高校時代に自らの周辺で起こった“とある事件”の真相はいかに? その事件を題材にしたドキュメンタリー映像を制作しようとする大学生(豊田ルナ)が、SNS全盛のいま、その闇の部分――真実を覆い尽くす噂話――にもがき、苦しみ、そしていままで避けてきた自らの心を直視するさまを、完全オリジナル脚本で描いた青春サスペンス『シーシュポスたちのまなざし』が、いよいよ6月5日より全国公開される。ここでは、本作で映画初主演を飾った豊田ルナにインタビュー。役作りの苦労から、今後の抱負まで、話を聞いた。

――よろしくお願いします。いよいよ初主演作が公開を迎えます。

 ありがとうございます。無事に公開を迎えられることが、本当にうれしいです。加えて、GW期間には横浜国際映画祭にも招待していただき、よりたくさんの方に観ていただく機会を得られたことは、すごく喜ばしく思っています。

――映画初主演のプレッシャーはありましたか。

 撮影の時は、そこまでプレッシャーを感じることなく、普通に終えることができましたけど、こうして取材を受けているいまの方が、プレッシャーとまではいきませんけど、作品を背負っているという感覚があって、より強く実感しています。

――インタビューで“主演ですね”と言われることで、緊張がより高まってくる。

 それはありますね。クレジットに(自分の)名前が大きく出ているのもそうですし、ファンの方から「おめでとう」って言ってもらえることが増えているので、周りの方からの影響は、結構大きいかもしれません。

――少し戻りまして、出演/主演が決まった時の心境を教えてください。

 最初は半分冗談だと思っていました。というのも、過去に決まっていたお仕事が突然なくなってしまったという経験があるので、衣装合わせとか、顔合わせの日を迎えて、いよいよ作品が始まるぞという雰囲気にまで行かないと、信じられない性分なんです。

 それもあって、ミスマガジンでグランプリをいただいた時も、「ウルトラマントリガー NEW GENERATIUON TIGA」のヒロインに決まった時も、当初は半分冗談だと思っていたんです。この作品でも、本読みとか、顔合わせが始まるまで、冗談だよって言われても落ち込まないようにしようと思っていました。

――大丈夫ですよ、作品も完成しましたし、もう少しで公開を迎えます。さて、作品の感想や演じられた役柄(黒田真優)の印象について教えてください。

 物語の第一印象は、正直に言えば、ちょっと難しい題材だな、難しいお話だなと思いました。扱っているテーマはそんなに軽いものではないし、他人事にできるものでもない。そして、私自身当事者になり得る立場にいますから。

 一方で、役柄的には、真優は普通の大学生だなっていう印象でした。ただ、その普通さを、どのぐらいいまの私――撮影時の私――に表現できるかという不安もあり、(演じるのは)大変かもしれないなって思いました。

 今回演じてみて強く感じたのですが、個性的な役よりも、普通の役をやる方が難しいんです。(普通を演じると)分かっているんだけど、それがうまく映らない、うまく表せないことがあり、それは、今作の中で、苦労とまではいきませんけど、特に意識した部分でした。

――具体的には。

 私自身、子どもの頃から芸能活動をしていて、ある意味、普通ではない生活を送ってきているせいか、他の人とは視点が違うのかなと思うことも多くて、同い年の人と比べても、俯瞰でものを見る瞬間が人より多いのかなって感じているんです。

 本作の撮影は21歳の時なんですけど、監督からは、大人っぽく見えすぎないようにと言われていて、幼いと言うとちょっとニュアンスが違うかもしれませんけど、自分の年齢よりももう少し若くて、熱心さもあり、誰かとぶつかる時も若さゆえの真っすぐさと言うのでしょうか、ちょっとトゲトゲした言葉遣いになってしまうという雰囲気がある方がいいなと思ったので、いまの自分そのままというよりかは、ちょっと昔のことを思い出しながら、こういう時があったなって、その時の気持ちを想像して、膨らませていったという感じです。

――やってみていかがでした。

 本読みの後に大学生役5人で集まって、ワークショップのようなことをする機会が何回かあったので、そこで、こういう感じはではどうだろうとか、こうした方がいいねという話し合いを重ねていったので、撮影は、結構スムーズに進んでいったという印象です。

 私も含めて、他のキャストのみなさんも、それぞれのキャラクターを、そこで噛み砕いていく時間だったので、めちゃくちゃ叱咤が飛ぶというよりかは、みんなで、こうした方がいいんじゃないかな、ああした方がいいじゃないかって言い合える空間でした。

――劇中の展開でもそうした雰囲気を感じましたが、役作りもそうした雰囲気の中で進んでいった。

 そうですね。みんなで話し合いながら作り上げていったという感覚で、こうした方がいいんじゃないかということは役者同士でも話しあったし、それぞれが監督とも話しているし、私も(監督と)お話しさせていただきましたから、実際の大学のゼミのような雰囲気はありました。

――豊田さんの演じられた黒田は、普通の大学生と仰っていましたが、当初から何か含みのある雰囲気を感じました。

 本当ですか! 特にそういう指示はありませんでしたけど、真優自身、思うところがあるからこそ、その気持ちがちょっと前面に出てしまってもいいかなとは思っていましたから、そう言ってもらえてうれしいです。

――その雰囲気を出す芝居はいかがでしたか。

 特にそうしようと思ってやっているわけではありませんけど、お芝居をするにあたって真優の人物像を作る際に、彼女の性格だけでなく過去についても考察をして、当然、過去の経験は心に中に残っているわけですから、(芝居では)それを隠そうというよりかは、それを考えているからこそ出てきたものであるのかな、と。外側だけでなく、内側にあるもの(考えていること)も大事にしたいと思っていました。

――すごく感じました。

 ありがとうございます、よかったです。

――黒田にとって、過去の出来事を明らかにしたいという動機は、相当に大きかったようですね。その強い思いをどのように受け取りましたか。

 それと直接関係しているか分かりませんけど、例えば、自分が何かを指摘された時――自分の中で分かっていること――って、めちゃくちゃ嫌というか、分かってるよ! って思うんですけど、そう感じても“ありがとうございます”って言えることが大人になることの一つなのかなって思っていて、おそらくそれに似ていて、真優の中にも、これを受け止めなければいけないっていうものがあるから、本能的に調べたい、題材にしたいと思ったのだろう、と。それを追い求めた結果、最後にやっと真優の中で大人になった瞬間というか、成長した瞬間があったと思うので、これを調べたい・調べようと思いついたというよりかは、初めから何をしたらいいかは分かっていたけど、口に出すのが怖かった。そういう感覚なのかなって考えていました。ここを認めないと、次に行けないと思ったのかもしれません。

――黒田自身、調査を進めていくうちに、大きく変わっていく、その雰囲気は強く感じました。

 ありがとうございます。見ているうちに、だんだん応援したい気持ちになっていきますよね。課題を頑張れっていう意味だけでなく、自分の中の何かを塗り替える、一皮剥けるところにいる5人の大学生っていう感じで、私も一観客として映像を見た時にそう思ったので、これから作品をご覧いただくみなさんにも、その感覚を味わっていただけるんじゃないかと思います。

――ゼミのメンバー全員が成長します。

 それぞれがそれぞれに弱いところというか、ウィークポイントを持っていて、それを克服するためにこの課題に向き合っていた、という感じも受けました。

――そのメンバーの中で、常に突っかかって来る原口健斗(平野宏周)はいかがでしたか。

 いやもう(笑)、演じられた役柄がご自身の性格と違いすぎていて、すごいなと思いましたよ。嫌味ったらしい言い方がもう、演技と分かっていても本当にムカつきましたから(笑)。それはそれだけお芝居が上手っていうことなので、私もそれに感化されてできた部分もたくさんあったので、感謝しています。ただ、原口のそれも、真優が嫌で言っているわけではないということが後半になって(真優にも)伝わりますから、そこに至るまでの真優の寛大な対応も、見どころの一つだと思います。

――黒田は自らのテーマの取材を進めますが、なかなかうまくいきません。

 そうなんです。それに、お芝居とはいえ、インタビューを断られるのは、あまりいい気持ちはしなかったし、シュンってなるのも分かりますね。断り方にもいろいろあって――申し訳なさそうに断る人や、高圧的な人など――これがリアルなんだろうと思う反面、その経験が他のシーンで活きていると思うので、シュンとはなりつつも、今後の糧にしようっていう気持ちはありました。

――インタビューの返事が来た時に、黒田がみんなの前からいなくなるところは、気になりました。

 そうなんですよ。やっぱり強がりなので、断られてシュンってなる姿――自分の弱いところ――を見せたくなかったからだと思います。

――少しネタバレしますが、中盤でとある展開になった際、普段は見せない表情を出しました。

 なかなかネタバレせずにお答えするのも難しいのですが、真優は、嫌悪感というか、圧倒されてしまうような状況に陥ってしまい、それと戦おうというよりは、割と素直な反応をしてしまった。ただ、そうしたことで、見せたくない部分を出してしまった。それがすごく嫌で、大学生という多感な時期の、つまりは若いがゆえに取り繕えない、隠せないリアルな反応なのかなと思ったので、演じる際はそれを隠さずに、全面に出すようにしました。

――唯一、真優の感情が発露したシーンでした。

 一所懸命に課題をやりたい、形にしたいと思っているのに、このままでは自分の思った方向にはいかない。とにかくそれが嫌で、真優は自分主観で物事を考えているから、そこを荒らされるのは嫌だろうなという部分は、意識的に出すようにしました。まさに、タイトルにもなっている「シーシュポス」だなって思っていました。

――「シーシュポス」とは言え、一応のエンドは迎えます。

 真優としても、自分なりに調べて、自分のことも鑑みて考えた結果の真実がそこにあったので、完成させた課題を評価してもらえたのは、これ以上ない嬉しさを感じていたのだろうと思います。

――真実を得るシーンは迫真でした。

 台本上でもすごく長いシーンだったのですが、実際の撮影もめちゃくちゃ長かったです。ここも、ネタバレしないようにするのは難しいのですが、ついにここまで辿り着いたんだっていう感じもあるし、すごく繊細なものに触れてしまったという気分もありました。だから、言葉を発する時は、一つ一つの言葉を逃さないようにと思いながらセリフを発していたし、ピリピリしている緊張感ではなくて、程よく場が閉まる空気感がそこにはあった、というのが印象に残っています。

――本作に出演して、初主演を経験して、ご自身の成長はありましたか。

 はい! 共演させていただいたみなさんはベテランの方がたくさんいらっしゃったので、その方々の台本の向き合い方とか、お芝居の作り方など、すごく勉強になるものがたくさんありましたので、それらを一つずつ吸収して、自分のものすることがちょっとずつできた期間でした。加えて、いままでとは違うテイストのことをやって(演じて)、自分の守備範囲が大きく広がったように感じています。荒削りなところを整えるのはこれからでも、(自分が)ここまでできるんだっていうことが分かったので、自分の幅をとても広げてくれた作品だと思っています。

――月並みな質問ですが、見どころをお願いします。

 作品としては、メインのテーマでもある、SNSに流れているさまざまなニュースや言説に惑わされないように、いろいろな視点から物事を見るようにしてほしいですし、想像で物を言うことで、それが誰かの人生を左右するかもしれないという危うさが、WebやSNSにはあるということを、ちょっと感じていただけたらいいなと思います。加えて、自分で見たり聞いたりしたことも、本当のそうなのかをきちんと調べてみようという気持ちになっていただけたら、作品の意味が出てくると思います。

 私個人としては、これまでとは全然テイストの違うお芝居(ほとんど笑わない)をしていますので、その笑っていないところと、その中での移り変わりを、細かく注目して見ていただけたらと思っています。

――今後やってみたい役柄はありますか。

 今回はミステリー的な要素で、出来事の中身(隠された秘密)を追求していく感じでしたけど、次は、事件を解決する探偵をやってみたいです。犯人を追い詰めたいですね。あとは、職業のあるもの、例えば学校の先生とか、弁護士のように職業としてあるものとか、専門知識が必要なものをやってみたいです。

――アイドルグループ、グラビアの面では。

 グラビアでは、そろそろサード写真集が出せたらいいなと思っています。アイドル(AND CaaaLL)としては、この間の1.5周年のワンマンが大成功だったので、次はもっと大きな会場でライブをしたいですし、夏に向けては、TIFや@JAM EXPO、関ケ原唄姫合戦など、夏フェスに出たいです。

――ありがとうございました。

映画『シーシュポスたちのまなざし』

2026年6月5日(金)より シネマート新宿 他全国順次公開

<キャスト>
豊田ルナ 平野宏周 髙岡優 山下航平 染野有来 門間航 大友一生 根矢涼香 神嶋里花 さくら 山戸ユキノ 松尾潤 小川涼 北川駿 長澤眞子 溝口奈菜 斉藤陽一郎 山田キヌヲ 橋本美和 / 細田善彦

<スタッフ>
監督・脚本・編集:井上博貴 プロデューサー:佐藤友彦 撮影:浅津義社 照明:石川冬生 録音:田原勲 衣装:中村もやし メイク:くつみ綾音 助監督:河野宗彦 制作部:大塚勝彦 演出部:秋葉美希 音楽/整音:中西ゆういちろう カラーグレーディング:中村里子 スチール:斎藤雄太郎 SNS担当:真田和輝/須藤 洸勇/金世実 ポスターデザイン:大西隆斗 製作:「シーシュポスたちのまなざし」製作委員会(BBB/テラスサイド) 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム 宣伝:とこしえ 制作:BBB
(C)2026「シーシュポスたちのまなざし」製作委員会

豊田ルナ/黒田真優役 プロフィール
2002年生まれ。5歳から子役として芸能活動を開始し、数多くのCMやドラマに出演。2019年には「ミスマガジン2019」にてグランプリを受賞し、大きな注目を集める。2021年には特撮ドラマ「ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA」でヒロインのシズマユナ役を演じ、劇場版を含め幅広い層から支持を得た。近年の出演作には、ドラマ「恋は湯けむりの中で」(24/tvk)、「3年C組は不倫してます。」(24/NTV)などがある。今作が映画初主演。

公式サイト
https://platinumproduction.jp/talent/toyodaruna/

ヘアメイク:くつみ綾音
スタイリスト:中村もやし