Dolby Japan(以下、ドルビージャパン)は先日、大井町にオープンした大型複合再開発施設「OIMACHI TRACKS」にできた映画館「TOHOシネマズ大井町」内のDolby Cinema(ドルビーシネマ/スクリーン8)にて、「ドルビーシネマ特別体験会」を開催した。

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 当日は、ステレオサウンドONLINEのようなオーディオ系のメディアだけでなく、ドルビージャパンと付き合いのあるさまざまな関連企業、または映画監督、音楽家・作曲家、俳優陣も招待され、さまざまなドルビーシネマ作品のハイライトが上映され、ドルビーシネマが創り出す芳醇な映像美と臨場感あふれるサウンドを体験することができた。ここでは、その模様を簡潔に紹介したい。なお、ドルビーシネマ作品の上映に関するインプレッションは、ステレオサウンドONLINEでも御馴染みのBlu-ray・DVD制作プロデューサー:伊尾喜大祐氏にお願いしている。

ドルビーシネマは、エスカレーターを上がって右の奥、スクリーン8

御馴染みの回廊

 冒頭には、ドルビージャパンの大沢社長が登壇し、いつも通りのユーモアを交えながら、ドルビーシネマの技術やクォリティ、あるいは家庭や劇場、車(カーオーディオ)への普及について説明してくれた。

 さて、説明に続いては合計で6作品のドルビーシネマ作品のハイライト上映が行なわれ、途中には、映画監督の樋口真嗣、音楽家の岩崎太整、俳優の西岡徳馬、南果歩、別所哲也らも登壇し、そのクォリティに魅了されていた。コメントをまとめると、

樋口真嗣「ドルビーシネマの中で一番音がいいと思いました。スクリーンサイズもめちゃくちゃでかくて、圧倒的に気持ちよかったです」

岩崎太整「すごくいい音で、この先映画はこの劇場で観ようという候補の一つに確実に入る音響に感じました」

西岡徳馬「ここまですごい体験ができるんだって感動です。これだけのことができるとなると、(映画作りの方も)脚本や演出、カット割り、それこそ芝居も変わってくるんじゃないかと思いました」

南果歩「これが没入感というものなのではないでしょうか。映画は観るものから体感するものになったと思いました」

別所哲也「映画が始まってから130年あまり、次々と新しい技術・仕組みが生み出されてきて、僕らのように表現に携わる人間にとっては、どんどん新たな表現にチャレンジしていく環境が整ってきたと思います。ショートフィルムの映画祭を毎年開催していますので、次世代のは俳優や監督たちに、こうした技術が使えるんだよっていう繋がりを持てる場をもっと作っていきたいです」

 今後は下記作品がドルビーシネマで上映予定となる。

・上映中 『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』
・上映中 『プラダを着た悪魔2』
・5/22~ 『スター・ウォーズ マンダロリアン・アンド・クローグー』
・6/12~ 『Michael/マイケル』

以下、伊尾喜大祐氏のドルビーシネマ上映のインプレッションをお届けしたい。

 2026年3月28日、都内TOHOシネマズ初のドルビーシネマが大井町「OIMACHI TRACKS」に開業した。シアター8のスクリーンは14.0×5.9m、総座席数264席だ。

 指定された席はB列6番。前から2列目の左寄りで、映像・音響面ではスイートスポットとは言いがたいはず。しかし14m超のスクリーンで、4Kデュアルレーザーの精緻なドルビービジョン映像を、至近距離で浴びる席だとも言える。ここからドルビーアトモス音響がどんなバランスで聞こえるかも試聴ポイントだ。

 この日はおなじみドルビーシネマのデモ映像に加え、6本のドルビーシネマ作品のハイライトが上映された。タイトルの詳細は明かせないが、それぞれのインプレッションから、この劇場のポテンシャルを感じていただきたい。

■大海原で船舶を追いかける大怪獣
 怪獣の体表の凹凸が触れそうなほどの立体感で浮き上がる。波の飛沫の粒立ち、海中に沈む巨体の周囲に広がる海のグラデーションに、「水」の透明度をここまで表現できるのかと、思わず前のめりに。怪獣を襲う艦砲射撃の爆発も激しかったが、その直後に青白い熱線が戦艦を貫く爆炎には目を見張った。のっけからドルビーシネマのハイコントラストとひじょうにシャープな映像の描写に驚かされる。

■漆黒の闇から現れる怪獣
 夜間の襲来シーンでは、映像が極めてシャープゆえに、駐機中の戦闘機の合成のエッジが暗闇にわずかに浮き上がるほど。ドルビーアトモスの効果も絶大で、操縦席の主人公の真上から迫る怪獣の吐息に、その湿度まで感じられそうなほどだ。

■スターへの道をガガッとかけあがる歌姫の物語
 大物シンガーのライブに招かれた女性が、裏口からステージへと向かう場面。主人公が歩く通路に響く演奏がじわじわ近づき、ステージに到着した瞬間に、ボーカルとバンド演奏、そして観客の熱狂がサラウンド空間で大爆発……! 劇場がライブ空間に変わる瞬間だ。躍動感あふれるシンガーの顔に浮かぶ汗の粒が、ステージ照明で光る様も克明だ。

■レース映画冒頭、夜のデイトナ
 轟くエグゾーストノイズが体に響き、マシンの走行音が音場を縦横無尽に疾走する。スピーカー間の音の繋がりが素晴らしく、前から2列目での鑑賞であることを感じさせないサーキットの臨場感はドルビーシネマスクリーンならでは。夜空の花火はどっしり沈んだ「黒」にまばゆく映え、舞い散る火の粉が帯びた熱すら感じさせた。

■重力に抗うミュージカル
 ホームシアターでも何度も観返しているのに、初めて魔女の鮮やかな緑の頬を伝う、涙の粒に気づいて……デモ映像なのに落涙。見知った映像に新しい発見があること……これこそ映画館にホームシアターが敵わない証拠だと思う。重力に、世界に抗う! という高らかに歌う魔女。彼女が空へ舞い上がる瞬間、サブウーファーが発する「風圧」が全身を揺さぶった。ほぼ最前列ゆえ、浴びる振動量はスイートスポットの比ではなく、4DXとはまた異なる没入感を味わえた。

■超音速・マッハ10!
 世界最高の戦闘機パイロットが帰還した超大作。冒頭で離陸するのは超音速の戦闘機。頭上を聾するエンジンの響きが、スクリーン前方から客席後方の頭上へとあっという間に飛び去る! 朝焼けの雲海を切り裂くアフターバーナーの青い炎が、HDRでより一層力強い。主人公のパイロットが亡き親友の名を囁く声は、観客の耳元で囁かれたような絶妙な距離感だ。スケールの大きなアクションとミニマルな感情描写を同時に成立させてしまうバランス感覚こそ、このスクリーンの実力だと感じた。

 最後に総評になるが、最前列付近の座席でも映像の粗が気にならない、4Kデュアルレーザーのドルビービジョンの映像のパワーに圧倒された。ドルビーアトモス音響もスイートスポット外だったが充分な情報量。音の繋がりも素晴らしく、トップスピーカーの効果もはっきり聴き取れた。特にサブウーファーがもたらす「音圧」は、家庭環境での再現は不可能に近いレベルの迫力で、ドルビーシネマならではの特権と言える。

 ただし、おなじみ「本当の黒」の評価は今回は保留したい。筆者の位置からは演壇のライトがスクリーンにわずかに反射しており、内覧会というシチュエーション上、ドルビーシネマ最大の武器を厳密に確かめる環境ではなかった。この点については、機会を見つけて必ず確認のために再訪したい。

テキスト:伊尾喜大祐