香港や中国の企業からネットワークオーディオ関連の多様な提案が相次いでいる背景の一つとして、メーカーや専門店間の緊密な情報交換の存在が挙げられるように思う。複数の有力メーカーのネットワーク製品群を扱ってきた香港のMICオーディオが、自社ブランドとしてUNio(ユニオ)を立ち上げたのも同じ理由からではないか。

 ネットワークスイッチとSFPケーブルを自ら発売するに至ったのは、幅広く収集した情報と豊富な経験をベースに、ネットワークオーディオの音質改善にいま何が求められているのかを見極めたからなのだ。ちなみにMICオーディオはインシュレーターやラックの開発を手がけるungnoiブランドも傘下に擁しており、振動制御やノイズ対策を含む幅広い知識と経験を有している。

ネットワークスイッチ:UNio Poki ¥275,000(税込)

●干渉を最小限に抑えたRJ45アイソレーションポート(ZEN ZONE)
●ローズカットスタイルのエッジデザイン
●カーボンファイバーシールド
●超低位相ノイズ高精度クロックCHRONOS Class
●4つの独立したDC電圧フィルタ
●SFP+ポート搭載

「Poki」は4系統のLAN端子(2.5Gbps)と、Zen ZoneデザインのLAN端子(1Gbps)を1系統、さらにSFP端子を搭載する。Zen Zoneはシールドエリアとして、オーディオ用に相応しい低ノイズ特性を備えている

 「Poki」は2.5GbpsのRJ45を4ポート、1Gbpsのオーディオ専用ポート「Zen Zone」、SFP1ポート(1/10Gbps)を装備するオーディオグレードのネットワークスイッチで、アルミ削り出しのシャーシなど、振動対策にも十分な配慮が行われている。選別品の超低位相ノイズクロック素子、日本製カーボンファイバーを用いたシールドなど、ハイファイグレードならではの入念なノイズ対策を投入しているほか、Zen Zoneと名付けられたRJ45ポートは他のポートや回路との干渉を徹底して抑えるために独自のアイソレーション対策を導入。「禅」に因んだネーミングからわかる通り、雑味のない絶対的な静寂を目指して妥協のないノイズ対策を徹底している。

 本体前面下部のブルーのイルミネーションは機能的な意味はないが、ローズカット仕上げの筐体と相まって精悍な印象を生んでいる。ネットワークスイッチは地味な外観の製品が多いが、Pokiのデザインは控えめながら存在感があり、ハイエンド機器と並べても見劣りすることはなさそうだ。そのほかフロントパネル右側には内部/外部クロックを識別するLEDが用意される。

UNioのSFP光ケーブル「OF1」(1.25Gbps、写真上)と、SFP+光ケーブルの「OF10」(10Gbps、写真下)。価格はそれぞれ¥30,000(税込、1.5m)、¥38,500(税込、3m)

 SFP接続用の光ファイバー変換モジュールは、1.25Gbps仕様の「OF1」と10Gbps仕様の「OF10」を揃える。変換モジュールはいずれもシングルモード仕様で、光ファイバー「OM4」はマルチモードケーブルをあえて組み合わせているが、UNioはその組合せが性能面でもっとも安定し、高精度な光伝送を実現できることを確認したという。オーディオグレードの光ファイバーと変換モジュールの選択肢がまだ限られているなか、豊富な経験に基づいて吟味された製品は安心につながるし、価格もリーズナブルなので導入のハードルも低い。

 YBAのストリーマーDAC「YM302」をシステムの中核に据え、Qobuz再生を中心にPokiの有無で音がどう変わるか、検証を進めた。接続を変更する箇所はPokiとYM302の間で、前半はZen Zoneポートを用いたRJ45接続、後半はSFP接続を試すが、それとは別に試聴室常設のDELAの「N1」を用いたローカル再生でもネットワークスイッチの追加による音の変化を確認する。

YM302とPokiの間を、Zen ZoneデザインのLAN端子やSFP端子でつなぐことで、音がどう変化するか確認した

 Qobuzで再生したコープランド「市民のためのファンファーレ」はPokiの有無でもっとも大きな違いが現れた音源の一つだ。Poki経由だと余韻が作り出す空間が前後左右に1.5倍ほど広がり、その広大な音場のなか、金管楽器と打楽器が立体的に浮かんで3次元の空間が展開。一方、スイッチなしではステージが広がり切らず、ホールトーンの存在を実感しにくい。

 独奏のサクソフォンをフィーチャーしたビッグバンドの録音ではサックスとパーカッションの粒立ちに違いを聴き取ることができた。もともとリズムのキレの良さが際立つ録音とはいえ、Pokiを経由すると旋律とリズムそれぞれの楽器の一音一音に勢いが乗り、音が前に飛び出してくる。その鮮度の高いサウンドを体験すると、スイッチを使わない状態には戻れないと感じるほどで、良質なネットワークスイッチが果たす役割の大きさを強く実感させられた。

ネットワークプレーヤー:YBA YM302 ¥770,000(税込)

●対応ストリーミングサービス:Apple Music(44.1/48kHzまで再生)、Tidal Connect 、Qobuz Connect、Roon Ready
●ハイレゾ対応フォーマット:DSD(iso、dsf、dff)、DXD、APE、FLAC、WAV、AIFF、AIF、DTS、MP3、WMA、AAC、OGG、ALAC、MP2、M4A、AC、M3U、M3U8、OPUS
●接続端子:デジタル出力3系統(XLR、同軸、光)、HDMI ARC、HDMI(IIS、10パターンのピンアサイン対応)、USB Type-A 2系統、アナログ出力2系統(XLR、RCA)、LAN(RJ45)、SFP
●SSDスロット:M.2 NVMe(背面に搭載)
●寸法/質量:W320✕D260✕H88mm/5.9k

今回の試聴では、YBAの新製品ネットワークプレーヤー「YM302」で、ストリーミングサービスのQobuzや、NASに収納した音楽ファイルを試聴した。ボリュウム機能は停止し、プレーヤーとして使っている

 ここで接続をSFPに変更し、光ファイバー接続によるノイズ遮断効果を確認する。「〜ファンファーレ」はグランカッサとタムタムの余韻が消える直前まで微小な空気の揺らぎを聴き取れるようになり、静寂の底が一段階深まることに気付く。その絶対的な静寂のなかからトランペットとホルンの旋律が立ち上がる瞬間、思わず息を呑むほど緊張が高まり、音色の美しさと柔らかさに耳が釘付けになった。ビッグバンドはディテイル情報の改善に加えて響きの重心がグッと下がり、ベースとパーカッションの低音の動きが鮮明に浮かぶ効果を聴き取ることができる。

 ドミニク・フィス=エメのヴォーカルはRJ45接続でも声のフォーカスに改善効果が現れることを確認したが、SFP接続ではそれに加えてメインヴォーカルとバックコーラスのセパレーションの改善、ウッドベースの鮮烈なアタックなど、予想外の変化まで聴き取ることができた。バックグラウンドで細部を混濁させていたわずかなノイズが一掃され、本来の抜けの良さを取り戻したのだと思う。その違いはとても大きく、再現性も高い。

 DELAのN1をPokiに接続し、ローカル音源の再生でも同様な音質改善効果が得られるのか、確認してみよう。Qobuzのストリーミング再生と同様、PokiとYM302の接続は通常のLANケーブルと光ファイバーをそれぞれ試す。

取材はStereoSound ONLINE試聴室の常設機器と組み合わせている。プリアンプがアキュフェーズ「C-2900」、パワーアンプが「A-300」、スピーカーシステムはB&W「801 D4 Signature」という構成だ

 ニッキ・パロットの音源はPokiを経由することで各楽器のセパレーションが向上し、特にギターとサックスの音色に鮮度の高さと勢いの強さを実感できるようになった。どちらも音色自体がクリアーになるだけでなく、芯のある密度の高い音に生まれ変わることが興味深い。SFP接続ではそれに加えてヴォーカルとサックスの定位が安定する効果も感じられるようになり、空間情報の再現力がいっそう高まることに気付く。リュート伴奏で歌うペトゥラ・マゴーニのヴォーカル(DSD音源)は表情の陰影が深まり、ビブラートの振れ幅が大きく感じられる効果もある。

 ネットワークスイッチはいまやネットワークオーディオの必須アイテムの一つと認識されるようになったが、明確な音質改善と呼べる効果を引き出すためには、ノイズ対策や振動制御を始めとするさまざまなノウハウが不可欠だ。UNioはネットワークオーディオの豊富な経験に加えてインシュレーターやラックの開発で培った知見も併せ持つ。Pokiはそうした豊富な経験を適切に活かしたハイファイグレードのネットワークスイッチとして注目すべき製品の一つだ。

(撮影:嶋津彰夫)