青森はつがる市を舞台にした心温まる映画『じっちゃ!』が、青森での先行公開(10月17日~)を経て、いよいよ10月31日より全国公開される。東京からIターン移住してきた孫娘と祖父の交流を描いた、ヒューマンな作品。舞台となったつがる市の風景や食、人々など現地の雰囲気も存分に感じられる仕上がり。ここでは、W主演の中村静香にインタビュー。演じた三上ゆきの役作りから、現地の雰囲気、今後の抱負まで聞いた。

――よろしくお願いします。作品を拝見して、千村監督の温かい人柄と同時に、津軽地方の和やかな雰囲気を感じられて、とてもほのぼのした気分になりました。
 監督ご自身がすごく自然でピュアで、心が透き通っている方だからこそ、温かくて可愛らしい面が映像にも出てきているんだろうと思います。

――もうすぐ公開を迎えます。
 撮影は夏から始まって、冬を経て、そして春というように季節をまたいで、およそ10カ月をかけて撮りましたので、それがこうして公開されるのは、うれしいです。

――夏と冬では景色が一変します。
 本当にもう、全然違うんですよ。あの一面の雪景色は説得力がありますよね。私の演じたゆきの心情も伝わりますし、四季の移ろいを描くことで、時の流れも感じられる映像になったと思います。

――監督のコメントを拝見すると、監督は中村さんと特撮番組で出会って、「一緒に映画をつくりましょう」と約束をしていたそうすね。
 出演のオファーを受けた時は、素直に嬉しかったです。監督への恩返しのためにも、頑張ろうって意気込みました。

――最初に台本を読んだ時はいかがでしたか?
 企画書を拝見した時から、温かい作品になるだろうという印象はありましたけど、実際出来上がった台本を読んだら、予想していた以上に温かくて可愛らしい映画だなと思いました。じっちゃと孫娘のやり取りは微笑ましいですし、可愛らしい関係が出ていますよね。

――中村さんをはじめ、みなさんの笑顔が素敵でした。
 ありがとうございます。

――さて、今回演じられた三上ゆきをどのように捉えましたか?
 身近にいそうな人物だと感じました。新しい土地に行くのは誰だって不安でしょうから、じっちゃがいるっていう理由で、(津軽を)選んだのは共感できると思いました。私がその立場でも全く知らない土地に行くよりかは、少しでも知っている人がいた方が安心だと思います。きっかけは多分、それぐらいの理由だと思うんですけど、1年という時間をかけていろいろな人に触れて、食に触れて、どんどん心が津軽に馴染んでいくさまを描いているので、あまり作り込まずに、自然に津軽に溶け込めるように、等身大の女性でいるようにしました。

――本作では、じっちゃである小野(武彦)さんと、中村さん演じる孫(ゆき)の関係性は大事になると思いますが、事前に話し合ったりしたのでしょうか?
 撮影前には、方言の確認とか読み合わせをしたぐらいでしたが、撮影(滞在)期間中には、じっちゃと孫娘っていう関係性に結びつくように、小野さんとなるべくお話しするように心がけていました。

 あとは、方言もあったので、なるべく地元の方ともお話しするようにして、津軽を感じながら、ゆきを演じられたらいいなと思っていました。

――監督のコメントで、お二人の顔が似てきた、というものがありました。
 どうなんでしょう(笑)、その自覚はないんですけど、監督から見て、そんな風に映っていたのならありがたいです。

 一足先に試写を観させてもらった時に、私が演じた孫娘ではありますけど、じっちゃとの関係が可愛らしいなって見えてきたんです。

 加えて、同僚とのやり取りの中で、いろいろなことに巻き込まれていって慌てている様子とか、不慣れな中でも頑張っている姿の向こう側に、なにかこう、津軽全体が包み込んで、温かく見守ってくれている感じがして、観終わった後に、温かくて可愛らしい映画だと感じたんです。それはきっと、監督ご自身の人柄が反映されているからじゃないかと思っています。

――確かに、監督の人柄がとても感じられる仕上がりに思いました。
 中盤には、ちょっと照れくさいようなシーンも織り込まれているんですけど、そこでは、ゆきが張り切りすぎて風邪で寝込んでしまうんです。じっちゃが看病してくれるんですけど、その時に手を握ってくれて。私が熱にうなされながら、なんだか子供みたいだねって、ちょっと気恥しいしいセリフを言うんです(笑)。それを書ける監督って、なんて可愛らしい人なんだろうって思いました。

――一つひとつのシーンの出来事が、考えて作ったというよりも、実体験から出てきたもののように感じます。
 監督ご自身の経験を基に、それをじっちゃとゆきの2人に投影している部分はある、と仰っていました。

――納得しました。ところで、実際に津軽に行ってみてどうでしたか?
 いや~新鮮でした。食もすごく美味しいし、風景も壮大で。私自身が関西人ということもありますけど、全部が真新しかったです。これだけがっつり青森に滞在して、(その土地のことを)深く知れたのは初めてでした。もう、お米も美味しいし、もちろんメロンも美味しいし、農産物も海産物も美味しくて、幸せな撮影期間でした。そうそう、劇中に出て来たスィーツ店は、実際に神楽坂にありますので、ぜひ行ってみてください。

――方言はどうでしたか?
 ゆきはもともと東京で生活していて、Iターンで津軽に来るので、あまり津軽弁には馴染みがないんです。そして、移住してから徐々に地元の人との関わり合いを深めていって、(方言にも)だんだん馴染んでいく。それは、監督の狙いでもありました。

――そう考えると木﨑(ゆりあ)さんの方言は、ものすごく上手でした。
 そうですよね。かなり方言に苦戦されていて、撮影の合間には私の横でずっと、念仏のようにセリフを唱えていたので、相当に難しいんだろうなと思っていました。その成果はぜひ、劇場でご覧ください。

――自信がなくて悩んでいるゆきに対して、考えてないでやってみようって、グイグイ引っ張ってく感じもありました。
 木﨑さんの演じた青山京子は、元ヤンキャラですからね(笑)。それもあって、津軽弁でまくし立てられると怖そうっていうところに、面白味があります。

――ようやく自信を持ち始めたゆきに、思いもよらぬことが起きます。
 ゆきにとっては、うれしい反面、難しいですよね。ようやく津軽に馴染んできた中で、さてどうするか、という話になるので。でも、人生ってそうなんでしょうね。思ってもみないタイミングでそういうことが訪れたりする。私はゆきの選択は素敵だなと思いました。

――中村さんは、ゆきのような選択を迫られたらどうしますか?
 えー、そんな選択に迫られることがあるんですかね(笑)。まあ、人それぞれタイミングがあるでしょうし、私は、どちらかを選択させられるのではなく、その選択も必然の方に繋がっていると考えています。

 そもそも自分が健康でいるからこそ、仕事を頑張れるのだろうし、一方で、私生活が充実しているからこそ、仕事に張りが出ると思っているんです。心と体が繋がっているように、仕事も生活も繋がっていると考えているので、どちらもいいバランスで両立しながらできたらいいなと思っています。

――監督は、作品の中でゆきの成長を描いたとコメントしています。ゆきを演じて感じたもの、あるいはご自身で成長したなと思う部分はありますか?
 成長なんていう大それたことではないですけど、本編でゆきが言っているように、自分が面白いと思えるかどうかって、結構重要なことだと思っていて、昔は気付けなかったところに気付けるようになっているのは、それ(成長)かもしれないですね。

 仕事に対して気持ちが乗らないと、どうしても苦しい部分って出てくるし、それはお芝居をやらせてもらっている私に限らず、いろいろなお仕事をされているみなさんもそれぞれ感じることだと思います。ですが、やはり何事も楽しんだり、面白がったりした方が吸収率もいいですね。そこは、自分だったらどう楽しめるのかなっていうポイント見つけながら、意識してやっています。

――最後に、今後挑戦してみたいことがあれば教えてください。
 そうですね、自分から何かを望むというよりかは、基本的なスタンスとしては、お声がけいただけるものは何でも本当にうれしいです。例えば、同じような役柄が続いたとしても、作品や現場によって全然違うんですよ。逆に、同じ作品でも集まるキャストが違えば、また違う色の作品になりますし、一つひとつのお仕事現場に育ててもらっている感覚です。

 現場によっても雰囲気はまったく違っていて、すごくこだわりが強くて厳しく指導してくださる方がいるかと思えば、信頼されて全てを預けられることが、逆にプレッシャーになることもあります。本当に、現場ごとに得られるものは様々ですね。

 今後については、今回の作品では、じっちゃと孫娘っていう関係性を通して、成長やヒューマンドラマを描いていますけど、家族っていうくくりの中で、もう少し、色々と絡み合っているものを映像化する作品も面白そうだなって感じています。兄弟とか親子、いとこ間の諍いなど、世間的には大事件ではなくとも、その家庭の中では、日々いろいろな事件とかハプニングがあって、家族だからこそ一筋縄ではいかないものってあると思うんです。それって普遍的なもので、誰もが身近に感じてもらえるんじゃないでしょうか。今後、いろいろやってく中で、そうした作品にもチャレンジしてみたいなって思います。

――千村監督はどちら?
 監督は、一緒に作っていく感じですね。同じ目線でいてくれます。撮影前に、監督ご自身のお話を聞かせていただく機会があったことで、ゆきを作っていく上で、一緒に作っていた感じがありました。ぜひ、大きなスクリーンで、私の演じたゆきを観ていただきたいです。

映画『じっちゃ!』

10月17日(金) 青森にて先行公開
10月31日(金)より 池袋シネマ・ロサ ほか全国順次公開

<キャスト>
中村静香 小野武彦
小笠原海(超特急) なだぎ武 しゅはまはるみ 篠田諒 木﨑ゆりあ 望月雅友 北野瑠華 鈴原ゆりあ 内山千早 ピンクレディ(りんご娘) 張間陽子 津田寛治

<スタッフ>
脚本・監督:千村利光
制作プロダクション:UNITED PRODUCTIONS
配給:S・D・P
製作:つがる市フィルムコミッション

https://jiccha-movie.com/

中村静香 公式サイト
https://www.oscarpro.co.jp/#/profile/entry/755

ヘアメイク:近藤由菜
スタイリスト:竹上奈実
衣装協力:ブラウス(¥52,800税込)/パンツ(¥46,200税込)
     ともに「MASTER gUi(マスターギー)」 https://mastergui.jp/