取材・構成/本誌・辻
スクリーンとテレビの2ウェイ画面+4.0ch音響によるリビングシアター
6月末、30度を超える猛暑の中、取材陣がうかがったのは、日が暮れかかった夕刻どき。夕食の支度をされている奥さまとともに、Nさんが取材に対応してくださった。
スクリーンを上げた状態。ディスプレイは、シャープの75インチ最新Mini-LED液晶テレビ4T-C75HP1を導入。サイドボードは長年愛用しているものだが、天板には壁面で使った御影石を切り出してセット。インテリア的マッチングを図っている
主な使用機器
●4Kプロジェクター : ビクターDLA-Z5
●スクリーン : キクチ ソルベティグラス(120インチワイド)
●4K液晶テレビ : シャープ4T-C75HP1
●4Kレコーダー : シャープBD-UT2200
●スピーカーシステム : リン150(L/R)、Custom 2K(LS/RS)
●ネットワークプレーヤー/サラウンドアンプ : リンSELEKT DSM(KATALYST DAC Module+STANDARD DAC Module+AMP Module×2+Surround Processing Module組み込み仕様)
●ストリーミング端末 : アマゾンFire TV Stick 4K
●ゲームコンソール : ソニーPlayStation 5、Nintendo Switch 2
Nさんのシアターは、ダイニング、キッチンと空間を共有するリビングルーム内に誂えた、いわゆる「リビングシアター」と呼ばれるスタイルで作られている。大きなガラス窓の前には、電動ロールスクリーンスタイルのカーテンがかかり、昼間でも一定の遮光が可能で、リビングシアターには理想ともいえる環境だ。
120インチワイドサイズのスクリーンは、電動昇降式ケースに収められている。プロジェクターはビクターの最新モデルDLA-Z5。4Kレーザー方式で明るく鮮明な映像が持ち味だ。スクリーンをあげるとシャープの75インチサイズMini-LED液晶テレビが鎮座しており、陽光が降り注ぐリビングルームでも、明るく鮮明な映像表示が楽しめる。音響システムは、スコットランド製リンのSELEKT DSMを核にした4.0chサラウンドシステム。30帖弱のリビングダイニング空間にあるリビングシアターで、Nさんは、ご自身が愛する映画/音楽鑑賞、さらにご家族とのリラクゼーションに活用されている。
「このシステムを導入してから、(ロスレス音楽配信サービスの)Qobuz(コバズ)で好きな音楽を自在に楽しんだり、インターネットで配信されている映画をたくさん観ています。配信サービスも、NetflixやAmazon Prime Video、Apple TV+、Disney+などに加入して自分自身はもちろん、妻や3人の子どもたちと大いに活用しています」(Nさん)
会社を経営されているNさんは、10年ほど前、軽井沢に別荘を購入、そこで120インチ大画面スクリーンとリンのサラウンドシステム、さらにマルチルームシステムを組み、いい音のある暮らしを実践していたという。
そんなNさんは数年前に東京のご自宅を購入。ご自身の美意識に従ってリフォームする計画を一昨年から昨年にかけて進めていたが、家族で楽しめるホームシアターを東京のご自宅でも作ろうとされたのは自然の流れだった。リフォームの計画が進む中、Nさんは軽井沢の別荘でシステム構築のサポートを担当していたサウンドクリエイトの竹田響子さんに相談された。
軽井沢のシアタールームのパフォーマンスについては、Nさんいわく「不満はない」そうだが、それをそのまま東京に持ち込むつもりはなかった。
「軽井沢のシステムは機器の数がちょっと多かったんです。家族で楽しめるような高い性能を確保したまま、できるだけシンプルなシステム、具体的には機器の数が最小限になるようなプランニングを竹田さんに依頼しました」(Nさん)
プロジェクターは、ビクターの最新4Kレーザープロジェクター、DLA-Z5。明るく鮮明で、しかも黒がよく締まるハイグレードモデルだ
サラウンドスピーカーはプロジェクターの両脇に埋め込まれたリンのインシーリングモデルCustom 2Kを2本。サラウンド再生を楽しみつつ、生活動線を邪魔しないスピーカー設置となる
SELEKT DSMの導入で多機能/高性能をシンプルに実現
そうした相談を受けた竹田さんが提案したのは、リンのSELEKT DSMというモジュール拡張対応可能なコンポーネントを中核に据えたシステムだ。
SELEKT DSMはその名の通り、基本のプラットフォーム(筐体)にユーザーが必要とする機能と品位をモジュール単位で組み込むことができる、選択/拡張型のコンポーネント。Nさんの「シンプルかつ高品位」という要望に対して、竹田さんは、シングルボックスのスタイルを堅持したままで機能を拡張できる、SELEKT DSMで対応したのである。
具体的には、Katalyst DACとStandard DACという2つのステレオ「DACモジュール」を組み込み、さらに2組のステレオスピーカーを駆動する「アンプモジュール」2基、さらに「HDMI入力モジュール」を装着する仕様を提案した。
SELEKT DSMの画期的な点は、「DACモジュール」や「アンプモジュール」などを組み込めるだけでなく、ドルビーやDTSといった5.1ch/7.1chサラウンド信号のデコード(解凍)機能を「サラウンド・プロセッシング・モジュール」として提供し、機器内部に装着できることである。このモジュールが用意されることで、最大8chまでの構成に対応したAVセンターとしてもSELEKT DSMが機能し、Nさんの仕様では4.0chサラウンド対応AVセンターとしての役割を果たす格好となる。
加えてリンの「DSM」製品に共通する特徴として、音楽ストリーミングサービス対応のネットワークオーディオ聴取機能、そしてテレビとの連携用HDMI ARC端子を装備している。
オーディオ、あるいはオーディオビジュアルでは、高度な再生を求めるあまり、ハードウェアを単機能化させて、数多くの機器を使うシステム構成になりがちだ。「マニア」の発想として当然のものかもしれないが、「生活者」の視点ではいびつに見えよう。Nさんが求めた「高い性能、優れた機能は保ったまま、機器の数を最小限に抑える」という希望は、再生自体を「目的」としては捉えず、あくまでのライフスタイルを充実させる「手段」としてのシステムのあり様でもあった。竹田さんが提案し、Nさんが導入したSELEKT DSMは、必要十分でありながら品位を妥協せず、たった1台の機器でクレバーにこの目的を実現した仕様なのである。
※ゲーム端末は通常4T-C75HP1に直結しています。ゲーム端末の映像表示をDLA-Z5を使う場合は、HDMIスプリッターを使わずにSELEKT DSMとDLA-Z5を直結しています
リン150スピーカーを中心とした4.0chサラウンドを構築
SELEKT DSMが駆動するスピーカーシステムは2組。まずスクリーン/テレビラックの両サイドに置かれ、サラウンドシステムのフロントスピーカーとして使われている「150」、そして、プロジェクターの左右脇の天井面にサラウンドスピーカーとして埋め込まれた「Custom 2K」の2組。いずれもリン謹製モデルとなる。
フロントスピーカーの150は、比較的小型でありながら、鳴りっぷりの良さが魅力の実力機。竹田さんがNさんから相談を受けた2024年9月前後に、ちょうどリンから新型スピーカーとして150が発表され、他の製品とともに、東京・銀座にあるサウンドクリエイトで体験した。
「何機種かスピーカーを聴き比べした結果、スリムでコンパクトなんですが、大きなスケールの音が魅力の150に決めました」(Nさん)
多機能かつ高性能をコンパクトにまとめあげたリンのSELEKT DSM。様々な役割を担うモジュールが用意され、ユーザーの目的に合わせて機能と品位を選択<セレクト>できる発想のハードウェアだ。スクリーン向かって右側のラック内にセットされている。操作はiPhoneにインストールされた操作アプリ(LINN App)で行なうことが多いのだという
シャープの4KレコーダーBD-UT2200。Nさんはネット配信サービスを利用することが多いそうだが、DVDやBDはもちろん、4Kで放送されているスポーツ中継もこのシステムで楽しまれているそうだ
Nさんがリビングでお使いになっている主なリモコン。左から、照明、4Kレコーダー、スクリーン、リンSELEKT DSM、プロジェクター、テレビ、FireStick用となる。上はSwitch 2用だ
フロントスピーカーは、リンの最新モデル150。19cmウーファー+16cmミッドレンジを擁する3ウェイモデルで、美しい突き板で仕上げられている。Nさんはインテリアのマッチングを考慮し、ウォルナットフィニッシュを選択している
「家族で楽しめるのがありがたい。このシステムは凄くいいです」
夕食の支度に忙しいNさんの奥さまにもお話しをうかがった。「詳しいことはわからないんですが、ホームシアターは家族一緒に映画を楽しめる点で本当にありがたい。何より迫力があって、このシステムは凄くいいと思います。そうそう、この前は『ピノキオ』の実写版映画を観ました。監督はロバート・ゼメキス(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』監督)、トム・ハンクス主演で、本当に迫力満点でした。オリジナルのアニメ版も好きですが、実写版はそのアニメ版を忠実になぞっているね、なんて話しながら観たり、家族でワイワイと楽しみました。大画面とサラウンドは迫力が桁違いですね」(奥さま)
それを受けてNさんが話しを続ける。
「家族で楽しむということでいうと、大画面とサラウンドはゲームとの相性もよくて、子どもたちは『マインクラフト』のようなゲームをスクリーンで遊んでいます。大画面でサラウンドでゲームをすると凄い迫力なんですよ。『マインクラフト』は画面が4分割できますが、4分割した画面で4人で十分に遊べるのは鮮明なスクリーンの大画面のおかげでしょう。Nintendo Switch 2もさっそく手に入れて遊んでいます」
Nさんは元々ロバート・デ・ニーロのファンだったそうで、『タクシードライバー』や『ゴッドファーザーPART2』、『グッドフェローズ』などが大好きなのだとか。ご家族が寝静まった夜の、お一人の時間で楽しまれているそう。
「コロナ禍の前は、映画館にもよく足を運んでいましたが、ここにこんな凄いシステムがあるせいもあって、最近はあまり行っていません。新しい映画は、いい環境の映画館で観たいとは思いますが、まぁすぐに家でも映画が観られますからね。それも善し悪しなのかもしませんけれど……」(Nさん)
ページトップに掲載のカットを撮影するために、無理をいって、Nさんご夫妻に加えて、3人のお子さんたちに集まってもらった。お子さんたちの闊達かつ朗らかな雰囲気からも、Nさんご一家の素敵な関係がうかがえた。撮影の合間に、お子さんたちに声をかけると「音の迫力がすごい」「ゲームが最高」「大好き」とシアターシステムを気に入っている様子がうかがえた。
単に映画やゲームを楽しむだけの装置ではなく、家族が同一空間に集まるための素敵なイクイップメントとしての役割を果たす。そんなNさんのリビングシアターに、家庭劇場<ホームシアター>の本質を再確認した次第だ。
取材にご協力いただいたインストーラー
●サウンドクリエイト 0120-628-166
>本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』