ミュージックサーバー(NAS)に納めた音源を聴いたり、サブスクリプションの音楽ストリーミングを聴いて楽しむネットワークオーディオは、音楽ファンのみならずシリアスに音を追求するオーディオファイルの間にも広まってきている。私はCDからリッピングした音源やダウンロード販売から購入した音源を聴くのが好きなのだが、最近はQobuz(コバズ)などのサブスクリプションも積極的に利用している。Qobuzでは好きなアーティストの新譜や旧譜を見つけたり、気に入ったアルバムをダウンロード購入したりと大いに役立っている。

ネットワークプレーヤー:Volumio Primo(2026) ¥148,500(税込)

●接続端子:アナログ出力(XLRバランス、RCAアンバランス)、USB Type-A(外部USB DAC接続用)、LAN、ストレージ入力(micro SD、USB-A×2)、HDMI(映像出力)、12Vトリガー出力(3.5mm)
●対応ネットワーク:LAN(10/100/1000Mbps)、Wi-Fi 802.11a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz)
●DAC:ESS Sabre ES9039Q2M
●対応信号(オンボードDAC):最大PCM384kHz/32ビット、DSD
●USBデジタル出力:最大PCM1536kHz/32ビット、DSD1024
●CPU:A72クアッドコア1.5GHz
●RAM:2Gバイト DDR4
●内蔵ストレージ:16GバイトeMMC
●対応サービス:TIDAL、Qobuz、HighResAudio、TuneIn、Spotify
●連携:TIDAL Connect、Qobuz Connect、Spotify Connect、Roon Ready
●寸法/質量:W270×H50×D150mm/2.5kg

背面端子はひじょうにシンプルで、音楽信号はLAN、もしくはUSBかMicro SDカードから読み込む仕様だ。アプリ等の設定に便利なHDMIモニター出力を備えている点がユニーク。USB-A端子にマウスやキーボードをつなぐと、それらを使って設定や再生操作も行えるようになる

 そんなネットワークオーディオの世界でコストパフォーマンスに優れたネットワークプレーヤーとして注目されているのが、イタリアのVolumio(ボリューミオ)だ。ここでは新発売となった高音質ネットワークプレーヤーの「Primo(2026)」を紹介しよう。

 本国HP(ホームページ)では「Primo V3」と呼ばれている第3世代の製品で、内部回路が完全に刷新された2026年バージョンということから、日本国内はPrimo(2026)と呼ばれる。気になるプライスタグは、税込で標準的な小売価格¥148,500ということだ。エントリー的な価格帯の製品ではあるけれども、音質的にかなり優れており性能も高くアプリの操作性も良いという、全方位的な完成度の高さが特徴の新製品なのである。

 Volumioは、どんな会社なのか? 本国の同社HPや輸入元トップウイングの菅沼洋介社長によると、Volumio srl社はイタリアのフィレンツェ(フローレンス)に拠点を置く企業で、10名の主要メンバーと3名の外部協力者による、小規模ながらも精鋭主義のオーディオメーカーのようだ。主力製品はネットワークオーディオ機器を操作する「Volumio OS」という評価の高い音楽再生ソフトウェアと、このPrimo(2016)に代表されるネットワークオーディオ関連のオーディオ機器=ハードウェア。トップウイングは前者のソフトウェアではなく、後者のオーディオ機器を扱う輸入元というスタンスである。

StereoSound ONLINEの試聴室で、常設機器と組み合わせてPrimo(2026)の音を体験いただいた

 Priomo(2026)はネットワーク接続に特化しているデジタルプレーヤーだ。入力はRJ45端子のイーサネット(LAN)のみ。USB接続DACとして使われるUSB-B端子やUSB-C端子は装備していない。ネットワークプレーヤーでは珍しくHDMI出力を装備することも特徴なのだが、それは後から説明していこう。

 音質を決定づけるキーデバイスは、ESSテクノロジー製の最高性能ステレオDAC素子ES9039Q2Mである。Primo(2026)ではステレオ構成のDAC素子を搭載している。上級モデルでUSB接続DAC機能も備えている「PrimoPlus」はES9039Q2Mをチャンネルあたり1基という贅沢な合計2基体制だ。このPrimo(2026)は、Primo Plusで確立した最新の設計をベースにしている。Primo(2026)と前世代のPrimoでは回路基板の様相がまったくといっていいほど大きく変わっている。

 これまでの第2世代Primoと新発売のPrimo (2016) の内容を比べてみよう。

 注目すべきポイントはCPUが新しく高速動作になっていることと、最新DAC素子のES9039Q2Mになって新設されたNOSモード(ノン・オーバーサンプリング)機能を活かせるようになったこと。8倍オーバーサンプリングのデジタルフィルターは、DAC素子が内蔵する8パターンから選ぶことができる。ES9039Q2M(32pin)は前世代のES9038Q2M(30pin)よりもわずかながらも諸特性が向上しており、モジュレーター回路がHyperstream IIからHyperstream IVへと進化。国内ブランドのオーディオメーカーは、なぜか最新のES9039PROやES9039Q2Mを採用していないので、本機のES9039Q2M搭載は魅力的なアドバンテージとなるはずだ。

 Primo(2026)は、外部からの直流5V(3A)供給で動作する。スイッチング電源のAC-DCアダプターが付属するけれども、トップウイングが発売しているリニア電源部と交換すると音質がアップするのだ。まあ、それはあとから紹介しよう。

 直流5Vとは意外に低い電圧だなあと思ったが、実は内部にはAnalog Linear PSUという電源生成回路があり、適切な電源電圧を内部で造って各セクションに供給している。それとは別に、アナログ出力回路に使っているオペアンプ専用のDual PSUという電源回路もある。おそらく、入力された5V(3A)の直流から12V(1A)くらいを生成しているのではないだろうか。

 アナログ出力回路の設計変更によって、RCA端子のシングルエンド出力とXLR端子のバランスド出力の出力レベルを選択できるようになったのも大きな進化だ。RCA端子の出力は0.5Vrms〜3.15Vrms、XLR端子では1.0Vrms〜6.3Vrmsまで選択できる。あまり高い出力にすると組み合わせるアンプの前段回路でオーバーロードになって音が歪んだりするので、出力設定には注意してほしい。Primo(2026)の試聴ではアキュフェーズのプリアンプを使っており、XLR端子での接続は2.0Vrmsを選択している。

 筐体はVolumioの多くの製品で使われている、共通のアルミニウム押し出し材によるシンプルなもの。押し出し材を使った筐体は他社製品にも多く見受けられるけれども、さすがはイタリアらしい美しくも飽きのこないフォルムだと感心する。そうそう、Primo(2026)は他のVolumio製品と同じく、メイド・イン・イタリア(フローレンス)なのだ。本国でデザインしながらも中国や他のアジア諸国で製造するというスタンスとは一線を画している。私は本国イタリア製ということも高く評価している。そのぶん製造できる台数は多くないようで、入手できるまでに待たされるようだが……。

各種設定から音楽ファイルの再生まで、「Volumioアプリ」を便利に活用しよう

Volumioアプリから、再生ソースを呼び出した状態。ストリーミングサービスは、自分が使いたいものを設定するとこの画面に表示される(今回はQobuzを使用)

「一般再生オプション」メニューでは、8種類のデジタルフィルターからお気に入りを選択可能。他にもNOSモードのオン/オフなども行える

Primo(2026)のHDMI出力をPCモニターやテレビにつなぐと、大きな画面で快適操作が可能になる。これは他のネットワークプレーヤーにはない便利機能だ

NAS(ミュージックサーバー)の情報を読み込んでおくことで、さらにスピーディな操作も行える。その場合は「ライブラリ設定」で音楽ファイルを保存したNASを登録すればいい

 Primo(2026)の操作は、自社開発した自慢のVolumioアプリで行う。本機にはVolumio OSが最初から搭載されていて、Volumioアプリを使うことで装着したUSBメモリーやSDカード、外部NASなどの音源とQobuzなどの音楽サブスクリプションをひとつの操作環境として使うことができる。一般的なUPnP(DLNA)でも動かすことができるようだが、私は完成度の観点から今の状態ではオススメしない。試聴時に試したところ、アプリの「Mconnect HD」や「fidata App」でうまく動作しなかったのだ。

 Volumioアプリでは最初に各種の設定をする必要があるけれども、日本語にローカライズされているので特に迷うところはないだろう。普段は自宅でMconnct HDやfidata appを使っている身から感心したのは、音源の指定の簡単さだった。Volumioアプリでは音源が含まれているメディアのディレクトリーを指定するとオーケーで、ミュージックサーバーのソフトウェアであるMinim ServerやTwonky Serverに依存していないのだ。これはaurender(オーレンダー)製品の専用アプリ「aurender conductor」でも同じだ。

 ミュージックサーバーのソフトウェアは確かに便利だと思うのだが、それが開発終了などで消失してしまったら使うことができなくなる。現実的にはそんなことはないのだろうが、ともかくミュージックサーバーのソフトウェアに依存しないというVolumioアプリの設計は高く評価できる。なお、万が一、新発売の端末や最新OSなどでVolumioアプリが動作しない場合には、Safari、Chromeなどのインターネットブラウザから、「 http://primo.local/ 」にアクセスすることで、Volumioアプリと同等の操作が行える。

 Primo(2026)の音はStereoSound ONLINE試聴室で聴いている。組み合わせたのは試聴室のリファレンス機器群。Primo(2026)とプリアンプはXLR端子によるバランス伝送の接続だ。アプリを操作する14インチ画面のandroidタブレットは、自宅から持ち込んでいる。

<当日の主な試聴機器>
●ネットワークプレーヤー:Volumio Primo(2026)
●DCリニア電源:トップウイング ✕ Volumio DC POWER BOX 5V
●プリアンプ:アキュフェーズ C2900
●パワーアンプ:アキュフェーズ A300
●スピーカーシステム:B&W 801 D4 Signature
●ミュージックサーバー:DELA N1
●スイッチングハブ:DELA S1
※Primo(2026)のXLR出力は2番HOT、C2900のXLR入力は3番HOTなので、接続には変換ケーブルを使用した

 試聴音源はUSBメモリーで持ち込んで、DELAのN1が内蔵する4TバイトのSSDに入れてある。Volumio OSの設定を済ませてから最初に聴いた女性ヴォーカルのドミニク・フィス=エメ「Birds」(88.2kHz/24bit)から、Primo(2026)は音質水準の高い音を聴かせてくれた。指弾きで弾むウッドベースの押し出し感も強くハンドクラップの音もピシッと決まり、そこにフィス=エメの魅力的な歌声がセンターに明確に定位する。奥行きの深さも感じられ音離れも充分。さすがはESSの最高級ステレオDACだなあという圧巻の音なのだ。

 DSD音源に関してはスペックで最大サンプリング周波数が明示されていないけれども、ネイティヴ再生できる。DSDは持参した試聴音源から11.2MHzサンプリングのDSD256音源である井筒香奈江「どこか~窓の向こうに~」を聴いてみたが、DSDマスタリングらしい豊かな空気感と鮮度の高い音を楽しむことができた。

 では男性ヴォーカルはどうだろうということで、エリック・クラプトンが新型コロナウィルスが蔓延していた時期にレコーディングしたアルバム『The Lady in the Balcony』からの「After Midnight」(96kHz/24bit)を聴いてみたが、やはり一音一音に曖昧さが感じられない、きわめて鮮明な音が提示されたではないか! 低音域の迫力は以前に聴いたことのあるDAC素子のES9039Q2Mが合計2基の上位モデルPrimo Plusのほうがわずかに上回っている感じなのだが、それはB&Wの801D4 Signatureのような大型スピーカーで聴くことで判る程度で、たとえば小型2ウェイ機で聴いたら比較しても大きな違いに感じられないかも。

 アコースティック楽器の楽曲はDAC性能やアナログ出力回路の本質的な力量を知るのに役立つ。私が気に入って試聴で使っているヴァイオリン奏者アンネ・ゾフィー=ムターがジョン・ウィリアムスと彼の映画音楽を演奏したアルバム『アクロス・ザ・スターズ』からの「決闘」(96kHz/24bit)を聴いてみると、低域方向の安定感がとても高く得られていて、そこに音色の変化が多彩で感情表現の巧みなムターのヴァイオリンの音色が繊細に描かれていく。やはり音質的な実力の高さを裏付ける結果となった。

 ではビッグバンド的なジャズのアコースティック楽器ということで、今度はトランペット奏者エリック・ミヤシロの最新アルバム『ブルー・ホライゾン』から「ノース・ショア・エクスプレス」(96kHz/24bit)を聴いてみた。この楽曲もPrimo(2026)は溌溂な音を聴かせて、ブラス楽器の輝きのある音色の炸裂とベース+ドラムスが支えるリズムのタイトな力強さを充分に満足できる音質水準で聴かせてくれた。いやあ、Primo(2026)は抜群のコストパフォーマンス機だ!

DCリニア電源:トップウイング ✕ Volumio DC POWER BOX 5V ¥55,000(税込)

●接続端子:DC出力1系統
●付属ケーブル:2.1mm/5.5mmセンタープラス
●定格入力電圧:AC100V 50/60Hz
●定格出力電圧・電流:DC5V/5A
●消費電力:80VA
●寸法/質量:W210.4✕H70.2✕D248mm(突起物等を含む)/約3.0kg
※他に12V/5Aと19V/5A仕様をラインナップ

 ここで、付属の小さなスイッチング方式の電源アダプターから、輸入元のトップウイングが自社開発した良質の電源アダプター「DC POWER BOX 5V」に交換してみた。直流出力は5V(5A)と余裕があり、しかもVolumioが公認しているトップウイングとVolumioのダブル・ネーミング電源なのだ。

 たとえば最初に聴いたドミニク・フィス=エメ「Birds」を鳴らすと、一聴瞭然! 音の深みが増したダイナミックな表現力に圧倒されると同時に、暗騒音レベルがグッと低下している、いわゆるS/Nの高いクリアーな音になっている。他の試聴楽曲でも同様の好印象なのだが、音の洪水のように多彩な楽器の音色が織り込まれたエリック・ミヤシロ「ノース・ショア・エクスプレス」では音質改善の度合いが顕著だった。

 これ以降はDC POWER BOX 5Vを電源として組み合わせて聴いている。音楽ストリーミングの音を比べるために、アンネ・ゾフィー=ムター「決闘」をQobuzで聴いてみると、96kHz/24bitのダウンロード音源と同じフォーマットで音質的な差異もきわめて少ない。個人的にはダウンロード音源のほうが好みだが、ネットワークの環境次第では感覚的な音の違いはもっと縮まるだろう。音とは直接的に関係ないけれども、音楽再生アプリとしてのVolumioは本当によくできている。

Primo(2026)とDC POWER BOX 5Vを組み合わせて各種ハイレゾファイルの音も確認した。その際は、Primo(2026)の背面USBにワイヤレスマウスのレシーバーを取り付けて、モニター画面を見ながら再生操作を行っている。USBハブも使えるようなので、複数のUSB機器をつないでもいいだろう

 さて、Primo(2026)はHDMI出力を装備している。ということで、試聴室にPCモニターを用意してHDMI接続してみると、Volumioの操作画面や楽曲のアルバムアートなどが高精細に表示されるではないか。いちおう自宅からWiFi接続マウスを持ってきていたのでトランスミッターをUSB-A端子に接続すると、マウスでVolumioが操作できる。

 トップウイングの菅沼社長によると、背面にある2系統のUSB-A端子にマウスとキーボードを接続すると、たとえば音楽ストリーミングのQobuzで楽曲を検索するときにも便利だという。私のように普段はPCを使っている人なら、キーボードの接続は大いに役立ちそうだ。楽曲のアルバムアートの横には楽曲名などが表示されるが、そのフォントサイズは設定画面から選択できる。

 試聴室でPrimo(2026)を試して気に入った私は、試聴機を借りて自宅でも音を聴いて、操作性も確かめた。個人的に使い慣れているMconnect HDなどUPnP(DLNA)系の音楽再生アプリと比べても、Volumioアプリは慣れてくると便利さで上回っているように感じた。ES9039Q2Mという最新鋭ステレオDAC素子を搭載した高精細な音と、Volumioという操作性に優れたアプリという組み合わせのPrimo(2026)は、ネットワークオーディオを始めようと考えている音楽ファンやオーディオファイルにピッタリだと思う。Primo(2026)は、メイド・イン・イタリアの小粋なネットワークプレーヤーだ。

(撮影:嶋津彰夫)