「ネットワークオーディオ高音質化のカギは、ネットワーク周辺のノイズ対策にあり」。
ぼくは本誌をはじめ様々なメディアでそう書いてきた。そう考えた最大のきっかけは、汎用のスイッチングハブからデラS100に買い替えて、著しい音質向上を目の当たりにしたことだった。
その後、光絶縁ツールのエディスクリエーションFIBER BOXや4分割LANケーブルのアコースティックリヴァイブLAN-QUADRANT-Triple Cを導入、QobuzやTIDALなどの音楽ストリーミングサービスの音質が劇的に良くなり、いまでは10MHzクロックジェネレーターX-3を繋いだ愛用のSACD/CDプレーヤー、ソウルノートS-3Ver.2のディスク再生音にまったく引けを取らないサウンドが楽しめるようになり、ゴキゲンな毎日を過ごしている。
さて、今般そのS100の第3世代機S100/3が登場、じっくりと使いこなす機会が与えられたので、そのハンドリング・リポートをお伝えしたい。
Switching Hub
DELA S100/3
¥209,000 税込
●型式 : スイッチングハブ
●接続端子 : LAN9系統(10Mbps/100Mbps対応RJ45×2、10Mbps/100Mbps/1Gbps対応RJ45×4、1Gbps対応SFP×3)、ほか
●寸法/質量 : W215×H61×D270mm/約2.5kg
最上位ハブS1のノウハウを活かしクォリティアップを徹底追求
2019年秋に発売されたS100は、2022年にS100/2へとモデルチェンジされたが、このときはポートの仕様変更と電源回路のわずかな改良にとどまっていた。今回のS100/3は、コンパクトな筐体デザインに変更はないものの完全な新設計。2024年に発売された超高級スイッチングハブS1(シルバー仕上げのS1-X-Jは143万円税込)開発で培われたノウハウを随所に盛り込んだ、意欲的な製品に仕上がっている。
同社設計者によると、S100/2では2入力だったSFPポ-トをS100/3では3入力に増やし、その音質向上にとくに力を注いだという。RJ45端子に繋ぐネットワークオーディオ機器に最適な100Mbpsポートが2つ、1Gbpsポートが4つという構成(背面のLEDインジケーターでポートごとにリンク速度が確認可能に)。
初代機のS100では、RJ45端子の100Mbpsポートが他社のレンダラー機とうまく繋がらないというトラブルがあったと聞くが、S100/3はファームウェアの工夫で安定度と互換性を著しく向上させたという。本機の3つあるSFPポートはすべて1Gbpsタイプ。S1開発のノウハウを活かし、電源のレギュレーター回路を最適化することで高音質化を図ったという。加えてデジタルデータの出力タイミングを司るクロックについても、S100/3には新たにNDK製の低位相ノイズクロックが搭載されている。
基板は完全に新設計で、電源部も一体化されている。スイッチングハブは常時電源オンで、かなりの電力消費を伴なうコンポーネントとなるため、放熱設計が重要だが、本機では、S100やS100/2と比較してヒートシンクを大型化。安定動作を目指す。クロックは位相ノイズの小さいNDK社製低位相ノイズクロック部品を採用するなど、S1開発のノウハウがふんだんに盛り込まれている
前世代機S100/2はオリジナル機S100から、ポート仕様を変更するとともに電源強化が図られた、いわばマイナーチェンジバージョンだったが、S100/3は、SFPポートの重要性が高まっている昨今の状況も反映し、SFPポートを3系統に増加させつつ、同社最高峰ハブS1開発の成果を十二分に反映させたフルモデルチェンジを果たした。ネットワークオーディオ機器は100Mbps対応RJ45ポートへの接続が最適とのことだ
通常接続でも音質向上は明確。だが使いこなしでさらに品位は高まる
では、本機のテストに移ろう。まず100MbpsのRJ45端子を用いて本機S100/3とS100/2の音質を比較してみる(接続①)。それぞれのスイッチングハブをネットワークトランスポートのエバーソロT8とLANケーブルを繋ぎかえてのチェックだ。試聴曲はQobuzで聴くユン・サン・ナの『Voyage』から「シェナンドー」(88.2kHz/24ビット)。アカペラ(無伴奏)で歌い始め、ギターとベースが加わり演奏が躍動する冒頭2分ほどで音質比較してみた。エバーソロT8とUSB接続するD/AコンバーターはエバーソロDAC-Z10。プリメインアンプはデノンPMA-SX1 LIMITED、スピーカーはBowers & Wilkins 802 D4である。
接続1
100Mbpsポートを使いS100/2と比較
S100/2(左)とS100/3(右)を横に並べて、同一のLANケーブルを繋いだ状態で、パフォーマンスチェックをまず行なった。エバーソロのネットワークトランスポートT8とはデラ製LANケーブルC100を使い、100Mbps対応ポート1を用いて接続した。ルーターとは1Gbps対応のRJ45ポート3でLAN接続している(以下、同)
S100/2とS100/3にはやはり大きな音質差があった。S100/3のほうがノイズレベルが低いのだろう、無音から立ち上がるユン・サン・ナの声がよりクリアーで生々しく感じられる。アルペジオのギターのアタックも克明に描かれ、ベースの響きもS100/3のほうが解像感が高い。
S100/3の1Gbpsポートと100Mbpsポートも比較してみたが(接続②)、予想通り後者が好印象だった。100Mbpsポートのほうが抑揚が豊かに感じられ、音にしっかりとした芯が感じられるのである。担当エンジニアは、100Mbpsポートのほうが1Gbpsポートよりも消費電力が小さいのでノイズ面で有利にはたらくからではないかと言う。
接続2
1Gbpsポートに接続し100Mbpsポートと比較
S100/2からの品位向上を確認したところで、ポート対応速度の違いでの品位に変化があるかをチェック。接続①では100Mbps対応ポート1と繋いでいたが、ここでは1Gbps対応のポート4を用いた
では、音質ケアにとくに注力したというSFPポートの音質を調べてみよう。S100/3とネットワークトランスポートのエバーソロT8にSFPモジュールを挿し、光ファイバーケーブルで繋いだ音をチェックした(接続③)。
接続3
SFPポートを使ってSFP光ケーブルでT8と接続
SFPポート搭載コンポーネントとは、S100/3搭載のSFPポート経由で、SFP光ケーブル(具体的にはSFPモジュール→光ファイバーケーブル→SFPモジュールの構成)での接続を行なうことで、光絶縁が可能。エバーソロT8で試した
ユン・サン・ナのヴォーカルの質感が明らかに変わる。喉の潤いが増す感じで、よりリアリスティックな3次元定位が実感できるようになるのだ。また、ギターとベース、2つのアコースティック楽器もいっそう艶やかに響く。総じて音から雑味が減ったような印象なのである。
次にS100/3とT8のSFPポートに金属導体(銅)を使ったDAC(Direct Attached Copper)ケーブルを挿した音を聴いてみた(接続④)。この音のすばらしさにはビックリ、光ファイバーケーブルで繋いだときの雑味の少なさ、艶と潤いのある音に加えて、音に力感と実在感が加わってくるのだ。
接続4
SFPポートを使ってDACケーブルでT8と接続
SFPポートを使い、DAC(ダイレクト・アタッチド・カッパー)ケーブルと呼ばれる銅導体採用ケーブルを用いる接続では、光変換SFPモジュールを使わないことによるシンプルな伝送が音質面で有利になるという。接続④は、市販の汎用DACケーブルを使い、その接続を試す。なお、デラではオーディオ用の高品位DACケーブル(C1、2m品。¥88,000税込)を発売している
それはなぜか。同社エンジニアに訊くと、消費電力の違いだという。DACケーブルの場合はSFPモジュールを使わない仕組み、つまり電気回路がないので消費電力はゼロ、SFPモジュール+光ファイバーケーブルでは1Wから2Wくらいの電力を消費するのだそうだ。そうなると、ノイズ面で消費電力ゼロのDACケーブルが有利になるのは当然の理だろう。
最後にS100/2とS100/3の、2基のSFPポートを活用して音質強化が図れるかどうかを試してみる(接続⑤)。S100/2とS100/3をSFPモジュール+光ファイバーケーブルで繋ぎ、S100/3とエバーソロT8をDACケーブルで連携しての再生だ。結論から言うと、この接続法がいちばん音が良かった。S100/2を中継器(コンバーター)として活用することで光絶縁が図れるとともに、S100/3の動作も軽くなり、いっそうの高音質化が図れるということなのだろうか。
接続5
SFP2端子を活用。ハブ2台での光絶縁と、DACケーブル接続
接続④の発展形として、S100/3の前段にS100/2を用いて、両者をSFP光ケーブルで繋ぎ、光絶縁を図りつつ、T8ネットワークトランスポートへDACケーブルでの接続を行なう。やや複雑な接続になるが、本文にある通り、その効能は大きく、目が覚めるような音質向上を実感した
ユン・サン・ナのヴォーカルにピチピチとした生気が宿り、バックの演奏の実在感も増す。いま眼前で3人のミュージシャンが自分のために演奏してくれていると確かな感覚(実はイリュージョンなのだが)が得られるのである。これまでS100、またはS100/2をお使いになっていた方(あるいは別のブランドのSFPポート搭載のオーディオハブをお持ちの方)も買い替えるのではなく、S100/3を買い足して2台使いする意味はとても大きい。ぜひおすすめしたい。
自宅での追加取材を実施。予想以上の効果にアゼンとなった
HiVi視聴室でのテストの後、S100/3を借り受けて我が家でも使ってみた。S100/2とS100/3の2台使いの好結果を受け、自室で同じように使ってみようと考えたのだ。まずルーターからのLAN信号をエディスクリエーションのFIBER BOXのRJ45端子に入力、光絶縁したのちにS100のRJ45端子に接続、S100とS100/3をSFPポートを使って光LAN接続し、S100/3とぼくの愛用ネットワークプレーヤーであるエバーソロDMP-A10のSFPポートを使ってデラから発売されているDACケーブルC1で接続するという再生法だ。
なるほどこれは予想通り、いや予想以上の音の良さだ。ユン・サン・ナのヴォーカルのニュアンスがいっそう豊かになり、ベースは下にグッと伸び、ギターのアルペジオのアタックがいっそう鮮明になる効果が得られたのである。それから静寂の深さ、スタジオに集った3人のミュージシャンの気配がこれまで体験したことのないレベルで再現されるのだ。
う~む、これは凄い。ハイレゾファイルの意義を改めて実感させられるとともに、音楽ストリーミングサービスの音質向上の伸びしろの大きさにアゼンとさせられた次第。SFPポートを使って光ファイバーケーブルやDACケーブルを活用することで、一皮むけた高音質が得られる。ぜひ多くのQobuzユーザーにこの音を体験してほしいと思う。
リファレンス機器
●ネットワークトランスポート : エバーソロT8
●D/Aコンバーター : エバーソロDAC-Z10
●プリメインアンプ : デノンPMA-SX1 LIMITED
●スピーカーシステム : Bowers & Wilkins 802 D4
>本記事の掲載は『HiVi 2026年夏号』