最近では、液晶テレビなどの薄型ディスプレイでも、100インチの製品をラインナップするようになってきたが、やはり“大画面”“本格的なホームシアター”と言えばプロジェクターが有力な選択になるだろう。そうしたユーザーや市場のニーズを鑑みてか、昨今のプロジェクターは、小型でコンパクト、自動図形歪み補正やオートフォーカスといった自動機能を充実させた上で、“画質”にこだわったモデル――本格的なシアター用途の製品――も多数登場してきている。
その中でも、画質を重視する人に特に注目されているブランドが、「AWOL Vision」(エーウォルビジョン)。応援購入サイトMakuakeで、記録的な大成功を収めた長焦点タイプの4K DLPプロジェクター「Valerion」(ヴァレリオン)でその名を知る人もいるだろう。
今回紹介するのは、そのAWOL Visionが展開する超短焦点タイプの4K DLPプロジェクター「Aetherion」(イーサリオン)。超短焦点タイプとは、映像を投写するための距離が極めて短く、プロジェクター本体をスクリーン間際に置いて、大画面投影ができるモデルのこと。画面を投影する壁面やスクリーンのほぼ真下に設置できるので、スペースファクター的にも有利だし、安全性も高い。というのも、長焦点タイプのプロジェクターでは、部屋の後方(あるいは天井)に本体を設置するのが一般的で、その場合、スクリーンとプロジェクターの間に距離があるため、人や物があると映像に影ができてしまったり、プロジェクターから発せられる光(映像)を間違って見てしまい眼を痛めてしまう、という危険がある。しかし、短焦点モデルなら、スクリーンとプロジェクターはほぼ同位置にあるので、光の通り路を人が横切ることもないし、わざわざプロジェクター(発光部)をのぞき込むようなことをしなければ、危険もほとんどない。壁際に置けるので、常時設置していても邪魔になりにくいし、見たい時にすぐに使えて便利。
▲Aetherionには、写真の専用カバー(レザー保護ケース)も同梱されており、使わない時に被せておけば、インテリアの一部にもなるし、ホコリ除けにもなって便利
ある意味、壁と一体化しているので、薄型テレビに近い感覚で使えるし、OSを内蔵しているので本機をネット接続すれば、手軽に各種映像配信サービスを楽しむこともできる。映画やライブ、アニメ、地上波テレビの再配信など、豊富な動画コンテンツを幅広く視聴可能だ。もちろん、ゲーム機の映像も表示できるので、eスポーツの大会に出場している雰囲気でゲームプレイも楽しめる。
こうしたホームシアターユースを意識したモデルは、解像度はもちろん4Kで、HDR表示にも対応する。光源にはRGBレーザーを採用することで、広色域も実現している。一口にRGBレーザーと言っても、一部には色再現範囲は広いものの、赤(R)、青(B)、緑(G)の原色が蛍光色を帯びてしまい、不自然な色再現になる製品もあったが、AWOL Visionでは、理想的な色再現にこだわり、自然でリアルな再現を可能にした。そうした技術の深化もあり、世界のホームシアターファンの注目を集め、米国のクラウドファンディングKickstarterでValerionは、10,921,452ドル(約17億円相当)を調達。Aetherionは、18,649,456ドル(約30億円相当)を調達して、カテゴリー歴代1位(当時)を達成した。日本でもMakuakeで現在のところ、総額4.5億円の成果を上げている。
そんなAWOL Visionの注目プロジェクターAetherionを、HiVi視聴室に持ち込んでテスト。映画を見るための練り上げた高画質をじっくりと確認してみることにした。
▲本体フロント部分には、バータイプのLEDが内蔵されており、発光色やパターンを下のメニューで変更できる。ゲーミング時などには気分を高めてくれるだろう
なお、Aetherionシリーズには「Aetherion Max」と「Aetherion Pro」2モデルがラインナップされており、主な違いは輝度で、Maxが3300 ISOルーメン、Proが2600ISOルーメンとなっている。また、本体の仕上げも異なる(Maxはガンメタル、Proはマットブラック)。ここではAetherion Maxを使っている。
4K DLPプロジェクター
AWOLL Vision
「Aetherion Max」
¥719,800(税込 現在Makuakeで展開しているプロジェクトにて、特別価格で購入可)
●Aetherion Maxの主な仕様
カラー:ダークガンメタル
輝度:3300ISOルーメン
解像度:4K
コントラスト:【ネイティブコントラスト】6,000:1、【視聴コントラスト】60,000:1
色域:Rec.2020 110%
光源:RGBピュアトリプルレーザー
レンズアイリス:〇
HDR対応:HDR10、HLG、HDR10+、ドルビービジョン、ドルビービジョンゲーミング、IMAX Enhanced
ダイナミックトーンマッピング:〇
表示デバイス:0.47インチDMD
投写サイズ:80~200インチ
レンズカバー:電動
3D表示:〇
フィルムメーカーモード:〇
ゼロ光漏れレンズ:〇
VRR(可変リフレッシュレート):〇
ALLM(自動低遅延モード):〇
SoCチップセットプラットフォーム:8GB RAM/128GB EMMCメモリー搭載フラッグシップ4K UHD SoC MT9655
内蔵スピーカー:2ウェイ4スピーカー(ツィーター20W×2フルレンジ25W×2)
ドルビーアトモス:〇
DTS Virtual X:〇
Wi-Fi:Wi-Fi7
Bluetooth:5.4
接続端子:HDMI×3、USB×2(2.0、3.0)、AV入力×1(3.5mmステレオミニ)、光デジタル、
スマートホーム連携:AirPlay2、Choromacast、Miracast
ストリーミングOS:GoogleTV OS
音声アシスタント:〇(Google近距離音声アシスタント)
RGBミュージックLEDアンビエントライト:〇
寸法:W562×H139.5×D323mm
質量:8.75kg
付属品:レザー保護ケース、日本語取説、リモコン(電池付き)、USB-A-Micro USB アップデート用ケーブル、電源コード、クリーニングクロス、AV入力ケーブル、USB Type-C - Type-Cケーブル
▲接続端子は、背面左側に集約
▲付属リモコン。必要なボタンが押しやすく配置されている。自照式なので暗室でも使いやすい
まずは、Aetherion Max/Proの概要を紹介しよう。表示デバイスは0.47インチDMD素子で、レーザー光源はRGBピュアトリプルレーザー。これに独自に設計したレンズを搭載している。このレンズは、高屈折率のサファイアガラスと超低分散設計を採用することで、収差を極限まで抑制しているのに加え、希土類(レアアース)をコーティングすることで、光透過率、コントラスト、色精度がより高められているという。色再現率はRec.2020の110%をカバー。コントラストはネイティブコントラスト6,000:1で、視聴コントラストは60,000:1となる。
▲投写レンズの前にはレンズカバーがあり、電源連動で自動開閉してくれるので便利
このほか、反射素子の間にチタン製サーマルメッシュを組み込み、精密な遮熱シールドを形成。レーザーの熱による影響を抑え、長時間にわたってクリアな映像を表示できるようになっている。さらに暗部の再現を高めるアイリス機構「ダイナミックIris」も採用。映像に合わせて7段階の自動アイリス調整が可能なので、明るいシーンから暗いシーンまで、最適なコントラストで映像を再現できる。
これに加えて、ゲーム表示でも、入力遅延は1ms、VRR(可変リフレッシュレート)やALLM(自動低遅延モード)、ドルビービジョンゲーミングにも対応。ゲーム機などの表示でも優れた性能を発揮する。先述したように、Aetherionには、Aetherion MaxとAetherion Proの2モデルがあり、視聴では上位モデルのAetherion Maxを使用した。
黒がしっかりと締まり重厚感のある映像が楽しめる。自動調整機能で設置も簡単。周辺まで歪みのないクリアな映像を投写できる
さっそく視聴に移ろう。まずは、内蔵するGoogle TV OSで、動画配信サービスから映画やドラマ、アニメなど普段見慣れているコンテンツを視聴したが、記憶通りの色鮮やかで明るい映像が楽しめた。超短焦点タイプのプロジェクターは、スクリーンに近い場所から映像を投写するので、レンズ設計が特に難しい。中でも画面の上側と下側でフォーカスを合わせるのが難しいため、このあたりを厳しくチェックしてみたが、上下だけでなく、画面の四辺もきちんとフォーカスの合った映像を見せてくれた。超短焦点プロジェクターの弱点を感じさせない仕上がりだ。これがオート(自動)で調整できるのはありがたい(手動調整も可能)。
▲設置時の台形補正やフォーカス合わせは自動で調整してくれる。気になる場合は手動での調整も可能だが、自動調整で満足できるレベルにある
色再現も、3原色レーザーを搭載していることもあり、特に目に付きやすい赤色も鮮やかに再現してくれるし、レーザー光源で気になりやすい不自然な蛍光色はよく抑えられている。しかも、鮮やさがありながら、自然な色も再現できていて、人の肌の質感もとてもナチュラルなもの。
ただし、「ダイナミック」などの画質モードでは、色が鮮やかすぎるきらいもあるので、自然な画質という意味では、「映画」モードや「FILMMAKERMODE」を選ぶとよいだろう。
黒再現、色再現ともに、本格シアタープロジェクターとして高い実力を備えている
次にプレーヤーをパナソニックのDMR-ZR1とし、UHD BDの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(輸入盤)を見た。本作はドルビービジョン収録なので、映像モードは「ドルビービジョン:ダーク」を選んでいる。粒状感の残るフィルムライクな質感も細部まできちんと表現され、宇宙空間を満たす漆黒の闇の雰囲気をしっかりと再現している。これは、シーンに合わせて明るさを自動調整してくれる「ダイナミックIris」機能の恩恵だろう。シアターユースのプロジェクターとして充分に優秀だ。
ただし、厳密にチェックすると、少し黒潰れをするところもあったので、黒レベルを「10」とした。電気的に黒の再現性を高めるDBLE(ダイナミックブラックレベルエンハンサー)も使用している。このあたりは好みで調整して、映画らしい暗部や黒の再現を追い込むといいだろう。黒再現に強いと言われるDLPプロジェクターでも、黒潰れしないようにする(追い込む)のが難しいモデルもあるが、Aetherion Maxでは、満足できるレベルまで追い込むことができた。このあたりは、映画のためのプロジェクターとして、かなり高い実力を持っていることが分かった。
続いて、鮮やかな映像が魅力の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』を見た。惑星パンドラを彩る自然は、明るいシーンではまさに極彩色の再現で、地球の自然とは異なる美しさがある。密林や夜の場面などでは暗部でも色が抜けず、深い緑や青などの自然の樹木の雰囲気をきちんと描いてくれる。地球人類側のメカとパンドラの人々が激しく戦うシーンでは、デジタル映像らしい精細感も見事で、見通しがいい。迫力ある戦いを手に汗握って楽しめる。
こうして、じっくりと映画を見ていると、視聴テストであることを忘れてしまうぐらい映像世界に没入することができ、満足度の高い時間を過ごすことができた。シアター用途として、本格的な画質の向上を果たしたこともあり、高級プロジェクターが3ケタ超えの高価格となっている現状を考えれば、Aetherion Maxが71万9800円、Aetherion Proは55万9800円という購入しやすい価格が設定されている。さらに、現在プロジェクトを展開中のMakuakeの応援購入を利用すれば、Aetherion Maxが45%OFFの39万4900円で手に入る。これはかなりお買い得と言っていいだろう。
▲今回のレビューでは、床置きの120インチ電動ALRスクリーンを組み合わせて視聴した。Aetherionの電源に連動して自動でスクリーンが立ち上がってくるので便利。幕面はシルバーコートされていて、輝度を高く取れるのも特徴
また、Makuakeでは、スクリーンとのセット販売も用意されている(壁掛け/床置き、100インチ/120インチの合計4モデル)。今回の視聴テストに使った「120インチ床置き電動ALRスクリーン」とAetherion Maxのセットで、108万9600円の39%OFFとなる65万9600円というプランもある。スクリーンの同時購入も考えているならば、こちらも良さそうだ。ちなみに、ALRとは外光(環境光)を反射・吸収して、プロジェクターからの光(映像)を的確に反射してくれるという意味で、ある程度の明かりのあるリビングでも、高コントラストな映像が楽しめるスクリーンとなる。
▲電動スクリーンは写真のようにコンパクトで、壁際に寄せて設置可能。使わない時はスクリーンを収納できるのでホコリ除けにもなる
▲スクリーン用のカードリモコン
オールインワンで手軽に本格ホームシアターを始められるのが魅力の製品
本格的なホームシアターに憧れを持つ人は多いと思うが、それに似合う本格的なプロジェクターというと価格がかなり高価になってしまうため、諦めてかけている人も少なくないだろう。しかし、AWOL VisionのAetherionなら、なんとか手の届く価格で優れた映像を楽しめるのが魅力。本体内には立体音響(ドルビーアトモス、DTS Virtual:X)の再生に対応するスピーカーも搭載しているので、まずはAetherionとセットスクリーンでホームシアターを始めて、後々サウンドバーなどを追加して、音響を強化するのもいいだろう。
なお、購入前に実機を見て決めたいという人もいるだろう。AV専門店のAVAC(アバック)が、AWOL Vision製品の国内正規販売代理店業務を受け持っていることもあり、全国13店舗のAVACにて、Aetherionシリーズの実機の展示やデモを行なっているので、近所の店舗でチェックしてみるといい。映画はもちろん、ゲームなどを100インチ級の大画面で楽しみたい人は、Aetherionに注目してほしい。