ORBから、ヘッドホンアンプの新製品「JADE casa Ultimate」が12月20日に発売される。価格は¥800,000(税別)という弩級の製品だ。

 ORBのヘッドホンアンプというと「JADE casa」が思い出されるが、そのDSD対応版から数えても約11年ぶりの新製品となる。その分、本機へのこだわりは強く、パーツ一つ一つにいたるまで徹底的に吟味し、音質を確認し、採用、搭載しているということだ。もちろん、デザイン面でのこだわりも発揮されており、フロントパネルの鏡面加工は、大阪の馴染みの職人に依頼し、完成させているという。一枚板のステンレスのその表面の仕上げを、実際にご自身の目で確認してみてほしい。

 さて、製品の概要を記すと「究極のヘッドフォンアンプ」を謳うだけあって、作り込みは徹底している。Ultimate=究極という型番からも、その想いがくみ取れるだろう。肝は、電源部とアンプ部で、電源トランスにはRコアトランスを、アンプは4チャンネルの電流帰還型A級シングルアンプを搭載している。担当者の弁では、「芯と奥行のあるサウンド」を目指したということだが、その音質はまさにそれを体感できる仕上がり。近年はリケーブルメーカーという側面も強いが、内部配線には、太さ、材質、長さを吟味した自社ケーブルを適材適所で用いているそうだ。

 ちなみ、本機はアナログ仕様なので、デジタル入力(同軸、光、USB)には非対応で、アナログ入力(3.5mmステレオミニ、RCA、XLR)専用。出力はフロントに3系統(標準ジャック、ミニXLR、XLR)を備える。標準ジャック端子については、担当者が吟味した“音のいい”パーツが使われているそうだ。また、ミニXLRとXLR端子でも、音質に変化を持たせているという。なお、フロント左側にはゲインボタンもあり、クリックでダウン(HIGH→MID→LOW)、長押しでアップとなる。こちらも、担当者の弁では、「急に下げたい時に、簡単にできるようにクリック仕様にしています」とのことだ。おすすめは「MID」。これは後段のレビューでも少し登場するので覚えておいてほしい。

 さて、試聴レビューを簡潔に紹介したい。記者は、ゲインはあまり上げたくないのではじめは「LOW」で聞いていたのだが、あまりにも担当の語るサウンドをかけ離れていたので、試しに「MID」にしたところ、これがドンピシャ。ポータブル機器を組み合わせる場合、ゲインはまちまちなので、JADE casa Ultimate側で操作(ゲインを変更)すると、S/Nが悪くなるという。まさにその通りで、LOWの時は、音場が狭く、比較的歪みも多く、中域の盛り上がったお団子型のサウンドだったのだが、MIDにした途端、音場は左右・上方に拡大するようになり、帯域もフラットでワイドになり、音色には艶や煌めき感も出てくるようになった。歪みも減り(感じなくなり)、Ultimateの型番の通り、極上のサウンドが楽しめた。

JADE casa Ultimateの主な仕様
入力インピーダンス:
 アンバランス入力→アンバランス出力(バッファスルー):10kΩ(GAIN:LOW)
 アンバランス入力→アンバランス出力(バッファスルー):5kΩ(GAIN:MID、HIGH)
 アンバランス入力→アンバランス出力(バッファあり):10kΩ
 アンバランス入力→バランス出力:5kΩ
 バランス入力→バランス出力:10kΩ
 バランス入力→アンバランス出力:20kΩ
入力端子:φ3.5ステレオミニ(アンバランス入力)、RCA(アンバランス入力)、XLR(3ピン、female、L/R、バランス入力)
出力端子:推奨負荷インピーダンス:16~600Ω、標準ステレオ(φ6.3、アンバランス出力)、4ピンXLR(female、バランス出力)、3ピンXLR(female、L/R、バランス出力)
周波数特性:20Hz~20kHz +0dB、-0.5dB
全高調波歪率:アンバランス出力時:0.01%(32Ω負荷、1kHz)、バランス出力時:0.004%(32Ω負荷、1kHz)
定格出力:アンバランス出力時:125mW + 125mW(32Ω負荷、1% THD+N、1kHz)、バランス出力時:150mW + 150mW(32Ω負荷、1% THD+N、1kHz)
電源:AC100V 50/60Hz
消費電力:40W
外形寸法:W372×D390×H87.5mm(突起物含む)
重量:約7.7kg