エミライでは、iFiオーディオの新製品ネットワークプレーヤー/DAC「iDSD Phantom」の日本でのお披露目スペシャルイベントを開催した。そこに展示された今春発売予定の新製品は以下の通り。
●ネットワークプレーヤー/DAC:iDSD Phantom 海外での予価4,499ドル(税別)
●DAC内蔵ヘッドホンアンプ:NEO iDSD 3 海外での予価999ドル(税別)
●ネットワークストリーマー:NEO Stream 3 海外での予価999ドル(税別)
お披露目された新製品。左から「NEO iDSD 3」「iDSD Phantom」「NEO Stream 3」
スペシャルイベントでは、エミライの取締役 ブランド戦略マーケティング統括 島 幸太郎さんから挨拶があった。
「iFiオーディオというブランドを語る上でまずお伝えしたいのは、このメーカーが単なるビジネスとしてオーディオ機器を作っている会社ではないということです。世の中の新しい技術をいち早く取り入れ、それを実際の音の価値としてどう活かしていくか、iFiオーディオはオーディオマインドを持った人々が真剣にこの課題に取り組んでいるメーカーです」(島さん)
さらに「DACチップやSoC、各種デジタルデバイスはひじょうに高度化しています。しかし、ただ優れた部品を使えばいい製品になるわけではありません。そのデバイスが持っている性能や可能性をどこまで深く理解し、使いこなせるかが重要だと思います。
iFiオーディオはまさにこの部分に強みがあります。デバイスをただ使うのではなく、内部の挙動や設計思想まで踏み込んで、電源、信号処理、アナログ回路などをていねいに追い込んで、最終的に音楽体験として意味のある形に仕上げていく。そうやって、技術(デバイス)の進化を引き出すことに力を注いでいるメーカーだと我々は考えております」と、iFiオーディオが製品づくりで大切にしている点を解説していた。
登壇した方々。左からiFiオーディオ CEO/共同創業者のVincent Lukeさん、BCCJ(英国商工会議所 日本)エグゼクティブディレクター Sarah Backleyさん、iFiオーディオ アジア太平洋地域 セールス ダイレクターのDuncan Fukさん、BCCJ コミュニケーション・デジタルマーケティングリード Josh Welchさん
続いて、iFiオーディオ CEO/共同創業者のVincent Luke(ヴィンセント・ルーク)さんが登壇、同社の歴史を紹介してくれた。
iFiオーディオは、イギリス・リバプールの北西にあるサウスポートという町で誕生し、現在もここに本部を構えているそうだ。2006年の創業時はAMRという会社名で、主にハイエンドプロダクトを手掛けていたという。2012年にiFiオーディオとしてスタート、過去の技術や栄光を継承しつつ、最新のトレンドを取り入れながら発展してきた。そこでは大型システムでのオーディオ体験だけではなく、若い世代に向けて、どこにでも持っていける小型コンポーネントも多く手掛けてきた。実際に、2013年に発売した「Nano iDSD」は、日本を含めた全世界で人気を博したそうだ。
また近年の同社トピックとしては、JVCケンウッドと協業し、K2/K2HDテクノロジーを搭載した製品を発売したことも見逃せない。
この点についてヴィンセントさんは、「日本の優れた考え方や思想と、イギリスの古き良き伝統で、いかにシナジーを作っていくかを念頭に置きつつ、製品開発に取り組みました。JVCケンウッドは、ただ利益を上げればいいという会社ではないと思っています。そんな相手を説得するのは難しいことでした。今回K2/K2HDテクノロジーを我々の製品に実装できることになったのは、ひじょうに光栄だと思っています」と嬉しそうに話してくれた。
iFiオーディオは、ビートルズの故郷としても有名なリバプールの北西にあるサウスポートで創業した
続いてiFiオーディオ アジア太平洋地域 セールス ダイレクターのDuncan Fuk(ダンカン・フク)さんから、新製品iDSD Phantomについての解説が行われた。
iDSD Phantomは、ネットワークプレーヤー、DAC、プリアンプ、ヘッドホンアンプといった機能を備えアイテムだ。ロールス・ロイス ファントムからインスピレーションを受けた、威厳と余裕のある力強いデザインを採用したという。
また、「なぜこんなに小さく、コンパクトさを重要視したかと言いますと、日本もそうだと思いますが、私の故郷の香港でも、今の若い世代は自分のスペースを大事にしています。なので、いかにコンパクトに高音質を体験できるかはひじょうに重要になんです」と、ダンカンさんがサイズへのこだわりも披露してくれた。
その筐体にはカスタムスタジオグレードのDSD2048リマスタリングエンジンや先述のJVCケンウッドとの協業によるK2HDテクノロジーを搭載する。また独自技術としてXBass Pro(アナログ可変型シェリビングフィルター)とXSpace Pro(アナログ可変型ステレオ空間補正)、さらに5種類のデジタルフィルターも準備されている。
「iDSD Phantom」はふたつのダイヤルで各種設定や音量調整等を行う。フロントパネルのカバーを外すと4種類のヘッドホン端子が現れる。取り外したパネルは本体裏側に収納する仕組みだ
ストリーミングや外部接続したデジタル音源の再生時にはこれらの機能/フィルターを任意に組み合わせることもできるので、好みに応じて多彩な再生音を楽しめることになる。
DACチップはバーブラウン製DSD1793を4基、インターリーブ構成で搭載、最大でリニアPCM 768kHz/32ビットとDSD512のネイティブ再生に対応している。その他、QobuzやSpotify、Roonにも対応済(別途契約は必要)で、アプリからの操作でハイレゾストリーミングも楽しめる。
アンプ回路には、真空管(NOS GE5670)と半導体(ソリッドステート)を搭載。これらは独立した回路構成となっており、並列動作しているのでリアルタイムに切り替えて音の違いを楽しめる。これも古き良き技術と最新のイノベーション技術の両方を贅沢に掛け合わせた仕様とのことだ。
接続端子はUSB Type-Aが2系統とType-B/Cを搭載。データアップデート用のType-C(背面に搭載。音楽信号の再生はできない)や同軸デジタル入力(RCA)を備える。その他にもLAN(RJ45)と光LAN(SC)端子を搭載済だ。M12コネクターに加えてBNCによるクロック入出力もついている。
「iDSD Phantom」の背面端子。XLRとRCAのアナログ出力を備えているので、プリアンプとしても使用可能
出力端子は、背面に2系統のアナログ出力(XLRとRCA)を、前面のパネル内には3.5mmアンバランス、4.4mmバランス、XLR(4pin、TRS)のヘッドホン端子を備えるという徹底ぶりだ。
なおアナログ出力(XLR/RCA)とヘッドホン端子は排他式で、通常はアナログ出力から音声信号が再生されているが、ヘッドホン端子に機器が接続されるとそちらが優先となり、アナログ端子は自動的にミュートされるという。
ヴィンセントさんにこの点について確認すると、「iDSD Phantomは、普段はアクティブスピーカーやパワーアンプにつないで音楽を楽しんでいただき、夜に音を出せないといった時にヘッドホンを使っていただきたいと思っています。そのためにこのような仕様になりました」とのことで、iFiオーディオとしては、アナログ出力の品質にもかなり自信を持っていることがうかがえた。
DAC内蔵ヘッドホンアンプ「NEO iDSD 3」
同時展示された「Neoシリーズ」の2モデルは、NEO iDSD 3がDAC内蔵ヘッドホンアンプ、NEO Stream 3がネットワークストリーマーというカテゴリーだ。
NEO iDSD 3はバーブラウンのチップをベースにしたカスタムDACを搭載し、最大でリニアPCM 768kHzとDSD512のネイティブ再生に対応する。こちらもK2/K2HDテクノロジーを採用済。接続端子は光/同軸デジタル入力、USB Type-B、BNCクロック入力、アナログ入力(RCA)が各1系統で、アナログ出力はXLRとRCAの2系統を備えている。
ネットワークストリーマーの「NEO Stream 3」
NEO Stream 3はQobuz、Tidal、Spotify、Roon等に対応したストリーマーで、最大でリニアPCM 768kHz、DSD512のハイレゾ信号をネイティブでサポートしている。接続端子も充実しており、入力にはM12、LAN(RJ45)、光LAN(SC)、出力端子はUSB Type-A/C、HDMI(I2S)、光/同軸/AES EBUデジタル出力も備える。さらにアナログ出力(RCA)、4.4mmバランス出力も使用可能になっている。
今回試聴した際のパラメーター設定
今回短時間ながらiDSD Phantomの音を確認できた。ストリーミングサービスのQobuzでダイアナ・クラールのボーカル曲を再生する。上記の通り、iDSD Phantomでは入力信号に対し、「K2/K2HD」「DSD2048リマスター」「XBass Pro」「XSpace Pro」「5種類のデジタルフィルター」のそれぞれをどのように掛け合わせるか自由に設定でき、それによって音質も変化する。
今回は「K2HD」オン、「DSD2048リマスター」オン、「XBass Pro」と「XSpacr Pro」はオフ、「5種類のデジタルフィルター」は「Bit Perfect Plus」を選んでみたところ、ひじょうにニュートラルで、誇張感のないサウンドが楽しめた。声の伸びもかなり自然で、これだけ複雑なデジタル処理を行ったとは思えない生成り感がある。
iDSD Phantomは、最新デバイスの使いこなしに腐心したことがうかがえる、iFiオーディオらしい音楽性のあるサウンドを楽しめる製品になっている。(取材・文・撮影:泉 哲也)