多機能トランスポートとハイグレードDAC登場。躍進が続くエバーソロの新提案を徹底取材
クォリティと機能性を高次元で両立させた先進的なモノづくりで、高い評価を獲得し、快進撃を続けるエバーソロ。ここで採り上げるT8は、ネットワークプレーヤーの最高峰DMP-A10の開発で培った技術、ノウハウを積極的に投入して開発されたネットワークトランスポートだ。
今回は同社が満を持して送り出してきた単体D/Aコンバーターの本格派、DAC-Z10との組合せで、様々な接続方法を試しながら、そのパフォーマンスを検証していきたい。
Network Audio Transport
T8
¥297,000 税込
● 型式 : ネットワークトランスポート
● 接続端子 : デジタル音声出力5系統(同軸、光、AES/EBU、I2S、USB Type A)、USB Type A端子2系統(外付けストレージ/光ディスクドライブ/パソコンなどとの連携用)、LAN端子2系統(RJ45、SFP)、ほか
● 寸法/質量 : W315×H88×D230mm/4.5kg
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D/A Convertor
DAC-Z10
¥385,000 税込
●型式 : D/Aコンバーター
●接続端子 : アナログ音声入力2系統(RCA、XLR)、デジタル音声入力8系統(同軸×2、光×2、AES/EBU、I2S、ARC、USB Type B)、アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、クロック入力2系統(50Ω BNC、75Ω BNC)、ヘッドホン出力1系統(6.35mm標準フォーン)、ほか
●寸法/質量 : W365×H88×D310mm/9kg
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まずT8の概要を紹介しておこう。Qobuz、Spotify、Amazon Music、Apple Musicと、主要な音楽配信サービスをサポートしたネットワークトランスポートであり、独自のEOS(エバーソロ・オリジナル・サンプリングレート・オーディオ・エンジン)を搭載。SRC(サンプリング・レート変換)を行なわず、データ本来の周波数でのデジタル出力を保証している。
デジタル出力は同軸、光、USB Type Aに加えて、低ノイズと、低歪み伝送が期待できる完全絶縁型のAES/EBU(バランス)、HDMIコネクターを活用したシールド効果の高いI2S(アイ・スクエア・エス)出力を備えている。
特にI2Sについては、様々なピンアサインが存在し、組合せによっては音が出ないケースも少なくない。そこで今回は様々なデコードブランドやアーキテクチャーとの互換性を考慮して、出力モードを8つも備えている。
ネットワーク接続については有線LANとしてRJ45とSFP、さらにWi-Fiが使用できる。
本体は精巧なCNC加工によるによるアルミニウムパネルで構成され、両サイドにはヒートシンクを思わせる凹凸を伴なったパネルを配置している。前面のカラー液晶は6インチのタッチディスプレイで、感覚的にストレスのない操作が可能だ。また最大で16Tバイトのストレージを組み込めるデュアルSSDスロットも搭載している。
T8のリアパネル。ネットワークトランスポートとして、多彩な出力端子を備えている。一般的な同軸、光のほか、業務用機器で使われることの多いAES/EBU接続や、マニアの間で注目を集めつつある、HDMIケーブルを使うI2S端子、入念なノイズ絶縁が施されたUSB Type A端子(ISOLATION USB AUDIO OUTという印字があるコネクター)、さらにネットワーク端子も一般的なRJ45のほか、近年採用機器が増えてきたSFPポートも搭載している
T8はDAC非搭載のトランスポートであるため、比較的シンプルな回路構成となっている。リニア電源方式の強力な電源部を搭載することに注目
D/AコンバーターDAC-Z10は、基板からデジタル領域とアナログ領域を完全分離した独自の回路構成を取り入れた本格派だ。電源回路はLch、Rch、そしてシステム部と、3つの独立したリニア電源を搭載。DACチップはL/Rchにそれぞれ独立した「AK4191EQ+AK4499EX」を搭載するという豪華な設計だ。
音量調整には高精度のR2R抵抗アレイを採用することで、音量レベルによる音質差を払拭。しかもXLR/RCAのアナログ入力をサポートし、フルバランス仕様のプリアンプ回路を構成している。入力端子はUSB Type C、I2S、AES/EBU、同軸デジタル、HDMI ARC、アナログRCA/XLR。I2S入力が8種類の信号アサインに対応しているのは、T8と一緒だ。
2系統のアナログ音声入力も含めて、DAC-Z10は端子の装備が非常に豊富。注目はHDMI端子を用いたI2Sと、ARC端子、そして外部クロック入力端子。I2Sはデジタル音声接続用、ARCはテレビなどとの連携用だ。クロック入力は75Ωと50Ωの2系統を備えており、外部クロック機器との連携でより高精度なアナログ音声出力を追求している
デジタル信号のアナログ変換に徹する単体DACらしく、非常に贅沢かつ大規模なアナログサーキットの基板構成となっている。基板中央にはOCXO(恒温槽付水晶発振器)クロックが配置され、その両隣にアナログ音声基板が左右分離した状態で、基板の上に2階建て状態で組み込まれている。DACチップは旭化成エレクトロニクス製のAK4191EQとAK4499EXをそれぞれ用いている(白線で囲った四角い素子)。その後方、背面側(写真では上の方向)にはR2Rと呼ばれるラダー型抵抗を使ったボリュウム回路が組まれている
T8+DAC-Z10が聴かせるハイレゾ再生の醍醐味が圧巻
両機種が明確な純正ペアとなるとは謳ってはいないが、事実上エバーソロ初となるセパレートスタイルの本格ネットワークプレーヤーだけに、期待は高まる。まずT8とDAC-Z10をUSB接続し、Z10とデノンのプリメインアンプPMA-SX1 LIMITEDとはバランス接続し、Qobuzで聴き慣れた楽曲を中心に再生してみた(接続①)。
十分なダイナミックレンジを確保しながら、音の芯、骨格を明確に描き出す筋肉質のサウンドが特徴的だ。ただリンダ・ロンシュタットの歌声はあっさりとしたニュアンスで、やや淡白。明瞭度の高い、力感に富んだ聴かせ方は頼もしいが、反面、もう少し穏やかに、ゆったりとした雰囲気が欲しい、という印象が残った。
そこでプリメインアンプとの接続をアンバランスに変更。素早く立ち上がる吹き上がりのいいサウンドには変わりはないが、キリッと締まった中低域がわずかに和らぎ、ヴォーカルの息づかいが生々しく、口元が見えそうなくらいニュアンスが豊かになる。
バランス、アンバランス接続ともに基本的な情報量、S/N感はほとんど変わらない。このためリスナーの好み、あるいは再生する楽曲によって、選択肢は変わる可能性もあるが、今回の試聴では、アンバランス接続が良好と判断、以後は同接続とした。
ここまではZ10はライン出力の音量固定設定で、ボリュウム調整はPMA-SX1 LIMITEDで行なっていたが、PMA-SX1 LIMITEDはボリュウムを使わずに単体パワーアンプとして使える「Ext.Pre入力」も備えているため、DAC-Z10側の音量調整を活用した接続も可能だ(接続②)。Z10の場合、一般的なDAC内蔵のデジタルボリュウムではなく、L/R独立したR2Rラダー型の本格的な回路を搭載しているため、位相のずれや情報量の低下の心配が少ない。
両者の接続を聴き比べると、これがなかなかいい勝負だ。宇多田ヒカルの「花束を君に」はささやくように歌い、優しく、艶やかな声がいい。音の鮮度の高さ、空間の広さといったところでは、両者の差は少なく、ほぼ拮抗している。
ただじっくり聴き込んでいくと、DAC-Z10側で音量調整した接続の方が、微小音の描き分けがより意欲的に感じられる。ベース、ギターの微妙な揺らぎや、ヴォーカルのささやき、細かく揺れるヴィブラートまでも、余すことなく描き出していく感じだ。ここまでの情報量を確保しながら、質感が粗っぽくならないのは立派だ。
このまま「イージー・ダズ・イット/オスカー・ピーターソン・トリオ」を聴いたが、軽やかなピアノのタッチに、しなやかに吹き上がるベース、バスドラムの響きが重なり、肌合いのいいサウンドが体全体を優しく覆い包む。その場の空気感がビンビンと伝わってくるかのような生っぽさ。これぞまさにハイレゾ再生の醍醐味と言わんばかりのパフォーマンスだった。
音の持ち味が異なる様々な接続を試す
以後は、音量調整はDAC-Z10側で行なうことに決定。最後にT8とDAC-Z10の間の接続を変更しながら、音の変化を確認してみたい(接続③)。まずはUSB接続から最も一般的な同軸デジタル接続に変更してみたが、情報量、ダイナミックレンジ、帯域バランスと、基本的な音調は変わらない。
ただ響きの粒子がより鮮明に浮き上がり、質感も細やかに感じられるようになる。低域は程よく締まり、湿気を帯びてしなやか。ベース、バスドラムが気持ちよく躍動する様子が気持ちいい。リンダ・ロンシュタットのヴォーカルはフレッシュで、艶やか。特に声の明瞭度、浸透力に磨きがかかり、ストレスなく拡がっていく豊かな響き、余韻が、心地よく感じられた。
次にAES/EBU(XLRバランス)接続だが、ヴォーカルの明瞭度、実在感、ニュアンスと、同軸デジタル接続に近い。音像の定位、音場の拡がりともにフォーカスが鋭く、曖昧さを感じさせない。音の骨格はやや太く、抑えの効いた色濃いサウンドを淡々と描き上げていく。開放感、清々しさがもう少しほしい、という気持ちが残ったが、堂々とした落ち着きのあるサウンドには説得力がある。
最後はHDMIケーブルを用いたI2S接続だが、響きの緻密さ、空間の拡がりの豊かさが印象的だ。反面、音の骨格はやや細めで、中低域の吹き上がりは控えめ。チョ・ソンジン独奏「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番」は、彼の手の動きがイメージできるほど分解能が高く、繊細な響きがホール全体に染み込んでいくかのように浸透していく様子が好ましい。
接続によって、持ち味がそれぞれ異なるため、音の好みや、再生する楽曲によって、接続方法を変更してその変化を積極的に楽しむことをお勧めしたい。
エバーソロ躍進の理由をハイクォリティな音で実感
今回はネットワークトランスポートと単体のD/Aコンバーターの組合せによる「セパレートスタイルのネットワークプレーヤー」ということで、様々な接続方法を試してみたわけだが、その変化が明確で、実に興味深かった。
いずれにしても宇多田ヒカルの微細なヴィブラートが胸に響き、ベースの響きが気持ちよく躍動、その微細な響きで大きな空間が満たされる。音楽の表情が逐次変化し、新しい魅力に出逢うことができた。この価格帯でここまでのクォリティで、これほど内容の濃い世界が提案できるとは……。日本のみならず世界でもエバーソロが躍進している理由が得心できた、貴重な取材となった。
リファレンス機器
●プリメインアンプ : デノンPMA-SX1 LIMITED
●スピーカーシステム : Bowers & Wilkins 802 D4
>本記事の掲載は『HiVi 2026年春号』