1968年に英国ケンブリッジを拠点とする技術コンサルティング企業の一部門として、Gordon Edgeらエンジニアチームが「より良い音を、より多くの人へ」という思いから立ち上げたケンブリッジオーディオ。同社の製品の特徴は音質重視の正攻法のモノづくりを信条としつつも、一般的な音楽ファンに無理なく手の届くような価格が設定されていること。その良心的な姿勢が広く受け入れられ、いまでは英国を代表するオーディオ総合メーカーとして、確かな地位を確立している。

 この1年余り、日本の輸入代理店が定まらず、実質上、同ブランドのオーディオ機器の輸入が途絶えていたが、この春から正式にエミライによる取り扱いが決まった。ここでは日本市場に新たに導入されるネットワークプレーヤー関連の新製品にスポットをあて、その内容をじっくりと検証していく。

MXN10+MXW70
音離れが良く響きもきめ細かい。ハイレゾらしさをしっかりと描く

 まずはスマートなデザインが特徴的なネットワークプレーヤーMXN10と、パワーアンプMXW70のいわゆるハーフサイズモデルの組合せから見ていこう。

Network Player
MXN10
オープン価格 (実勢価格8万2,500円前後)写真上
●型式 : ネットワークプレーヤー
●接続端子 : アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、LAN1系統、ほか
●寸法/質量 : W215×H52×D191mm/1.2kg

Power Amplifier
MXW70
オープン価格 (実勢価格12万2,500円前後)写真下
●型式 : ステレオパワーアンプ
●定格出力 : 70W×2(8Ω)、125W×2(4Ω)、250W(8Ω、モノーラル時)
●接続端子 : アナログ音声入力2系統(RCA、XLR)ほか
●寸法/質量 : W215×H57×D215mm/1.65kg

 

 本体サイズはいずれも幅215×高さ57×奥行215mmで、デザインも統一している。この省スペースのスタイリッシュなシステムは、12Vトリガーによる自動電源制御(オン/オフ連動)が可能で、一体型感覚の操作が可能だ。

 筐体はコンパクトだが、内容は濃い。まずMXN10だが同社の最新ストリーミングプラットフォームとなる「StreamMagic Gen 4」を装備し、各種音楽配信サービスやUSBメモリー、ミュージックサーバーなどの音源再生が可能。ハイレゾ音源は最大768kHz/32ビット PCM、22.6MHz DSDの再生をサポートしている。

 音楽配信はSpotify、TIDAL、Qobuz、Deezer、Internet Radioに対応。さらに最新機能アップデートにより、Amazon Musicの再生が可能となり、高度なトーンコントロール機能も追加している。

 MXW70はオランダHypex社のD級アンプ技術を採用したステレオパワーアンプで、全帯域で歪率を抑え、スピーカー負荷変動に依存しない周波数特性を約束している。通常のステレオ接続に加え、ブリッジモノ接続も可能。入力もXLRバランスとRCAアンバランス接続が可能だが、MXN10との組合せでは、MXN10にXLR出力端子が備わらないため、RCA接続となる。

 HiVi視聴室のリファレンス機器の1つ、Bowers & Wilkinsの2ウェイスピーカー805 D4との組合せで、Qobuz Connectでそのサウンドを確認してみよう。まず「First We Take Manhattan/ジェニファー・ウォーンズ」を聴いたが、力みのない穏やかなテイストで、音の立ち上がりが素早い。低域はやや締まり気味で、量感豊かに聴かせるタイプではないが、質感は穏やかで、声、楽器ともにニュアンスが繊細だ。「花束を君に/宇多田ヒカル」はどちらかと言えばクールな表情で、吐息を多く含んだ柔らかいトーンの歌声がフワッと目の前に浮かび上がる。音離れの良さと響きのきめ細かさは、ハイレゾ音源ならでは。味わい深く、清々しい気分にさせてくれるサウンドだった。

MXN10とMXW70は、幅215mmのほぼハーフサイズコンポーネント、小型サイズながら、両機種とも高音質かつ多機能を兼ね備えている。ネットワークプレーヤーのMXN10は最新世代のストリーミング聴取機能に対応しESSテクノロジー製DACチップES9033Qを搭載、パワーアンプのMXW70はHypex製NCOREクラスDアンプにて70Wステレオ出力を備えている。MXW70は、モノーラル設定時には250Wのハイパワーを発揮し、AVセンターのプリ出力を活用する用途にも最適だ

 

 

EXN100+EXA100
ニュートラルかつ丁寧に音の芯を描く。デジタル接続の安定感も好印象

 次はケンブリッジオーディオの主力とも言えるネットワークプレーヤーEXN100とプリメインアンプEXA100のコンビを試す。同社の最高峰Edgeシリーズのテイストに通じる重厚なデザインで、操作時の感触にもこだわったローレット加工という滑り止め処理が施された大型ノブが特徴的だ。

Network Player
EXN100
オープン価格 (実勢価格39万6,000円前後) 写真上
●型式 : ネットワークプレーヤー
●接続端子 : デジタル音声入力5系統(同軸、光、HDMI eARC、USB Type A、USB Type B)、アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、LAN1系統、ほか
●寸法/質量 : W430×H90×D305mm/4.1kg

D/A Converter + Integrated Amplifier
EXA100
オープン価格 (実勢価格39万6,000円前後) 写真下
●型式 : D/Aコンバーター内蔵プリメインアンプ
●定格出力 : 100W×2(8Ω)、155W×2(4Ω)
●接続端子 : アナログ音声入力5系統(RCA×4、XLR)、デジタル音声入力5系統(同軸、光×2、USB Type B、HDMI eARC)、プリ出力1系統(RCA)、サブウーファー出力1系統(RCA)、ほか
●寸法/質量 : W430×H115×D341mm/12.8kg

 

 EXN100は独自かつ最新のネットワークプラットフォーム「StreamMagic Gen 4」を採用しているのはMXN10と同様。音楽ストリーミングサービスはもちろんネットワーク上の音楽ファイル再生もサポートしている。

 右側にある大きなノブは、各種機能の操作/選択を担当するが、プリアンプモード選択時には、音量調整用ノブとしても機能する。DACチップは、ESSテクノロジー製ES9028Q2M。

 EXA100は最高峰のEdgeシリーズと同等のパワートランジスターを奢ったAB級のパワーアンプ回路が特徴的だ。本体内には大型のトロイダルトランスが鎮座し、並々ならぬクォリティへのこだわりが見て取れる。またコントロールバス端子の活用により、EXN100との連携が可能。1つのリモコンでシステム全体の制御が実現することになる。なお、本機も各種デジタル入力(同軸、光×2、USB Type A、USB Type B、HDMI eARC)が備わっている。DACチップはESSテクノロジー製ES9018K2M。

 ではXLRバランスとRCAアンバランスのアナログ接続での聴き比べから試聴スタート(EXA100は固定音量設定)。Qobuz Connectでジェニファー・ウォーンズや宇多田ヒカルなど聴き慣れた曲を再生して、接続の違いを確認すると、いずれも十分なダイナミックレンジを確保しながら、ニュートラルなタッチで、音の芯、骨格を丁寧に描き出す。甲乙つけがたいレベルだが、時間をかけて数曲聴き比べていくと、RCAアンバランス接続は、バスドラムやベースなどリズムの表現がややあっさりとして、特に音量を上げていくと、低域のキレと分解能がもう少し欲しいという気分になる。今回のシステムではアナログ接続はXLRバランスが優勢だった。

 さらにEXA100側でD/A変換するデジタル接続(同軸)を試すと、これが思いのほか良かった。ほどよい低音の厚みと、すっきりとした中/高音を持ち味にしたサウンドで、様々な音源に対しても堂々として、危なっかしさがない。空間の拡がり、ニュアンスの表現といった部分は、やや淡白だが、聴き疲れしない、落ち着きのあるサウンドが好印象だった。

幅430mmのフルサイズ機EXN100(上)とEXA100(下)は、それぞれが単体モデルとしての役割を担うケンブリッジオーディオの中核機器。ネットワークプレーヤーEXN100は、HDMI eARCを含む多彩なデジタル音声入力端子を装備し、デジタルオーディオハブとしての機能を磨き上げている製品だ。32ビット精度のデジタルボリュウムも搭載。DAC内蔵プリメインアンプEXA100は、AB級アンプと大型トロイダルトランス搭載のアナログアンプにより、100W×2(8Ω)の出力を発揮する

 

 

Evo 150 SE
明瞭度が高く繊細なタッチが魅力。細やかな質感の歌声に魅力された

 最後はネットワークプレーヤーとプリメインアンプ一体型、つまりオールインワン型ストリーミングアンプEvo 150 SE。317mm幅のコンパクトな筐体は足元が絞り込まれ、浮遊感を演出したスマートなフォルムが特徴的だ。

Network Player + Integrated Amplifier
Evo 150 SE
オープン価格 (実勢価格
53万9,000円前後)
●型式 : ネットワークプレーヤー内蔵プリメインアンプ
●定格出力 : 150W×2(8Ω)
●接続端子 : アナログ音声入力3系統(RCA、XLR、MMフォノ)、デジタル音声入力6系統(同軸、光×2、USB Type A、USB Type B、HDMI ARC)、プリ出力1系統(RCA)、サブウーファー出力1系統(RCA)、LAN1系統、ほか
●寸法/質量 : W317×H89×D352mm/5.3kg

 本体右手側の大型ダイヤルはデュアル同軸構造で、音量や入力など、直感的な操作が可能。大画面でアルバムアートが楽しめる6.8インチの液晶ディスプレイが本機の先進性をアピールしている。また、木目調と黒の、2種類の磁石式サイドパネルが付属しており、好みやインテリアに合わせてカスタマイズできるのも楽しい。

 MXN10同様、最新ネットワークプラットフォームとなる「StreamMagic Gen 4」を装備し、各種音楽配信サービスに対応。アンプ回路には高効率で低歪みのHypex NCORExモジュールが採用され、最大出力は150W×2(8Ω)に達する。デジタル入力は同軸、光、USB Type B、HDMI eARCを備え、MM対応フォノ入力も装備している。DACチップはESSテクノロジー製ES9018K2Mを採用。

 まずチョ・ソンジン独奏『モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番』をQobuz Connectで再生。ストレスを感じさせない空間の拡がり、鮮度の高い楽器の音色、そして浸透力を伴なったピアノの響きと、随所でシステムとしての素姓の良さを感じさせる。音調は硬質にならず、旋律を冷静に、繊細なタッチで描き出していく印象。ハイレゾ音源の魅力を積極的にアピールしてくるかのようなサウンドが実に新鮮だった。

 ライオネル・リッチーとダイアナ・ロスが歌う「エンドレス・ラブ」は、声の明瞭度の高さに加え、口元が見えそうなくらいニュアンスが豊かで、響きの粒子、質感も細やかだ。特に聴き手を優しく包み込むようなライオネル・リッチーの歌声にすっかり魅了されてしまった。

ネットワーク再生に対応した、プリメインアンプEvo 150 SEは、同社最新世代「StreamMagic Gen 4」を搭載。Qobuz、Amazon Music、Spotifyなどの音楽ストリーミング再生をサポート。純正アプリ「StreamMagic」での操作のほか、Qobuz、Spotifyは「コネクト」機能も対応。入力切替えや音量調整も可能で、非常に使い勝手がよい。日本語対応もほぼ完璧で、動作もスムーズだ。MXN10、EXN100も同機能を搭載する

 

 

新たなオーディオの価値を訴求する非常に使いやすく快適な製品群

 ネットワーク再生に対応したケンブリッジオーディオの最新モデルを3通りの組合せで、Qobuz Connectの音源を使ってハイレゾ、CD品位のロスレス音源を取り混ぜて聴いたわけだが、どれも高級オーディオという概念にとらわれることなく、自由な発想、コンセプトで開発された製品であり、Bowers & Wilkins 805 D4スピーカーを闊達に駆動したサウンドが新鮮だった。

 そして最も感心させられたことは、ケンブリッジオーディオという老舗のオーディオメーカーが新しい可能性にチャレンジして、これまでにないオーディオとしての価値を見いだそうとしていることだ。

 特に完全一体型のストリーミングアンプEvo 150 SEには、オーディオの新しい楽しみを創造していくエネルギーのような力強さ、魅力を強く感じとれた。非常に使いやすく快適なネットワークオーディオ再生機能が盛り込まれたケンブリッジオーディオの日本再上陸を歓迎したい。

 

リファレンス機器
●スピーカーシステム : Bowers & Wilkins 805 D4

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年夏号』