「秋のヘッドフォン祭2025」で異彩を放っていたのが、605Aルームの「中国国際ヘッドフォン展 in JAPAN」だろう。ここは中国電子オーディオ協会(CAIA)ヘッドフォン分科会による合同ブースで、日本国内未発売(輸入代理店もまだない)ながら、注目度の高い製品が体験できるようになっていた。

 この展示に関しては、同日マスコミ向けの説明会も開催された。そこでは「中国国際ヘッドフォン展 in JAPAN」への出展サポートなどを担当していたという須山歯研の須山慶太氏から概要が説明された。

 中国オーディオ産業協会は1983年に設立された、中国全土の400社以上の主要企業が加盟する組織という。ヘッドフォン分科会は2017年11月3日に設立され、中国におけるヘッドフォン・デジタルオーディオ産業の急速な成長を背景に活動しているそうだ。具体的には200を超える企業や研究機関が、中高級ヘッドホンや周辺機器の設計・開発を行っており、そこには中国以外のメーカーのOEMを受け持っている企業も含まれるそうだ。

 このヘッドフォン分科会とフジヤエービックは2019年から交流を進めてきたとかで、コロナ禍による休止を挟みながらも今回のブース出展が実現できたそうだ。当初は30社近くから出展の希望があったそうだが、今回は7社による試験的な展示となったとのことだ。

 今回の展示については、近年急速に成長している中国のオーディオ産業、特にヘッドホンやデジタルオーディオプレーヤー分野について、日本のユーザーにもっと知ってほしいという思いもあるそうだ。

 というのも、近年は日本のオーディオファンも中国製品を愛用するようになっているが、それでも趣味性の高い高額なオーディオ製品に関しては、品質面やサポート体制に不安を感じる声もある。そういった方に対して、優れた中国オーディオ機器を「発見し、体験する」場を提供し、ユーザーが安心して購入できるための入口となることを期待しているそうだ。もちろん、これらの製品を日本で販売してくれる輸入代理店を探したいという思いもあるだろう。

 今回、同ブースに登場していたブランドと主な製品は以下の通り。

EPZ

 2019年設立のIEMブランド。3Dプリンティング技術を駆使し、複雑な音響構造と自由なデザイン、高いコストパフォーマンスを実現している。軍事用ヘッドホン開発から始まり、Hi-Fiやeスポーツ市場で成長している。

DAC内蔵ポータブルアンプもラインナップしている。左の「TP55Pro」は最大768kHz/32ビット、右の「TP35」は384kHz/32ビットの再生に対応する

GOLDPLANER

 2019年設立の平面駆動型ヘッドホン専門ブランドで、材料学の博士である創設者が開発したナノメートルスケールの薄膜振動板技術が強み。OEM/ODMも主要事業とし、世界中の愛好家から支持されている。

28mmドライバーを搭載した「GL30」は、声の再現が自然でサイズを超える低音感を体験させてくれる。この他にAMTドライバー搭載イヤホン「GL-AMT16」やハイエンドヘッドホン「GL3000」もラインナップ

Matrix Audio

 2006年に創設された高品質ストリーミングオーディオブランド。ハードウェアから独自のデジタルプレーヤーシステム「MA Player」まで一貫して開発。製品は現在40カ国以上で販売されている。

ミュージックストリーマー、DAC、ヘッドホンアンプ機能を備える「TS-1」(写真上)。DACチップにはAKMのAK4493SEQをデュアルで搭載するなど、クォリティにもこだわっている

QIGOM

 2004年設立のヘッドホンユニット生産会社から転換したブランドで、「優れた音質を合理的な価格で」を信念に設立された。平面駆動型イヤホンなどに、長年の音響技術と職人精神を注ぎ込んでいる。

「妖聖」は2年の月日をかけて開発された1ミクロン厚の110mm平面駆動型振動板を採用したヘッドホン。イヤーパッドには子羊の革を採用する

QLS

 2005年設立された、オーディオプレーヤー、DACなどを開発するブランド。シンプルであることを重視し、製品開発と顧客サービスに再投資する。創業20年を迎え、次世代へと続くブランドの礎を築くことを目指している。

独自開発したR2R DACを搭載したポータブルプレーヤー「MUB5」(写真右)も展示され、多くの来場者が音質チェックに列を作っていた。この他にもESSのES9038PROチップを採用する「QA390MOD」なども並んでいた

Temperament

 2013年創業のイヤホンブランドで、理念は「シンプルなデザイン」と「本物の音の再現」。中国で唯一、先進的なオープン型平面駆動イヤホンを一貫開発する企業であり、数々の受賞歴を持つ。

24金のエンクロージャーという他にない仕様の「Bell Black 卍(gold)」(写真)や、15.4mmのチタン振動板搭載の「DM7Ti」をラインナップ。どちらもひじょうにクリアーでキレのいいサウンドを再現していた

DAART

 2009年設立の深セン龍韻電子有限公司(YULONG AUDIO)が、ミュージシャンと立ち上げた新ブランド。豊富な経験と高品質なハードウェア開発力を背景に、「手頃な価格で、若く、スタイリッシュなオーディオ製品」を目指す。

写真上段の「D39」は、最大768kHz/32ビットやDSD1024に対応したストリーミングDACで、下段「A39」はアナログ入出力のプリアンプ/ヘッドホンアンプ。ヘッドホン端子は4.4mmと6.35mmを搭載する