こんな映画が存在したとは! 音楽作品にたとえるなら極上のレア・グルーヴといったところだろう。
1970年万博の台湾パビリオンのコンパニオンに抜擢された少女(ジュディ・オング)が、“父の亡き後、母と自分に大変な援助をしてくれた恩人の男性”を探すために、万博会場はもちろん関西の名所や北海道にまで足を運ぶ、というのがメインのストーリーで、そこにはあの戦争が終わってから四半世紀が経ったという事実もしっかり染みこませてある……のだが、それをさしおいてヴィヴィッドなのが“レイト60’s”の香りが漂うファッション・センス、色合い、そして音楽だ。本筋に入る前に、まずジュディの歌唱シーンがあるのだが、そのうちのひとつがバート・バカラック作のアレ(曲名は見てのお楽しみ)。おそらく俳優たちが演じているのであろうバンド演奏の当て振りも妙にハイテンションで嬉しくなる。もちろん、実際の70年万博の模様もしっかり捉えられており、目から光を放つ夜の太陽の塔がこんなにかっこよかったとは、リアルタイムで接した人々が本当にうらやましい。
やたら出生数の多い時代に産まれ、氷河期時代モロかぶりでバブルの波にも乗り遅れた私は、自分の生まれる前の高度経済成長時代に強い関心があるので(一生こうした高揚と縁のないまま死んでいくのだなという淋しさと共に)、当然万博も好物であり、当時の写真集や図面を見ては脳裏であれこれ想像のパビリオンを組み立てて、『公式長編記録映画 日本万国博』もDVDで何度も視聴して今に至る。が、『万博追跡 2Kレストア版』の鮮度は画質、音質ともに驚くほど抜群で、没頭の楽しみを十二分に教えてくれるものだ。
台湾映画の保存・振興機関である国家電影及視聴文化中心(TFAI)の協力でデジタル修復され、第21回大阪アジアン映画祭のオープニング作品として日本初上映された作品の、待望の劇場公開。監督は日本で台北駐日経済文化代表処の文化広報部長を務めた経歴を持つリャオ・シャンション、ほか美術の三上陸男、顧問の八木政雄(正夫)などの関与も貴重といいたい。ジュディ・オングといえばクジャクのような衣装で歌った大ヒット曲「魅せられて」が有名だが、あれが出るのはこれから約10年後のことである。
映画『万博追跡 2Kレストア版』
4月10日(金)より、シネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開
監督:リャオ・シャンション
出演:ジュディ・オング、フォン・ハイ、フー・ビーホイ、スー・ウェイ、チェン・クオチュン、原田玄、川名美彌、衫森麟
2025年(オリジナル版:1970 年)|台湾|97分|中国語|スコープサイズ|モノラル|カラー|原題:萬博追踪(2K數位修復)|
翻訳:藤原由希|配給:ハーク|配給協力:Elle Films|協力:大阪アジアン映画祭
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