2024年10月、定額制ストリーミングサービス「Qobuz」が日本で正式にスタートした。僕は、多くの方が改めてネットワークプレーヤーの導入に興味を持ったこの年を、日本におけるネットワークオーディオ再生の第二章の始まりだと考えている。

 そこから約1年半が過ぎ、たいへん興味深い製品が登場した。それが、ONIXという英国ブランドのネットワークトランスポート「Zenith XMT20」だ。

ネットワークトランスポート:ONIX Zenith XMT20 ¥385,110(税込)

●ディスプレイ:3.4インチ タッチスクリーン●システム:自社開発Linuxベース●USBドライブ仕様:USBポート×1(最大2Tバイト)●SSDスロット仕様:M.2 NVMe対応(最大2Tバイト)●対応音声フォーマット:ISO、DXD、APE、FLAC、WAV、AIFF、AIF、DTS、MP3、WMA、AAC、OGG、ALAC、MP2、M4A、AC3、M3U、M3U8、OPUS、DSD(.iso、.dsf、.dff。DSTは非対応)●対応ストリーミングサービス:Qobuz(Qobuz Connect対応)、Roon Ready●ネットワーク機能:DLNA、AirPlay 2、NAS●デジタル出力:光デジタル出力(PCM192kHz/24ビット、DSD64)、同軸/BNCデジタル出力(PCM192kHz/24ビット、DSD64)、AES/EBU出力(PCM192kHz/24ビット、DSD64)、USB(PCM768kHz/24ビット、DSD512 Native)、I2S(PCM768kHz/24ビット、DSD512 Native)●操作方法:タッチスクリーン、専用APP「Eddict Controller」●寸法/質量:W320✕H72✕D240mm/5.2kg

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 ONIXは1980年代、音楽と芸術文化が盛んな土地として知られる英国・ブライトンで誕生した。創業者のトニー・ブレイディ氏がブライトン工科大学在学中、パワーアンプの設計を始めたことに遡る。1981年にはプリメインアンプ「OA20」を発売。ドイツ、アメリカ、日本など30以上の市場へ展開された。しかし、その後事業は低迷し、1997年に台湾のサウンド・アート社がONIXのブランド権利と中核技術を取得。現在は、日本のポータブルオーディオ市場で高い評価を得るShanling(シャンリン)と協力関係を深め、新世代のONIXブランドを展開している。

 近年、ヨーロッパのオーディオメーカーがアジア圏の企業傘下に入ることは珍しくない。しかし僕がこの話に強く興味を持ったのは、ONIXが現在でも一貫して「Traditional British Sound(伝統的な英国サウンド)」を掲げていることだった。

 5月上旬、新製品のXMT20と、昨年発売されたD/Aコンバーター「Zenith XDA20」を自宅1Fの試聴室に設置した。Zenithシリーズは同ブランドのハイエンドラインで、他にもSACD/CDトランスポート「Zenith XST20」の合計3機種がラインナップされるが、目を引くのは、英国時代から継承するブラック×ゴールドを基調としたシャーシデザインだ。CNC切削加工による筐体は見た目のビルドクォリティが高い。

D/Aコンバーター:ONIX Zenith XDA20 ¥359,370(税込)

●DACチップ:ESS ES9039PRO×2●USB DAC入力チップ:XMOS XU316●接続端子:同軸/光/BNCデジタル入力、AES/EBU、I2S、USB入力、アナログ出力2系統(RCA、XLR)、6.35mmヘッドホン出力●対応サンプリング周波数/ビットレード:同軸(PCM 192kHz/24ビット、DSD64)、I2S(PCM 768kHz/32ビット、DSD512 Native)、USB(PCM768kHz/32ビット、DSD512 Native)●寸法/質量:W320×H62×D240mm/約5.7kg

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 XMT20はデジタル出力に特化したネットワークトランスポートだ。フロント中央には3.4インチのタッチスクリーン式カラーディスプレイを搭載する。操作はこのタッチパネルでも可能だが、音楽再生の中心となるのはスマートフォンやタブレット向けの専用アプリ「Eddict Controller」である。UI(画面デザイン)は、画面の大きさの違うスマホとタブレットで2通り用意されていて使い勝手も良い。

 背面には光デジタル、同軸デジタル、BNC、AES/EBU、USBに加え、I2S出力(HDMI)を搭載。ネットワーク接続はWi-Fiと有線LANに対応する。

 再生ソースはQobuz、Qobuz Connect、Roon Readyをサポートするが、現時点でSpotifyには対応していない(今後のファームウェアアップデートに期待したい)。さらにDLNA、AirPlay 2、NASを利用したローカルファイル再生にも対応。USBポートに加え、M.2 NVMe SSDスロットを備えることも注目点だ。

 これにより、USB CDドライブを接続すればCDプレーヤーとして利用できるだけでなく、外部ストレージへのリッピング機能まで備える。単なるストリーミング再生機ではなく、ハイレゾファイル再生まで含めた総合的なデジタル再生システムとして運用できる点は評価したい。

「XMT20」の再生操作は本体のタッチパネル、もしくはアプリの「Eddict Controller」で行う仕組みだ。Linuxをベースにした独自OSの採用で、操作レスポンスもひじょうにいい

 ネットワークトランスポートとして音質対策は実直であり、電源部は Talema製トランスと、Vishay製コンデンサーを採用し、高精度なデュアルKDS水晶発振器も搭載している。

 また、OSはLinuxベースで自社開発されている。最近はAndroidベースで多機能性を訴求する製品も多いが、本機は対応サービスを必要十分に絞り込みながら音質を最優先している。

 D/AコンバーターのXDA20は、XMT20やXST20との組み合わせを前提に設計されている。フロントにはXMT20同様のタッチスクリーンを搭載し、入力切り替えや、音調を可変できる他、デジタルフィルターの設定等も可能。入力端子は同軸/光デジタル、BNC、AES/EBUに加え、USBとI2S入力を装備する。特にI2S入力はXMT20とのフルスペック接続を想定したものだ。

 出力端子はRCAとXLRのアナログラインアウト/プリアウトを装備し、パワーアンプやアクティブスピーカーへ直接接続可能。さらにフロントには6.35mmヘッドホン端子も備える。

 DAC部にはESS製フラッグシップ8ch DAC「ES9039PRO」をデュアル構成で搭載。自社開発の「Brighton」ハイスピードI/Vアーキテクチャーと組み合わせることで、DACから出力される微細な信号を高速かつ低ノイズでアナログ回路へ受け渡す。

アプリの「Eddict Controller」は、スマホ、タブレットそれぞれのUIも準備

 操作用アプリの「Eddict Controller」では、SHANLING、ONIXの対応製品と連携して楽曲の選択、各種設定、ミラーリングなどが行える。アンドロイド/iOSの各デバイス用が提供されており、画面サイズに応じたUIが表示されるとのことだ。

 まずは2台をエイムのUSBケーブル「UC1」で接続し、iPhoneにインストールしたEddict ControllerからQobuzを操作。女性ヴォーカル作品として最近よく聴いているレディシのアルバム『For Dinah』から「If I Never Get To Heaven」を再生した。XDA20のデジタルフィルターは7種類から選択可能で、試聴では「Minimum phase fast roll-off」で聞いた。

 その第一印象は、コンセプト通りの、音楽性の高いサウンドだということ。適度な艶を持つ音色で、ヴォーカルやピアノの質感表現が良い。レディシの音像は左右均等な空間の中央に自然に浮かび上がり、定位感も優秀だ。低域はクリスチャン・マクブライドのベースで確認したが、音階表現が明瞭で、本来のスウィング感やグルーヴも充分に伝わってくる。

 続いて、米津玄師と宇多田ヒカルによる「JANE DOE」を再生した。抜けの良いサウンドで、冒頭のピアノの質感も良好。宇多田ヒカルのヴォーカルはしっかりと前方に定位し、バックコーラスとの分離や左右の音場表現も優れている。さらにベースとキックドラムのダイナミクスや質感の描き分けも明瞭だ。2曲を聴いた時点で、試聴メモには「予想以上に音楽的に浸れる音」と書いてある。

 しかし、本試聴のハイライトはここからだった。XMT20とXDA20はともにI2S端子を備えており、HDMIケーブルを用いたI2S接続が可能、トップウイングの「Ultra Slim I2S」を使って接続したところ、この組み合わせの真価が理解できた。全帯域の情報量やディテイル表現など、多くの面でI2S接続がUSB接続を上回ったのである。

Zenithシリーズの組み合わせで、I2S接続を試す。このサウンドは、一度は体験しておくべきだ

 「XMT20」と「XDA20」は、どちらもI2S端子を搭載しており、HDMIケーブル1本でつなぐことで、高品位なデジタル伝送を実現してくれる。取材時はUSBケーブルとの聴き比べも行ったが、土方さんはI2S接続の方が好みとの話だった。

 例えばレディシのヴォーカルは、背景の静寂感が増し、よりリアルで色気のある存在感を伴って浮かび上がる。クリスチャン・マクブライドのウッドベースも、胴鳴りや弦のニュアンスまで一段と明瞭に感じられるようになった。

 「JANE DOE」では、イントロのピアノにおいてハンマーが弦を叩く感触や胴体の共鳴感まで伝わるようになり、宇多田ヒカルの実体感も向上。サウンドステージには奥行きが生まれる。さらに1分55秒付近、初めて二人の歌声が交わる場面での音楽的な感動も明らかに増した。

 もうひとつ特筆したいのはユーザビリティの高さだ。Eddict Controllerは画面操作への反応が良好で、Linuxベース独自OSの恩恵を感じるレスポンスの良さがあり、楽曲を見つけてから再生するまでのUX(ユーザーエクスペリエンス)に優れる。ネットワークプレーヤーの操作性はカタログスペックに現れにくい要素だが、購入後の満足度を大きく左右する。その点でも本機は納得の仕上がりだった。

 また、XMT20のフロントパネルには再生中のアルバムアートや楽曲名が、XDA20側にもサンプリング周波数等が表示されるなど、本体側でも再生中のステータス確認ができるのは嬉しい。

取材は、土方邸に「XMT20」と「XDA20」を持ち込んで行った。XDA20のバランスアナログ出力をコードのプリ・パワーアンプに入力し、AudioNecのスピーカーをドライブしている

 XMT20とXDA20の価値は、大きく3つある。まずひとつ目は、トランスポートにLinux OSを採用したことに始まる、ハードウェアとソフトウェア両面での音質対策。

 次に、同一メーカーによるトランスポートとD/Aコンバーターのセパレート構成を実現し、そのうえでI2S接続による高音質化を図れる点にある。近年はアジア製DACを中心にI2S対応機が増えているが、ピンアサインの違いなど接続には注意も必要だ。その点、Zenithシリーズなら同一ブランドで統一でき、安心してシステムを構築できる(ピンアサインの変更も可能なので他社製トランスポートとの組み合わせる際の汎用性も高い)。

 最後に、ネットワークトランスポートとしての操作性の高さも印象的だった。

 試聴前は、本当に英国ブランドとしての音楽性が保てているのかと心配していたが、実際のサウンドには、素直に感心させられた。この2台は、英国のオーディオ製品が伝え続けてきたサウンドと、競争力の高いシャンリンによる技術力が上手に融合した好例だと判断する。

 最後に付け加えるなら、近年自宅で試したネットワーク再生システムの中でも、2台をスタックした姿はひときわ美しく、所有する喜びを感じさせるシステムでもあった。

SACD/CDトランスポート「Zenith XST20」を加えて、配信からディスクまでZenithクォリティで楽しむ

写真上から「XST20」「XMT20」「XDA20」

 ONIXでは、ZenithシリーズのSACD/CDトランスポートとして「XST20」(市場想定価格¥321,750前後)もラインナップしている。こちらはCD、SACD(ハイブリッド/シングルレイヤー)、MQA-CDの再生が可能なトランスポートで、XDA20との組み合わせでこれらを高音質に楽しめるというものだ。デザインの統一感もあるので、写真のように重ねて使うにも最適だろう。

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6月13日のシマムセンと19日〜21日のOTOTENで、ONIXのサウンドを体験しよう!

 今回紹介した「XMT20」を筆頭に、ONIXやSHANLINGの注目製品の音を確認できるイベントが大阪のシマムセンと、OTOTENで開催される。

 シマムセンでは6月13日13:00〜14:30にONIX、15:00〜16:30にSHANLINGの製品にフォーカスした試聴会を予定している。さらに19日〜21日に有楽町の国際フォーラムで開催されるOTOTENでも両ブランドの体験が可能。20日12:00〜には小原由夫さんによるSHANLING/ONIX『最新CDプレーヤー』の紹介、22日15:00〜には土方久明さんによるONIX『Zenith XMT20』の紹介イベントも開催される。いずれの回も自由参加なので、関連リンクを参照のうえ、ぜひ足を運んでいただきたい。

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