AUREXから発売されたCD/FMワイヤレススピーカー「AX-XSS100」が店頭で人気を集めている。最近、音楽再生でもっとも使われているスマホからのBluetooth再生はもちろん、近年人気が復活してきたCDやFM放送まで、高音質で楽しめるアイテムという。しかもそこにはオーディオファンも納得の高音質技術が盛り込まれている。今回はAX-XSS100を、オーディオ評論家・山本浩司さんのお宅に持ち込んで、その実力をチェックしてもらった。(StereoSound ONLINE)
今回は、AX-XSS100を山本さんのオーディオルームのレコードラック上にセットして、Bluetooth、CD、FMなどの「イージー・リスニング」を体験していただいた
音楽鑑賞にはふたつのスタイルがある。ひとつは「シリアス・リスニング」、そしてもうひとつが「イージー・リスニング」だ。ぼくがリスニングルームで実践しているのは、前者の「シリアス・リスニング」。15インチ・ウーファーを搭載したJBLの大型スピーカーを用いて、「至高の音」を目指して日々格闘するようにオーディオに向き合っている(投資金額も家族には言えません……)。
しかし正直言うと、そんな時間ばかりだと疲れ果ててしまい、肩肘張らずにリラックスして音楽を聴きたい時間も持ちたいと思うわけです。ぼくはそんな「イージー・リスニング」用として寝室にボーズのふるい「Wave Radio」を、ダイニングキッチンにテクニクスの「OTTAVA」を置いて、寝しなや料理中に小音量で音楽を楽しんでいたりする。
音楽と真剣に向き合う「シリアス・リスニング」は、オーディオを趣味とする(仕事でもある)ぼくにとって美意識を鍛えるとても大切な行為だし、それと同じように日々の生活のバックグラウンドミュージックとして音楽を機能させる「イージー・リスニング」も重要だとぼくは考えているのだ。そういう聴き方をすることで、心穏やかにベッドに入れたり、料理がいっそう楽しくなったりするわけで。音楽にはそういう効用が間違いなくある。
AX-XSS100は、20mmドーム型ツイーターと64mmコーン型ウーファーの2ウェイ2スピーカーを本体左右に搭載する。このユニットもサウンドデザイナーの桑原さんが音を確認して選んだとのこと
また、聴く音楽によって「シリアス・リスニング」するか「イージー・リスニング」するかが決まることもある。クラシックのシンフォニーや熱気あふれるジャズやロックを再生するときは大型スピーカーで音量を上げて真剣に聴きたいし、アコースティック・ギター・デュオの演奏やブライアン・イーノの『Music for the Airport』のような環境音楽に向き合うときは、うちのJBLみたいなどでかいスピーカーと対決しながら聴きたくないと思う。不世出のピアニスト、グレン・グールドが弾くバッハのゴルトベルク変奏曲は? この演奏なら「シリアス」も「イージー」も両方イケるな……。というふうに音楽の内容に合わせて再生装置を選ぶ楽しみもあるわけだ。
東芝エルイートレーディング(株)から発売された、オーレックス「AX-XSS100」は、そういう「イージー・リスニング」スタイルで音楽に向き合うときに俄然魅力を発揮する一体型ミュージックシステム。
東芝エルイートレーディングは、むかし懐かしい東芝の高級オーディオ・ブランド「AUREX」(オーレックス)の名を使用する権利を有していて、ぼくのような70年代オーディオを懐かしむベテラン・マニアにとって、これも心惹かれるポイントだ。
CD/FMワイヤレススピーカーシステム
AUTREX AX-XSS100 ¥49,500(税込)
<CDプレーヤー部>
●チャンネル数:2チャンネルステレオ
●サンプリング周波数:44.1kHz
●再生メディア:CD、CD-R/RW(CD−DA/MP3オーディオファイルで記録された音楽ディスク)
<USBメモリー部>
●再生形式:MP3(MPEG-1 Audio Layer3、〜192kbps)/FLAC/WAV
●対応メモリー:32Mバイト〜32Gバイト、USBフラッシュメモリー(別売)
●再生可能USBメモリー:USB-IF規格認定品(USB1.1、USB2.0)
<FMラジオ部>
●受信周波数:FM:76.0〜108.0MHz(0.1MHzステップ)
<Bluetooth部>
●バージョン:Ver.5.3
●対応コーデック:SBC
<共通部>
●スピーカー:64mmコーン型ウーファー✕2、20mmドーム型ツイーター✕2
●アンプ実用最大出力:25W✕2
●接続端子:3.5mmステレオミニジャック入力、3.5mmステレオミニジャック出力、USBメモリースロット
●消費電力:30W
●寸法/質量:W400×H143×D255mm(突起物含む)/約4.5kg
主な特長
●独自開発したDSP「AUREX Sound Processor」を搭載
●クリアーで聞きやすい音を再生する2ウェイスピーカー採用
●周波数特性の乱れを抑え、豊かな音場感を実現する「Corner Cutting Enclosure」を採用
音質設計アドバイザーとして、先月StereoSoundONLINEで超弩級プリアンプ「MODEL.3」に関するインタビュー記事を投稿したDVASの桑原光孝さんが関わっているとのことで、そのサウンドには期待が持てそうだナと考えていたのだが、たしかに小音量でも音がふわっと広がり、まったく嫌な音を出さないところに好感を持った。
ボディはMDF材でブラックのマット仕上げ。対応するのは、CD再生(フロントパネル中央にトレイがある)、FM放送、USBメモリー、Bluetoothで、アナログ入力も1系統ある。
AX-XSS100と暮らしてみて「いいな」と思った点はいくつかあるが、まず音が安光りしないこと。帯域バランスが整っていて、どんな音楽を再生してもその魅力をきちんと伝えてくれることだ。
ぼくの「イージー・リスニング」時の愛聴盤であるゴンチチのCD『Guitars』を聴いてみたが、スチール弦とナイロン弦、ふたつのギターが絡み合いながら優しい風情の音楽を紡いでいく感じがじつにいい。これで¥45,000(税別)ならほんとうに安いと思う。
CDドライブを搭載し、大切なコレクションを手軽に楽しめる。搭載されたDSPでCD音源をハイレゾ品質にアップコンバートしているとのこと
本体両サイドには64mmカーボンコーン・ウーファーと20mmチタンドーム・ツイーターで構成された2ウェイ・スピーカーが配置されているが、桑原さんが選んだこの両ドライバーの実力がとても高いのだろう。
また、本機の良音を生み出す上で大きな役割を果たしているのがDSPによる音響補正技術「AUREX Sound Processor」。これにはアイレックス社(米国)の音響技術をベースに開発された音響パワーイコライジング技術「Flat Response Optimizer」が盛り込まれている。
この技術は、スピーカーから放射された音波を数百、数千ポイントで収録し、周波数特性を整えるテクノロジー。桑原さんによると、単純に全帯域をフラットに補正するわけではなく、音楽を「心地よく聴ける音」に向けて調整しているという。ここはサウンドマスターの腕の見せどころだろう。
AX-XSS100は木製エンクロージャーを採用しているのも特長とか。本体正面のコーナー部分を面取りするなど、音の反射にも配慮している
それから実際に使ってみてこれはいいと思ったのが、リモコンのBASSボタン。人間の聴覚特性は音量を絞っていくと低音が聴こえづらくなるのだが、このボタンをオンにすると、小音量再生時でも低音が痩せずにリッチなサウンドが楽しめるのである。
もうひとつ感心させられたのが、声の再生が抜群に良いこと。ぼくは中坊の頃からラジオが大好きで、今も移動中などにBluetoothスピーカーで「radiko」や「らじるらじる」などのアプリでラジオ番組を聴くことが多い。で、手持ちのスマホと本機をペアリングして、ピーター・バラカンや藤原さくら、大友良英、細野晴臣などがDJを務める好きなFM番組を聴いてみたのだが、これがすばらしく良いのだ。個人的にも付き合いのあるピーターさんの声などじつにリアルで、まさにソコでしゃべっているかのよう。
一体型ミュージックシステム、オーレックスAX-XSS100。オーディオマニアの「イージー・リスニング」用としてもぜひお勧めしたいと思う。
FM放送の「イージー・リスニング」がお気に入りという山本さん
(撮影:土屋 宏)