76人ものオーケストラ編成で収録された劇場版『銀河鉄道999』後編のリッチな響きが蘇る

 『交響詩 さよなら銀河鉄道999 −アンドロメダ終着駅−』のCD/SACDハイブリッド盤がステレオサウンド社からリリースされた。1981年8月公開の劇場版『さよなら銀河鉄道999 −アンドロメダ終着駅−』のオリジナル・サウンドトラック盤であり、全19曲・LP2枚組の大作をCD/SACDハイブリッド盤2枚組として復刻したものである。

 ちなみにステレオサウンド社では2024年10月に『交響詩 銀河鉄道999』のCD/SACDハイブリッド盤もリリースされている。こちらは1979年公開の劇場版『銀河鉄道999』のサントラ(全12曲・LP1枚)をCD/SACDハイブリッド1枚に収めたもの。映画もサントラもファンには「2作で1作」と見なされるほどつながりの強い連作であるから、この2作品をCD/SACDハイブリッド盤で手もとに揃えられる喜びは大きい。

『交響詩 さよなら銀河鉄道999−アンドロメダ終着駅−』
CD/SACDハイブリッド盤(2枚組)

(日本コロムビア/ステレオサウンド SSMS-085〜6)¥5,940 税込

[収録曲]
DISC 1
01.序曲〜パルチザンの戦士たち〜
02.若者に未来を託して
03.メインテーマ〜新しい旅へ〜
04.謎の幽霊列車
05.車中にて〜LOVE LIGHT〜
06.メーテルの故郷、ラーメタル
07.再会〜LOVE THEME〜
08.黒騎士ファウスト
09.過去の時間への旅
DISC 2
01.青春の幻影
02.大宇宙の涯へ〜光と影のオブジェ〜
03.惑星大アンドロメダ
04.生命の火
05.崩壊する大寺院
06.サイレンの魔女
07.黒騎士との対決
08.戦士の血
09.終曲〜戦いの歌〜
10.さよなら銀河鉄道999〜SAYONARA〜

●音楽:東海林 修
●指揮:熊谷 弘
●演奏:コロムビア・シンフォニック・オーケストラ、THE GALAXY(シンセサイザー)
●マスタリングエンジニア:武沢茂、久志本恵里、富岡真紀(日本コロムビア)
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 「交響詩」というタイトルの通り、今作も前作に引き続き、指揮:熊谷弘/演奏:コロムビア・シンフォニック・オーケストラをフィーチャーしたサントラである。作編曲は前作の青木望に代わり、今作では東海林修が担当。同じ交響詩でもサウンドの傾向はかなり異なる。リズムセクションを起用してポピュラー寄りのサウンドにまとめられた前作に対して、今作は76人編成のオーケストラで(60人前後だった前作からさらに増員)より王道的でスケールの大きいシンフォニック・サウンドが志向されている。

 そして前作に引き続き、マスタリングは日本コロムビアの武沢茂氏が担当。ステレオサウンドからリリースされるプロダクトではおなじみのベテラン・エンジニアである。1/4インチ・オリジナル・アナログマスター4本をスチューダーのA80テープレコーダーで再生し、CD層/SACD層ともに丁寧なデジタル・トランスファーが行なわれている。

 「序曲〜パルチザンの戦士たち〜」の冒頭。その荘厳で重厚な響きで一気に緊張感が高まるが、後半にはハーモニカが奏でる牧歌的なパートが織り込まれ、今作が青春映画のサントラであることを暗に聴き手に伝える。

 ブックレットに掲載されたクレジットを見ると、今作は赤坂にあったコロムビアスタジオにて1981年5月29日からの5日間をかけて録音されている。この規模のオーケストラ録音をホールでなくスタジオでどう録ったのだろう……と思ってしまうが、ブックレットには丁寧にレコーディング時の演奏者のレイアウトとマイクロフォン配置図なども掲載されている。これを見ると、2つのスタジオの各ブースにパートごとに分かれ、同時録音が行なわれたようだ。当時、国内最大級の規模を誇ったコロムビアスタジオだから実現できたレコーディングであり、『銀河鉄道999』という人気アニメの映画化がいかに大きなプロジェクトだったかも想像することができる。

 Disc1の3曲目「メインテーマ 〜新しい旅へ〜」もこのサントラには欠かせない重要な曲だ。映画本編では999号の出発のシーンで流れる、まさにメインテーマ的な楽曲であり、鉄郎とメーテルの長い旅の始まりを告げるファンファーレとして、多くのファンの記憶に刻まれているに違いない。勇ましいマーチで、SACD層を聴くと空間にティンパニの力強い響きが浸透していく様子が心地よい。また、鉄郎とメーテルが再会するくだりで流されるDisc1の7曲目「再会 〜LOVE THEME〜」のメロドラマ的な展開も、このサントラの空気感を特徴づけている。東海林修は翌年にSFアニメ『SPACE ADVENTURE コブラ』の音楽も手がけているが、そちらでもこの曲のようなテイストを聴くことができ、東海林らしさが表れた曲と言える。

 オーケストラを基本としたこのサントラにあって異彩を放っている曲がシンセサイザーを用いたDisc2の2曲目「大宇宙の涯へ 〜光と影のオブジェ〜」である。ブックレットの東海林修のコメントによると、当初このサントラの依頼を受けた際、東海林は全曲をシンセサイザーで制作したいと申し出たという。しかし鉄郎の青春譚であり壮大なスペースオペラでもある作品性を鑑みてオーケストラの生演奏主体のスタイルに転換。999号が大アンドロメダに到着するシーンで流れるこの曲のみシンセ主体で制作された。SACD層で聴くと、主旋律のふくよかな音像が耳に心地よい。重厚なオーケストラによる楽曲が続く中で幕間的な役割を果たしている。

 映画本編ではクライマックスに流れるDisc2の9曲目「終曲 〜戦いの歌〜」は、一瞬「ささきいさお?」と思わずにはいられない日本合唱協会による男声コーラスに始まり、冒頭の「序曲〜パルチザンの戦士たち〜」のテーマも顔を出す。もちろん「序曲」と対をなす楽曲で、とりわけリッチな響きが堪能できる一曲である。

 最後に、主題歌「さよなら銀河鉄道999〜SAYONARA〜」(Disc2の10曲目)およびイメージソング「車中にて 〜LOVE LIGHT〜」(Disc1の5曲目)を歌っているメアリー・マッグレガーについても触れておこう。彼女はピーター・ポール&マリーのピーター・ヤーロウに見出されたシンガーで、1976年のシングル「過ぎし日の想い出(Torn Between Two Lovers)」のヒットで知られる。同名のアルバムは90年代以降の日本でソフトロックの文脈から「再発見」されたことも。映画本編ではエンディングで流れる「さよなら銀河鉄道999
〜SAYONARA〜」は、いわばメーテルから鉄郎へ向けて歌われた別れの歌。サントラでもこの曲は最後に置かれている。鉄郎とメーテルの長い旅をメランコリックに締め括る。

 劇場版『銀河鉄道999』と『さよなら銀河鉄道999
−アンドロメダ終着駅−』は、2022年に4Kリマスター&ドルビーアトモス版として全国のドルビーシネマで公開された。そのときの興奮と感動を、今度はこのCD/SACDハイブリッド盤で追体験してみてはいかがだろうか。