去る9月8日に、東京・恵比寿BLUE NOTE PLACEで開催されたハーマンインターナショナル「Sound Summit 2026 by Harman」のイベントリポート後編をお届けする。

※前編はこちら

 「Summit EVEREST」のアンベールの後、同社 Lifestyle Audio-Consumer マーケティング部 プロダクトマネージャーの根木健太氏が技術詳細を解説してくれた。

 根木氏はまず、「Summitシリーズには、ふたつの個性を持つフラッグシップが存在します。ひとつはSummit K2で、ニュートラルで高精細な音を奏でるモデルだと表現しております。もうひとつのSummit EVERESTに関しては、感性や音楽に訴えかけるスピーカーとなっています」と、各製品の位置づけを解説した。

ハーマンインターナショナル Lifestyle Audio-Consumer マーケティング部 プロダクトマネージャー 根木健太氏

 新製品で、最上位モデルとなるSummit EVEREST最大の特長は、高域を受け持つ2インチ径D2820 D2コンプレッションドライバーが3基搭載されていることだろう。これは、リング状の振動板を持つコンプレッションドライバーを向かい合わせに配置して一体化したユニットで、この構造によって各振動板の振幅を減らし、動きに伴う歪みを低減させながら高い出力を達成している。

 さらにSummit EVERESTは、D2820 D2ドライバーを3基搭載している。3-into-1マニフォールドと呼ばれる構造で、3基のドライバーの出力を理想的に結合し、Sonoglass製HDIホーンから放出する。なお、3-into-1マニフォールドはSummit K2でも使われているが、こちらは1.5インチ径D2815 D2コンプレッションドライバーが3基という仕様だ。

D2820 D2ドライバー3基を搭載した、3-into-1マニフォールド

 低域用にはJW380SC 38cmウーファーを2基搭載、JBLが近年採用している、ディファレンシャルドライブ構造となる。ディファレンシャルドライブとは、1つの振動系に対してふたつのボイスコイルを搭載する方式で、今回は4インチの大型ボイスコイルが搭載された。

 磁気回路はネオジムマグネットを使用している。ウーファーにネオジムを使う場合はボイスコイル内側にマグネットを設置する内磁型が一般的だが、JW380SCでは内側だけでなく、外側にも複数のヨークマグネットを配置し、大型ボイスコイルを挟み込むような形で設置されている。

 さらに大型のモーターを挟み込むような形で2枚のダンパーを装備したインバーテッド・デュアル・スパイダーも備える。他のSummitシリーズと比べても、ダンパーの距離を離して設置できるので、より歪みが少なく、正確なピストンモーションが実現できているそうだ。

JW380SC 38cmウーファー

 もうひとつ、Summit EVERESTではミッドレンジユニットのJMW250SCがふたつ搭載されている点も注目される。JW380SCウーファーと同様、ディファレンシャルドライブが採用され、ボイスコイルは3インチという大型サイズだ。

 さらにミッドレンジの駆動方法について根木氏から解説があった。「ふたつのミッドレンジは、同じ働きをしているわけではありません。DD66000ではウーファーがスタガー駆動になっていましたが、今回のSummit EVERESTは、ニットレンジがスタガー駆動となっているところが特徴です。

 内側のミッドレンジがメインとして高域とつながっており、外側はもう少し低い周波数で高域がカットされています。こういった形で、3基のコンプレッションドライバーを伴った高域、強力な38cmウーファーの低域に負けない中域を再現しているのです。システムとしての一体感を設計者がひじょうに大事にしている、そういったところも見てとれるのではないでしょうか」とのことだ。

JMW250SC 25cmミッドレンジ

 ネットワーク部はMultiCapクロスオーバーネットワークで、大型基板4枚で構成されている。複数の小容量コンデンサーを並列に配置することで等価直列抵抗(ESR)を低減し、エネルギーロスを最小限に抑制する方式だ。スピーカー端子はトライワイアリング対応で、様々なパワーアンプシステムとの組み合わせに対応する。

Summit EVERESTのネットワーク基板

 キャビネットは、Summit K2や昨年登場したSummitシリーズは25mm厚のMDFで組まれており、バッフル面にもサブバッフルが追加されるといった手法を取っていた。Summit EVERESTは横幅が大きくなっていることもあり、内部に補強材を追加するとともに、フロントバッフル自体を強化するというアプローチが採られた。

 特徴的な山形デザインのフロントバッフルは内側に行くに従って厚みが増しており、中央部分は8cm以上の厚みを備える。これによって、大型ウーファーやミッドレンジもしっかり支えられるようになっているわけだ。

 「Summit EVERESTは、大口径ユニットがたくさんついたスピーカーと思われるかもしれません。もちろん、3つのD2コンプレッションドライバーと3-into-1マニフォード、10インチミッドレンジ、さらに15インチウーファーといった各技術要素も優れてはいるんですが、単にこれらをアピールするだけではなく、システムとしての一体感を持たせるというところに開発者は力を入れています」と根木氏が総括し、お披露目は終了となった。

「一夜限りのスペシャルなライブリスニングセッション」を披露してくれた、ジャズ喫茶ベイシー店主、菅原正二氏

 ここから、「一夜限りのスペシャルなライブリスニングセッション」が開催された。一関のジャズ喫茶ベイシー店主、菅原正二氏による選曲と解説で、Summit EVERESTによるアナログレコードの音を体験できるという、ひじょうに贅沢な催しだ。

 再生システムは、スピーカーはSummit EVEREST、駆動システムはマークレビンソンの新製品「No 600」シリーズから、プリアンプ「No 626」とモノーラルパワーアンプ「No 631」という豪華な布陣。これに菅原さん仕様のリン「LP12」を組み合わせている。

 菅原氏は、「ここから先はデモンストレーションではなく、普通にジャズ喫茶でかけるように演奏しますので気楽に聴いて下さい。今日はたまたまマイルス好きの友達が来ていますので、それから聴いていただきたいと思います。緊張するのはやめましょう」と話し、マイルス・デイビス『RELAXIN' WITH』の再生をスタートした。

 冒頭のフィンガースナップからピアノのイントロ、トランペットという流れがひじょうに自然で、言い古された表現だが、まさにその場で演奏が行われているかのようなサウンドが体験できる。

 菅原氏も、「いいんじゃないですかね。ジャズ喫茶をやってますと、どうしてもこういうモノーラル版が良くないと困るんです。それも古臭く鳴っちゃつまらないんで、こういう新鮮に鳴るのもいいんじゃないかと。今聴いているのも新鮮な感じがして、なかなかいいと思います」とSummit EVERESTの音が好印象な様子。

 さらに、「ちょっと期待が出てきました(笑)。こちらの会場がとっても豪華なんで、そこに見合ったものを再生したいと思います。当時のラスベガスのサンズホテルを再現したいと思いますので、お馴染みのフランク・シナトラとカウント・ベイシーの『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』をかけます。ライブ盤ですので、一緒に笑いながら聴いてもらえばありがたいと思います」と、2枚目の再生が始まった。

 「Come Fly With Me」「I've Got A Crush On You」と続けて再生されたが、菅原さんの言葉の通り一瞬でラスベガスのステージに移動したかのようなリアリティ、歌声の圧倒的な存在感に浸ってしまった。

 「ちょっとしたもんですかね。シナトラのヴォーカルがとってもよく聴こえたんですけど、どうだったでしょう? こういう時代があったんですね、アメリカにも。次は、インパルス!レコードのステレオ盤というのは、やはり無視できない録音なんで、それをかけます。ジョン・コルトレーンの『クレッセント』をお聴きください」

 ここで聴けた音も、60年以上前の録音とは思えないほど鮮烈だった。プレイヤーが眼前に並んで音を届けてくれる、そんなイリュージョンが出現する。曲の途中で1Fから2Fに移動してみたが、途中の階段(壁はレンガ造り)に響いてくる音楽も本当に自然で、ライブハウスのバックヤードで聴いているかのようだ。2Fの最前列では吹き抜けスペースからサウンドが立ち上ってくる。1Fだけで100人以上は入れるであろう会場を、濃密な音が埋め尽くしている。

 「よかったですね、なかなかこうはいかないもんなんです。やっぱりジャズはこういう録音がとっても嬉しいんです。特にシンバルの音。こういうシンバルは最近の録音にはちょっとないんですね。これなんか、理想的なステレオ録音だったと思います。良かった、いい音して(笑)。

 もっと色々聴きたいものが浮かんできたんですけど、時間もありますから。最後に『We want Miles』という、エレクトリックマイルスになってからの最高峰だと思いますけれども、ライブ盤でとんでもない演奏なので、それを聴いてください。それで盛り上がらなかったら、さらに追加します(笑)。今日は思ったよりと言っては申し訳ないけど、いい感じで、良かったと思います」と、菅原さんも満足げだ。

ハーマンインターナショナルラグジュアリーオーディオ事業部バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのDavid Tovissi氏(左)と、菅原正二氏(右)

 もちろんこのサウンドも圧倒的な迫力で迫ってくる。トランペットの音がダイレクトに耳に届き、身動きもできないくらい演奏に釘付けになる。ライブとしては若干冷静な印象もあるかもしれないが、ドラムのスピード感、キレの良さにも魅了される。

 「いいですね、JBLの血統みたいなものを感じて、今日はたいへん楽しかったです。お付き合いいただきましてありがとうございました。今日は勉強になりました。どうもありがとうございました」と語って、菅原さんのレコード演奏は終了となった。(取材・文・撮影:泉 哲也)

左はマークレビンソンのプリアンプ「No 626」と、SACD/CDプレーヤー「No 5101」。右はアナログレコードプレーヤーのリン「LP12」

Summit EVERESTはトライワイアリング接続も可能。今回はシングルワイアリングで鳴らした

https://jp.jbl.com/summit.html