NHKは、技術研究所が日夜行っている放送技術の研究の成果を発表する毎年恒例の「技研公開2026」、および各放送局が開発した技術展示会「NHK TECH EXPO2026」を、今年初めて合同開催という形で、世田谷の砧にあるNHK技術研究所にて、5月28日(木)から31日(日)までの四日間にわたり開催する。

 展示内容も豊富で、10年、20年先を見据えた最先端の「技術成果」をその目で体験できるほか(技研公開)、全国の放送の現場で生まれた実践的な技術・知恵を、同時に楽しめるようになっている。

 技研公開では、16のブースによる技術展示と、6つの体験スペース、2つの体験スペースの、計24の展示が楽しめる。一方、TECH EXPOでは技研ビル7Fのフロアを使って11のブースが設営されている。ここでは両展示会の中からおススメのブースをピックアップしてお届けしたい。まずは技研公開2026から。

(1)ドローン用無線伝送技術

 ドローン(無人航空機)を活用して、空撮映像を積極的に使うための伝送技術が2種類展示されていた。一つは、より長距離の伝送を可能にする「空飛ぶロボカメ」で、こちらはFPU(ニュースの現場など、映像・音声を基地局へ無線で伝送する装置)を搭載しており、送出については上部に搭載した計12個のアンテナを使い、受信アンテナへの感度を勘案しつつ、送出方向を自動で制御し、常に安定した送信・受信ができるようになっているのが特徴。自前の回線を使って伝送している。

「空飛ぶロボカメ」

「IP回線中継ドローン」

 もう一つは、IP回線を使って信号を伝送する「IP回線中継ドローン」。こちらは双方向の通信が可能なIP回線を使っているのが特徴で、「空飛ぶ~」よりはもう少し近場で活躍する機体。映像の受信と操縦が双方向で行なえる。また、機体の下部には無線LAN装置も搭載されていて、地上のスマホと接続し、ドローンを経由して基地局とのビデオ通話も行なえるという。

(5)AIを活用した手話コンテンツの拡充

 端的に紹介すると、音声から手話のCG映像を作成するもの。音声をAIが文字(テキスト)として認識し、その文言(文節)に対する手話の動き(モーション)を作成、それらを会話の状態になるようにつなげていき、人が行なうような自然なCG手話動画ができる、というもの。次々出てくる新しい言葉(新型コロナなど)に対応した手話も開発(?)されているそうで、このシステムが実用化されると、手話のリアルタイム性や速報性が確保される、ということだ。現在では日本語対応のみになるという。

(6)広視野撮影に適した凹面湾曲イメージセンサー

 文字通りお椀のように湾曲した映像センサーのこと。カメラシステムの小型と、広視野角を両立させるには、センサーをレンズに合わせて湾曲させてやると、周辺部の収差などが軽減されるという。曲率は、昨年は25mm、今年は15mmまで小さく(より曲げたという)できたそう。試作機はQVGA解像度なので粗く見えるが、周辺のぼやけは抑制されているのが分かった。今後は、生産技術の確立と高解像度化が課題という。

(10)ライトフィールドヘッドマウントディスプレー

 ヘッドマウントディスプレイタイプで、裸眼立体を実現するVR表示デバイス、となる。今年はヘッドマウントディスプレーの“小型化”が注目になるそうで、主には原理的に必要となる「レンズアレー」と「接眼レンズ」の2枚のデバイスを接着(?)できたことで、システムの奥行が短くなり、結果小型化につながった、ということだ。展示では3台のシステムが用意され、2分ほどの裸眼立体映像が楽しめるようになっている。メガネユーザーはメガネを外して見ても、システム側がピント調節してくれるので、裸眼でもフォーカスのあった映像が堪能できた。

左が今年の新型。2枚のレンズ(?)を接着でき、省スペースになった。右は前モデル

(15)ライブ出力対応15K 360度カメラ

 文字通り、360度の映像を撮影できるカメラシステム。ブース(14)ではその映像の圧縮(符号化)技術、およびライブ伝送についての説明もあるので、一緒に見ておきたい。さて(15)では、縦横8K×8Kのセンサーを使った180度カメラを背中合わせで搭載し、360度の映像を撮影できるようになっていた。

 ブースの対面には、8K8Kのセンサーを使った小型の正面180度カメラ(15K 360度カメラの前半分という感覚)の展示もあり(NAB2026でBest Paper Awardを受賞)、実際に番組で使用されており、その際の映像がヘッドマウンドディスプレイ(2D)で視聴できるようになっていた。

(N2)放送技術の基盤となったさまざまな真空管

 最新技術ではないが、面白かったのがコレ。往年の各種真空管を展示しており、これらは普段、NHKの放送博物館の倉庫に眠っているという。一般ユーザーから寄贈されたコロムビアのテレビ受像機「7-T1」もあり、一つは分解展示、もう一つは実際に稼働(地デジ信号をRFにして入れて再生)させていた。ブラウン管がかなり弱っているようで、映像が縮小していたのが懐かしい感覚。ほか、80年代の中盤までカメラの主流だった撮像素子(ビジコン、サチコン)の実物も展示されていて、当時のオーディオ・ビジュアル誌面では見ていたが、実物を見るのは初めてで感動した。

https://www.nhk.or.jp/strl/open2026/index.html

https://www.nhk.or.jp/techexpo/