物語の舞台は、第一次世界大戦下、1916年頃のイギリス北部ヨークシャー。男たちは次々と兵役にとられていく。音楽好きであろうが、歌がうまかろうが、等しくだ。だから合唱団からは男性の歌い手が減り、存続の危機に瀕していく。「この緊急時に歌っている場合か」とか「歌で空腹が満たされるものでもないだろう」という意見もあったと思われるが、音楽や文学は数ミリ違う角度で捉えたらプロパガンダの道具にもなりうるということは歴史が証明する限りだ。

 合唱団の新指揮者に選ばれたヘンリーは、ドイツで活動していたという前歴を持つ医師。イギリスとドイツといえば第一次世界大戦下の敵国どうしではないか。ヘンリーがどう冷たい視線を浴びながら指揮者を続けていくのかについては映画のストーリーが語る通りだが、彼が合唱団の新メンバーに迎えたのは、退役軍人、売春婦、少年などの、言っちゃ悪いが、歌い手として経験不足の面々だった。が、ヘンリーの見る目は確かで、彼らから次々と潜在能力、音楽や合唱に対する愛が引き出されてゆく。が、戦争は激しくなるばかり。その状態で彼と合唱団はどうするのだろう、ということに見る者の興味は集中するはずだ。そして勇壮なエンディングへと流れゆく。

 監督とプロデューサーは英国アカデミー賞・トニー賞受賞の演出家ニコラス・ハイトナー、脚本はアラン・ベネット。主演はレイフ・ファインズ(『教皇選挙』『ザ・メニュー』など)、共演はロジャー・アラム、マーク・アディ等。バッハ「マタイ受難曲」、エルガー「ゲロンティアスの夢」などの楽曲にも注目したい。

映画『ザ・コラール 希望を紡ぐ歌』

5月15日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

監督:ニコラス・ハイトナー 脚本:アラン・ベネット
出演:レイフ・ファインズ、ロジャー・アラム、マーク・アディ、アラン・アームストロング、ロバート・エムズ、サイモン・ラッセル・ビール
2024年/イギリス・アメリカ/英語/カラー/ユニビジウム/5.1ch/113分/原題:The Choral/日本語字幕:斎藤敦子
配給:ロングライド
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