2026年6月で、1981年のデビューから45周年を迎えた角松敏生。周年を記念して横浜アリーナで開催された「TOSHIKI KADOMATSU 45th Anniversary Live」も全国から熱心なファンたちが駆け付けて大盛況。9月からは45周年を記念した全国ツアーも始まる。

 このアニバーサリーイヤーのタイミングで、1999年から2005年までにリリースされた旧譜10タイトルのストリーミング配信がスタートした。近作については、以前からCDのリリースと同時にハイレゾ音源を含むデジタルセル版やサブスク版も配信されてきたが、音楽活動を “解凍” して以降、2000年前後のアルバムがようやく各サブスクリプションサービスで聴けることになった。ディスクメディアで、よりよい音を届けることにこだわり、リスナーたちにもその重要性を説いてきた角松氏。氏曰く、“禁断のサブスク” である。

 「実は、今はもうCDや配信などのフォーマットにはこだわっていないんです。48kHz/24ビットだ、44.1kHz/16ビットだと言ったところで、いったいどれだけのリスナーがそれを意識して聴いてくれているんだろうか、と。僕自身も10年くらい前なら配信に対しては否定的だったんですけれど、もうそういう聴き方が当たり前になってきてしまっている状況がある。ならば、もう様々なアウトプットやデバイスがあることをイメージしながら音を決めていく。一定のレベルを保持しながら “いい音にしよう” というのが現在のスタンスです。」

 昨年のインタビューで角松氏は語った。リスナー側からしてみても、サブスクで気軽に音楽を聴くというスタイルは、必ずしも “音楽を聴くこと” を軽んじているわけではない。スマホを選曲リモコンのように扱いながら、次から次へと楽曲を絶え間なく聴き続けられることの快感や利便性は間違いなくある。

 筆者が常用しているサブスクサービスはApple Music(有料)だ。Apple TV 4Kのアプリを使い、AVセンターのJBL「MA710」とはHDMIケーブルで接続。今回の10枚のアルバムのようにロスレス音源ならCDと同等のクォリティが担保される。また違うアプローチとして、iPhoneにダウンロードしたApple Music のアプリを経由、MA710にAir Playで伝送して聴くと、これはこれで音のバランスが良いので、最近ではもっぱらこのスタイルが気に入っている。

 『TIME TUNNEL』から『THE PAST & THEN』までの10タイトル。もうすでに繰り返して楽しんでいるリスナーも多いだろうが、一聴すると音の鮮度感に驚く。どの作品も “音がいい” のだ。角松氏自身によるプレイリスト「Toshiki Kadomatsu curated playlist」が発表されているので、このリストを手掛かりに試聴してみるといいだろう。

 レコーディングされた年代に関わらず、どのアルバムも近作の印象と変わらぬクリアーな音と躍動感が楽しめる。プレイリストの最後の曲、サブスクの音源で聴き慣れた最新アルバム『Forgotten Shores』の「TSUYUAKE」から順に時代を遡って聴いていくと、サウンドクォリティが統一されているのが分かり易いかもしれない。その印象がプレイリストのオープナー、27年前の「Lunafairymiena」まで損われないのだ。

 サブスク用に使用されているマスターについては、角松氏からコメントが出されていない。が、実際に聴いている印象からすると、CDで使われていた従来のマスターになんらかの手が加えられているのではないだろうか。『THEPAST & THEN』に収録された極私的ヘビロナンバーの「Maybe It's LoveAffair」などもMA710を介したAir Play再生で聴いてみると、間奏パートのアコースティックギターの切れ味、弾むパーカッションやタイトなベースが心地いい。

 1999年のアルバムまで遡ってから、再び最新アルバムを試聴してみると、マスターの新旧ということではなく、楽曲そのもののサウンドプロダクションが格段に高いクォリティで仕上げられていることもあらためて実感できる。カドマツは、やっぱり “今” がいちばんかっこいいのだ。

 Apple Musicではオリジナルアルバムだけでなく、プロデュースを手掛けてきた中山美穂や杏里のヒットシングルやアルバム、また “凍結” 時代のVOCALAMDやJIMSAKUの作品などもストリーミング配信されている。時代やアーティストを横断したTOSHIKI KADOMATSU WORKSのプレイリストを作って楽しめるのもサブスクサービスならではだ。

 先の45周年記念ライブ「TOSHIKI KADOMATSU 45th Anniversary Live」において、2ndアルバム『WEEKEND FLY TO THE SUN』のマルチトラックテープを既に入手、デジタルアーカイブ化も完了していることが角松氏より明かされた。人気の高いこのアルバムも来年の2027年には45周年を迎える。最新のリマスター版がいよいよリリースになるのか? そのあたりのこれからのプランや、いま角松氏が考える、サブスクで音楽を聴くということ=最新メディア論についても、機会があればお話をうかがえればと思う。

 まずは10枚のアルバムのサブスク版、まだ聴いていないというリスナーは、ぜひご自分の耳で確かめてみて欲しい。

「Toshiki Kadomatsu curatedplaylist」はこちら