JBLのスタジオモニターと言えば、「K2」や「EVEREST」、最新の「SUMMIT」シリーズのようなフラッグシップモデルと並んで有名なラインナップだ。その歴史は1937年の「Lansing Iconic」に始まり、「4343」(1976年)、「4344」(1982年)といった数々の名機で知られる。特に4344などの青いバッフルは現代にも受け継がれ、スタジオモニターの象徴にもなっている。

 そんなJBLのスタジオモニターが、「4367」(2015年)から11年を経て、「4369」にモデルチェンジする。創立80周年(前身となるLansing Sound Inc.の誕生から)を迎えた今年、フラッグシップシリーズだけでなく、スタジオモニターシリーズも刷新されるのだ。

スピーカーシステム:JBL 4369 ¥3,520,000(ペア、税込、今春発売)

●型式:2ウェイ2スピーカー、バスレフ型
●使用ユニット:380mm 2219Nd-1 Diferential Driveウーファー、76mm D2 830Bデュアルコンプレッションドライバー+Sonoglass High Difinition Imagingホーン
●再生周波数特性:28Hz〜25kHz
●出力音圧レベル:93dB/2.83V/m
●公称インピーダンス:6Ω
●クロスオーバー周波数:800Hz
●寸法/質量:W630✕H1120✕D470mm/63.5kg

 では4369の仕様を見ていこう。JBLスタジオモニターのもうひとつの顔とも言える38cmウーファーは、「2219Nd-1」。特許技術であるディファレンシャル・ドライブ構造を採用し、デュアルボイスコイルは3インチ(75mm)のサイズを持つ。ピュアパルプコーン振動板は前作と同じだが、コルゲーションの段差が浅く、エッジ部分のミゾが2本となっているなど、様々な改良が加わっている。

 磁気回路は有限要素解析を用いて最適な設計がなされており、従来比で最大50%の振幅性能向上を果たしている。このほか、デュアルダンパー構造の採用や新設計のキャストアルミフレームを採用して剛性を高めたほか、通気性を改善してネオジム磁石の冷却性能を向上するなど、数々の進化も果たしている。

左が4369用、右が4367用のウーファーユニット。サイズも大きく、フレームもより堅牢になっている

 高域を受け持つ「D2830B D2コンプレッションドライバー」には、超軽量のTeonex製リングダイアフラムを2枚搭載、それぞれが独立したボイスコイルとネオジウム磁石の磁気回路を備えた構造になっている。従来とはフェーズプラグの設計も異なっており、より広帯域化を実現して、高域特性を滑らかにしているという。なお、SUMMITシリーズのトップモデル「MaKalu」も同じコンプレッションドライバーを採用しているが、こちらは「D2830K」で、それぞれに合わせて最適化されているそうだ。これに最新設計のHDIホーンを組み合わせている。

3インチのD2コンプレッションドライバーを搭載

 クロスオーバー回路は、大容量コンデンサーではなく複数の小型コンデンサーに置き換えることで、等価直列抵抗を低減し、機械的動作によるエネルギーロスを減少させたマルチキャップを採用した。

 キャビネットには25mm厚のMDF材を使用し、フロント下部には16mm厚のサブバッフルを追加した構造としている。さらにキャビネット内部にはふたつの補強ブレースが配置され、不要な共振を最小限に抑えている。見た目は4367と似た印象だが、背が高く、横幅もやや大きくなっている。これは、スタンド等で持ち上げなくても、HDIホーンが耳の位置に近い高さになるようにするためという。加えて大口径ウーファーに合わせた容積の拡大も果たしている。

 脚部には、SUMMITシリーズと同様にIsoAcoustics社のアイソレーションフィートを搭載。横方向の動きを抑え、振動を効果的に減衰させる設計で、床面から生じる反射を低減、クリアーで正確なサウンドを実現する。

取材はハーマンインターナショナルの試聴室で実施した

 今回、JBLの輸入元であるハーマンインターナショナルの試聴室にお邪魔して、4369の音を聴かせてもらった。組み合わせたシステムは、プリアンプがマークレビンソン「No.523」、パワーアンプは「No.536」で、ネットワークプレーヤーの「No.519」からハイレゾ音源を再生している。

 最初にテオドール・クルレンツィス指揮/ムジカエテルナによる『チャイコフスキー交響曲第6番』の「第三楽章」を聴いた。まず感じたのは、目の前に迫ってくるようなエネルギー感だ。特にコントラバスのような低音の弦楽器の実体感には驚く。最近は小口径ウーファーを複数使うスピーカーが増えているが、大口径ウーファーでしか得られない迫力があると改めて実感する。しかも、反応が良く、もたつくような感じはないし、弦の響く様子や大太鼓(バスドラム)の皮面が震える感じなど、解像感も高い。

 しかも、どの音も前へ前へと出るのではなく、大太鼓などはステージの奥で力強く鳴っているのがわかる正確な再現力がある。“音場よりも音像再現”というイメージの強い鳴り方ではあるが、広がりや奥行感の描写も優秀だ。ただし凝縮感のあるステージの表現は、一般的な音場感とか広がり感とはまるで違う。存在感たっぷりの迫力だ。

 サラ・オレインの『One』から「ボヘミアン・ラプソディ」を聴くと、ステージの奥に並んだコーラスの実体感が見事で、個々の音の分離もいい。センターに現れるボーカルは目の前に彼女が居るかのようで、音像の彫りの深さ、吐息などのニュアンスの明瞭さに圧倒される。これだけボーカルの実像に迫った感じになるのは、JBLのスタジオモニターならではと言いたくなる。

4369をドライブする再生機器には、マークレビンソン製品を組み合わせた

 最後は、やはりジャズ。しかも、アナログレコードで聴かせてもらった。アナログプレーヤーは、マークレビンソンの「No.5105」を使用。『Art Blakey & The Jazz Messengers』から「Take Five」を聴いたが、あまり広くないジャズクラブで楽器が目の前にあるような距離感の音がたまらない。ギュッと凝縮された音場感だが、それでいて後ろにいるドラムスやピアノなどの音がエネルギーたっぷりに飛んでくる。ウッドベースはまさに等身大の再現で、胴鳴りはもちろん、太く硬い弦を力強く弾く感じが気持ちよい。終盤で演奏がさらに力の入ったものになると、力感も増してくる。限界を感じさせないエネルギーの上昇は興奮モノで、こういう音の出方を感じるのも久しぶりだし、これぞオーディオの醍醐味だと思う。

 4369は音のエネルギー感や勢いが印象的ではあるが、それでいてニュアンスは豊かで、余韻や微少音の再現も鮮明だ。個々の音の定位や室内のリアルな響きなど、現代的な感覚で聴いても充分に優秀な表現力を備えていることもよくわかる。JBLスタジオモニターの長所を受け継ぎながら、現代的な描写力や正確さの点でも高い実力があるし、ブランドの長い歴史とスタジオモニターの魅力を存分に味わえる。この音は他のスピーカーでは味わえない、JBLならではの新境地だ。

JBLスタジオモニターシリーズのラインナップ。左から4369、4309、4305P、4329P、4349、4312G

https://jp.jbl.com/floor-standing-speakers/