HiVi2026年春号の特集企画「<25歳の自分へ>勧める いま買うべきオーディオ機器はこれだ!」のスピーカーシステムとして、私は最終的にソナス・ファベールのLumina Ⅲを選んだわけだが、その選出は簡単ではなく、最後までどちらにするか、迷いに迷ったモデルがあった。それがピエガACE 50だ。

 プライウッドを配置した前面バッフルを除き、伝統のブラック・レザー張りとし、熟練の職人技を感じさせるLumina Ⅲと、繋ぎ目のないアルミニウム製エンクロージャーがクールな雰囲気を醸し出すACE 50。

 同じフロアスタンディングタイプのスピーカーで、ダブルウーファー仕様の3ウェイシステム。価格も40万円強と大差ない。デザインの方向性こそ違うが、安っぽさなど微塵も感じさせない上質な仕上がりで、いずれも10年、20年と使い続けられる品質感を備えている。

 ここまで迷うことは、どちらを選んでも後悔はない、と考え、最終的にはイネーブルドスピーカーの設置が考えやすいスクエアな天面となるLumina Ⅲを選んだ。とはいえ、純粋に2chオーディオ再生だけを想定するのであれば、選択が変わっていたかもしれない。

 

Speaker System
ACE 30
¥214,500(ペア) 税込

ACE 50
¥451,000(ペア) 税込

 

 

 ここで採り上げるのは、ピエガのエントリーとして位置づけられるACE 30とACE 50の2モデルだ。小型のブックシェルフタイプと、フロア設置のトールボーイタイプで、いずれもエンクロージャーは精緻に仕上げられたアルミニウム製。トゥイーターには繊細で透明感に富んだ高域再生が持ち味のAMT-1リボンタイプを投じている。

 いまやピエガの象徴として広く知られているアルミニウム製エンクロージャーは、その素姓の良さに惚れた創業者、レオ・グライナー氏とクルト・ショイヒ氏が、1986年の設立当初から採用しているもの。以降、40年以上の歴史を誇るわけだが、これも剛性の強化、振動の制御と、進化を日々続けている。

 特に注目されるのが、エンクロージャーのデザインを、前世代製品群のTMicroから変更したこと。より内側までサイドを絞った箇所をバッフル面とすることで、全体の剛性を高めた。その結果、ユニット保持が確実になり、色付けの少ない精緻な音を追求している。 

 

優れた帯域バランスのACE 30。ジャンルを超えた表現力に驚いた

 ではさっそく小型2ウェイ・ブックシェルフのACE 30から聴いていこう。エンクロージャーはアルミニウム・インゴットから押し出し成形されたもので、もちろん繋ぎ目はない。本体を真上から見ると、背中側がキレイなC型形状に絞られているのが分かる。これは内部の共鳴、定在波を抑え、筐体の高剛性にも寄与している。

 トゥイーターは空気の制動力に優れ、しかも反応が素早いAMT-1リボンタイプ。そこにロングストロークと高耐入力を両立させ、小口径ながら優れた低音再生能力を獲得したMDSウーファーを追加し、バスレフ型の2ウェイシステムを完成させている。

ACE 30
¥214,500(ペア) 税込

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:リボン型トゥイーター、120mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:87dB/W/m
●クロスオーバー周波数:4kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W140×H220×D160mm/3kg
●カラリング:シルバー(写真、価格)、アルマイトブラック、ホワイト(以上、¥236,500ペア税込)
●オプション:専用スタンド(Stand ACE、¥132,000ペア税込)あり

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ACE 30のスピーカー端子は、筐体背面下部に配置。シングルワイアリング接続専用で、バナナプラグやYラグなどにも対応している。ACE50のスピーカー端子も背面下部に配置されている。筐体は非常にコンパクトだが、アルミニウム押し出し材を使った構造により、強靭かつ高剛性が保たれており、見かけから想像するよりも、充実した低音が得られる

 

 

 今回の試聴はHiVi視聴室のリファレンスアンプ(デノンPMA-SX1 LIMITED)に加えて、コンパクトな本体に100W+100W出力を備えた本格的なデジタルアンプを内蔵し、ネットワーク機能「HEOS」まで装備した、小型アンプDenon Home Ampとの組合せも試している。

 まずPMA-SX1 LIMITEDとの組合せで、Qobuzからジャズ、ヴォーカル、クラシックと再生してみたが、ジャンルに関わらず、帯域バランスが良好で、落ち着きのある音調で楽しませる。低域は程よい柔軟性を持ち、音の芯、骨格を丁寧に描き上げていく聴かせ方で、リズム感の良さが印象的だ。

 ジェニファー・ウォーンズの「First We Take Manhattan」
の再生では、音の骨格をしっかりと感じさせ、透明感溢れる清々しい空間がフワッと目の前に拡がる。スネアドラムは鮮やかに張り出し、バスドラム、ベースは確実にピッチを刻んでいく様子が実に清々しい。その歌声は艶やかで、ニュアンスが豊か。開放感、晴れやかさというよりも、声の温かさ、厚み、繊細さを印象づけ、濃厚な響きが味わい深い。

 ここでアンプをDenon Home Ampと入れ替えてみよう。響きの厚み、音の骨格の描写力といった部分では、アンプの力の差を感じるものの、一定の重みを感じさせる音のテイストは変わらない。アップテンポのリズムも軽快で、ベース、バスドラムの音階も曖昧にすることなく、確実に刻んでいく印象だ。

 ACE 30を聴いて感心させられたのが、聴き手を優しく包み込むように拡がる繊細な響きと、足元の動きまで感じさせるような低音の量感の豊かさだ。雄大な空間の描写といい、雑味のない響き、余韻といい、基本的な分解能が高く、しかもピラミッド型の帯域バランスが崩れない。机の上の本棚に無理なく収まる、文字通り“ブックシェルフ”を地で行くような小型のスピーカーが、ここまでの表現力も持ち合わせているとは、驚いた。

 

しなやかで味わい深い音のACE 50。落ち着いた音調で響きも柔らかい

 続いてACE 50の試聴。MDSウーファーに加えて、その下の帯域を受け持つ新設計のMDS-Bウーファー2基が追加され、4スピーカー3ウェイのシステムとしている。また円形のフロアスタンドが追加され、軽快さ、スマートさが際立つ。

ACE 50
¥451,000(ペア) 税込

●型式:3ウェイ4スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:リボン型トゥイーター、120mmコーン型ミッドレンジ、120mmコーン型ウーファー×2
●出力音圧レベル:90dB/W/m
●クロスオーバー周波数:200Hz、4kHz
●インピーダンス:4Ω
●寸法/質量:W140×H1,040×D160mm(ボトムプレート直径250mm)/12kg
●カラリング:シルバー(¥429,000ペア税込)、アルマイトブラック(写真)、ホワイト(以上、¥451,000ペア税込)

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ピエガACEシリーズはACE 30、ACE 50のほか、センター用モデルとしてACE Centerも用意されている。リボン型トゥイーターと120mmウーファーのシリーズ共通のドライバーを密閉型キャビネットに収めた横置きモデルだ。カラリングは、シルバー(¥148,500/台、税込)のほか、アルマイトブラックとホワイト(以上、¥159,500/台、税込)をラインナップする

 

 まずHiVi視聴室のリファレンスPMA-SX1 LIMITEDとの組合せで聴いたが、音場空間のスケール感、立体感、そして小口径ユニットならではのリズム感の良さと、目の前に拡がる空間のリアリティが非常に高い。

 チョ・ソンジン独奏の「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番」は、鍵盤のタッチは明確で、音の芯、骨格も曖昧にならない。輪郭を際立たせることはなく、しなやかでありつつ、独特の粘りを伴ない、特に体を包み込むように拡がる低音が、新鮮だ。

 ACE 30でも感じたが、見た目以上に大型のスピーカーが鳴っているイメージで、目の前に拡がる空間が広く、深い。質感の高い重厚な響きを生かしつつ、温かみのあるエネルギーをジワッと放出させるような味わい深いサウンドが体験できる。

 このままアンプをDenon Home Ampに変更。正直言って、ACE 50をしっかりと鳴らしてくれるのかどうか、ちょっと心配だったが、音が出て数秒後には、不安はすっかり吹き飛んでしまった。

 低音の張り出し、締まり、楽器の響きの分解能といった部分では、アンプの力量の差による一定の違いは感じるものの、温かく、しなやかなサウンドは健在だ。空間の広さ、おおらかさ、音離れの良さといった個性をしっかりとアピールし、S/N感の良さが際立つ。

 チョ・ソンジンのモーツァルトで、ピアノは響きの粒子感が鮮明に浮き上がり、質感が細やか。特定の色合いはなく、落ち着いた音調で柔らかな響きが拡がり、消え際も滑らかだ。

 聴き手を強引に揺さぶるような力強さということでは、リファレンスアンプのPMA-SX1 LIMITEDには及ばない。ただ、そっと包み込むような穏やかさを備えた豊かな表現力をしっかりと感じ取れた。

 

華麗な外観から想像できない雄大な空間と濃厚な低音が出現

 アルミニウムのインゴットから押し出し成形されたエレガントなデザインが特徴的なスピーカーシステム、ACE 30とACE 50。ところが、ひとたび音楽を奏でると、その外観からは想像できないような雄大な空間と、濃厚な低音を描き出す。音の粒子感が鮮明に浮き上がり、質感が細やか。そしてベース、バスドラムが程よい柔軟性を持ちつつ、軽やかに躍動するのである。

 これはまさに圧倒的な薄さを確保することで、キャビネット容積をアップしつつ、徹底して高剛性化を図ったアルミ製エンクロージャーと、高解像度かつ高速レスポンス、低歪みのAMT-1リボントゥイーターの共演の賜物。ピエガの技術力の高さを象徴する、スピーカーシリーズと断言できる。

 

試聴に使った機器
●SACD/CDプレーヤー:デノンDCD-SX1 LIMITED
●プリメインアンプ:デノンPMA-SX1 LIMITED、Denon Home Amp

試聴にはHiVi視聴室の常設機器であるデノンのSACD/CDプレーヤー+プリメインアンプのコンビ(DCD、SX1 LIMITED+PMA-SX1 LIMITED、以上、生産完了)を基本に使った。さらに音楽ストリーミング機能HEOS内蔵の小型プリメインアンプDenon Home Amp(¥121,000税込/写真)も試した

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>本記事の掲載は『HiVi 2026年春号』