極小の鏡=デジタルマイロクミラーデバイス(DMD)で光を反射させることで、高コントラストな映像を表示するDLP方式のプロジェクター。家庭用モデルが登場してから30年ほど経ち、近年では、XGIMIなどさまざまなメーカーから、コンパクトで手軽に使える製品が数多く登場してきている。一方で、4K化やRGBレーザー光源を採用したハイエンドモデルも積極的に市場投入され、もともとの特徴でもある高輝度をさらに強化し、そこに機能・性能を高めた魅力的な製品もラインナップされるようになってきた。

 そして、4KやRGBレーザー光源といった先端技術をサポートするだけでなく、さらに“画質”にもこだわった本格的なシネマプロジェクターが登場し、AVファンの注目を浴びるようになってきた。今回ピックアップするXGIMIのTITANもそのひとつだ。XGIMIは、グローバルにホームプロジェクターを展開し、実に累計で700万台ものセールスを記録しているそうで、世界シェア1位という。そんなXGIMIの最新モデルとなるTITANは、家庭で映画館のような100インチ級の大画面が楽しめるプロジェクターとして、人気を集めている。ここではその実力をHiVi視聴室でじっくりとチェック、詳しく紹介しよう。

DLPプロジェクター
XGIMI
「TITAN」
¥698,000(税込)

●TITANの主な仕様
ディスプレイ技術:DLP
ディスプレイチップ:0.78インチDMD
標準解像度:3840×2160ピクセル
対応解像度:1920×1080、1920×1200、1920×1440、1024×768
光源:デュアルレーザー
輝度:5000 ISO ルーメン
色域:DCI-P3 150%
コントラスト比:5,000,000:1(ダイナミック)
対応フォーマット:HDR 10+、IMAX Enhanced、Dolby Vision、Filmmaker Mode
3D:〇(対応)
投影サイズ:60~300インチ
レンズ:高透過率コーティングレンズ
レンズシフト:垂直±100%、水平±40%
光学ズーム:〇(対応/1.5倍)
投写比(スローレシオ):1.2~1.8:1
デジタルズーム:〇(対応)
遅延性:15ms(1080p/240Hz)
アイ・プロテクション:〇(対応)
台形補正:自動台形補正
フォーカス:オートフォーカス
スクリーンへの自動アジャスト:〇(対応)
アスペクト比:16:9
CPU:MT9681
GPU:G57
RAM:4GB
ストレージ:128GB8
システム:OS 未搭載
スピーカー:12W×2
対応サラウンドフォーマット:DTS Virtual:X、DTS-HD、Dolby Audio、Dolby Digital (DD)、Dolby Digital Plus (DD+)
Wi-Fi:WiFi 6 Dual-band 2.4/5GHz、802.11a/b/g/n/ac/ax9
Bluetooth:Bluetooth 5.2
入力端子:HDMI×2(HDMI1はeARCに対応)、USB 3.0×1、USB 2.0×1、Service×1、Wired remote×1、RS232×1、LAN×1、AC×1
出力端子:アナログ音声出力×1(3.5mmステレオミニ)、デジタル音声出力×1(光)
ノイズレベル:≦32dB@1m
消費電力:≦500W
電源:AC100-240V、50/60Hz
寸法(高さ×幅×奥行):158×441×345mm
質量:11.5 kg
付属品:電源プラグ×1、取扱説明書×1、GTV TV Stick×1、保証書×1、リモコン(バックライト付きBluetoothリモコン)×1、単四電池×2、デスクスタンド×1

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 まずはTITANの概要から紹介したい。映像を投写するDMD素子には、多くの製品が0.47インチを使う中、本TITANでは0.78インチという、主に業務用機やハイエンド機が採用する大型の素子を搭載している。素子が大きくなることで光の利用効率が高まり、より明るく高コントラストな映像を実現できるようになる。光源はデュアルレーザーと強力で、最大輝度5000 ISOルーメンを実現し、コントラスト比も500万:1を達成する。

ディスプレイチップには大型の、0.78インチDMDを搭載する

 さらに光学ズームも採用している。現在の一般的なDLPプロジェクターではデジタルズーム(&デジタル補正)が多く、図形(台形)歪み補正やレンズシフトといった機能を使用すると、表示画素数に影響が出てしまう。しかし、「TITAN」は光学式なので、レンズシフトやズームを行なっても、原理的に画質劣化はゼロ。レンズシフトは垂直±100%、左右±40%の範囲で表示位置の移動ができ、ズーム機能では最大1.5倍まで拡大できる。

レンズは高透過率コーティングされており、クリアな映像を投写可能

 0.78インチという大型DMD素子とデュアルレーザー、光学ズームといった機構的な特徴に加えて、映像処理回路にはXGIMIオリジナルのAI画質エンジン「X1」を搭載する。映像をリアルタイムにフレーム単位で高精度に処理可能で、映画館用(デジタルシネマ)のカラー規格であるDCI-P3の色面積比150%の広色域も実現した。加えて、ドルビービジョン、IMAX Enhanced、HDR10+のHDR規格にも対応し、映画制作者の意図に忠実な再現を行なう「FILMMAKER MODE(フィルムメーカーモード)」も備えている。

映像エンジンには、XGIMIオリジナルのAI画質エンジン「X1」を搭載

 もちろん、プロジェクターの強い光から目を守るアイ・プロテクション技術も搭載。本体正面に、2基のCMOSセンサーと2基のTOFセンサー(対象物までの距離を測るセンサー)を組み合わせた独自のアイ・プロテクション機能を搭載。人の接近をリアルタイムで検知して、自動的に輝度を低減してくれる。

設置調整は全自動で行なえて便利。DLP機らしい明るく、色鮮やかでパワフルな映像が楽しめる

 さっそくXGIMIのTITANを季刊HiViの視聴室にセットして、映像をチェックしてみた。設置調整をほぼ自動で行なえるのはもはや当然。自動的にスクリーンサイズに合わせた映像を投写してくれる。手動調整で確認してみても、図形歪みはほとんどないし、画面サイズはスクリーンの四隅にピタッと合うし、フォーカスも中心と周辺で乱れるようなこともなく、ビシッと精細感の高い映像を映し出してくれる。とても優秀だ。

 外見は四角いプロジェクターだが、床やラックに置く場合は、四隅に設置用のスタンド(脚)を取り付ける仕様。本体がフローティングしているように見えるなど、デザインはかなり本格的。このほかオプションのスタンドとして、天井・壁面取り付け用と、フロア用の2種類が用意されている。

TITANの四隅にはL字型のブラケットを取り付けるようになっており、床や台(ラック)に設置すると、本体が浮いて(フローティングして)いるように見える

オプションのフロアスタンド「XGIMI X-Floor Stand Ultra for XGIMI TITAN」を装着したところ。設置性に加え、本体との一体感も考慮したデザインとなっている

 入出力端子は、USB2.0×1、USB3.0×1、HDMI×2(内1系統はeARC対応)、デジタル音声出力×1(光)、アナログ音声出力×1(3.5mmステレオミニ)、LAN×1など、必要充分に備える。使い勝手で気になるのは、今や内蔵式が一般的になりつつあるGoogle TV OSが外付けとなっている点で、USBスティックタイプのデバイス(Google TV Stickが付属する)をHDMI2に接続して使用するようになっている。内蔵式でもよかったと思うが、好みのデバイスを組み合わせることができるので、自由度は広がるだろう。

背面の接続端子

Google TV Stickを挿したところ

 まずは、Google TVでいろいろなコンテンツを見てみたが、明るく鮮やかで、なかなかパワフルな映像を楽しめた。ざっと映像モードを紹介すると、「標準」モードはどんなコンテンツにも合うもので、やや色が濃く感じるが、ハイコントラストでキリっとした映像が持ち味。「テレビ」モードは色のりが豊かで見やすいもの。ほか、店頭などで見映えのする「ビビッド」モード、動きのぼやけも少なく迫力のある「スポーツ」モード、もっともパワフルで明るい映像が楽しめる「パフォーマンス」モードなどがある。そして、より高品位な映像コンテンツ向けとして、「映画」モードや「FILMMAKER MODE(フィルムメーカーモード)」を備える。

 以降の視聴は、フィルムメーカーモードで行なった。まずはGoogle TVでジェイソン・ステイサム主演の『ワーキングマン』を映しながら、画質を確認。全暗の環境で厳しく画質をチェックすると、ハイエンドプロジェクターとしては充分なレベルだが、もう少し黒を締めたくなったので、画質調整で「ローカルコントラスト」をオンにしてみた。これはどちらかといえば明るめの部分に効くようで、映像としてはコントラスト感がよく出てくるので、好みに応じて使い分けるといいだろう。また、「ダイナミックブラック」という項目があったのでオンにしてみると、黒の締まりには効果があるが、少し色が抜けるようになる。彩度(色の濃さ)の調整と合わせて使うといいだろう。ここでは、彩度を50から60へ上げている。

 色再現については鮮やかさが前面に出てくるが、派手すぎるような不自然さはないし、特に目につきやすい人肌の色も、人種による違いを違和感なく再現できている。一般的にRGBレーザー光源では、鮮やかな色が楽しめる反面、純度の高い赤がピンクに寄ったり、緑や青が蛍光色のような人工的になる傾向はあるが、本機の映画モードやフィルムメーカーモードではそのあたりはきちんと抑えられていて、見慣れた作品の色がきちんと再現できていた。

 このほか、映像の精細度やディテール感を高める超解像は、これ見よがしの効果ではなく、精細感を自然な雰囲気で高めてくれるので、より精細な映像が好みの人は使うといいだろう。

 次に、極彩色な画作りが特徴のアニメ作「ドロヘドロ」を見ると、強めの色を多用する場面では色の鮮やかさがややキツめに感じるが、違和感を覚えるほどではない。トカゲ頭の男や、魔法使いが活躍する異色の世界をよく再現している。

 続いて「葬送のフリーレン」。こちらは先ほどの鮮やかな原色から一転して、中間色を多用した独特の感触の映像になっているファンタジー作品。映像は明るめだ。こうしたAPL(平均輝度レベル)が高い映像では、最大5000 ISOルーメンの実力が発揮され、暗室では明るすぎると感じるほど。色も鮮やかだ。原色の力強さに比べると中間色が基調の作品ではやや大人しいようにも感じるが、明るいシーンが多いこともあり、中間色にも力強さが出てきて、作品の鮮やかな世界がよく表現されている。現在主流のデジタル制作のアニメ作品との相性はなかなか良い。鮮やかな色を出しながらも、色の破綻が少ないところは、DLP方式では貴重な存在だ。

 こうした明るい部屋で見るアニメやテレビドラマでは、基本的には「ダイナミックコントラスト」、「ダイナミックブラック」はオンで使うといいだろう。くっきりとした映像で見やすく、しかも見映えがする。ただし、「AIコントラスト」はコントラストの付け方が強すぎると感じたので、これは作品によって使い分けると良さそうだ。

4K/HDRの映画画質は秀逸。暗部階調も豊かで、色再現、精細感の表現も充分

 最後はUHDブルーレイ『トロン:アレス』を見た。デジタル技術を駆使した最新の映画で、DLP方式とは相性が良さそうだが、暗いシーンが多く、また象徴的な色でもある赤色の再現はなかなか難しいところもある作品だ。画質モードは「ドルビービジョン:ダーク」。冒頭の赤系の色を中心に使われるタイトルバックは、強い赤色の光が鮮やかで、ほんのわずか蛍光ピンクに寄るところもあったが、違和感のないレベルにコントロールされている。完全な真っ黒と言えるレベルの黒の再現はやや苦しいが、これはプロジェクターでは仕方のないところ。不自然な黒浮きや、暗すぎて暗部が見えにくいということはない。デジタル人間のアレスとそのバイクなど、黒いスーツやボディの質感、また現実世界での夜の都市部の暗い雰囲気も見通しよく、暗いシーンでの暗部階調の表現は健闘している。

 雪山が舞台となる実写中心のシーンでも、肌の色もしっかりと出て、映画らしい感触がよく表れている。雪山を見渡すようなシーンでの精細感や、古いコンピュータなどが積まれた倉庫のディテール感も充分だ。価格的に高級機と言えるクラスの製品だけあって、さすがによく出来ていると感じた。

 ところで、DLP方式で気になる色割れ現象だが、そのつもりでじっくりチェックしてもほとんど気にならない。ただし、字幕を表示していると時折少し目に付くことはある。充分に優秀なレベルだが、字幕表示を多用する人は注意したい。

満足度の高い映画画質。ワンランク上のプロジェクターが欲しいユーザーにはおススメ

 最近のDLPプロジェクターは、使い勝手や機能は優秀だが、映画画質の色が派手すぎると感じる人は少なくないだろう。僕もそのひとりだ。しかし、今回見たTITANは、派手さは抑えながらも色鮮やかな再現のうまさが光る仕上がり。映画らしい階調や色も充分に出るし、質感やディテール再現も良好。内蔵スピーカーの音も良い。今回の視聴では、ほぼ自分の真後ろのやや高めの位置にTITANを設置していたので、後ろから音が出ている不自然さはあるものの、音質自体は素直で、セリフも聴きやすく、低音もしっかりと出る。本格的に楽しむならばサウンドバーやサラウンドシステムが欲しいのは確かだが、リビングやベッドルームなどで手軽に使うには充分な音質だ。設置が容易なのでいろいろな場所に運んで使えるというのは、大画面テレビにはない大きなメリットだと思う。

 手軽に大画面を実現したいが、画質も重視したいという人は、薄型テレビだけでなく、ぜひプロジェクターにも注目してほしい。TITANの映像を見れば、きっと驚くはずだ。