観ていると、ふと笑いがもれ、あたたかな気持ちになる。そして、この主人公と同じ年代だった頃の自分はどうだったんだろうな、とロクでもない記憶を掘り起こしてしまう、そんな一作という感じだ。
主人公は30歳間際の太郎。交際中の彼女を撮った映画が、大分県の、こぢんまりした映画館で行われている映画祭に入選したので、現地に行ってトークショー的なこともするのだが、来客の反応もいまいちで、トークショーの場では舞台上で作品を批判されてしまう。もうめんどくさくなったのか、業界に顔を売るチャンスではあったろう映画祭のパーティーにも参加せず、となりの町あたりをぶらぶらしていると、未希という謎の女性に声をかけられた。彼女は先の映画祭で太郎の映画を見て、とても良い印象を持っていた。初めての土地で、自分の映画が理解されていないという気持ちがくすぶっている男性のところに、「あなたの映画はいい。一緒に行動していいですか」という女性が現れたら、その男性の気持ちはどう変化していくか。昭和の映画ならそこでガンガンいっていたかもしれないが、太郎は「まず心から」のタイプのようで、自分の内に秘めたもの、交際中の彼女に持っている率直な印象などを、徐々に未希に話していく。一種のセラピーを受けているような感じ、といっていいかもしれない。エンディングの「いかにもふさわしい、だけど妙に新鮮味のある展開」も含めて、最初から最後まで本当に面白かった。
監督はNHK 連続テレビ小説『ブギウギ』脚本も担当する足立紳。太郎に佐野弘樹、未希に天野はな、共演は加藤紗希、篠田諒、剛力彩芽、板谷由夏など。
映画『Good Luck』
2025年12月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
【出演】
佐野弘樹 天野はな
加藤紗希 篠田諒 剛力彩芽 板谷由夏
【スタッフ】
企画・プロデュース:釘宮道広 森田真帆 プロデューサー:坂井正徳 足立晃子 撮影:俵謙太 照明:福田裕佐 録音:臼井勝 助監督:草場尚也 制作担当:太田勝一郎 編集:平野一樹 制作プロダクション:theROOM 協力:豊後大野市 別府市 配給:MAP 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
脚本・監督:足立紳
2024年|日本|104分
(C)2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)