高性能シングルボードコンピューター(SBC)ラズベリーパイ(Raspberry Pi)で、高品質の音楽再生を実践するOS(基本操作ソフト)の開発で広く知られているVolumio。英語の「音量(Volume)」と伊語の「わたし(Mio)」を合わせた造語で、「自分にとって最高の音を楽しんで欲しい!」というメッセージが込められている。

 彼らが次のステップとして選んだのが、ソフトウェアの提供に止まらず、ハードウェア、つまりオーディオ機器の開発、製造を手がけること。ここで取り上げるMotivoとRivo+はオーディオメーカーとしての「Volumio」が満を持して送り出してきた自信作だ。

Network Audio Player
Volumio
Motivo
¥286,000 税込

●型式:ヘッドホンアンプ内蔵ネットワークプレーヤー
●接続端子:アナログ音声出力2系統(RCA、XLR[ヘッドホン出力と兼用])、デジタル音声出力5系統(同軸、光、USB Type A×2、I2S)、LAN端子1系統(RJ45)、ほか
●Bluetooth対応:SBC
●寸法/質量:W195×H55×D195mm/2.5kg

●主な対応ストリーミングサービス:Qobuz、Spotify、TIDALほか
●対応アプリ:Volumioアプリ
●Wi-Fi規格:IEEE802.11a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz)
●備考:Volumio Premium利用可能(追加料金不要)、Roon Ready対応

 

Network Audio Transport
Rivo+
¥242,000 税込

●型式:ネットワークオーディオトランスポート
●接続端子:デジタル音声出力4系統(同軸、AES/EBU、USB Type A、I2S)、LAN端子1系統(RJ45)、HDMI出力1系統、ほか
●寸法/質量:W270×H50×D150mm/1.14kg

●主な対応ストリーミングサービス:Qobuz、Spotify、TIDALほか
●対応アプリ:Volumioアプリ
●Wi-Fi規格:IEEE802.11a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz)
●備考:Volumio Premium利用可能(追加料金不要)、Roon Ready対応

 

●問合せ先:㈲トップウイング https://topwing.jp/Contact.html

 

 

本格の内容を備えたMotivo。躍動する音が実に楽しい!

 まず直感的な操作を約束する8インチ・タッチパネルが特徴的な、ヘッドホンアンプ内蔵ネットワークプレーヤーMotivoから見ていこう。近未来のオーディオを感じさせるようなスタイリッシュなデザインが特徴的だが、その内容は思いのほか本格的だ。

 まず回路面で注目されるのが、徹底したS/N改善策だ。たとえば内蔵SBC基板からの音楽データの扱いだが、単純に出力するのではなく、いったん強力なノイズ除去回路を備えた、デジタルインターフェイス基板(Amanero Technologies社と共同開発)を経由させ、各種特性を整え、後段のオーディオ回路へと送り出される。

 電源はACアダプターから供給されるが、まず入力直後にフィルタリングを行ない、電源の汚れを除去。さらに各回路に配分される直前でも最適なフィルタリングを行なうこだわりようで、電源の高S/N化を徹底している。

 DACチップはESSテクノロジー製ES9038Q2M。HDMI形状の端子を用いたI2S、USB Type A、同軸、光のデジタル出力のほか、アンバランスとバランスのアナログ音声出力を装備。テキサス・インスツルメンツ製TPA6120A2チップを投じたヘッドホンアンプ回路はDACチップからバランス伝送するという本格派で、高/低インピーダンス用の出力端子を独立して装備している(バランス出力端子と兼用)。

 

Motivoは、天面がタッチ操作対応画面となっており、ネットワークオーディオで重要な「コントロール」機能も包含したネットワークプレーヤーだ。スマホやタブレット用の操作アプリ「Volumio」が用意され、非常に洗練されたデザインだが、それとほぼ同等の操作が内蔵画面で可能。ヘッドホンアンプとしての出力端子も充実している

 

 

 ローカルサーバーからのデジタルファイルや各種音楽ストリーミングの再生は、タッチパネルか、スマホ/タブレットで提供される専用「Volumio」アプリで行なうが、操作性はいずれも極めて良好だ。今回は主に本体のタッチパネルを使用したが、操作時の反応も素早く、楽曲の再生、切替えもスムーズだ。

 下記に示した接続図のシステムで、リンダ・ロンシュタット、宇多田ヒカル、チョ・ソンジンなど、ハイレゾ音源も含めて、聴き慣れた楽曲を中心にQobuzで再生してみたが、小気味いいサウンドがスッと立ち上がり、良く弾み、躍動する様子が実に楽しい。リンダ・ロンシュタットの歌声は、ディテイルを無理に際立たせるのではなく、音源に対して色付けせずに、あるがままに素直に描き出す。ささやくように歌う彼女の声は、実に素朴で潤いがある。サビのコーラスでは目の前に空間に解き放たれるバックの演奏が躍動しつつ、熱量のある歌声の表現に思わず聴き入ってしまった。

 

 

高品位デジタル出力に徹したRivo+は鮮度の高さが印象的

 ネットワークトランスポートRivo+は、Motivoと同じく独自OS「Volumio OS」を搭載したRivo(2023年発売)の上位機種として開発された意欲作で、新たな提案を積極的に盛り込んでいる。

 目指したのは「可能な限りクリーン、かつ鮮度を高く伝送する」こと。デジタル出力はUSB Type A、同軸、AES/EBUに加え、HDMI端子を用いたI2S出力を新設。

 また同軸やAES/EBU向けに、複数の低ノイズリニアレギュレーターと組み合わせた専用ICによる集積回路を搭載し、より低ノイズで高精度な信号出力を実現しているという。

 

Rivo+は、LANあるいはWi-Fiで入力されたストリーミングサービスやローカルサーバーのファイル音源を受けて、デジタル出力を行なう、ネットワークトランスポート。良質な電源やMEMSクロックなどを駆使して、高品位なデジタル音声出力に徹するハードウェアだ

 

 HiVi視聴室のリファレンスシステムとの組合せで、Qobuz音源を聴いてみよう。操作はiPadにインストールしたVolumioアプリで行なったが、Motivoのタッチパネル操作同様、グラフィック、文字ともに明瞭度が高く、反応もスムーズ。快適な操作性は変わらない。

 宇多田ヒカル、チョ・ソンジンと、Motivoとほぼ同じ楽曲を再生してみたが、素の表現を大切にした飾り気のない聴かせ方に共通のテイストを感じた。過度な演出をしないため、聴きはじめはやや大人しい調子に感じられたが、聴き込んでいくと、音の勢い、分解能、空間の描き分けに過不足がなく、落ち着きがしっかり感じられる。

 チョ・ソンジンのピアノコンチェルトは、演奏会場の空気感が伝わってくるかのような生っぽさで、これぞハイレゾと言わんばかり鮮度の高さを見せつけた。演者の心情、情緒のようなものまで感じられる音の表現力はまさにVolumioのフィロソフィーに通じるもの。「最高の音を楽しんで欲しい!」という彼らのメッセージを実感させてくれた説得力のあるサウンドが確認できた。

 

 

再生楽曲はこちら>

https://open.qobuz.com/playlist/36571245

 

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