今回レビューする製品は、ミライスピーカーから登場した「ミライスピーカー・イヤー」という製品になります。「ミライスピーカー・イヤー」は、聞こえ調整機能付きのイヤカフ型の集音器で、クラウドファンディングの"GREEN FUNDING"で、今年の3月13日より先行販売を開始している製品になります。GREEN FUNDINGでの支援金額は、7月5日現在で、4億4000万円を超えるなど、注目度の高い製品になっています。日々の生活において、聞こえに不安を抱えている人、家族や友人との会話が聞こえにくいと感じている人など、"聞こえ"にフォーカスした製品の使い勝手は、いかようなのか、お伝えできればと思います。それでは、本編をどうぞ。

自分の年齢と向きあう

 高校時代の友人たちと約40年ぶりに再会しました。57歳になった私たちは、3時間、4時間と夢中になって話し続けました。子供のこと、孫のこと、他の同級生たちの噂話、忘れたくても忘れられないあの頃の黒歴史。当時と変わらない笑い声が飛び交う一方で、「最近、右耳がほとんど聞こえないんだ」「膝の手術をした」「老眼がひどくなってね」と、体の変化について語る時間も増えていました。あれほど若さに満ち溢れていた高校生も、今では体の衰えを少しずつ受け入れる年代になったんだなぁと、改めて感じました。

 今回試した「ミライスピーカー・イヤー」は、そんな"ちょっと聞こえが気になり始めた世代"に向けた集音器です。

 私は聞こえにたいして大きく困っていることはありませんが、それでも小さな声の人との会話では聞き返すことがあります。何度も聞くのは申し訳なく、笑顔で曖昧にうなづいて流してしまうこともしばしば。そんな私にとって、「補聴器を使うほどではないけれど、少し聞き取りづらくなってきた人向け」というこの製品は、とても興味をそそられる存在でした。

 ちなみに、補聴器は専門家が一人ひとりの聴力に合わせて調整して使う医療機器になります。高性能な反面、価格は数十万円から100万円を超えるものも。一方、集音器は日常の聞こえをサポートするオーディオ機器で、購入したその日から使える手軽さが魅力です。本製品は、想定販売価格で4万円弱と比較的手に取りやすい価格で、「最近少し聞こえづらい」と感じ始めた人でも取り入れやすくなっています。

ミライスピーカーという企業について

 ミライスピーカーは、前身がサウンドファンという名称で2013年に創業した企業になります。2015年に、独自技術「曲面サウンド」を活用した、聞こえづらい人向けのスピーカーとして第一号機種となる「ミライスピーカー・ボクシー」を発売、その後も"聞こえづらさ"に向き合い、ミライスピーカーは、シリーズ40万台を突破するほどの人気製品に。2025年には、社名をサウンドファンからミライスピーカーに変更し、引き続き"聞こえづらさ"にフォーカスした製品を開発し続けています。

実際に使ってみたら

 実際に使ってみると、装着感はとても自然でした。イヤーカフ型ということもあり、メガネやマスクとも干渉することなく装着することができました。本体も軽量で、頭を動かしても落ちそうな不安はありません。耳を塞がないオープンイヤー型なので圧迫感や閉塞感も少ないから、イヤホンに慣れていない人でも違和感なく使えるのではないでしょうか。実際、家の中で何時間か装着していても、着けていることを忘れてしまう快適さでした。

 会話もよく拾ってくれます。以前なら聞き逃していたような小さな声でも「あ、こんなことを話していたんだ」と内容がきちんと入ってきました。やり取りがスムーズになり、相手の話にしっかり耳を傾けられている安心感があります。声が聞き取りやすくなることで、自然と相手の表情やしぐさにも目が向き、コミュニケーションがより取りやすくなったように感じました。

家族や周囲の人の負担も減らす

 逆に、本製品を装着しない状態で家族と会話しながら食事をしていたときのこと、会話の内容をふと聞き返した私に対して息子が「借りてきた集音器つけたら?(笑)」と言ったことがありました。思わず笑ってしまいましたが、聞こえを補うことは本人だけでなく、何度も言い直す家族や周囲の人の負担も減らすのだと気づかされた一コマでした。

聞こえ方も好印象

 聞こえ方についても好印象でした。以前試した他社の集音器は、音が全体的に強調されたようなデジタル感が気になりました。一方、「ミライスピーカー・イヤー」にも電子機器らしい音はあるものの、全体としては落ち着きがあり、聞こえ方はよりナチュラルな印象を受けました。デジタル特有の違和感は比較的少なく、私には「ミライスピーカー・イヤー」のほうが聞き疲れしにくく感じられました。

 その理由をメーカー担当者(商品企画責任者の金子氏)に尋ねると、「私たちは単に音を大きくするのではなく、『言葉を聞き取りやすくする』ことを軸に音づくりをしています」と話してくれました。これまで「聞こえ」の課題に向き合い、言葉の明瞭さを重視して製品を開発してきたメーカーだけに、そのこだわりが自然な聞きやすさにつながっているのかもしれません。なお、Bluetoothイヤホンとして音楽を聴くこともできますが、あくまで会話を聞き取りやすくすることを優先した設計となっており、高音質を追求した製品ではないことを付け加えておきます。

「ミライスピーカー・イヤー」の商品企画を担当された金子さん

Bluetoothイヤホンとして、音楽も聴くことができる。本体カラーは、ホワイトとブラックを用意している

気になる点も…

 もちろん、使用していて気になった点もありました。例えば、キッチンで水を流す音だったり、お皿が重なる音、戸を閉める音など、普段なら意識しない生活音までよく聞こえてしまいます。自分が立てる音なら心構えることができますが、家族が突然出した音には思わず「ビクッ」と驚いてしまうようなこともありました。

 その中でも一番気になったのは、自分の声でした。話しているだけで耳の中に声が響くため、少し疲れるような印象を覚えました。「私の声が大きいから?」「しゃべり過ぎなのかな?」と思ってメーカーの開発者に尋ねると、「これは多くの方が使い始めに感じることです」とのこと。人は普段、自分の声を骨伝導と空気を伝わる音の両方で聞いていますが、集音器では自分の声もマイクが拾って耳へ届けるため、脳が一時的に違和感を覚えるそうです。

気になる点の対策として勧められた3つのこと

 対策として勧められたのは、普段より少し小さめの声で話すこと、音量を1〜2段階下げること、そして慣れることの3つでした。

 集音器を試すまでは、老眼鏡のように着けた瞬間に劇的に変わると思っていましたが、実際には脳が新しい聞こえ方に順応するまで、数日から1〜2週間ほどかかるケースが多いそうです。最初は1日1〜2時間程度から使い始めるのがおすすめらしく、これは補聴器も同様とのことでした。最近ではオープンイヤー型の集音器が各社から登場していますが、本機で印象的だったのは、聞こえに合わせて音を調整できるアプリと、充電ケースが外部マイクとして使えること。単に耳元で音を大きくするだけでなく、使う人やシーンに合わせて聞こえをサポートしてくれる工夫が盛り込まれています。

 さらに、この製品にはアプリで聞こえを測定し、一人ひとりに合わせて音を調整する機能も用意されています。私の場合、アプリでのテスト結果は、高音域だけが少し聞き取りづらいという内容で、その帯域だけを補う設定になりました。必要な音域だけを補正することで耳への負担を抑え、より違和感の少ない聞こえ方を目指しています。

テストした結果を反映させると、より自分に合った聞こえを得ることができる

左右別々に音量調整ができるほか、バッテリー残量の確認もできる

 補正後は、最初に気になっていた生活音も少しやわらぎ、全体のバランスがより良くなった印象でした。最近はオープンイヤー型の集音器が各社から登場していますが、聞こえを測定し、その結果に合わせて音を最適化できる点は、本製品ならではの魅力だと感じました。

充電ケースで、左右の音量調整ができる

 もう一つ特徴的なのが充電ケースです。左右に大きな音量ボタンを配置しているため、高齢者でも迷わず操作しやすい設計になっています。また、このケース自体が外部マイクとなり、テレビの前や会議室のテーブルに置けば、その場所の音声を耳元へ届けてくれます。聞き取りづらさを感じるさまざまなシーンを想定した工夫が盛り込まれていて、「聞こえ」に長年向き合ってきたメーカーらしい配慮が伝わってきました。

ケースの左右に、大きめのボリュームボタンが設けられている

本体正面の小窓で、イヤホンのバッテリ残量を確認することができる

 メーカーによると、聞こえにくさを感じる人の多くは「聞き返すことに気を遣う」「会話を諦める」「家族との会話が減る」「外出や仕事がおっくうになる」といった悩みを抱えているそうです。実際に使用したモニターからは「家族との会話が増えた」「表情が明るくなった」という声も寄せられているといいます。

 聞き返す回数が増えたり、小さな声の人との会話をなんとなく諦めたり。話の流れについていけず、気づけば会話の輪から少しずつ外れ、蚊帳の外にいるような寂しさを覚えることもあるのかもしれません。聞こえの変化は、単に耳の問題だけではなく、人とのつながりにも影響するのだと改めて感じました。

 しかし年齢を重ねるほど、友人との昔話に笑い合う時間や、家族との何気ない会話は、かけがえのないものになっていきます。

まとめ

 今の私にとって、ミライスピーカー・イヤーはまだ毎日欠かせない製品ではありません。それでも今回試してみて「聞こえに不安を感じる日が来ても、頼れる選択肢があるんだ」と知ることができたのは、大きな収穫でした。少し先の未来を、今より安心して迎えられそうだな。そんな気持ちにさせてくれた製品でした。

 一般発売に先駆けて、現在はクラウドファンディングを実施中です。実際に体験することも可能で、二子玉川 蔦屋家電などで実機を先行体験することもできます。なお、一般発売後は全国の家電量販店でも体験可能となる予定です。詳細はミライスピーカー公式ホームページをご確認ください。