ここのところ意欲的に新製品を発表・発売しているfinalから、新しい仕様のダイナミックドライバーを搭載した有線ヘッドホン「DXシリーズ」のラインナップが、続々と発表されている。

 シリーズ第1弾となる「DX6000」は2025年4月に発売され、第2弾となる「DX3000CL」は2025年11月発売。そして、DX3000CLの発売から間髪を入れず、昨年12月開催の「ポタフェス2025冬」に合わせて第3弾となる「DX4000CL」を発表(ようやく正式リリースされ2月6日発売)するなど(それ以外にも、有線イヤホン、ワイヤレスイヤホンなどなど数多くの製品が発売されている)、ポータブルオーディオファンを楽しませてくれている。

 初代DX6000の開放型に対してDX3000CLでは密閉型を採用(DXシリーズとしては初)。リリースでは、密閉型ならではの「重厚感のある低音」を謳うとともに、「開放的で音抜けの良い中高域」も両立させた注目の製品。しかも、最新のDX4000CLは、DX3000CLと同じく密閉型を採用しながら、中高域の再現にフォーカスを当て、「中高域の一音一音のクリアな再現」と、「広いサウンドステージ」という異なるキャラクターを持たせている。

 すでに、昨年12月のポタフェスレポートの中で、DX3000CLとDX4000CLの音調の違いについては簡潔に紹介しているが、記者は、DX4000CLを「欲しくなってしまった」と書いたこともあり、購入検討も含めて(笑)、ここでは製品をお借りして、その違いをもう少し掘り下げてみた。

 ちなみに、DX4000CLは、ポタフェスの会場では2025年の末には発売という予定だったが(海外展開をメインにしているそうで、その関係でもう少し遅れるという発言もあった)、少し遅れて1月末に発表、2月6日に発売されることになった。一方で、2月7日には「ヘッドフォン祭mini」も開催予定で、そこでは「DX10000CL」という謎の型番(笑)のヘッドホンがポスターイメージとして使われていることもあり(事前試聴予約はもう満席になったよう)、DX4000CLで悩んでいたところにDX10000CLが参戦してきて、いま、記者の頭の中は欲望が渦を巻いている(笑)。

 では、さっそく両者の印象をお伝えしたい。製品を箱(結構大きい)から取り出すと、少し大きめのイヤーカップがまず、目に入って来る。密閉型ということもあるが、厚めのイヤーパッドがその大きさを助長しているようだ。しかし、触るとふかふかで感触もよく、装着感は良好だった。先に書いてしまうと、この厚めのパッドのおかげで軽やかな装着感と、高い遮音性が担保されていて、近くでラジオを流していてもほぼ気にならないほど。屋外では逆に、環境音が消されすぎるきらいもあるので、周囲に注意したい。

 加えて、イヤーカップは外側の中央にヘッドバンドとの接点があり、この接点=軸で、イヤーカップの向きを頭の側面に合わせて変えられるのは便利なところで、記者のように頭の大きい人間にとっては、どうしてもイヤーカップの上側が浮き気味になるのだが(ネガキャン)、それがきちんと正対するというか密着するようになり、これによって装着感や遮音性がアップするのは好ましいもの。

 まずはDX3000CLから聴いていくが、当初はボーカルが沈み気味で、これはイベントで試聴した際の印象と同じ。しかし、そのまま1時間ぐらい聴いていると、だんだんとボーカルが立ち上がってくるようになった。寝起きはかなり悪そうだ(笑)。当初の印象とは180度違う、というぐらいの変容ぶりなので、購入前提の試し聴きをする場合は、じっくりと試聴するほうがよさそうだ。

 音調としては謳い文句通りで、「重厚感のある低音」が素敵なもの。まさに、密閉型の面目躍如であり、その重厚感はヘッドホンにサブウーファーを追加したというか、EQでバスブーストをMAXにしたかのよう。でありながら、籠った感じや過剰な感じはないので、近年再び隆盛してきた重低音ブームに乗っかった製品と言えるだろうか。全体的に野太いサウンドでもある。

 音調としては、低域から高域までバランスよく再生されているが、全体的に下の帯域へシフトしているよう。高域部分をミッドで、ミッドをローで、ローをサブウーファーで、という感覚。その分、音像の定位も低めで、目・鼻の奥というか両耳を結んだ線より少し下、という感覚。音場は狭くはないが、上方よりも、目・鼻の奥から下方に音空間が構築される印象。左右方向の空間は意外と広い。記者のように高域が好みで、音空間も上方に拡大するような再現が好きな人には、あまり刺さらないかもしれないが、高域には詰まった感じはないので、DX3000CLだけを聴いているなら、不満はないだろう。

 一方のDX4000CLは、12月のポタフェスで聴いたものと印象は同じ。こちらは、聴き始めからの音調はそれほど変わらず、「中高域の一音一音のクリアな再現」という謳い文句の通り、綺麗で澄んだ高域の再現が心地よい。そして、その高域が形作る「広いサウンドステージ」も良好で、DX3000CLとは異なり、おでこのあたりに音像が立ち上がってくる感覚。finalの完全ワイヤレスイヤホン「TONALITE」の「DTAS」を効かせたような感覚も味わえるし、DX3000CLが具えていた野太さはなく、すっきりとしたサウンドになっている。

 製品の基本的な構成は同じと思われるが、ここまでサウンドキャラクターが異なる兄弟機は、なかなかに興味深いもの。2台を所有し、曲調に合わせて低域用と高域用という感じで使い分けるのも面白いかもしれない。

 ただし、全体的に高域寄りにフォーカスしたサウンドになるためか、低域については少し不足気味で、重心は少し腰高な印象を受けてしまうので、もう少し重心を下げたく(低域の再現性を強める?)なる。響きの収束は少し早め(デッドな感じ)。このあたりは、付属のシルバーコートケーブルの影響も大きいようだ。ということで、3000のケーブルを4000に着けてみると、面白いことに高域の再現性は少し穏やかになり、低域が出てくるようになった。ただ低域と高域のバランスは少し崩れ気味となるので、単純に入れ替えただけでは相性はよくなさそうだ。逆に、4000付属ケーブルを3000に着けてみると、(3000の)高域の再現性が高まり、音像・音空間の定位は上方に遷移し、野太さは軽減され、すっきりとしたサウンドになった。一方で、低域の量感は少し減る印象となり、低域と高域のバランスは、前者と同じように少し崩れてしまった。

右がDX4000CL用ケーブル

 付属ケーブルは、据え置きのオーディオ機器との接続を考慮して長め(2m)になっているので、ポータブルオーディオ機器やデスクトップ機器との組み合わせ用に、1mぐらいの短いケーブルを使うとまた、元々のサウンドキャラクターは少し緩和されるかもしれない。

 ちなみに、DX4000CLでもう一つ気になったのは、ユニットの前面に取り付けられたメッシュフィルター(?)の影響。DX3000CLではほとんど気にならなかったのだが、DX4000CLでは細かい音が吸われてしまうようで、解像感は減衰する印象。大粒なサウンドに感じてしまった。と書いたが、気にならない人は大丈夫だと思う。