2021年本屋大賞にノミネートされた人気小説「この本を盗む者は」が劇場アニメーション化され、12月26日より全国公開される。本嫌いの少女と、謎の犬耳少女が手を取り合い、世界にかけられた呪いを解くため、本の世界の中を冒険するファンタジー作となっている。ここでは、声優初挑戦となった主役・御倉深冬の声をあてた片岡凜と、深冬を助ける真白 役の田牧そらにインタビュー。収録の裏側やエピソードなどについて話を聞いた。

――よろしくお願いします。今回はお二人とも声優に初挑戦されています。実際にアフレコを経験してみての感想をお願いします。

片岡凜(以下、片岡) 声優業は以前から興味があったので、今回挑戦することができて、とても光栄でした。普段は実写が多いので、表現の仕方は全然違うと感じましたし、決められた秒数の中で、セリフを言い終えるのはたいへんでした。さらに、その中で感情を引き出して表現しなくてはいけないので、そこに集中しながらやらせていただきました。

 初めてのアニメ作品で、監督をはじめ、本当にスタッフのみなさんに助けていただいた面が多くて、そのお陰でベストなパフォーマンスで臨むことができました。感謝の気持ちでいっぱいです。

田牧そら(以下、田牧) 以前、朗読のお仕事をやらせてもらったことがあって、その時に声だけで表現するのがとても楽しかったので、いつか声優のお仕事をやってみたいと思っていたんです。それもあり、今回、夢が叶ってすごく嬉しかったです。やはり、普段の(実写での)お芝居とは違っていて、本当に声だけでいろいろなものを表現しなくてはいけませんから、難しさは感じました。でも、現場では、息遣い一つとっても、聞こえ方が全然違ってくるっていうことを発見したんです。監督から、「息遣いをしてみて」と言われて、実際にやってみると、(セリフの雰囲気が)全然違うんです! すごく勉強になりました。

 作品としては、とにかく絵がものすごく綺麗ですし、物語もとても面白いんです! 真白のキャラクターも可愛らしくて、この子に声を入れられるんだと思うと、すごくうれしくなりました! 収録が始まっても、自由にやらせていただいたこともあり、すごく伸び伸びと楽しく収録できました。

――自由にやっていいよというのは?

田牧 収録ではまず、私の思ったようにやらせていただきました。その後に、監督さんやスタッフのみなさんと、そのニュアンスでいいのかなどを話し合いながら進めていきました。

――片岡さんはそういうことはありましたか?

片岡 私の役はリアクションを大きく張ることが多い上に、非現実的な状況であることもあって、想像がついて分かりやすい指示をしていただくことも多かったです。例えば、空から真珠が降ってきて(当たって)痛がるシーンでは、踏むと痛い足つぼマッサージ器ってあるじゃないですか、それを踏んでいるイメージでとか、結構そういうたとえをたくさんしてくださったので、表現しやすかったです。

――次に、ご自身が演じられた役柄について教えてください。また、役柄はご自身に似ている、近いものはありましたか?

片岡 深冬はちょっとツンツンしていて、人と線を引いて生きているような子ですけど、作品の中では、楽しみながら世界を旅している、冒険しているっていうところが、役者として日々冒険中の私と似ているなと思いました。

田牧 真白は、最初は謎めいた女の子なんですけど、物語が進むにつれてどんどん人間性が垣間見えてくるようになります。その過程で、深冬ちゃんに甘えるような可愛らしい一面がある一方で、冒険の中では深冬ちゃんを引っ張っていくなど、かっこいい部分も持っているんです。本の知識が豊富で、専門的な用語もよく知っているところは、何かに夢中になったらとことん調べてしまうタイプの私と、重なるかなと思います。

――なかなかにキャラクターが立っていますね。収録にあたっては、その性格や感情をどのように表現したのか、苦労した部分など、もう少し詳しく教えていただけますか。

片岡 実写とは全然違うので、一番に意識したことは、呼吸と語尾の強さで、技術的なところも含めて、そこを意識して技として取り入れるということが多かったです。実写では、自然と出てくるものを、そのままカメラ(マイク)に拾っていただくんですけど、今回は、まずはアニメ(映像)を見て、台本を読んで感じた初見の印象を大事にして、声の当て方をストレートにしました。(マイクに)真っすぐにバンって強く当たるように声を出して、それによって彼女のちょっとツンツンしているところを表現しようと、意識していました。声のトーンも感情(状況)に合わせて、いろいろと変えています。

田牧 普段のお芝居と違うのは、やはり、表情や動きが出せないところですけど、目の前には(参考になる)映像があるし、スタッフの皆さんが作ってくれた可愛くて魅力的なキャラクターを演じられるうれしさとプレッシャーを感じながら、頑張りました。

 真白は冒頭の方では、無機質な感じなので、単調さを出すように、セリフの抑揚や強弱をつけずに、人間味のないというか機械っぽい雰囲気を意識していました。でも、物語が進むにつれて、感情が出てくるようになるので、その時は、呼吸や息遣いを意識しながら、気持ちが出るようにしていました。

――真白は性格が変わっていきますから、よりたいへんだったと思います。アフレコをしていて、段々と思い通りにできるようになった、という感覚はありましたか?

田牧 いえ、全然。ずっと、これで大丈夫なのかなっていう不安を抱えていましたけど、スタッフのみなさんがすごく褒めてくださるから、それがすごく嬉しくて。よしもっと頑張ろうって思いながらやっていました。

――ちなみに、ご自身が演じるキャラクターのデザインはいかがでしたか?

片岡 意思が強そう! と思いました。

田牧 うわぁ、可愛い! 犬耳が生えてるって驚きました。

――ところで、本編ではいくつかの本の世界を旅します。印象に残ったものを教えてください。

片岡 一番印象に残ったのは、探偵のリッキー・マクロイが出てくるところですね。リッキーのキャラクターが好みなのと、もともとサスペンスとか探偵ものが好きなこともあって、世界観に魅力を感じました。リッキーみたいに犯人を捕まえてみたいですし、探偵役も演じてみたいです。

田牧 私も、その探偵が出てくる『BLACK BOOK』の世界が一番好きです。現実では、あんなに派手なアクションとか、探偵が出てきたりするものはあまり目にすることがないので、すごくいいなぁと思いました。

――その世界を訪れた際、真白はあるシーンで、急にかっこいい雰囲気を醸し出す声色を使います。実際やってみていかがでしたか?

田牧 そのシーンの収録はすごく難しかったです。監督からは、他と違うテイストで、イケメンでかっこいい感じでやってほしいと要望をいただき、いろいろ頑張ったのですが、なかなかうまくできなくて……。その時に監督から、「ちょっと壁ドンしてみようか」ってヒントをいただいて。それで、深冬ちゃん/片岡さん相手に壁ドンさせてもらって、その状態で話してみたら、“この感じでやったらかっこよく聞こえるかも”って、自分の中で感覚をつかめたような気がしたんです。そこはすごく面白かったです。

壁ドン を再現してもらいました

――それは、公開記念の舞台挨拶で再現するやつですね(笑)。

田牧 えっ、そうなんですか!

――ところで、お二人は普段、アニメを御覧になりますか?

片岡 はい、たくさん見る方ではありませんけど、父の影響もあって昭和の作品はよく見ていて、「あしたのジョー」とか「スペースコブラ」が大好きです。クリスタル・ボーイは素敵ですよね。サイコガンも撃ってみたいです。

田牧 私も父の影響が大きくて、スポーツをテーマにした作品が大好きです。野球をしていたこともあって、中でも「タッチ」が好きです。

――細かいことを聞きますが、アフレコした声は、片岡さんは地声に近く、田牧さんは少し高く感じました。

片岡 そうですね。私はトーンは地声ですが、少し鼻にかけて喋っている印象です。収録中は、そこを意識しながらやっていました。

――すぐに切り替えられるのですか?

片岡 はい、できます。

――田牧さんは。

田牧 冒頭部分は結構単調なので、そこはあまり声が高くなりすぎないようにと意識していて、その後、犬になるタイミングとか、ちょっと興奮したり、感情を表に出す時は、もう少し声は高めの方がいいねと演出していただいたので、いつも話しているよりも、ちょっとだけ高くしていました。

――ちょっと今更な質問ですが、お互いの印象について教えてください。一緒に仕事をして、その印象は変わったりしましたか?

片岡 初めてお会いした時の(田牧さんの)印象が、そのまま真白で、未だに真白そのままです。声の感じとか、お話ししている時の雰囲気とか、本当にイメージしていたそのままで、アフレコもすごくしやすかったです。

田牧 ありがとうございます。私も、初めてお会いした時に、深冬ちゃんだって思いました。ちょっぴり、大人っぽくてクールな雰囲気も感じましたけど、いろいろと話したり、お仕事をしていく中で、可愛らしい面が見えたり、すごくキュートな笑顔をされるので、自分の中ではちょっと印象が変わりました。

――さて、話は飛びますが、小社はホームシアターの専門サイトなので、それに絡めた質問をします。お二人はホームシアターに興味はありますか?

片岡 自宅では、映画館みたいにリビングを真っ暗にして映画を観ていますので、ホームシアターはほしいですね。アクション作品が大好きで、中でも「ジョン・ウィック」シリーズが一番なので、何回も観ています。

――田牧さんは?

田牧 今は、映像配信でいろいろな作品を見られるようになっているので、昔の映画とか、海外の作品とかをよく見ていますから、それを映画館みたいな環境で見られたら、楽しそうですね。興味あります!

――最後に、作品の見どころ、アピールポイントをお願いします。

片岡 もう、すべてが見どころだと思います! 一回と言わずに何度でも! もう、全人類に届け! です。

田牧 テーマとなっている“本”や“物語”は、いろいろな方にとって身近なものだと思うので、若い方も含めて、幅広い年代の方に楽しんでいただけると思います。そして、物語の中に入るのはすごくワクワクすることだと思うので、観てくださる方には、たっぷりとその世界観に浸かって、楽しんでいただきたいです。

映画『この本を盗む者は』

2025年12月26日(金)より 全国公開

原作:深緑野分「この本を盗む者は(角川文庫/KADOKAWA刊)」
監督・コンテ・演出:福岡大生
キャラクターデザイン・作画監督:黒澤桂子
配給:角川ANIMATION
製作幹事:KADOKAWA
製作:「この本を盗む者は」製作委員会
(C)2025 深緑野分/KADOKAWA/「この本を盗む者は」製作委員会

●片岡凜 公式サイト
https://www.flamme.co.jp/actress/rin_kataoka/

●田牧そら 公式サイト
https://tristone.co.jp/sp/actors/tamaki/

<片岡凜>
スタイリスト:有咲
ヘアメイク:北原 果(KiKi inc.)

<田牧そら>
スタイリスト:野田さやか
ヘアメイク:石邑麻由