機器の筐体、あるいは端子に接続し、大地に接地(アース)したごとく電位を安定させ、クォリティの敵となるノイズを抑える“仮想アース”。その設計手法は様々で、実際の改善効果についても、千差万別。組み合わせるシステムや電源環境によっても、その恩恵は大きく変わってしまうのが実情だ。
様々なノイズを多彩な方法で除去/低減するiEARTH
今回「実験@山中湖ラボ」で取り上げるインクレケーブルのiEARTH(アイ・アース)は、その名称から仮想アースと思われるかもしれないが、メーカーでは仮想アースという表現は使わず、ノイズフィルターと紹介している。理由は明快、アースに落とすという類の単純なアクセサリーではないためだ。
具体的にはオーディオ機器やAV機器の空いている端子にiEARTHに同梱する専用ケーブルを接続して、各インターフェイス経由でノイズを集積。アルミニウム削り出し本体に搭載したパッシブ・グランディング・モジュールで吸収し、ノイズを取り除く。さらに本体底面に配置されている「ECコネクタ」というボール状の部品によって、静電気や機器の微細な振動を収集し、それらをエネルギー(電気信号)に変換、パッシブ・グラディング・モジュールをアクティブ駆動、ノイズの影響を抑える。機材の上に設置した場合、オーディオ機器、AV機器自体の防振効果が得られる。テレビなどスペースや筐体構造の関係で機器上部への設置ができなくても、空気の揺らぎでも発電するため、充分な効果があるという。
for HDMI Audio Visual Connector
Black iEARTH (EBV-3)
¥165,000 税込
for Coaxial Digital Audio Connector
Grey iEARTH (EBD-3)
¥165,000 税込
for RJ45 Ethernet Connector
Blue iEARTH(EBN-3)
¥165,000 税込
[共通スペック]
●寸法/質量 : W155×H60(連結用ケーブル使用時は130)×D105mm/約950g(各製品の端子形状によって誤差あり)
●付属品 : 連結用ケーブル×2、接続ケーブル、ポジショニング・パッド
●ラインナップ : Gold iEARTH(EBA-3/アンバランスオーディオケーブル接続用、RCAコネクター装備)、Red iEARTH(EBP-3/アナログレコードプレーヤー接続用、RCA&ミニYラグコネクター装備)、Silver iEARTH(EBS-3/スピーカー接続用、バナナプラグもしくはYラグコネクター装備)あり。価格は全て16万5,000円税込
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製品ラインナップは、①ネットワーク用「Blue iEARTH」(EBN-3/RJ45端子接続用)、②HDMI用「Black iEARTH」(EBV-3/HDMI接続用)、③同軸デジタル用「Grey iEARTH」(EBD-3/Coax接続用)、④アナログ音声用「Gold iEARTH」(EBA-3/RCA接続用)、⑤アナログレコードプレーヤー用「Red iEARTH」(EBP-3/RCA&ミニYラグ接続用)、⑥スピーカー接続用「Silver iEARTH」(EBS-3/バナナプラグもしくはYラグ接続用)の6種類。それぞれ本体上部の2つのモジュール(四角体)の色が異なるが、端子部分以外のデザインは変わらない。
ここで見逃せないのは、内部の設計は別物であるということ。端子接続型のノイズフィルターの場合、インターフェイスだけ変えて、その内容は同じというケースがほとんどだが、iEARTHはそれぞれ専用設計していることが一大特徴だ。
一概にノイズといっても、接続される製品/端子に起因するノイズの性質はそれぞれ異なる。そこで各ノイズに合わせた設計を取り入れ、最適化しているというわけだ。詳細は非公表だが、ターゲットを明確にしているため、複数種類の使用も副作用がなく、より高い効果が期待できる。
BDプレーヤーでは3種類とも効果十分だが、特にLAN用EBN-3の変化が大きい
今回、山中湖ラボに持ち込まれたのは、HDMI用EBV-3、同軸デジタル用EBD-3、ネットワーク用EBN-3という3種類。いずれも75cmの専用ケーブルが付属しているが、より長いケーブルが必要な場合は受注対応が可能だ。
早速、検証スタート。まずはiEARTH全体の効果を把握するために、3種類の端子を全て装備したパイオニアのユニバーサルプレーヤーUDP-LX800との組合せで、画質/音質の変化に着目することにした。
まずパイオニアのユニバーサルプレーヤーUDP-LX800で、HDMI用、同軸デジタル用、LAN用の3種類iEARTHを個別に試したうえで、3つ全てを接続した状態もチェック。写真はHDMI用のBlack iEARTH(EBV-3)を接続しているところ。iEARTHは端子種類ごとに効果を最適化しているとのことで、複数使用しても副作用がない、というのもセールスポイントだ
パイオニアUDP-LX800は映像/音声のセパレート出力用にHDMI端子を2系統備えている。AVセンター経由で映像/音声を1本のHDMIケーブルで伝送する場合は1系統のHDMI端子が空くので、その端子(中央)にBlack iEARTH(EBV-3)を繋げた。右側のネットワーク伝送用RJ45端子にはBlue iEARTH(EBN-3)を接続した
米国盤UHDブルーレイ『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の画質/音質をトリノフオーディオAltitude 16経由で山中湖ラボの7.1.10サラウンドシステムとレグザ55X930有機ELディスプレイで確認。さらに聴き慣れたジェニファー・ウォーンズのCDから「First We Take Manhattan」やチョ・ソンジン独奏「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番」などを再生し、アンバランス音声出力のサウンドでも評価している。
まずUDP-LX800のHDMIサブ端子にEBV-3を装着。映像については、見た目のコントラスト感、解像感、色再現と、大きな変化は感じない。ただ1分、2分見続けて目が慣れてくると、ノイズの粒子がやや細かく、ローライトのザワツキが抑えられるのが実感できる。グラデーションも滑らかで、ケイリー・スピーニーのそばかすも鮮明に浮き上がる印象だ。
音声は帯域バランス、空間の拡がりなど、基本的な音調は変わらない。CD再生では、響きの緻密さ、低域の吹き上がりの良さ、といった部分で余裕が感じられ、総合的な表現力が向上している。
次にEBV-3を外したうえで、同軸デジタル出力にEBD-3を装着。映像の変化は比較的少ないが、コントラスト感が向上した印象だ。音声については音場のフォーカスが引き締まり、セリフも力感が増して、メリハリがつく。CD再生は声の質感が優しく、響きもこまやかに拡がり、ヌケ感がいい。改善効果としてはCD再生の方が大きいように感じた。
EBD-3を外し、次はネットワーク用LAN端子にEBN-3を接続すると、画質、音質ともに効果は先の2つよりも明確だ。映像は黒が締まり、より色濃く描き出される。ナイトシーンの暗部のグラデーションもざわつかず、滑らかだ。音も伸びやかで開放的になる。セリフ、効果音と、細部まで丁寧に描かれ、その場の空気感、雰囲気が把握しやすい。
CD再生では低域の押し出しが強く、しかも分解能が高まり、ベースが躍動する様子が楽しい。声はニュアンスが豊かで、優しく、潤いが加わる。力感としなやかさを併せ持ったチョ・ソンジンのピアノも聴き応えがあった。
さらにこの3種類のiEARTHを全て装着したときの、効果を試してみよう。結果は、ある程度は予想していたものの、その改善効果は歴然。画質、音質ともに、期待値を超えるクォリティ改善が得られた。映像は細かなノイズがスッと抑えられ、コントラスト感、彩度が増す印象で、輪郭、ディテイル描写がより繊細で緻密だ。
『シビルウォー~』の音は明るく、伸びやかで、刺々しさは皆無。この傾向はCD再生でもそのまま受け継がれ、ヴォーカルのニュアンスが生々しく、輪郭の品位が高い。そしてスピーカーからの音離れもよく、天井方向、奥行方向と、空間の拡がりが実に豊かだ。パイオニアUDP-LX800を用いてユニバーサルプレーヤーで試した、iEARTHの効能、素姓の良さは十分に理解できた。
AVセンター、プロジェクター、有機ELテレビでも大きな効果を実感
続いてトリノフオーディオのコントロールAVセンターAltitude 16とJVCのプロジェクターDLA-Z1を用いて画質/音質の変化に注目してみたい。
Altitude 16ではHDMI、同軸デジタル、LANと3種類のiEARTHを装着してみたが、画質、音質ともに改善効果は小さくないが、中でも音の変わり様に驚かされた。Altitude 16を使い続けて約8年、そのサウンドには十分に満足しているつもりだったが、この3アイテムが加わり、また別の魅力を見せ始めたのだ。
サウンドが繊細かつしなやかに変化、セリフにも実在感が増して、空間の拡がりもひと回り大きくなる。CD再生は目の前に拡がる響きが雄大で、天井も高い。そして声の質感が緻密で、そのニュアンスを実に豊かに描き出す。チョ・ソンジンのピアノは左手側、低音の力感が増して、輪郭が鮮明。ホールに拡がる響きは豊かで、立体感がある。とくにiEARTHの3台設置時の威力は絶大だった。
DLA-Z1プロジェクターでの検証。まずHDMI端子にEBV-3を装着してみたところ、ノイズの粒子がやや細かくなる印象だが、コントラスト感、彩度への影響は微妙で、予想よりも変化は小さい。
JVCの4KプロジェクターDLA-Z1でもiEARTHの効果があるか、試す。まずはZ1が2系統備えているHDMI端子のうち、映像信号入力に使っていない、空きHDMI端子にBlack iEARTH(EBV-3)を装着。さらに空きLAN端子にBlue iEARTH(EBN-3)を追加して接続、iEARTHを2個使ったときの効能を試した
そこにLAN端子用のEBN-3を追加接続すると、輪郭がキリッと締まり、見た目のコントラスト感にも余裕が生まれる。髪の毛、肌のグラデーション描写が滑らかで、品位が高い。EBV-3、EBN-3の2台設置の効果は思いのほか大きい。
では有機ELテレビではいかに。EBV-3、EBN-3をレグザ55X930のHDMI端子とLAN端子のそれぞれに1台ずつ接続して、放送、UHDブルーレイの画質を確認してみると、見た目のコントラスト感、ノイズの細かさ、色純度と、明確な改善効果が確認できる。じっくりと観ていくとEBN-3のほうが、よりメリハリが効いてヌケがよくなる印象だが、いずれにしても色濃い映像が描き出される感覚は変わらず、その恩恵は極めて大きいと感じた。
レグザの55インチ有機ELディスプレイ55X930でもiEARTHがどれほどの効果があるのかを実験してみる。まずHDMI端子にBlack iEARTH(EBV-3)を、次にLAN端子にBlue iEARTH(EBN-3)に接続した。iEARTHを1個ずつ試した格好だ
実験結果
確かな効果があるが、使いこなしが肝要だ
AVアクセサリーとしては高価な部類に入るが、山中湖ラボでの検証で、その効果は期待を裏切らないことが分かった。今回はLAN端子用のEBN-3の効果が際立ったが、機器や環境が変われば別の結果にもなりうる。どの機器の、どの端子に用いるかによって、画質/音質の改善度合いが変わることは、知っておく必要がある。iEARTHは、単に購入/装着して終わりではない。最高のパフォーマンスが得られる接続方法を、試行錯誤しながら見い出すことが重要だ。
>本記事の掲載は『HiVi 2026年春号』