後味は決して良いとはいえないし、描写は「わかりやすく感動的」というよりは「シニカル」だ。じっくりと腰を据えて見ることで深みがジンワリと伝わってくるところがある。ずいぶん渋い、だが一度見たらその感触が残る一作という印象を受けたのだが……。ことしの3月10日の時点で49受賞 124ノミネートに輝くという、大変な高評価も得ている。その中には本年度アカデミー賞Wノミネート(音響賞、国際長編映画賞)、カンヌ国際映画祭4冠 (審査員賞、サウンドトラック賞、AFCAE賞スペシャルメンション、パルムドック賞)もある。とはいえ、おそらく作る側は1ミリも妥協も迎合もしていない。それが高評価を受けるということは、クリエイター冥利に尽きるのではないかとも感じさせられた。
監督・脚本のオリベル・ラシェはパリに生まれ、スペインでオーディオビジュアルコミュニケーションを学んだひとり。『シラート』は長編4作目にあたり、撮影はサハラ砂漠で行われている。そしてプロデューサーに名を連ねているのは名匠ペドロ・アルモドバル。名コンビであるエグゼクティブ・プロデューサーのエステル・ガルシアと共に、ラシェをバックアップする。
ストーリーのメインテーマといえるものは、ずばり「人探し」。砂漠のレイブパーティーに参加して行方不明になった娘を探す父と息子(=行方不明者にとっては弟)の物語だ。反復するエレクトロ音楽、ギラギラした照明、永遠に踊り続けるのではないかと思えるほどハイなひとたち、それらはたぶん父にとって初めての体験だっただろうが、娘は確かにこのコミュニティにいたのだ。しかしなかなか、父と娘の再会はかなわない。見る側としては「果たして会えるのだろうか?」と心配になるが、そんな気持ちなどまるで知らぬとばかりに、ひたすら流れているのがピコピコ、ズンズンという電子音だ。音楽担当のカンディング・レイ(フランス生まれ)は、本作でカンヌ国際映画祭での作曲賞を受賞したほか、ゴールデン・グローブ賞やゴヤ賞、ガウディ賞の作曲賞にノミネートされた。逃げても逃げても追いかけてくるような楽曲の数々は、サウンドトラックとして配信されているので、「レイブって何」という方には特にチェックしてほしいと思う。あと、犬が名役者ぶりを発揮している。
映画『シラート』
6月5日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにてロードショー
監督:オリベル・ラシェ 製作総指揮:エステル・ガルシア 製作:ペドロ・アルモドバル 脚本:オリベル・ラシェ、サンティアゴ・フィジョル 撮影監督:マウロ・エルセ 編集:クリストバル・フェルナンデス 美術:ライア・アテカ 音楽:カンディング・レイ(デヴィッド・ルテリエ)
出演:セルジ・ロペス、ブルーノ・ヌニェス・アルホナ ほか
2025年/スペイン・フランス合作/スペイン語・フランス語・英語・アラビア語/115分/ビスタ/カラー/5.1ch/PG-12/日本語字幕:杉田洋子 / 原題:Sirat /後援:セルバンテス文化センター、スペイン大使館 / 配給:トランスフォーマー
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