ワイヤレスタイプのイヤホンの中でも、左右のイヤホンをつなぐケーブルのない、いわゆる“完全ワイヤレスイヤホン”は登場から10余年が経ち、人気のガジェットへと成長し、ポータブルオーディオ市場の中でも一大勢力を形成するようになった。各社からさまざまなタイプが発売され、音質に振ったモデルはもちろんのこと、AI機能を組み合わせてANC(アクティブノイズキャンセル)効果を高め静寂性を謳うもの、EQや空間オーディオ再生などエンタメ性を強化したもの、長時間バッテリーによる使い勝手の向上、装着性の改良などなど、多彩なラインナップを擁するようになってきた。

 今回は久しぶりに完全ワイヤレスイヤホンレビューを実施。オーディオ&ビジュアル評論家の鳥居一豊氏と野村ケンジ氏、そしてオンライン編集部が注目する製品を5モデル集めて、その音質をメインにチェックを行なった。リストアップしたのは下記の5モデル(表記は価格順)。ぜひ、お楽しみください。(ステレオサウンドONLINE/webマーケティング)

●製品ラインナップ
1 ファーウェイ「HUAWEI FreeBuds Pro 5」
2 サウンドピーツ「SOUNDPEATS Aura Nebula」
3 JBL 「JBL Tour Pro3」
4 テクニクス「EAH-AZ100」
5 ケンウッド「GLASS Core Pro」

ファーウェイ「HUAWEI FreeBuds Pro 5」 価格:29,480円

<主な仕様>
・ドライバー:ウルトラリニア・デュアルマグネットドライバー、超薄型マイクロ振動板ドライバー
・対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
・再生周波数帯域:10Hz~48kHz
・再生時間:最大約8時間(本体のみ、ANCオフ、LDAC接続時)/最大約33時間(ケース併用、ANCオフ、LDAC接続時)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX57(イヤホン本体)
・公式サイト:https://consumer.huawei.com/jp/audio/freebuds-pro-5/

<プロフィール>
 ファーウェイ完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップ、Proシリーズの第5世代モデル。低音用と高音用に独立したドライバー(2基)を搭載し、そこに第3世代のオーディオコントロールモジュール(DAC、アンプをそれぞれデュアル)を組み合わせることで、ボーカルの再現や音場感、低域の量感など、楽曲の再現性をもう一段向上させているのが特徴。形状はカナル型で、スティック(ステム)部があることで本体を小型化でき、装着性や安定性も高められている。空間オーディオに対応(イヤホン内部で処理)するほか、ANCの効果もアップしており、NC効果の向上で、通話もクリアに行えるようになっている。

<レビュー>
●鳥居一豊
 ウルトラリニア・デュアルマグネットドライバーと、超薄型マイクロ振動板ドライバーの2基のドライバー、2基のDACアンプを搭載。ノイズキャンセリングは心地よい静けさが得られ、人の声も遠ざかり、耳障りにならない。快適に使える。サイズは小型で耳への収まりもよく、ダイヤモンドカットの仕上がりもきれいで、高級感がある。バッテリーもイヤホンのみで最大9時間(ANCオフ、AAC)、ケース併用で最大38時間と充分だ。

 音質は低音もしっかりと出て、オーケストラのステージ感も出る。ステージの見通しがよく、広がりと奥行がしっかりと感じられる。ボーカルの定位も明瞭。ロックなどを聴いてもドラムやベースをパワフルに再現。パワフルな一方で音の感触は適度に柔らかく、聴き心地がよい。長時間装着して聴いていても耳が疲れることなく使える。ポップスをはじめ、ロックからクラシックまで音楽のジャンルを問わず、自然な音で楽しめる。

●野村ケンジ
 明るく色彩豊かなサウンドキャラクターで、高域から低域まで滲みのないフォーカスのよいメリハリに富んだ表現も特徴。さらに、LDACコーデックのおかげか、まずまずといえる解像度の高さや細やかなニュアンス表現も持っているため、アコースティック楽器による演奏もマッチングは悪くない。高域の抜けがスムーズなので、のびのびとした表現の歌声も楽しい。どちらかというと素直な表現といえる音色傾向によって、様々なジャンルの楽曲が幅広く楽しめるのも好印象だ。敢えて弱点を上げるとすると、キレのよさ故に楽曲由来の歪み感が目立ってしまうこと。たとえばJポップの一部の楽曲、わざと“汚し”を行って雰囲気を出そうとした楽曲や、強めのコンプによって音圧を稼ごうとした楽曲などでは高域歪みが普段より余計に感じられてしまい、やや聴きづらい音となってしまう。言い換えれば、良音質の楽曲を存分に楽しむためのイヤホンともいえる。

●オンライン編集部
 全体的に、品のあるおとなしめな印象。低音が少し強調されるものの、邪魔している感じはしない。必要以上に音数が多くないのが、まとまりのある音に繋がっている印象だ。ただ、映画の視聴時に使用してみると、ほんの少しだけ、演者の声が前に出てくるところに違和感を覚えた。音楽を聴く限り、多少低音が響くものの素直な音で再現してくれる。オススメは、ポップスミュージックが、メリハリがあっていいかもしれない。特に、ジャパニーズミュージックで、男性ボーカル、それもフォークソングが、ピッタリ好みにハマる。欲を言えば、ほんの少し強めの低音を、もう少し抑えることができたら、理想の一台になりそうだ。

 ラジオドラマなどを聞くと、臨場感があって、想像以上にいい印象。YouTube上で、「ラジオドラマ」と検索してみると、いろいろなラジオドラマが出てくるが、そのどれを聞いても臨場感を味わうことができたので、人の声をうまく表現できるのだろう。ほんのちょっとだけ、エコーがかかっている感じがそうさせているのかもしれない。デフォルトでこの仕様は、ラジオドラマなどを聞く私には、とても好印象のイヤホンと言える。

サウンドピーツ「SOUNDPEATS Aura Nebula」 価格:35,880円

〈主な仕様〉
・ドライバー:10mmダイナミックドライバー×1、6mm平面磁界型ドライバー×1、バランスド・アーマチュアドライバー×2、マイクロ平面磁界型ドライバー×1
・対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive、aptX Lossless、LDAC、LC3
・再生周波数帯域:20Hz~40kHz
・再生時間:最大約7時間(本体のみ、ANCオフ)/最大約28時間(ケース併用、ANCオフ)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX4(イヤホン本体)
・公式サイト:https://jp.soundpeats.com/products/aura-nebula

<プロフィール>
 サウンドピーツの完全ワイヤレスイヤホンの新フラッグシップ。本年年初のCESで開発発表が行なわれており、この10月に待望の発売を迎えた。完全ワイヤレスイヤホンとしては恐らく初の、5ドライバー構成で、内訳はダイナミック型、BA×2、平面磁界型、マイクロ平面磁界型とてんこ盛り。クロスオーバーは3ウェイ(低域、中域~中高域、高域)で、「デュアルリンク・チューニング」「によって、シングルドライバーのようなサウンドの繋がりを実現しているという。形状はカナル型のお団子タイプ(ボッツ型)で、音導管(ノズル)はこれまでのTWSよりもかなり太めで、筆者のコメントにもあるように音の抜けの良さに大きく寄与している。

<レビュー>
●鳥居一豊
 ダイナミック型×1、BA型×2、平面磁界型ドライバー×1、マイクロ平面磁界ドライバー×1の4種5基のドライバーを内蔵。3ウェイ・クロスオーバー・アーキテクチャーとデュアルリンク・チューニングで、全帯域が自然につながる一体感のある音を再現。ノイズキャンセリングの効果は大きく、あらゆる帯域の音を強力に消音する。バッテリー寿命はイヤホンのみで7時間(ANCオフ)、ケース併用で最大28時間再生となる。

 自然な音色でディテールの再現も上手だ。トータルでのバランスもよく、情報量をしっかりと聞き取りたい人に向く。クラシックでは、楽器の音色や質感を豊かに再現し、弱音もしっかりと描く。ポップスやロックでも厚みのある音で、リズム感のよい鳴り方だ。ボーカルのニュアンスやエコー感も豊かに再現する。苦手なジャンルはないが、クラシックなども良いが、キレのよい勢いの良さがあるのでロックを存分に聴きたい人にも合う。

●野村ケンジ
 ディテール表現が丁寧で、響きのピュアなサウンド。特に高域の質感のよさが際立っていて、ピアノや金管楽器の音が普段よりも軽やか、かつ艶やかな表現に感じられる。高域にちょっとした特徴があるため、女性ヴォーカルが普段よりもヌケよく力強い、独特の表現となる。とはいえ、これはこれで魅力的にも感じられるので、あくまでも好みの範疇といえる。いっぽうで低域は量感多めで、フォーカス感も高いため、腰の据わった落ち着きのあるサウンド表現が楽しめる。ロックなどはグルーブ感溢れるノリの良い演奏に感じられて好ましい。いっぽうで、音場表現は特徴的だ。近頃はセンターのヴォーカルを近い距離に据え迫力や臨場感を高める演出が増えているが、「Aura Nebula」はごくオーソドックスで標準的な距離感を保っている。左右への広がりは狭め、中央に定位が寄っているので、洋楽ポップスやEDMなど迫力が欲しい現代曲との相性がよい。

 音質ではないが、オンラインマニュアル全盛の時代に充実した内容の紙マニュアルが付属しているのがとても好ましかった。

●オンライン編集部
 後述のJBLに近い音質で、バランスに優れたサウンドが楽しめる。低域から高域にかけて、バランスよく音が鳴るうえ、全体的に透明感のある澄んだ音が印象的だった。奥行感もあり、クラシック音楽で協奏曲を聴くと、弦楽器、管楽器、打楽器とそれぞれのパートが、左右だけでなく、前後方向もしっかりと感じとることができたあたりは、ちょっとした感動を覚えた。音楽もさることながら、映画の視聴では、演者の声がこもることなく、クリアに聞こえるだけでなく、迫力のあるシーンなどでは、まるで映画館さながらの体感が楽しめる。アプリを使えば、カスタムイコライジングもできるが、デフォルトで12個のイコライザーが用意されているから、好みに合わせて選べば、マルチに使えそうだ。面白いのは、「読書音声エンハンサー」が用意されているところ。このイコライザーにセットして、Amazon Audibleを聞くと話者の声が聞き取りやすく、かなり没入できそうな印象を受けた。ちなみに、オススメは、クラシック音楽。特にコンサートで収録された音は、拍手から、音楽に至るまで、まるで会場に居るかのような雰囲気を楽しむことができた。

JBL「JBL Tour Pro3」 価格: 39,600円

〈主な仕様〉
・ドライバー:10mm径 ダイナミック型、バランスドアーマチュア―(BA)型
・対応コーデック:SBC、AAC、LDAC、LC3
・再生周波数帯域:20Hz~40kHz
・再生時間:最大約11時間(本体のみ、ANCオフ)/最大約44時間(ケース併用、ANCオフ)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX55(イヤホン本体)
・公式サイト:https://jp.jbl.com/TOUR-PRO-3.html

<プロフィール>
 収納ケースにタッチディスプレイを装備したTOUR PROシリーズの最新モデル。ディスプレイ付きとしては第3世代になる。新PRO 3では前モデルPRO 2の美点を引き継ぎながら、ドライバー構成をデュアル(ダイナミック型にBAを追加)構成とし、さらに音質の向上を図っているのが特徴。また、TOUR PRO シリーズとしてLDACコーデックをサポートしたのも初で、ドライバー、コーデック双方で高音質化を果たしているのも特筆できるだろう。処理能力の向上で空間サウンドの臨場感を高めていたり、ノイズ低減(ANC)にAI機能を組み合わせてさらなる静粛化を図るなど、使い勝手の面でも大きく進化している。

<レビュー>
●鳥居一豊
 充電ケースに液晶ディスプレイを備え、各種設定を手元で行なえるのが便利。ノイズキャンセルは強調感のない自然な静寂感を再現。人の声などは少し残るが、中低音はかなり静音する。気持ちのよい静けさを再現する印象だ。バッテリー寿命は優秀で、イヤホンのみで最大11時間(ANCオフ)、ケース併用で最大44時間と旅行でも安心な長さだ。イヤホンは少し大きめだが、耳への収まりはよい。

 低音がしっかりと鳴るスケール感のある音、クラシックのフォルティッシモのように音圧が盛り上がるところも力強さが続く、ダイナミックな音だ。音場の見通しもよく、広がりと奥行のある再現だ。ロックは出音の勢いが少し穏やかで聴き心地や聴き疲れしないことを意識しているようだ。優しい感触だが、低音がしっかりしているので、迫力は伝わる。もう少しイキの良さが欲しいが、ポップスは声の質感もよく、ニュアンス豊かな再現になるので、ボーカル曲が好きな人におすすめ。

●野村ケンジ
 メリハリよく、キレのよい表現が特徴。おかげで、メリハリのある、パワフルでグルーブ感溢れるサウンドが楽しめる。低域は量感多めだが、最低域まで確りと伸びていて、かつフォーカス感も高いため、ヴォーカルやメイン楽器を邪魔することなくひたすらノリの良いサウンドが楽しめる。EDMなど低域の良や質が重要となる音楽ジャンルに対して抜群の相性を見せる。いっぽうでクラシック、特にフルオーケストラとの相性も良好で、普段よりドラマティックな臨場感あふれる表現が楽しい。音場的な広がり感も良好で、ひとつひとつの楽器が詳細までしっかり伝わる。歌声も熱気ある表現が好ましい。結果、EDMからクラシック、ハードロックまで、幅広い音楽ジャンルが楽しめる。音楽再生は良音質であることも重要だが、それ以上に描写の巧みさ、表現力の高さが重要となる。そういった音楽再生の重要ポイントを改めて実感させてくれる、完成度の高い製品だ。

●オンライン編集部
 低域から高域に至るまで、バランスの取れた感じが好印象。低域が欲しい曲では、迫力のある低音が楽しめるが、ドンシャリ感が強いわけではないので、聴いていて心地がいい。ウーファーが効いているのかと思うような、迫力を感じられる一方で、少し抑え気味の低音も、しっかりと鳴らせる辺りは、さすがJBLと言ったところか。ただ、クラシック音楽だと、コントラバスや、バソン(もしくはファゴット)あたりが、少し強調されがちな印象が気になった。オススメは、迫力のある低音が楽しめる、テクノ音楽や、EUROビートなどの、ノリのいい曲。映画をイヤホンやヘッドホンで視聴する人も少なくない今の時代では、映画にも適していると言えそう。『トップガン』など、アクション系映画の、迫力のあるシーンを存分に楽しめるはずだ。

テクニクス「EAH-AZ100」 オープン価格(実勢39,600円前後)

〈主な仕様〉
・ドライバー:10mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC、LDAC、LC3
・再生周波数帯域:20Hz~40kHz
・再生時間:最大約7時間(本体のみ、ANCオフ、LDAC)/最大28時間(ケース併用,ANCオン、AAC)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX4
・公式サイト:https://jp.technics.com/products/tws/az100/

<プロフィール>
 有線イヤホンのフラッグシップ「EAT-TZ700」に採用された磁性流体技術を用いた完全ワイヤレスモデル。低歪みでクリアなサウンドが楽しめると謳っており、シングルドライバーながら、豊かな低域から、伸びやかな高域まで、臨場感溢れるサウンドを再現可能、としている。新開発のANCにより騒がしい環境下においても高い静粛性を実現しているほか、AIを組み合わせた通話NCによって、通話性能も高められている。アプリにも対応し、EQ回路(ブロック)を通過する際の音質劣化を可能な限り防ぐ「ダイレクトモード」も装備する。本体は耳に窪みの部分にぴったりとはまるコンチャフィット形状&小型にまとめられており、自然で軽やかな装着感となる。

<レビュー>
●鳥居一豊
 口径10mmのアルミ振動板を使った磁性流体ドライバー搭載モデル。ノイズキャンセルが優秀で、高域から低域まで外部の騒音をトータルでよく抑える。人の声もかなり遠ざかる印象だ。装着感も良好で耳への収まりがよく、安定感もある。バッテリー寿命はイヤホンのみ10時間(ANCオン、AAC)はかなり優秀。ケース併用で最大28時間となる。

 音質は飾り気のない素の音を正確に再現するタイプで、情報量も豊か。低音もあまり派手に鳴っている感じはないが、コントラバスのような低音楽器の音をしっかりと鳴らすなど、低くしっかりと伸びる質の高い低音になる。ボーカルもストレートな音調で華やかさには欠けるが、ニュアンスや高音の伸び、声量の豊かさなど、声の質感が豊かに味わえる。少し穏やかでおとなしい音にも感じるが、パワー感や迫力、スケール感もしっかりしているので、クラシックのオーケストラ曲を良い席で味わうように聴くのが楽しい。

●野村ケンジ
 自然という言葉がぴったりの表現。こだわりのダイナミック型ドライバーに加え、LDACコーデックのアドバンテージにより、質感のよいサウンドが楽しめる。音色傾向としては、高域は煌びやか、低域は柔らかく自然に広がる特徴を持ち合わせていて、中域のきめ細やかでリアル。言い換えればHi-Fi調ともいえるサウンドキャラクターのため、クラシック専用にチューニングされたのかと思うくらいマッチする。フルオーケストラを聴くとどういう楽器構成かはもとより、そうした作曲者の意図までしっかりと伝わってくる表現の豊かさがある。音場的な広がりも見事で、ホールの響きが十全に伝わってくるのはもとより、定位の確かさから各楽器のレイアウトが手に取るように分かる。

 いっぽうで、Jポップはコンプ由来の高域にあるざわつきが気になってしまったり、ハードロックはグルーブ感が弱いなど、どちらもベストマッチとはいえず。アコースティック演奏推奨モデルといえる。音質ではないが1点、付属の簡易マニュアルにリセット方法が記載されていないのは残念だった。

●オンライン編集部
 低域がちょっと物足りないかな、という印象から、アプリで設定を変えてみたら、期待以上のサウンドに化けて、正直驚いた。低音は、ドンシャリ系ではなく、落ち着いたしっかりとした低音を保てているので、聴いていて不快感は一切ない。それどころか、心地がよく、ついつい低音が楽しめるテクノ系の音楽を聴いてしまうほど。クラシック音楽もしっかりと聴くことができるが、それでも、ダンスミュージック系の音楽が楽しくなってしまう、そんなイヤホンだった。映画(トップガン マーベリック)の視聴時に使ってみたが、戦闘機のあの爆音が、耳一杯に鳴り響き、つい笑みが出てしまうほど、迫力のサウンド体験ができた。映画館でもこんな迫力で映画を視ることはないといった感じだったので、アクション映画などに最適かもしれない。

ケンウッド「GLASS Core Pro」 価格:49,940円

〈主な仕様〉
・ドライバー:10mm径 ダイナミック型、MEMS
・対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
・再生周波数帯域:――
・再生時間:最大約14.5時間(本体のみ、ANCオフ)/最大約49時間(ケース併用、ANCオフ)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX4
・公式サイト:https://www.kenwood.com/jp/headphones/products/kh-crz100t-kh-crz90t/

<プロフィール>
 業界で初めてガラス振動板を採用した完全ワイヤレスイヤホンで、今回取り上げているGLASS Core Proと「GLASS Core」の2モデルをラインナップする。主な違いはGLASS Core Proが、高音域再生を受け持つMEMSドライバーを搭載したハイブリッドドライバーになっているところで、ほか、ユーザーの耳(外耳道)の特性を測定して最適化してくれるパーソナライズサウンド機能の搭載、空間オーディオの対応、そしてCD規格(&以下)のコンテンツをハイレゾ相当にアップコンしてくれる高音質化技術「K2テクノロジー」の搭載、となる。JVCケンウッドの周年記念活動(JVCKENWOOD Anniversary)の一環としてリリースされた周年記念モデルの第一弾になるそうだ。

<レビュー>
●鳥居一豊
 話題の口径10mmのガラス振動板をワイヤレスでは初めて採用。さらにMEMSドライバーを加えた2ウェイ構成。ノイズキャンセルもかなり優秀で、車の走行音や駅のざわめきなど低音主体のノイズはかなり効果的に消音する。人の声もかなり遠ざかる傾向。サイズはスティック部分が耳から出るため手が触れてしまいやすいが、操作が物理ボタンなので誤操作はない。バッテリー寿命はイヤホンのみで最大14.5時間(ANCオフ)、ケース併用で最大49時間と長時間再生が可能。

 ガラス振動板というと硬い音を連想しがちだが、音の感触はむしろ柔らかい。高域はやや強めだが、低歪みなせいか音の感触はむしろソフト、耳障りなキツい音もない。音場感が豊かで広々とした音に包まれる感じがある。低音は解像感が高いが、細身にならず芯のある音が出る。声にも芯があり、高音がよく伸びる透明感のある再現が印象的。女性ボーカルが好きな人には好ましいと感じるだろう。

●野村ケンジ
 センターの歌い手がとても近く、メリハリのよい表現を持ち合わせている。おかげで、臨場感溢れる活き活きとしたヴォーカルが楽しい。音色傾向としては、ヴォーカルは男女ともに普段よりもややハスキーな傾向があり、大人っぽい表現の歌声がとても魅力的に感じられる。また、アコースティック楽器との相性もよく、ピアノは普段よりも強いタッチ、トランペットも普段より煌びやかな表現となっていてなかなかに印象的だった。

 ユニークなのが、アプリにある「パーソナライズサウンド」の効果だ。これをオフにしていると高域にクセのある“ガラス振動板ドライバー”特有のサウンドが感じられるが、「パーソナライズサウンド」を設定するだけでニュートラルなサウンドキャラクターにシフト。クラシック最適といえた音が、オールジャンルが楽しめる普遍的かつ懐の深い表現へと生まれ変わってくれる。普段はオン、クラシックを聴くときはオフにするなど、使い分けも楽しそうだ。

●オンライン編集部
 派手さのない低音と、メリハリのある中高域に、思わず息を呑む程の音像に、驚く。他とは一線を画すような、同じ価格帯のモデルなのか? と思うほどのクオリティの高さに一瞬で引き込まれてしまう。どのジャンルの楽曲を聴いても、破綻はしないし、それどころか、オールマイティにぴったりと合ったサウンドを奏でてくれるから不思議だ。音質は、透明感のある澄んだサウンドで、ずっと聴き続けることができる、そんな印象を受けた。クラシック音楽も、ポップスも、ロックだっていけるし、テクノ系の音楽もラクに鳴らすことができる。もちろん、映画も臨場感あふれるサウンドがしっかりと楽しめる。このジャンルが苦手、というのはなく、バランスよく使える、そんなイメージ。それでもどのジャンルの楽曲も、平均点以上のサウンドが楽しめるのは、業界初(TWSで)となるガラス振動板を採用したおかげなのだろうか。キレのある感じは、本製品ならではかもしれない。

5モデルの試聴を終えて~まとめ

●鳥居一豊
 3~4万円の価格帯の実力の高いモデルを聴いたが、いずれも優秀で、どれを選んでも日常生活ではほとんど不満がないと感じたほど。デザインはそれぞれに独自のものになっているので、サイズ感や耳への収まり、デザインや仕上げの質感などで選ぶといいだろう。ノイズキャンセルについても、いずれも優秀。耳栓をギュッと押し込んだような不自然な圧迫感がないのも共通。人の声の消音度合いで差が付くが、屋外使用では人の声は多少聞こえた方が安全でもある。自分がよく使うシチュエーションに合わせて選ぶといいだろう。

 音の点ではそれぞれの個性があるが、総じて長時間聴いて使いやすい穏やかな音に仕上げている傾向があった。個性的なところでは、HiFi調で解像感が高く、キレの良さも好ましいのがサウンドピーツ、クリアで音場感もよく、鮮明さが印象的だったのがケンウッド、バランスのよいまとまりや聴きやすさではテクニクスだった。

●野村ケンジ
 現在、TWS(完全ワイヤレスイヤホン)にはエントリークラスから高級モデルまで幅広いラインアップが用意されているが、今回視聴させてもらった3万円前後の価格帯は内容も製品数も充実している。特徴もそれぞれにあり、サウンドピーツ「Aura Nebula」は最新モデル&マルチドライバーならではのカラフルな音色傾向をもち、JBL「Tour Pro3」は音楽性の豊かさが楽しく、ケンウッド「GLASS Core Pro」は個人個人に合わせた調整が行えるなど、好みに応じた製品選びができるのはとても嬉しく感じた。

 また、この価格帯になると音質的なアドバンテージが随分と高まってくれるのも魅力的。BluetoothワイヤレスはS/Nやフロアノイズレベル、解像度など(有線モデルに対して)不利な点がいくつか垣間見られるが、今回試聴した5製品はいずれもBluetooth接続とは思えない良音質を持ち合わせていた。その価格に見合う良質さ持つ素晴らしい製品たちだ。