デンマークのブランド、ライドー・アコースティクスのスピーカーシステム「X2t-25th」と「X2t」が、日本市場に再びお目見えすることになった。
スピーカー(に限ったことではないが)の世界は現在、百花繚乱であり、さまざまなスタイルのモデルが競い合っているのだが、中には私の目にはとても奇抜に映るものもたくさんあるし、どうしてここまで……と思うような大規模の製品も増えている。もちろんそれらの製品にはそのようなスタイルになる必然性があるのだろうし、それぞれの製品はそれぞれの独自の音世界を持っているのだから、それはオーディオという趣味の豊かさの現われでもある。
今回、試聴したX2t-25thは、現代の目からすると、とても収まりのいい見た目の、どちらかと言えばオーソドックスなスタイルのスピーカーである。それでいて、そのサウンドは、他のどのスピーカーシステムとも異なる、独自の美意識を感じさせるものであるところに、本機の特異なポジション、魅力がある。
スピーカーシステム:Raidho
X2t-25th ¥4,850,000(税別、ペア、ミッドナイトブルー、エメラルドグリーン)
●型式:2.5ウェイ3スピーカー、バスレフ型
●使用ユニット:Raidhoリボンツイーター、5.25インチウーファー✕2
●クロスオーバー周波数:220Hz、3.5kHz
●再生周波数帯域:45Hz〜50kHz(+/-3dB)
●感度:88dB/2.83V/m
●インピーダンス:6Ω
●寸法/質量:W300✕H1065✕D415mm(脚部含む)/23kg、W740✕H1240✕D570mm/90kg(フライトケースに入れた状態)
X2tシリーズは幅20cm弱とひじょうにスリム。エンクロージャーは、美しい曲線を描きながら後方に向かって絞り込まれている
※ラインナップ:
X2t 25th ¥4,350,000(税別、ペア、ウォールナット・バール)
X2t ¥3,850,000(税別、ペア)
配送によるトラブルを未然に防ぐため、ライドーの製品は写真の付属フライトケースで届けられます。また、沖縄を含む島しょ部については別途送料が必要です。
ライドーのスピーカーが日本に初めて紹介されたのは2008年のことだった。小型2ウェイ機の「Ayra C1」を皮切りに、フロアースタンディング機の「Ayra C2」「Ayra C3」の3モデルが、その年に上陸した。
特筆すべきは、2008年度の「ステレオサウンドグランプリ」にAyra C1とAyra C3の2モデルが入賞していること。その年に日本で発売された優れたオーディオ機器に贈るステレオサウンド誌の年度賞は、半世紀近くの歴史があるが、同ブランドの同ジャンルの製品がダブルで受賞することはきわめて異例で、大きな話題になった。それだけ同ブランドの製品のインパクトが大きかったという証左でもある。
ライドーのスピーカーの一番の特徴は、自社開発のユニークなスピーカーユニットにある。この基本は現在でも変りはない。その特徴はまず、高域を担当するツイーターが、平面型であることが挙げられる。平面型の高域ユニットを採用する例は昔からあるが、たとえば純リボン型であれば耐久性やインピーダンス(低すぎるため普通のアンプでドライブするにはマッチングトランス等が必要)の問題があるし、フィルム等に金属箔を貼り付けるプリンテッドコイル型(これもリボン型と呼ぶことがある)では、フィルムの固有音などが低域ユニットの質感と揃わないケースも見受けられた。
また、平面型の振動板はきわめて軽量であるため、低域ユニットのスピーカーとのスピード感の違いも気になるケースがある。もうひとつ、平面型は指向性が鋭く、振動板と正対して聴くぶんにはいいのだが、正面を外れると音圧が低下しやすいという性質もある。
それでも平面型を採用するメーカーがあるのは、他の方式では得られにくい、繊細なサウンドを獲得できるからだろう。少なくとも私はそう思っている。また、磁界が平面的なため、振動板振幅を均一にコントロールしやすいというメリットもある。先にも記したが、平面型の振動板はひじょうに軽い。それは振動板(リボンやプリントコイル)そのものが、ボイスコイルの役割をはたしているからでもある。
一般的なスピーカーユニットでは、音声信号に従って振動するボイスコイルはボビンを介してコーンやドームといった振動板に接着されている。つまり、通常のユニットでは、ボイスコイル+ボビン+コーンないしはドームの合計の質量を動かす必要があるのに対し、リボン型ならリボンのみ、プリンテッドコイル型でもプリントコイル+フィルムのみを動かせばいいのである(なお、平面型にはこの他にコンデンサー型もあるが、この場合も振動膜の質量はきわめて軽い)。
搭載されたユニットは、すべてデンマークの自社工場で製造
X2tシリーズで採用されているリボンツイーターは、11ミクロンという極薄のフォイルを搭載し、設計から製造まですべて手作りされている
ウーファーの振動板は、薄いアルミニウムコーンをベースに、液体プラズマプロセスと超高電圧を用いて外層を酸化アルミニウムセラミックに変化させた自然なサンドイッチ構造となっている。表面にはタンタルコーティングを施し、振動板の剛性と硬度を大幅に向上させている
ライドーのツイーターはプリンテッドコイル型だと思うのだが、一般的なドーム型ツイーターに比べて質量は50分の1という軽量さが目を惹く。特筆すべきは、適切なウェーブガイド(ユニット前面に設けられた音波を整えるための窪み)設計により、指向性がかなり広くなっており、リラックスしたリスニングにも対応しているところ。固有音もきわめて少なく、いい意味でリボン(プリンテッドコイル型)らしからぬ、特有の存在感がないのも好ましい。それはむろん、これから記す低域ユニットの兼ね合いでそう感じるわけでもある。
ウーファーユニットの特徴は、薄いアルミニウムコーンの表裏に、特殊なプロセスによって、酸化アルミニウムセラミックを形成した一種のサンドイッチ構成振動板を用いていること。これも日本デビュー時から変らない部分なのだが、X2t-25thに搭載されたウーファーコーンは、さらに表面にタンタルコーティングが施されており、質量をほとんど増やすことなく、剛性・高度が大幅に向上しているという。
振動板を駆動する磁気回路もネオジム磁石を使用したきわめて強力なものであり、つまり、軽量振動板+超強力磁気回路という組合せにより、平面型ツイーターとのスピード感の一致を図っているのである。この高域と低域のスピードの整合性はきわめて重要で、ユニット単体が優れていても、ここがマッチしないと優れたスピーカーシステムにはなりえないものである。
もうひとつ、ウーファーの特徴と言えるのは、振動板背面側の圧力を極力少なくする設計がなされていること。ダンパーやエッジの設計とあいまって、これらのことにより、ユニットはきわめて軽く敏感に動くようになる。
スタンドからバスレフポートまで、ひじょうに美しい仕上がりを実現
スタンドは本体下部にネジ止めする仕組みで、装着時の横幅は30cm。写真の丸い部分は高さ調整ができるので、ガタツキも補正しやすい
バスレフポートもひじょうに美しい仕上がり。クロスオーバーネットワークにはNordost製ケーブルを始めとした高品質パーツを採用するなど、細部まで徹底したこだわりが詰め込まれている
いっぽう、このように軽量なウーファーでは、なかなか低音の量感を得ることが難しくなるのだが、ライドーではキャビネットの巧妙な設計により、不足のない低音を得ることに成功している。具体的には必要充分な剛性(硬すぎない)、バスレフポートの設計、そして金属ボールを用いたフレキシブルな接地方法の採用が挙げられる。剛性一点張りではない、柔軟な設計がライドーの特徴なのである。
今回、新たに輸入されたモデルはX2t-25thという、世界限定100ペア生産の特別モデル。同社の現在のラインナップは、本機を含む「Xシリーズ」、最上位にあたる「TDシリーズ」、そして前記したCシリーズの伝統を一番色濃く受け継ぐ「レジェンダリーシリーズ」がある。
X2t-25thの25が何を示すのか、おそらくはブランド発足からの年数だと思うが、現時点で私に確証はない。それはそれとして、この間、ライドー・アコースティクスの体制は大きく変っており、設立者で設計者だったマイケル・ポールセンはかなり前に同社を離れている。現在は元々はスピーカーメーカーだったダンタックス・グループ傘下となっているのだが、現行品にも(日本)デビュー当時の面影が強く残っているのが興味深い。
本機は、5.25インチのコーン型ウーファー2基と平面型ツイーターを搭載。クロスオーバー周波数は220Hzと3.5kHzと発表されており(遮断特性はオクターブ当たり12dB減衰する2次カーブ)、低域2基をスタガー接続(220Hz以下をダブルウーファー構成とし、220Hz〜3.5kHzまではシングルウーファーで動作する)した2.5ウェイ機だ。通常仕様との仕様変更点はこのクロスオーバー周波数にあり(通常仕様は低域側は140Hzとなる)、能率も限定仕様の方が1dB高い(88dB/2.83V/m)。
取材はまず、StereoSound ONLINE試聴室の常設機器を使って行い、その後に海外のオーディオショーなどでRaidho製スピーカーと組み合わせられることが多いというSimaudioのMOONシリーズでも試聴していただいた
キャビネットは背面にスリット状のポートを持つバスレフ型。入力端子はシングルワイアリング専用。バッフル板は厚みのある金属製である(おそらくアルミ)。背面が絞られたスレンダーなフォルムが実に美しく、限定仕様にのみ与えられる特別な木目仕上げは、このフォルムの美しさを際立てている。試聴機はエメラルドグリーン仕上げだったが、シックで絶妙な風合いがあってたいそう魅力的であった。
繊細優美という言葉が、これほど似合う音を持ったスピーカーシステムは、ライドーの他にはそうはあるまい。立ち上がりが素早くキレがよく、たいへんにスムーズなサウンド。ウーファーとツイーターのスピードと質感が高い次元で揃っているからこその、この音なのだろう。シルキーな肌合いは耽美的ですらあり、それでいて産毛のような感触も備えているため、官能的であるとさえ言えよう。しかしながら、濃厚すぎたり、あるいは下品に陥ることはいっさいなく、知的な上品さを常にまとっているところに、本機の魅力の核心があるように思う。
スリムな外観同様、全体の音調はスレンダーと言えるところがある。けれど、では、細い音かと言われれば決してそうではない。低域の伸びはかなりのものがあり、かつ、よく弾む音でもあるので、量感の不足を感じさせないのだ。かつての同社スピーカーは、ユニットのストレスフリーな動作にこだわりすぎたためか、音量を上げるとウーファーが底付きすることもあったが、本機では適切な制動がかけられているようで、今回の試聴で問題を生じることはいっさいなかった。もちろん15インチウーファー+ホーン型のような大音量は無理だけれども、そのような世界を望む人は、そもそも本機は選ばないだろう。
SimaudioのMOONシリーズで音をチェック!Raidho製スピーカーとの相性も抜群
ネットワークプレーヤー/プリアンプ:Simaudio MOON 791 ¥2,970,000(税込)
●接続端子:デジタル入力5系統(XLR、同軸✕2、光✕2)、USB-B、LAN、HDMI(ARC)、アナログ入力2系統(XLR、RCA)、フォノ入力(RCA、MM/MC)、アナログ出力2系統(XLR、RAC)
●再生周波数帯域:2Hz〜200kHz(+0dB/-3dB)
●S/N:120dB
●寸法/質量:W481✕H102✕D449mm/19kg
パワーアンプ:Simaudio MOON 761 ¥2,640,000(税込)
●出力:200W✕2(8Ω)、400W✕2(4Ω)、600W✕1(8Ω)
●再生周波数特性:2Hz〜100kHz(+0dB/-3dB)
●S/N:117dB
●寸法/質量:W481✕H140✕D445mm/36kg
MOON Simaudioのサイトはこちら → https://simaudio.jp
ここまではステレオサウンド試聴室のリファレンスであるアキュフェーズのアンプでドライブしていたのだが、ライドーがデモなどで採用することが多いという、カナダのシムオーディオのMOONシリーズセパレートアンプでも聴いてみることにした。用意したのはプリアンプ「791」とパワーアンプ「761」。パワーアンプは200W×2(8Ω)のパワーを持ち、X2t-25thに対して十二分のドライブ能力があると言える。
ここまで述べたスピーカーの特色はそのままに、よりマッシヴで骨格のしっかりとした音。レゾリューションを強調せず、低音の実在感も増すために、より聴きやすく聴き応えのあるサウンドになるのである。ライドーがシムのアンプを推奨する理由はそのあたりにあるのだろう。リラックスして聴くのにより好適な組合せだと思うし、シムのアンプの実直でしっかりとした性格は、ともすると神経質に陥りがちなハイエンドオーディオの世界では貴重な存在であると再確認した次第。
いずれにしても、ライドーのスピーカーシステムが展開する音世界は本当に美しい。今回の試聴は、20年近く前の同社システムのサウンドに初めて触れた時の記憶を呼び覚ますものであったのと同時に、より洗練されパワフルになった、ライドーの新しい世界を聴かせてくれるものとなった。