先般イタリアVolumio(ボリューミオ)のネットワークプレーヤー「Primo Plus(プリモプラス)」のリスニングリポートをお届けしたが、同社にはネットワークオーディオ機能を内蔵したプリメインアンプ「Integro(インテグロ)」もラインナップされている。

※「Primo Plus」のリポートはこちら → https://online.stereosound.co.jp/_ct/17826670

 Primo Plusと同サイズの横幅270mmのコンパクトなアンプで、スピーカーをつなぐだけ、本機1台で高音質ストリーミングサービスなどデジタル音楽ファイルが快適に楽しめるわけである。ここでは英国KEFのコンパクト3ウェイスピーカー「R3 Meta」と組み合わせてニアフィールド・リスニングを実践、そのサウンドをリポートする。

プリメインアンプ:Volumio Integro ¥203,500(税込)

●アンプ方式:Class Dアンプ
●出力(スピーカー用):50W✕2(8Ω)、70W✕2(4Ω)
●接続端子:USB Type-A 2系統、デジタル入力2系統(同軸、光)、アナログ入力(RCA)、LAN端子、HDMI映像出力、MicroSDカードスロット、ヘッドホン出力(6.3mm)、サブウーファー出力、スピーカー出力
●内部DACサンプリングレート:192kHz/24ビット
●Bluetoothコーデック:aptX、aptX Low Latency、SBC
●対応サービス:Airplay(Shairport Sync)、Spotify(Spotify Connect)、TIDAL(TIDAL Connect)、Qobuz(Qobuz Connect)
●CPU:Amlogic S905D3、Quad Core 1.9 GHz
●RAM:2GB DDR4
●内蔵ストレージ:16GB EMMC
●寸法/質量:W270×H50×D150mm/1.3kg

「Integro」のリアパネルには各種端子がずらっと並ぶ。スピーカー端子はスクリュー型で、端子の間隔が狭いのでバナナプラブの使用がお薦めだ

ニアフィールド・リスニングの醍醐味を満喫できるコンパクトシステム

 「ニアフィールド・リスニング」とは何か。日本語で言えば「近接試聴」。スピーカーににじり寄って直接音主体に音楽を聴くスタイルで、音量を上げずとも満足できるラウドネスが得られ、4.5帖や6帖の狭小空間で実現できる。実際さほど意識することなくそれを実践されている方も多いことだろう。

 また、ステレオサウンド誌で和田博巳さんが「ニアフィールド・リスニングの快楽」という連載(のちに単行本化)を持たれたことでこのスタイルを意識するようになったという方もおられるかもしれない。

 それから、レコーディング・スタジオでも小型スピーカーをミキシング・コンソールの上に置いてニアフィールドでモニターしていることも多い、というか数十年前からそういうケースがほとんどだ。「壁面に埋め込まれた大型モニタースピーカーはクライアントを喜ばせるためで、仕事は小型モニターで……」と言うエンジニアにこれまで何人も会ったりしているのである。

 今回のStereo Sound ONLINE試聴室での取材では、リスニングポイントからKEFのR3Metaまでわずか約1.5mの場所にシンメトリカルに配置、そのサウンドを体験したが、間然することのないすばらしいソニック・パフォーマンスが得られた。詳細は後述するが、わが心が清爽の気に満たされたことを最初に記しておきたい。

「Integro」はネットワークオーディオ再生機能も備えているので、本機とスピーカーをつなぐだけで、ハイレゾストリーミングなどの音源も楽しめる。今回は、聴取距離約1.5mというニアフィールド・リスニングでその実力を確認している

洗練された本体に、豊富な機能を凝縮した「Integro」

 Integroのコンパクトなボディは、堅牢な非磁性体のアルミニウムで覆われ、フロントパネルの左右には大ぶりのオレンジ色のノブが配置される。このふたつのノブで音量調整や入力切替えができ、それが中央のOLEDディスプレイに表示される。一目見たら忘れられない洗練されたデザインだ。

 本機はスピーカー出力とヘッドフォン出力の両方を持つプリメインアンプで、前者にはスペシャル・チューニングが施されたInfineon(インフィネオン)社のデュアルモノDクラスアンプ・モジュールが搭載されている。出力は50W+50W(8Ω)。ちなみにスピーカー端子はバナナプラグケーブルとの接続が推奨され、Yラグでの接続はNGだ。

 入力はLAN(RJ45)端子の他、シングルエンドのRCAアナログ入力1系統と光・同軸のふたつのデジタル入力を用意、Volumio OSのオンスクリーンディスプレイ・メニューを表示するモニターとつなげるHDMI端子も装備する。加えて、BluetoothコーデックはaptXにも対応していて、スマホとの高音質連携も容易だ。ヘッドホンアンプ用のDAC素子はTI製のPCM5122である。

「Integro」と組み合わせたスピーカーシステム:
KEF R3 Meta ¥363,000(ペア、税込、スタンド別売)

●型式:3ウェイ2スピーカー、バスレフ型●使用ユニット:25 mmドーム型ツイーター with MAT + 125mmコーン型ミッドレンジ Uni-Q、165mmコーン型ウーファー●感度 (2.83V/1m):87dB●クロスオーバー周波数:420Hz、2.3kHz●周波数帯域(-6dB):38Hz〜50kHz●インピーダンス:4Ω(最小3.2Ω)●寸法/質量:H422✕W200✕D336mm(ターミナル込み)/12.4kg
※写真のスタンドは別売 S3 Floor Stand(¥110,000、ペア、税込)

 ネットワークオーディオ機能は単体プレーヤーのPrimo Plusとほぼ同等。DLNA、Open Home、Roon Readyに対応、Qobuz、TIDAL、Spotifyなど主要なストリーミングサービスが(アカウントを取得すれば)楽しめる。ちなみにDSDファイルには対応していない。

 KEFのR3 Metaは、25mmアルミドーム型ツイーターと125mmミッドレンジドライバーを組み合わせた同社独自の同軸ユニットUni-Qに165mmハイブリッドアルミコーン型ウーファーを加えたコンパクトな3ウェイ機だ。ここでは同じくKEFのスチール製スタンドに載せてその音を聴いた。

デジタルアンプの音の印象を刷新。新しい価値観をもたらした

 Qobuz Connectを用いて、ストリーミングサービスでさまざまな音楽を聴いてみた。最初に最近のお気に入り、東京のソウル・バンドWONKの2024年のアルバム『Shadeof』を再生する。まず強く印象づけられるのはエネルギーバランスの真っ当さ。中低域から高域にかけてスムーズに音がつながり、疎密がない。低域の伸びはさほどではないが、ヴォーカル帯域の厚みのある表現が出色だ。

 ニアフィールド・リスニングは、スピーカーににじり寄って直接音主体に聴くスタイルなので、先述したようにさほど音量を上げなくても満足できるラウドネスが得られる。しかし一方で試聴距離が近い分、システムとしてのS/Nがきびしく問われる。つまりノイズレベルが低いことが重要なのである。

デジタルアンプ搭載の「Integro」でフロアー型スピーカーをドライブしたらどのような音が再生されるかも確認してみた。B&Wの大型スピーカー「801 D4 Signature」との組み合わせでは、ウーファーの制動はやや厳しかったが、充分満足できる音を奏でていた

 その意味において、IntegroもR3 Metaも合格だ。Integroはローレベルのリニアリティに優れ、音の消え際を精妙に正確に描写するし、R3 Metaはドライバー背面にMAT(Metamaterial Absorption Technology)と呼ばれる迷路状のパーツを配置することで、高域のノイズを99%排除しているのである。それゆえだろう、WONKのヴォーカリスト、長塚健斗の透明感に満ちた歌声の魅力を伸びやかに描写してくれる。

 それから、これまでICE POWERやTI製クラスDモジュールが採用された数多くのアンプを聴いてきて、デジタルアンプはドライバビリティ(駆動力)こそ凄いが、音の質感が共通してドライな傾向にあるという印象を持っていた。

 しかし、Infinion製モジュールを積んだ本機はそんな感じを抱かせない。ヴォーカリストの喉を、潤いを生々しく実感させるし、エベーヌ弦楽四重奏団が演奏するベートーヴェンの作品など、ヴァイオリンを濡れたような質感で描写し、ぼくを驚かせた。Integroはデジタルアンプに新しい価値観をもたらしたモデルと言っていいかもしれない。

ネットワークプレーヤーの「Primo Plus」(左)と「Integro」をつないだ場合のパフォーマンスも確認した。「Integro」のボリュウムは最大にセットして、音量調整は「Primo Plus」で行っている

「PrimoPlus」+「Integro」は、一皮むけたよりフレッシュな音

 最後に、Primo PlusとIntegroをアナログ接続、Primo Plusのボリュウムを用いて音量調整、Integroをパワーアンプとして使ってみた。

 このペアは一皮むけたよりフレッシュな音を奏で、そのすばらしい音に聴き惚れる結果となった。WONKの長塚健斗のヴォーカルにはいっそう深い陰影がつき、より立体的に描写されるようになったし、エベーヌ弦楽四重奏団のハーモニーにも厚みが加わると同時に、解像感が増す印象となった。

 Integroだけでも充分楽しい音楽ストリーミングサービス生活が送れるが、Primo Plusを加えることでより滋味深い音が得られることは間違いない。この2モデルを並べた姿もたいへん美しく、ぼくなぞはそれだけでも両モデルを購入したいという気持ちになった次第です。

各種設定はVolumio OSから行っている。基本操作は「Primo Plus」と同じで、メニュー画面等の構成も統一されている

(撮影:嶋津彰夫)