イタリア、フィレンツェのオーディオメーカーVolumio(ボリューミオ)からネットワークオーディオプレーヤー(ストリーマー)の新製品「Primo Plus(プリモプラス)」が登場した。音の良さとデザインの美しさで好評を博した「Primo」の上級機である。

 Primoと同じ横幅27cm、高さ5cmのコンパクトな意匠、質量もわずか2.5kg、しかもアダプター電源。写真を見て「こんなオモチャみたいなのがいい音するわけないでしょ?」とお思いの方は多いのではないだろうか。正直ぼくも音を聴くまではそう思った。しかし、今回「ステレオサウンド」誌の試聴室でリファレンス機器につないでテストし、吃驚した、そのスケールの大きな本格サウンドに。「デカくて重いオーディオ機器じゃなきゃいい音いしない」という<昭和的長岡鉄男的価値観>はもう捨て去るべきかもしれないと改めて痛感した次第。

ネットワークプレーヤー:Volumio Primo Plus ¥198,000 (税込)

●接続端子:USB Type-A2系統、USB Type-C、デジタル入力2系統(同軸、光)、アナログ出力2系統(RCA、XLR)、LAN端子、HDMI映像出力、トリガー出力
●Bluetoothコーデック:SBC
●対応信号:同軸/光入力=最大PCM192kHz、USB入出力=最大PCM768kHz/DSD512、LAN=最大384kHz/DSD256
●対応フォーマット:DSD、WAV、FLAC、ALAC、AAC、Vorbis、Cue、MP3
●対応サービス:UPnP、DLNA、OpenHome、Roon Ready、Airplay(Shairport Sync経由)、Spotify(Spotify Connect)、TIDAL(TIDAL Connect)、Qobuz(Qobuz Connect)
●CPU:BroadcomBCM2711、Quad Core 1.5GHz
●RAM:2GB DDR4
●内蔵ストレージ:16GB eMMC
●寸法/質量:W270✕H50✕D150mm/2.5kg

「Primo Plus」はLANやUSB、あるいはデジタル端子から入力したストリーミングや音声ファイルを、アナログ端子(RCA、XLR)から出力するアイテムだ。右側のHDMI出力から映像メニューの表示も可能

Primo Plusは、Volumioというメーカーの“独自性”がうかがえる製品だ

 では、Primo Plusの概要を見ていこう。本機はRCAアンバランス、XLRバランスの出力端子を持ったネットワークプレーヤーだが、内蔵のデジタルボリュウムを用いればプリアンプとしても機能する。デジタル入力としてLAN(RJ45)の他、USB-C、同軸、光(TosLink)も用意する。また、メニュー画面等を表示する映像出力としてHDMI端子も持つ。

 DAC素子は電流出力型のESSテクノロジー社の最上位チップES9039Q2Mで、L/Rそれぞれ2基採用されている。デジタルフィルターは全部で9種類あり、昨今話題のNOS(NonOver Sampling)モードを用意しているのが興味深い。

 また、電源ラインからグラウンドパターンまでを完全鏡像配置したハイパーシンメトリカル回路により、チャンネル間クロストークを理論値まで抑え込んでいること、クロックには超低位相ノイズを誇るFemtoクロックを採用しているのも注目ポイントだろう。

 先述の通り本機で採用されているのは入力電圧5ボルト/3アンペアのDC入力電源だが、アナログ系、デジタル系で電源回路を完全分離させている。オーディオセクション、制御セクション、クロックセクションそれぞれに超低ノイズ・リニアレギュレーターを個別配置、グラウンドも物理的に分割することでデジタルスイッチングの影響がオーディオ信号に侵入する経路を遮断しているという。

カードタイプのスリムなリモコンが付属している。これを使えば、音楽再生などの通常操作に加えて本体の設定も行える

 Volumioはもともとソフトウェア主導の会社で、ハードウェアとともに内製できるのが大きな強み。本機にはVolumio OSのカスタムヴァージョンが搭載されており、DLNA、Open Home、Roon Readyに対応し、Qobuz、TIDAL、Spotifyなど主要なストリーミングサービスが(アカウントを取得すれば)楽しめる。また、AIによるプレイリスト作成機能「Superserch」なども備える。

 小さなナリだが、Volumioというメーカーの独自性がうかがえる興味深い製品だということがおわかりいただけただろうか。

ハイエンドオーディオ機器との組み合わせで、どんな音を聴かせてくれるのか

 本機Primo Plusをステレオサウンド試聴室のリファレンス機器につないで、その音を聴いてみた。プリアンプがアキュフェーズ「C-3900S」、パワーアンプがモノブロックの同「A-300」、スピーカーがB&W「801D4 Signature」である。
Primo Plusはボリュウム最大、つまりは内蔵デジタルボリュウムをバイパスし、XLRバランス出力(4V設定)をC-3900Sにつないでのテストだ。

 値段約20万円の本機の音を聴くには、いささかアンバランスに思える組合せだが、現代ハイエンドオーディオを代表する傑作機とのコンビネーションでどんな音を聴かせてくれるのか、興味津々で試聴に臨んだ。

 先述のように、この日聴けた音はぼくを驚かせるに充分なすばらしいものだった。エネルギーバランスが真っ当で、全帯域において疎密がない。とくにファンダメンタル帯域の充実は特筆に値するもので、こんな華奢で可憐なプレーヤーが奏でている音とはとうてい信じられないサウンドだった。

取材はステレオサウンド試聴室で行った。プリアンプとパワーアンプはアキュフェーズ、スピーカーはB&Wという同誌のリファレンスシステムと組み合わせている

 NASに保存した音源から、ふだんオーディオ・チェックによく使っているチェロとコントラバスの『アメイジング・デュオ』(192kHz/24ビット)を再生してみた。1975年に東ベルリンのテルデック・スタジオで収録された音源だが、艶やかで張りのあるチェロの美しい響きと重量感に満ちたコントラバスの音色が見事に溶け合い、得も言われぬ多幸感に満ちた音空間が出現した。100万円を超える超高級ネットワークプレーヤーの音に比べると最低域の伸びや音の厚みなどに違いが出るとは思うが、この聴き味のよい整ったサウンドは本機ならではの美点と思う。

 ピアノ伴奏でSHANTIが歌うバラード「グッドナイト、マイ・エンジェル」(96kHz/24ビット)。驚かされたのは彼女の歌声の生々しさ。喉の潤い、湿り気まで感じさせるヴォーカルの再現力は見事というほかない。また、サウンドステージの描写力も秀逸で、虚空にぽっかりと浮かぶSHANTIとピアノの位置関係も的確に浮かび上がらせる印象だ。

ストリーミング再生でも、ヴォーカルの表情の豊かさが印象深い

 Qobuz Connectを用いてストリーミングサービスの音を聴いてみた。オランダで活躍するポルトガル出身のシンガー、マリア・メンデスのライブ作品『Saudade,Colour of Love』(96kHz/24ビット)を再生して驚かされたのは、幅と高さと奥行を実感させる広大なサウンドステージ。オーケストラを従えたマリアのヴォーカル音像は細身だが、センターにピンポイントで浮かび上がるソニック・パフォーマンスに息をのんだ。ヴォーカルの表情の豊かさも印象深い。

 現代ジャズ・ピアニストの俊英フレッド・ハーシュの最新作『TheSurrounding Green』(96kHz/24ビット)からタイトル曲を聴いてみた。ピアノの粒立ち、ベースのふっくらとした響きの柔らかさがすばらしい。ローレベルのリニアリティも出色で、減衰していくピアノの響きの生々しさに瞠目した。

Volumioアプリから、様々な使いこなしも可能。
内蔵DACフィルターの切り替えで、音の印象も変化した

専用アプリ「Volumio」の設定画面。ここからDACフィルター(9種類)の選択や、NOSモードのオン/オフが行える。音の印象が変化するので、お気に入りの楽曲に合うフィルターを探してみるのもいいだろう

Primo Plusではストリーミングサービスだけでなく、同じネットワーク上のミュージックサーバー(NAS)に格納した音源の再生も可能。どれを楽しみたいかはこのメニューから選べばいい

 東京のソウル・バンドWONKの2024年作『Shades of』で聴けるヌケの良いクリーンでフレッシュなサウンドにも心を奪われた。長塚建斗のヴォーカルはひたすらなめらかで、心の襞に沁み込んでいくかのよう。ハイレゾファイルで聴く妙味を実感させてくれる現代稀なJ-POPの魅力を満喫した次第。

 本機には9種類のデジタルフィルターが用意されているが、ぼくがいちばん気に入ったのは、デジタルフィルターを用いないNOSモードの音だった。このモードの音がいちばん生々しく、ヴィヴィッドに聴こえる。シンバルの音の粒子が空間を飛び散っていく様子が目に見えるように再現されるのである。この面白さはNOSモードならではと思う。

 ステレオサウンド誌のリファレンス機器と組み合わせてその魅力を積極的に訴求するPrimo Plusの侮れぬ実力の高さに驚かされた今回の取材、次回は同社のネットワークプレーヤー機能付プリメインアンプ「Integro」(インテグロ)をフィーチャー、KEFの小型スピーカーと組み合わせてニアフィールド・リスニングに挑戦してみたい。(次回に続く)

(撮影:嶋津彰夫)