絶望/希望、怒り/喜び、疎外/同化が、約90分の中に鮮やかに盛り込まれている。“私”=シイナは日本でスター女優の座を得ていたが、とにかく毎日がつまらない。インタビュアーからの紋切り型の取材にも飽き飽きしている。わがままなのはスターとしての甘えなのかもしれないし、そもそも根がわがままなのかもしれない。結果、いろんなことを投げうって、ボーイフレンドとニューヨークに行くことにした。が、日本を出てしまえば、スター女優もただのひと。だけどわがままは変わらないから、ボーイフレンドもサジを投げる。結果、彼女は路頭に迷う。英語は不得手だ。

 なにしろニューヨークであるから、路頭に迷った瞬間、命を失っても不思議ではないのだが、シイナは徹底的に「出会う人」に恵まれていた。結果的に救いの神となったのが、ジャックという青年。小さな映画制作プロダクションで働きながら、どう考えても売れそうにないホラー映画を仲間と作っている。しかも彼は、オルタナティヴなロックや映像のファンであり、INU(我が国では“イヌ”と呼ばれる町田町蔵のバンドだが、ジャックは“アイエヌユー”と発音)、ザ・スターリン、裸のラリーズなど日本のロックバンドにも関心を持っている。日本に好意を持ち、しかも映画を撮るアメリカ人男性と知り合ったのは、彼女にとってラッキーだった。創作する喜び、演技する喜びに目覚めたのか、それともしばらく忘れていたそれをニューヨークの空気の中で取り戻したのか、俄然、生き生きし始めるシイナがいい。エゴもどこかに投げ捨てた。英語のできない彼女と、日本語のできないその他大勢が、しっかりと心を通わせていく。

 とはいえ、しょせん、ニューヨークでの彼女は外国人観光客に過ぎない。さあ、どのような結末が待っているか。監督・脚本は宇賀那健一、出演は三原羽衣(本作で北米最大級のジャンル映画祭であるファンタジア国際映画祭で最優秀演技賞を受賞)、中川勝就、エステヴァン・ムニョス、ラリー・フェセンデンほか、さらに“カルト映画の神様”ことロイド・カウフマンも出てくる。私はこれを見てニューヨークが恋しくなった。

映画『ブルックリンでZ級監督と恋に落ちた私』

2月13日より ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿 ほか全国ロードショー

監督・脚本:宇賀那健一
配給・宣伝:エクストリーム
(C)「ブルックリンでZ級監督と恋に落ちた私」製作委員会