大画面や迫力ある音響を求めて、映画館に赴く。生の雰囲気や実物大の体験を求めて、ライヴやコンサートに赴く。これらはコンテンツやアーティストのファンとしてごく自然な行動だ。そしてその感動を家庭でも味わいたいと思った時こそ、ホームシアターの出番。この記事では「究極のMJを聴く、観る」というテーマで、BenQのプロジェクター「TK705i」とソノスのサウンドバー「Sonos Arc Ultra」の組合せを紹介しよう。

4K DLP Projector
BenQ TK705i
¥229,000 税込

●型式:1チップDLP方式プロジェクター
●投写デバイス:0.47インチDMDパネル●光源:LED×4
●光出力:3,000ANSIルーメン
●パネル解像度:水平1,920×垂直1,080画素
●表示解像度:水平3,840×垂直2,160画素
●コントラスト:600,000:1(FOFO値)
●接続端子:HDMI入力2系統(うち1系統はeARC対応)、USB Type C(Display Port対応)、アナログ音声出力1系統(3.5mmステレオミニ)、ほか
●寸法/質量:W229.2×H168.2×D249.7mm/3.8kg
●備考:Google TV、Wi-Fi、Bluetooth5.2対応

 
Soundbar
Sonos
Sonos Arc Ultra

¥149,800 税込
●型式:一体型サウンドバー
●使用ユニット:ドーム型トゥイーター×7、コーン型ミッドレンジ×6、平面型ウーファー×1
●アンプ搭載数:15
●接続端子:HDMI入力1系統、LAN1系統、ほか
●寸法/質量:W1,178×H75×D110.6mm/5.9kg

 

 

 TK705iはDLP方式の4K&HDRプロジェクターで、近年急速に確立されたカテゴリー「スマートプロジェクター」のど真ん中に位置する。筆者が把握しているスマートプロジェクターの定義は大きく2つある。まず本質的な部分で、プロジェクター本体でYouTubeを含む各種映像ストリーミングサービスの再生に対応し、別途再生機器の類を必要としないこと。続いて付加的な部分で、映像投写における自動調整機能が充実しており、導入におけるユーザー負荷が低いこと。これらはまさにTK705iの特徴そのものだ。純粋なプロジェクターとしても、明るい室内でも実用に足る3,000 ANSIルーメンの高輝度、コントラスト比600,000:1(ダイナミック)という充実したスペックを有する。搭載するHDMI端子の内1系統はARCに対応しており、オーディオ機器との接続も容易に行なえる。

 Sonos Arc Ultraは同社サウンドバーのトップモデルで、計14のドライバーを搭載し、ドルビーアトモスの9.1.4再生に対応するハイエンド仕様となっている。別売のワイヤレススピーカーを追加することで、リアル・サラウンドシステムに発展させることも可能。ネットワークに接続すれば、純正アプリから同社製品との連携や各種調整が行なえるほか、AirPlayや本機の機能を使った音楽再生にも対応している。

 

取材は筆者宅で実施した。スクリーンは100インチ16:9サイズで、約2.5mの投写距離でセットした

 

 

あっという間にセッティング終了。導入のスムーズさに大いに感銘

 TK705iとSonos Arc Ultraのテストは100インチスクリーンを常設している筆者視聴室で行なったが、まずはその「導入のスムーズさ」に感銘を受けた。

 スマートプロジェクターやサウンドバーはそもそも「使いやすさ」が重視されている製品カテゴリーであり、そのための様々な機能を搭載することが前提となっている。また、筆者も幾度となくこれらの製品を使う機会があり、そのたびに「使いやすい」と実際に思ってきた。それを踏まえてもなお、TK705iとSonos Arc Ultraはレベルが違う。機械に詳しいか否かに関係なく、誰もが迷いなくセットアップできるようにという心配りがパッケージ段階から徹底されている。

 プロジェクターを使った本格ホームシアターといえば、一昔前なら「仰々しさ」、「設置や設定の難しさ」、「マニアックさ」といったイメージが当然のごとく含意されていたように思う。もちろん、それはこだわりの発露や高い趣味性として尊重され、肯定されるべきものだ。しかし一方で、実際にそれを導入する際のハードルは低くはなく、万人に開かれた趣味とは言い辛かった面があることも、冷静に認める必要があるだろう。その点、TK705iとSonos Arc Ultraはともに、そうした懸念を可能な限り払拭しているのである。

 TK705iはプロジェクターの設置/投写における厳密な位置調整や追い込みを必要とせず、電源を入れて自動調整ボタンを押せば、あっという間に環境が完成する。筆者のケースではスクリーンに投写を行なったが、本機の高輝度を活かして壁に直接投写する使い方も十分に説得力を持つ。ユーザーによる各種調整は依然として本機の実力を引き出すうえで有効だが「必須ではない」。

 ここが重要で、オーディオビジュアル的なマニアックさを持たないユーザーであっても高度な再生品質が担保される。また本機は小さく軽く、家庭内であれば余裕で持ち運びできる。スピーカーを内蔵し、各種映像ストリーミングサービスにも本体側で対応するため、昨今の大型化したテレビでも難しいサイズの大画面環境が、本機1台で完結する。

 Sonos Arc Ultraもまた、サウンドバーに求められる簡潔さ/簡単さを完璧に備えている。使い始めるにあたって設定らしい設定は必要なく、基本的に電源ケーブルとHDMIケーブルを接続するだけで済む。Sonosアプリで活用の幅を広げるという選択肢はあるが、これもまた必須ではない。

 TK705i然り、昨今のスマートプロジェクターはHDMI ARCに対応する製品が多いため、プロジェクターを使う場合でも、音量調整も含めてテレビを使う場合と同様に扱うことができる(配線の管理・工夫はテレビよりも一手間必要だが)。

 結果的に、TK705iとSonos Arc Ultraのセットアップにかかった時間は、パッケージ開梱から諸々含めて精々30分といったところ。得られる映像と音響のクォリティを考えれば、これは素直に驚くべきことだ。

 

BenQ TK705iは、高効率かつ高輝度LEDを光源として、明るい大画面を実現したDLPプロジェクター。多彩な自動補正機能と光学ズームにより設置性を高度に高めている。棚置き、三脚固定、天吊り、逆さ設置など柔軟なセッティングが美点だ

 

接続端子は比較的シンプル。ネットワークには、Wi-Fiを通じて接続する仕組みだ。HDMI端子は入力1(写真右側)がARCに対応、Sonos Arc Ultraには本端子から繋いでいる

 

 

有り余る輝度パワーのTK705iと深い低音が見事なSonos Arc Ultra

 こうして出来上がったシステムで楽しむコンテンツとして、私が選んだのは1992年のツアー『ライヴ・イン・ブカレスト』と、実現しなかったツアーを様々な素材で再構成した『THIS IS IT』の2本。前者はDVDビデオでリリースされているが、YouTubeにも全編がアップされているのでTK705iの本体機能を活かしてそちらを再生、後者はBDで視聴した。

 『ライヴ・イン・ブカレスト』は『スリラー』、『BAD』、『デンジャラス』を経てアーティストとして円熟期を迎えたマイケル・ジャクソンを捉えた作品で、生前に公式発売された唯一のライヴ全編の映像である。それゆえにマイケルのライヴといったらこれ、というイメージを持つ人も多いだろう。

 ソースがSD解像度である関係上、現代的な高画質は望むべくはないのだが、それを補って余りあるコンテンツだ。TK705iは有り余る輝度のパワーでステージの煌めきを再現し、Sonos Arc Ultraがライヴならではの迸るサウンドを余裕で描写。観客が生み出すライヴの異様な熱狂を完璧に再現した。これが見放題。いい時代である。

 『THIS IS IT』は2つの側面から楽しむことができる。1つは、リハーサル映像や各種インタビューを通して本来行なうはずだったライヴツアーの全容、ひいてはマイケル・ジャクソンというアーティスト自身を紐解いていくドキュメンタリーとして。そしてもう1つは、純粋な音楽映画として。特に後者について、本作で使われる楽曲の数々は実際にライヴが完成したらどうなっていたかを体現するかのごとく、圧倒的に素晴らしいサラウンドサウンドに仕上げられている。機器の実力を確かめるソースとしても超一流なのだ。

 Sonos Arc Ultraは作中で流れる数々の名曲を、100インチの大画面に負けないスケール感と演奏のディテイル描写、透明感のあるヴォーカルといった要素を高度にクリアーし、スピーカーとしての高い実力を見せつけた。

 特に「スムーズ・クリミナル」の深さと歯切れの良さ、そして豊かな量感を実現する低域表現は見事であり、「サウンドバーの音」に対するイメージを良い意味で裏切られたほど。

 TK705iはスマートプロジェクターの例に漏れずスピーカーを内蔵し、外付けのサウンドシステムを用意せずとも単体で音は出せる。しかし、当然ながらSonos Arc Ultraの再生音はそれとは別次元。特にマイケルのような「音」が重要になるコンテンツにおいて、サウンドの強化は体験の質に直結する。映像と音響の両輪が揃ってこその「感動」であると、改めて確認する機会となった。

 

Wi-Fiと連携する高品位スマートスピーカーの代表的ブランド、Sonosは、近年サウンドバーを積極的にリリース。ホームシアター分野への訴求に意欲的だ。Sonos Arc Ultraは、同社サウンドバーの最上級モデルだ。幅が約118cmとかなり大きなサウンドバーなので、今回のようなスクリーンをはじめ、75インチ以上の直視型大画面テレビとフィットするモデルだ

 

内部は、トゥイーター7基、ミッドレンジ6基のほかに、レーストラック型ウーファー1基が本体向かって右側奥にコンパクトに組み込まれている。「Sound Motion」という独自テクノロジーでより小さい筐体から強力な低音を繰り出す。ユニットサイズやアンプ出力などは非公開のようだ

 

 マイケルは既にこの世を去り、本人による新たなパフォーマンスが行なわれる機会は失われた。しかし、彼のパフォーマンスは数多の映像コンテンツとして確かに存在している。そして究極のMJを聴く、観るというテーマは、今回紹介したTK705iとSonos Arc Ultraの存在が示す通り、決してマニアの専売特許ではなく万人に開かれた可能性となっている。ファンの皆様には、ぜひとも「究極のMJ」を堪能する環境を手に入れていただきたい。

 

リファレンス機器
●スクリーン:キクチ ホワイトマットアドバンスキュア(100インチ/16:9)
●BDプレーヤー:パナソニックDP-UB9000(Japan Limited)

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年夏号』