ハイセンスのRGB MiniLEDバックライト液晶テレビ(以下、RGB MiniLED)を、ようやく詳細に観察する機会が持てました。昨年のCES 2025のプレス・カンファレンス会場で、ハイセンスがRGB技術と製品を発表して以来、私はRGB MiniLEDの動向に大いに注目していました。同社に続き、2025年にソニー、TCLが追随を発表、CES 2026ではサムスン、LGも参入を発表、実際の商品化もハイセンスが2025年3月に世界で初めて中国市場で発売しています。ハイセンスはまさにRGBトレンドの火付け役なのです。

RGB MiniLEDバックライト液晶テレビ:
ハイセンス RGB85UXS 市場想定価格¥1,320,000前後

※写真は100インチモデルです

●画面サイズ:85V型
●解像度:水平3840✕垂直2160画素
●パネル:広視野角パネルPro(ADS)
●バックライト:RGB Mini LED
●倍速対応:120Hz倍速(ゲームモード時144Hz VRRに対応)
●低反射仕様:黒曜石ARコート低反射
●HDR対応:HDR10、HLG、HDR10+、HDR10+Adaptive、Dolby Vision、Dolby Vision IQ
●視野角:上下178度、左右178度
●画質エンジン:Hi-View AIエンジンRGB
●スピーカー構成:フルレンジ✕2、センター✕2、サイド✕2、トップ✕2、ウーファー✕4
●対応音声フォーマット:Dolby ATMOS(5.1.2)
●内蔵チューナー:BS 4K・110度CS 4K✕2、地上デジタル✕3、BS・110度CSデジタル✕3
●搭載OS:VIDAA
●ネット動画サービス:Netflix、Amazon Prime Video、Disney+、YouTube、Apple TV、ABEMA、Hulu、U-NEXT、NHK ONE、TVer、WOWOWオンデマンド、他
●接続端子:HDMI✕4(HDMI入力2のみeARC/ARC対応)、USB✕2、LAN、光デジタル音声出力、ヘッドホン出力
●消費電力:553W(待機時0.5W)
●寸法/質量:W1939×H1158×D360mm/56.5kg(スタンド含む)

※その他のラインナップ
RGB100UXS 市場想定価格¥1,980,000前後
RGB75UXS 市場想定価格¥594,000前後(6月中旬発売)
RGB65UXS 市場想定価格¥484,000前後(6月中旬発売)

 では、RGBで先進するハイセンスのフラグシップモデルから、「RGB85UXS」(85インチ)を観ましょう。モデルナンバーにあるように、RGB 3色のLEDチップをひとつのパッケージにまとめ、各色の独立発光、同時発光が可能なRGBバックライトの搭載がウリです。色域はBT.2020カバー率が100%といいます。メリットは色再現に加え、従来の青だけの常時発光に比べて、色を選択的に発光することから、省電力、さらに目に有害なブルーライト低減を謳います。

 色が得意というUXSシリーズには、豪華絢爛なテクニカラー系のレストア作品が似合うでしょう。そこで用意したのが、第32回アカデミー賞でチャールトン・ヘストンの主演男優賞、ウィリアム・ワイラーの監督賞受賞を始め、史上初の11部門を獲った世紀の歴史劇、『ベン・ハー』のUHDブルーレイです。ディスク数も本編のUHDブルーレイ2枚、ブルーレイ2枚、特典ブルーレイ1枚と圧巻。4Kでデジタルレストアしたテクニカラー感が横溢する画調。色の幻想感と精細感の高さ、そしてハイコントラストが並列する素晴らしい作品です。最近の私のテレビ画質評価の定番ディスクです。

 もうひとつが、1965年のアカデミー賞で監督賞、主演男優賞、作品賞など8部門を受賞した『マイ・フェア・レディ』。球面レンズのスーパーパナビジョンで撮影され、テクニカラー収録された、天下のミュージカル大作。どちらも65mmオリジナルネガから8Kスキャンした後に、徹底したレストアを施し、圧倒的な高画質に結実したUHDブルーレイの傑作です。

液晶テレビのさらなる高画質を実現する、RGB MiniLEDバックライトとは

RGB MiniLEDバックライトを近接撮影してみた。ひとつのLEDの中にRGBの3色のセルが並んでいる

UXSシリーズの発表会では、直下型LED、MiniLED、RGB MiniLEDというハイセンスが持つ3種類のバックライトの比較も行われていた。下側の3枚でバックライトがどんな光を出しているかを見比べると、RGB MiniLEDは輝度ピークが伸びているだけなく、色再現でもメリットがあることがわかる

 液晶テレビでは、バックライトの光を、手前に配置された液晶パネルで遮ることで映像を再現している。通常のバックライトは青色LEDの光を蛍光体や量子ドットフィルターを使って白色光に変換し、さらにカラーフィルターを通して色を表現している。

 一方のRGB MiniLEDは、ひとつのLEDの中に赤・緑・青の3色のセルを内蔵する。これにより白色光の純度も高くなり、さらにRGBそれぞれのセルを細かく調整することで、映像に応じた色合いまでバックライトで再現できるようになっている。もともとの光の波長が整うことで、後段のカラーフィルター通して色を再現した場合も、より純度が上がり、色域も広くなるわけだ。UXSシリーズでは、RGB MiniLEDバックライトのメリットを活かした画作りが行われている。

 これらのディスクはDolby Vision収録です。なので、通常の鑑賞作法としては映像メニューで、Dolby Visionの「ブライト」、もしくは「ダーク」を選択します。「ダーク」モードは、Dolby Visionの認証で規定されたリファレンス寄りの画作りで、RGB85UXSでもそれに準拠した映像表現がされています。私の印象ではフラット色が強く、階調優先というか、黒も少し浮いている方向と感じました。

 一方、「リビング」モードは格段にヴィヴッド。人物やオブジェに光と色のエネルギーが注入され、質感も俄然、活気を帯びました。そして何より、RGB MiniLEDバックライトの美点である色の情報性、色の意味合い、色の階調感……という色にまつわる表現性は、「リビング」モードの方が格段に良好でした。と言うわけで、『ベン・ハー』と『マイ・フェア・レディ』は、「リビング」モードで再生します。イコライジングはほとんど本モードのデフォルトで行けますが、「黒レベル」を「-1」と少し締めると、さらに良くなりました。

麻倉さんが選んだ、名レストアUHDブルーレイ。写真左『マイ・フェア・レディ』は、オードリー・ヘプバーンが着るドレスの美しさ、調度品の再現性などをチェック。写真右『ベン・ハー』では、暗い室内の描写や兵士の鎧の光沢感、クライマックスのレースシーンでどれほどの迫力を感じられるかを確認した。

 『ベン・ハー』は、もともとひじょうに色数が多い作品です。例えば赤。少しオレンジっぽい赤から、純度の高い赤まで多彩な色相が闊歩します。鎧の金属的な反射感が眩しく、田園景色では緑の階調も豊かです。こうした色にまつわる情報性や情緒性がたっぷりと含まれている映像は、たいへんRGB MiniLEDには合っていますね。特に色の面積が大きく、同時に高彩度のオブジェクトには、適しています。

 金色の表現も素晴らしい。一般には輝きと色相、彩度などの観点から、金色の再現は難しいとされていますが、RGB85UXSの壮麗な再現性には感心しました。微妙な色の違いも表現しています。例えば黒。文字通り真っ黒から、すこし青っぽい黒、緑っぽい黒などの、本作品が持っている繊細な色情報は、充分に愉しめました。「リビング」モードを選んだ効用が確実にあったと視ました。

 画質チェックでは、このようにディテイルまで微に入り細に入り観るわけですが、85インチという大画面なので、『ベン・ハー』の最大の見どころの4頭立て戦車がトラックを爆走する、チャプター11の馬車レースシーンの迫力と臨場感も大いに楽しめました。CGがない時代に大競技場、大彫刻、大観客もすべて実物による圧倒的な本物迫力は、まさにていねいにレストアされた4K画質と、RGB MiniLEDの合わせ技が、効きましたね。

UXSシリーズの映像調整は、「コントラスト感調整」の追い込みがキー

視聴時の様子。映像メニューの「リビング」モードを選ぶだけでも充分満足できる画質が楽しめたが、麻倉さんはより高みを目指して、それぞれのディスクに応じて細かい映像イコライジングも追い込んでみた

UXSシリーズの「映像調整」メニュー。画より安定した黒再現や光沢感の再現を追い込む場合には、「コントラスト感調整」で「ルミナンスブースト」を切り替えてみるのも効果的とのことでした

 『マイ・フェア・レディ』は、まずチャプター2の終演後にロイヤル・オペラ・ハウスから出てくる貴族、貴婦人たちの映像美をチェックします。コスチュームの高級感、色のバラエティさ、雨粒に濡れる馬車の幌の黒光り、ロンドンタクシーの金属ボディの黒反射、雨水が溜まった舗道の鋭い光彩、貴婦人たちの宝石の煌めき、紳士のタキシードの黒艶……など、画質的なチェックポイントが多い作品です。映像のAPL(平均輝度)が高いので、液晶でありながら、しっかりとした黒の締まりが得られています。グロッシーな輝きが特に印象に残りました。

 チャプター20のヒギンズ教授宅の景色も良かった。言語音声学者、ダニエル・ジョーンズの邸宅をモデルにした貴族的な佇まいや、インテリアの本物感を愛でることができました。

 エドワード調の壁紙のノーブルさ、草花や樹木をモチーフとしたウィリアム・モリス・ファブリックのソファのエレガントさ、ラウンドしている階段の手すりの光沢感、木材の角のとがり方、立派な装幀の専門書や古書が蝟集する本棚……などのインテリアのキャッチーさを、RGB MiniLEDはリアルに、そして暖かく再現していました。貴族の物語らしいエレガントさも映像から感じ取れました。まさに本作の世界観にふさわしい質感表現ですね。

 RGB85UXSは単にディスクに収録された情報をそのまま綺麗に観せるだけではなく、作品性の構築につながるトータル表現が得意であることが分かりました。RGB MiniLEDバックライト搭載機が持つ、独特の風合いは魅力的でした。

左から、ハイセンスジャパン株式会社 商品管理部 画質担当の侯 偉(コウ イ)さん、商品管理部 商品プロモーションG 課長の趙 明昊(チョウ メイコウ)さん、麻倉さん。名作の絵作りについては、麻倉さんからさらなる提案も行われた