従来からLGディスプレイのWRGB方式有機ELパネルのブランドは「META」だった。今年はふたつに分かれた。(1)タブレットやノートPC、車載用など中・小型パネル向けのブランドの「Tandem OLED」、(2)大型のテレビ、業務用ディスプレイのブランドの「Tandem WOLED」――だ。このふたつで、有機ELパネルを展開する。いずれも積層を意味するTandem(タンデム)からネーミングした。
Tandemはもともとは「2頭立ての馬車」という意味だが、ディスプレイ業界用語では「積層」のこと。つまり発光層(スタック)を重ねて、望みの色を得る手法だ。技術用語としては昨年からの「Primary RGB Tandem」がこれからも引き続き使われるが、その「Tandem」からブランディングしたのである。
Tandem OLEDは中・小型パネルのブランド
Tandem WOLEDはテレビやモニターなど大型パネル向けだ
METAの名前はTandem WOLEDにおいて最上位グレードとして、今後も使われる。それは下から、エントリーのSE、ミドルのEX、フラグシップのMETA(RGB 4スタック)――となる。
技術の話をしよう。まずは中・小型パネルのブランド、Tandem OLEDから見ていこう。従来の中・小型パネルから発光構造が変わったのが重要だ。これまではRGBWのストライプ形状のサブピクセルだった。そこからW(白)のサブピクセルを除き、RGBのみにした。つまりピュアなRGB発光に変えたのである。Tandem(積層)については、各色は2スタック発光だ。後述する「Tandem WOLED」は4スタック、白発光であることが違う。
miniLED液晶テレビに比べ、有機ELはたいへんな省資源
Tandem WOLEDは、ピーク輝度4500nitsに向上
白のサブピクセルを除いたのは、文字の視認性向上が目的だ。特にマイクロソフトのClearType(クリアタイプ)フォントをクリアーに見せるための措置だ。サムスンディスプレイでデルタ配置をやめて、ストライプ配置に変えたのと同じ理由だ。
「W」の必要性は、テレビでは輝度向上のためにあったが、テレビと違いモニターは近接視聴で、過度な明るさは必要ない。また色再現もWがなくRGBのみで発光するから、良くなるはずだ。新発光構造の開発には、開口率向上を含む複数の新技術が効いた。高解像度(4K/240Hz)と高リフレッシュレート(フルHD/480Hz)モード切り替えが可能で、精細度は160ppiだ。かつてもRGBストライプ方式の有機ELパネルもあったが、当時のリフレッシュレートが60Hzだった。速さと精細度が進歩している。
DCI-P3は前パネルから1ポイント上昇し、99.5%をカバー
自発光の有機ELは、液晶のminiLEDディスプレイより遙かに優れる。4K液晶が1500のローカルディミンングプロックである一方、有機ELは3300万サブピクセル発光だ
Tandem WOLEDはテレビやモニターなど大型パネル向けだ。Tandem WOLEDの「W」は、同社の有機ELパネルの特長である白色(White)発光有機ELを指す。これまでもWRGB方式という言い方があり、この「W」は白のサブピクセルを指す場合もあったが、今回Tandem WOLEDの「W」は、RGBのスタックを合計して出来た「白色」発光(後にカラーフィルターで着色)のことを言う。構造は引き続き「原色RGB4スタック」だ。
昨年から使っている技術用語「Primary RGB Tandem」は「2.0」に進化。昨年の「1.0」の4000nitsから、アルゴリズムなどの改良にて、ピーク輝度4500nitsに向上(サムスンディスプレイの新型QD-OLEDも同じ数値)。WOLEDを振り返ると、2013年の初代が500nits、22年の重水素を加えたEXで1300nits、23年のMETAが2100nits、25年の4スタックの4000nits、そして26年のTandem WOLEDは4500nitsまで来た。次はおそらく5000nitsであろう。
注目トピックは驚異の反射率0.3%(METAグレード)を実現したことだ。外光映り込み問題は、ここにきて重要視されている。せっかくの有機ELだから黒がきちんと沈んでも、明るい環境で外光や自分の顔が映り込んだり、肝心の黒も浮いて見える。その対策として、画面の表面に細かな凹凸を与えて反射光を拡散させ、外部光の映り込みを抑えるノングレア(non-glare)処理が一般的だが、画質が明らかに落ちる。というより、ドライな質感になり、平面的になり、黒も浮く。欲しいのは、艶々した濡れた漆黒の質感を持ちながら、反射が徹底的に抑えられたディスプレイだ。
驚異の反射率0.3%を達成。映り込みがほとんどない。明所でもコントラストが落ちない
それが26年型Tandem WOLEDで実現した。昨年モデルも反射率0.8%と相当低かったが、今年モデルはなんと0.3%。これはオリンピック級の低反射だ。技術的には、屈折率の異なるシートを3層重ね(昨年は2重シートだった)、反射の方向をあらゆる角度へ、徹底的に分散させることに成功したのである。
凄いのが、説明を担当した女性社員の服だ。何と「白」なのである。ディスプレイの評価会場では、反射による画質へのダメージを防ぐために、説明員は黒服を着るのが義務づけられているが、LGディスプレイのブースでは、白服で説明していた。白でもまったくと言っていいほど画面に映らず、画質をスポイルしないことへの、絶大なる自信があるから、あえて白を着たのである。
LGディスプレイのプレゼンテーションで特に印象に残ったのが、RGBバックライト・miniLED液晶テレビと有機ELテレビとの画質比較だ。
これがTandem WOLEDの高性能の列挙
160ppi/240HzのTandem OLEDゲームモニター。ストライプでこの速さは世界初
有機ELはすべてのサブピクセル(3200万)が自発光するので、黒から白までのダイナミックレンジがひじょうに広大で、しかも画面位置、動き、サイズの大小で色が変わることもない。これは専門的にはCOLOR CONSISTENCY(色の安定)という。
ところがRGBバックライト・miniLED液晶テレビではホワイトディミング(エリア内のRGBサブピクセルが同時に発光して白になる)のエリア分割数がひじょうに多いので、白のバックライトを表面のカラーフィルターで着色するという、かつての液晶テレビと同じ着色法となり、せっかくのRGBバックライトの効果がなくなる。
カラーバーや、全面が同一カラーの時は、RGBバックライトが威力を発揮して、高彩度、色の再現範囲も広い(カラーディミングという)。しかし、多数の色がそれぞれ階調、輝度、彩度を違えてエリアにしている一般的な映像では、一定のローカルディミンング範囲の中で、絵柄の色数にRGB LEDの数が追いつかないので、バックライトは白で発光し、表面のカラーフィルターによって色分けして着色するのである。
今後登場する低価格の有機ELパネルを開発。右のminiLED液晶テレビより高価格だ
RGBバックライトのminiLED液晶テレビは、プロック単位で、RGBが全発光し「白」になる部分がとても多い
このホワイトディミング時には輝度、彩度、色相が不正確になり、色の再現範囲が著しく狭くなる。現実的には場所によって、動きによってカラーディミングになったり、ホワイトディミングになったりするので、彩度、輝度、色相が動く。それがCOLOR INCONSISTENCY(色の不安定)につながる。
説明員は「コントラスト、色の安定性では有機ELははるかにRGBバックライト・miniLED液晶テレビより優れます。Tandem WOLEDは暗くても明くても、どのような環境においても色が完全に安定し、精度が確保されるディスプレイなのです」と力説したのも強く印象に残った。