有線イヤホン「A8000 DC」が、10月30日に発売される。市場想定価格は258,000円(税込)。
新製品のA8000 DCは、2019年に発売した「A8000」の音を、ベリリウム以外の素材で実現するだけでなく、さらに高めることを目指して開発した新モデルになるという。製品名の「DC」は、楽譜の最初に戻って演奏するという意味の音楽用語「Da Capo(ダ・カーポ)」に由来している。
前モデルのA8000は、当時開発したベリリウムドライバーにより、非常に低い歪み率と高い応答性を兼ね備えていて、圧倒的にクリアで伸びやかな中高域と、鋭い立ち上がり・立ち下がりの低域が楽しめた一台。しかし、振動板に採用していたトゥルーベリリウムの材料調達が困難となったことで、終売となった。
それから7年、この間に得た新たな研究成果と、ダイヤモンド振動板を採用した「A10000」の開発で培ったノウハウにより、ベリリウム以外の素材でも「A8000」の音を実現するだけでなく、さらに低歪を追求したモデルを開発することができるようになり、今回A8000 DCの発売にこぎつけたそうだ。同時に、現時点の技術と研究成果を注ぎ込み、全パーツを新規設計・選定、搭載している。
●製品の主な特徴
1)トゥルーマグネシウム振動板を搭載した超低歪DU
■曲げ剛性を高めたマグネシウム振動板
振動板に求められるのは、駆動力に対して余計な変形を起こさず、瞬時に定位置へ戻る「動きやすさ」と「歪みにくさ」の両立。物体自体の変形しにくさで比較すれば、マグネシウムはベリリウムに及ばないというが、一方でマグネシウムはアルミニウムの約3分の2という軽さを持つため、重量を増やすことなく振動板自体に厚みを持たせることができる。曲げ剛性は板厚の3乗に比例するため、厚みを確保できるマグネシウムは、ドーム形状による構造的な補強と組み合わせることで、素材単体の物性を超えた高い曲げ剛性を実現できたという。
本製品では、この曲げ剛性の高さを活かす「トゥルーマグネシウム」振動板を採用。純マグネシウムの課題である強度を補うため独自の合金化を施し、軽さを損なうことなく必要な強度を確保。これにより振動板全体の変形が小さくなり、振動板表面で発生するノイズを最小限に抑えているとする。
■エッジの最適化
一般的なエッジ素材では、特定の周波数で共振が起こる、分割振動の問題があるが、その対策として、A10000の開発で確立した特殊ポリウレタンを採用。軽量かつ高い弾性・伸縮性を兼ね備え、振動板の動きやすさと不要な共振の抑制という相反する要件を両立できたそう。これは、振動板がベリリウムよりも軽量なマグネシウムであるため、フィルム系エッジが重量に負けてローリングする問題も生じにくくなっているそうだ。
■接着剤レスの振動板成形技術
一般的な接着剤による貼り合わせではなく、圧空成形と金型による熱成形を組み合わせて、接着剤を使わずに分子間結合させる独自の成形技術を適用。振動板とエッジの間の接着剤が引き起こす、塗布量の差による個体差といった問題を根本から解決。
■自社製ボビン付きボイスコイル
ボイスコイルの引出線をエッジに接着せず空中配線とすることで、振動板の正確なピストンモーションを妨げない設計を踏襲。断線を防ぐため、線材にはfinalオリジナルのアルミ合金線材を採用している。
■超低歪DUの完成
これらの素材・成形技術の開発により、トゥルーマグネシウム振動板を搭載した新開発DU(ドライバーユニット)は、10Hz付近の超低域においても、A8000に搭載していたトゥルーベリリウム振動板と比較して歪み率をさらに低減することに成功したそうだ。
2)筐体・装着感・ケーブルまで見直した設計
■高剛性ステンレス切削筐体
筐体には、剛性の高いステンレスを精緻に切削加工した削り出し構造を採用。ドライバーを強固に支え、不要な振動を抑えることで、音の輪郭を明瞭にする設計に。仕上げは、鏡面研磨にIP(イオンプレーティング)加工を施し、深みのあるネイビーカラーに。塗装とは異なり、金属の質感を保ったまま発色でき、経年による色褪せや剥がれが起きにくい仕上がりとなっている。
■長期使用を考慮し、修理を容易にする設計
筐体の組み立ておよびDUの取り付けに接着剤を使用せず、設計難度の高いネジ止めを採用。長期的な修理が可能になるだけでなく、ネジの締結力によって各部品が強固に支えられ、不要な共振も抑制してくれる。
■接触面積の少ない優れた装着感
イヤホンの装着感を左右する圧迫感。この対策のために、接触面積を限定する形状とすることで、耳への圧迫感を抑え、多くの方の耳に適合する装着感を目指した。また、A8000と比べて筐体サイズが小さくなったことで、耳へより一層収まりやすくなっている、ということだ。
■潤工社との共同開発 ePTFEシルバーコートケーブル・高精度MMCXコネクター
付属のケーブルは、スーパーコンピューター「京」用の信号伝送ケーブルの開発・製造でも知られる潤工社との共同開発品。線材には、潤工社が「ジュンフロン」で培ってきたノウハウを結集したシルバーコートOFC線、絶縁被膜には従来のPFA(フッ素ポリマー)よりも低い誘電率を持つePTFE(発泡テフロン)を採用。MMCXコネクターは、従来の自社開発品の信頼性を高めたより高精度なものへ設計を変更。
■2種類のイヤーピースとダストフィルター
「FUSION-G」と「TYPE P」の2種類のイヤーピースを、それぞれSS/S/M/L/LLの5サイズで同梱。さらに、ユーザーが交換できるダストフィルターを、装着用のメンテナンスツールとともに同梱し、耳垢などで汚れた際も手軽にお手入れokに。
製品の主な仕様
筐体:ステンレス(IP加工 ネイビー)
ドライバー:ダイナミック型(トゥルーマグネシウム振動板)
コネクター:MMCX
プラグ:4.4mmバランス
ケーブル:ePTFE被膜シルバーコートケーブル(コード長 1.2m)
感度:98dB/mW
インピーダンス:13Ω
質量:62g
付属品:キャリーケース、イヤーピース(FUSION-G 5サイズ、TYPE P 5サイズ)、イヤーピースケース、MMCX ASSIST、メンテナンスツール、ダストフィルター、シリコンシート、筐体保護テープ、筐体保護ポーチ、補助プレート