長年にわたりスタントマンとして活躍してきた髙橋昌志。前作『狼 ラストスタントマン』で鮮烈な俳優デビューを飾り、本作『最後のミッション』では満を持して主演を務め、渾身のアクションを披露している。監督は髙橋の朋友とも言える六車俊治が務め、CGなし、トリックなしの、まさに肉体を最大限に使った限界アクションを創り上げた。ここでは、髙橋に惚れ込み、俳優として起用、彼の魅力を最大限引き出した六車監督にインタビュー。本作の着想や、髙橋にかける想いを存分に聞いた。
――よろしくお願いします。いよいよ公開が迫ってきました。
ありがとうございます。公開までもう1週間しかないのかと感じています。年末年始を挟んでいるので、あまり宣伝できなかったな、と(笑)。
――今回の『最後のミッション』では、前作『狼 ラストスタントマン』から引き続き髙橋昌志を起用し、主演に据えています。
前作の『狼 ラストスタントマン』、これはもう、髙橋昌志に焦点を当てて、スタントマンを題材したものをやりたかった、というのがまずあったんです。スタントマンをしている彼を見た時に、絶対に俳優ができると思って! つまり、スタントマンって後ろ姿で演技しているんですよ。危ないカットになったら、役者の代わりに芝居(アクション)をしているわけじゃないですか。危ないといっても、車に乗って降りるとか、バイクに乗って走り出すとか、そういうこともスタントマンがやっているんです。つまり、それってもう演技じゃないですか。立ち居姿に、その時の心情とかキャラクターが出るんですよ。だから彼には演技ができる、と確信していたんです。
そこで、お兄ちゃん(髙橋昌志/4歳年上なので、普段はお兄ちゃんと呼んでいるそう)に芝居をしてもらいたくて、役者やったらどうかってオファーしたら、最初は“嫌だ”って断ってきたんです。照れ屋なんですよ。絶対やらないと言うので、やらないんだったら、俺もこの映画なしねって返したら、夜になって電話がかかってきて“やっぱりやります”って。それで実現したのが『狼 ラストスタントマン』なんです。そして今回は、主演をお願いしました。
――俳優をしてみた感想は聞きましたか?
特に聞かなかったけど、彼の中で、何かしらの発見があったんじゃないですかね。俺できた、もっとやりたい、できるかもって思ったように感じました。
――本作のイメージポスターからは、『ランボー』の雰囲気も感じました。
あははは、意識しましたよ。もうね、お兄ちゃんの肉体が絵になるんです。だから、Tシャツ一枚で、ジーパンを履いて、馬にまたがってもらって! 今回は肉弾アクションをやると決めていたので、撮影に向けて筋肉も増量もしてもらっているんです。60になってもこういう体が作れるのも、すごいことですよね。トム・クルーズが60になっても、体を作って、自らアクションをして、体で表現できるのってかっこいいじゃないですか。だから、日本には髙橋昌志がいるんだって、大きな声で言いたいです。
――本作では前作から一転、特殊部隊出身で、馬に乗ったり、謎の組織が出てきたりと、要素も豊富に盛り込まれています。物語の着想はどのように得たのでしょうか。
僕は軍隊の組織に興味があって、それを描いてみたいとずっと思っていたんですよ。軍隊と言えば組織だし、それは、人間が作った組織の中では、一番完成されたものだと感じているんです。その組織にぶつかっていく個人とその葛藤は、ものすごくダイナミックなものになるだろうと。それを今回盛り込みました。しかも、軍隊の中でもエリートと言えば特殊部隊じゃないですか。そこで、お兄ちゃん演じる土門 新を日本の特殊部隊――空挺部隊出身者にすれば面白いだろう、と。
つまり、土門は日本の中で最強の軍人であり、世界でもトップクラスのエリートなんです。その彼が、誰と戦って、どういう葛藤を持つかというところを考えて、最終的に組織と対立する。これをお兄ちゃんがやったらかっこいいだろうな、と。そこからいろいろと企画を展開させていきました。
――肉弾アクションについては?
それは前作の反省なんです。『狼 ラストスタントマン』では、モトクロスバイクのアクションをやったのですが、ヘルメットやプロテクターを着けていたので、顔がまったく見えなくて……。“お兄ちゃん、顔を見せたいからヘルメットを外してよ”とお願いしても、“石ころが飛んできて危ないから外せない”って言われて。なんとかゴーグルは外してもらったけど、結局、顔がよく見えなくて(笑)。それもあって今回は、ノーヘルでTシャツ一枚になってもらったんです。薄着になる分、前作よりも筋肉をつけてもらったので、それだけで絵になると思うし、役柄(土門)的にもあっているなって思いましたね。60近くても筋肉ってきちんとつくんですよ。そこも見てほしいです。
ただ、終盤ではその恰好で車から砂利道に転げ落ちるスタントもやってもらいましたけど、相当痛かったと思いますよ。本当にトリックなし、CGなしでやってもらいました。
――土門の敵役 Z(倉田昭二)は、存在感がありました。
土門が強ければ強いほど、敵も強くないとバランスが取れませんからね。
――Zは、銃はほぼ使わないし、ナイフも最小限、肉弾戦に絶対の自信があるように見えました。人物造形はどのようにしたのでしょう。
でしょ(喜)、Zにとって銃って一番ダサい武器なんですよ。うるさいし、テクニックがなくても相手を倒せるから。だからZが使うのは、近接で有効なナイフとロープ(金属製)、そして自らの肉体なんです。自分の中にそういう厳格なルールを持っているんです。
設定としては、劇中のセリフにもありますけど、傭兵あがりなんです。それも、アフリカあたりで活動していた傭兵で。でも、御覧の通り相当にヤバい奴で、性格的に組織には合わないので、上官と対立して殺してしまった。するともう、傭兵としては働けませんから日本に帰ってきて、一匹狼で活動できる殺し屋になった。
そういう男が土門と出会うんです。Zからしたら、“こいつ土門だ!”って一瞬で分かるんです。特殊部隊出身者として世界的に有名人ですから。
――だから、土門の顔を見て、一瞬の間というか、ニヤリとするのですね。
そうなんです。Zからしたら、“うわっ土門だ!”“会えた!” そして戦えることに感謝しているし、喜びを感じているんです。そんな二人の戦いの決着は、ぜひ、劇場でお楽しみください。
――今回の撮影でこだわったところや印象に残ったところを教えてください。
土門が暮らしている山中の風景、その雄大な自然をまず、見てほしいですね。綺麗な自然を撮りたいと思って小淵沢で撮影したんです。人目を避けて、ひっそりと山奥に潜んでいる、そんな雰囲気も感じてほしいです。
撮影自体は、アクションでは怪我の心配もあったので、前半に日常、後半にアクションというスケジュールを立てて、安全や体力、疲労に配慮しつつ、ひとつひとつのシーンを丁寧に打合せをしながらやったことで、大きな怪我もなく進みました。けど、やはり(アクションは)相当に疲弊するんでしょうね。一日撮休を入れたら、その日はお兄ちゃんに連絡が取れなくなってしまって。何度電話しても出ないので、翌日、仕方なく現場に向かうと、現場近くにお兄ちゃんの車が止まっていて、中で寝ているんですよ(笑)。聞くと、“昨日は疲れすぎてもう起きられないと思ったから、夜の内にここに来て寝てた”って言うんです。電話に出る体力がなくても、車を運転して現場まで来る気力はある。この人すげぇなって思いましたよ。子どものころから現場にいますから、穴をあけてはだめだっていう本能があるんでしょうね。往年のドラマ「ライオン丸」で馬に乗った子ども、あれお兄ちゃんですから。楽屋でザ・ピーナッツに遊んでもらったとも教えてくれました。
――今回、ヒロイン的な立ち位置にいる丸りおなさんは、前作『狼 ラストスタントマン』に続いての出演です。
実はお兄ちゃん、ああ見えてかなり繊細なんですよ。明るく見えますけど、極度の人見知りで。演技以前に、お兄ちゃんに気を遣わせてはいけない、ということで、見知ったキャストを起用したんです。まあ、それで言えば、前作で共演した石黒賢さんは、お兄ちゃんの幼馴染みなんです。丸さんも、お父さんがお兄ちゃんの知り合いで、顔馴染みだったんです。おかげで、現場では冗談も言い合えるような関係性で、フラットな状態でいられたんじゃないですかね。ああいう顔はしていますけど、オフの時はいたずら好きで、チャーミングですから。
後半で、土門と丸さん演じる小春が対峙するシーンがありますけど、そこは事前に、僕とお兄ちゃんと丸さんの3人で集まって、何回もリハーサルを重ねて撮影に臨んだので、見応えのあるものになったと思います。お兄ちゃんはスタントマン経験者ですから、何事にも手を抜かないんです。リハーサルします、というと、本番さながらにグイッと感情をこめて演技するし、ひとつひとつの練習、打合せ、すべてを真面目に、本気でやってくれるんです。だから、丸さんにもいい影響を与えているんじゃないですかね。
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
この映画を通して、髙橋昌志というアクション俳優が、今、日本にいるんだということを知っていただきたいです。観ていただければ、お兄ちゃん=髙橋昌志のアクションがすごいと思ってもらえるはずです。エンタメ作品としても楽しんでもらえると確信しています。まずは、これが一番です。あとは今回、軍人を描いていますので、世界の戦争や平和に関する問題についても考えてもらえれば、なお嬉しいです。よろしくお願いします。
映画『最後のミッション』
2026年1月16日(金)より 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ ほか全国公開
<STORY>
元陸上自衛官の土門(髙橋)は、かつて特殊部隊を率い東ヨーロッパに派遣されたが、その戦場でのある悲劇を隠すため、PTSDを抱える元部下・波岡カズオと社会から隔絶された生活を送っていた。
2年後、カズオの元婚約者が殺害される事件が起き、犯人が最先端ロボット企業のCEO・浜田健だと知った土門。一方、失踪した兄カズオを探すジャーナリスト小春(丸)は土門と接触し、やがてカズオの居場所を突き止める。小春は、悲劇の原因はすべて土門にあると責め立てるが、その頃、全てを闇に葬ろうとする浜田に雇われた凄腕の殺し屋“Z”が送り込まれようとしていた。さらに、その裏にはある陰謀が蠢き始め……。
<キャスト>
髙橋昌志 丸りおな 南翔太 かんた 倉田昭二 遊佐亮介 日高七海 目黒祐樹
<スタッフ>
監督・脚本:六車俊治 ホースコーディネーター:辻井啓伺 スタントコーディネーター:柿添清 アクションコーディネーター:倉田昭二 音楽:谷地村啓 撮影:長谷川康太郎・水垣喜紀 照明:淡路俊之 録音:小濱匠・臼井勝 音響効果:臼井勝 編集:柴山将成 ヘアメイク:森田杏子 監督補:小泉剛・森山茂雄 プロデューサー:六車俊治 鈴木仁 髙橋昌志 長谷川康太郎 特別協力:脇田巧彦 特別協賛:大和輸送株式会社 製作:「最後のミッション」製作委員会 制作:六歌仙フィルムス 配給:ミッドシップ
2025年/カラー/日本/90分/ビスタサイズ
(C)2025「最後のミッション」製作委員会