洗練されたサウンドに加え、デザイン性、機能性に優れたアクティブスピーカーとして快進撃を続けるAIRPULSE(エアパルス)。日本国内のデビュー作は約5年前に登場したA80。価格を超えたクォリティで評判を呼び、今もその人気は衰えない。さらに音質を徹底して追求したフラッグシップモデルA300 Proの登場により、同ブランドのアイデンティティをしっかりと確立している。

 その後、A80を一回りサイズアップし、高級感溢れるハイグロス仕上げのボディに収めたA100 BT5.0、同機のシンプル版としてA80と同様のレギュラー仕上げとしたA100 HD MONITOR、そしてアナログ入力専用としてスタジオモニター用途に最適化したSM200と、魅力的なモデルが続々と登場し、選択の幅を大きく拡げている。

 今回紹介するA200Tは、レギュラーラインとなるA100 BT5.0とA300 Proの間を埋めるモデルであり、ホーンロード・リボントゥイーターと13.5mm径アルミ・マグネシウム合金コーンウーファーの組合せによる2ウェイシステムとして仕上げられている。

Active Speaker System
AIRPULSE A200T
オープン価格 (実勢価格17万6,000円前後)

●型式 : アンプ内蔵2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット : リボン型トゥイーター、135mmコーン型ウーファー
●アンプ出力 : 55W+10W
●接続端子 : アナログ音声入力2系統(RCA×2[1系統はMMフォノ切り替え可])、デジタル音声入力2系統(同軸、光)、サブウーファー出力1系統(RCA)
●寸法/質量 : プライマリー・W180×H328×D313mm/8.4kg、セカンダリー・W180×H328×D295mm/8.0kg
●備考 : Bluetooth対応(apt X)

●問合せ先 : (株)ユキム TEL. 03(5743)6202

 

 サイズ的にはA300 Proよりもだいぶ小さく、A100 BT5.0に近い印象だ。ただ実際に手にとって持ち上げてみると、ズシリと重く、筐体の造りの良さが実感できる。エンクロージャーは18mm厚の硬質MDFによる設計で、内部のブレーシングによりウーファードライバーを強固に支えることで、安定した駆動を約束しているという。

 信号処理部はソフトウェアで機能を定義するXMOSではなく、テキサス・インスツルメンツ社製の高効率/多機能のステレオ音声デコーディング対応チップTLV320AIC3254を採用している。mini DSPも2基内蔵し、高精度/高分解能のクロスオーバーネットワークの構成が可能で、多彩な入力/出力がサポートできるという。

 入力はアナログアンバランス(RCA)、MM対応フォノ、デジタル同軸/光、apt X対応Bluetooth。今回、パソコン等と連携できるUSB Type B入力はないが、同軸/光端子で最大192kHz/24ビットのデジタル音声の入力が可能だ。また、サブウーファー出力用のRCA端子も利用できる。

トゥイーターには0.01mmの極薄に加工したアルミニウム振動板とネオジウム磁石を採用し、ホーン形状の開口部と合わさって繊細かつ強力な高域再生を追求。低域ユニットは、アルミニウムによる振動板を採用した135mmドライバーとなる

 

リスナーから向かって右側スピーカーが接続端子やアンプ回路を内蔵した、いわゆる「プライマリー」スピーカーで、左側の「セカンダリー」とは専用ケーブルで繋ぐ。左右の入れ替えはできないのは、エアパルスのアクティブスピーカーの文法通り。A80などとは異なり、USB Type B端子が割愛され、デジタル音声入力端子は同軸と光のみとなった

 

 

デジタル接続が好印象。映像との親和性も高い

 早速、マランツのネットワーク対応CDプレーヤーCD 50nと組み合わせて、Qobuz再生でそのサウンドを確認していこう。まずはアナログ入力で宇多田ヒカルのヴォーカルを聴いてみたが、音の粒子感が鮮明に浮き上がり、質感が細やかだ。独特の息づかいも曖昧にならず、温かさを感じさせ、優しく、おおらかに歌う様子もなかなかいい雰囲気だ。

 ここでデジタル同軸入力に変更。するとどうだろう、空間の拡がり、響きの緻密さ、声のニュアンスと微小な信号の情報量が大きく違うではないか。

 ベース、ピアノがほどよい柔軟性を持ち、音の芯、骨格を丁寧に描き上げていく基本的な音調はあまり変わらない。だが、デジタル接続の方が空間を漂うように拡がる緻密な響きの描写がより克明で、ゆったりと深く沈み込む低音にも余裕が感じられる。楽器ごとの音階、音色を的確に再現し、スケール感も豊かだ。これはデジタル入力を標準と考えるべきだろう。

 続いてパナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1をPCM変換出力設定にして同軸デジタル入力で、UHDブルーレイの映画『アリー/スター誕生』を再生。リズム感の良さ、清々しい空間の拡がり、生気溢れる、歯切れのいいサウンドはまさにA300 Proの血統を感じさせる。セリフに伴なう息づかい、微妙なニュアンスとともに、空間の余韻が丁寧に描き出され、音楽と効果音が浮遊しながら、その場、その場の気配、雰囲気を描き出していく。

 チャプター7の「シャロウ」の歌唱シーン。スケール感に富んだ骨格の太いサウンドが素早く立ち上がり、躍動する様子が好ましい。レディー・ガガの歌声がライヴ会場に深く染み込むように浸透し、観客の歓声に揉み消されるようなこともない。

 そして絶叫するように歌うサビの部分でも、声が詰まることなく、まだまだ余裕がある。その豊かな空間の拡がり、深みのある響きは、まさに造りのいいエンクロージャーの賜物。大音量でも帯域バランスは崩れず、厚みのある音場を堂々と描き出してみせた。

 

結論

分解能と透明感の高さは最高峰A300 Proに近似。大注目!

外観はA80やA100 BT5.0に近いが、音の芯を明確に描き出す分解能の高さ、透明感に富んだ清々しい響き、あるいは柔軟性のあるベースのうねりと、実力的にはエアパルスの最高峰として君臨するA300 Proに近い。好調エアパルスからまたもや注目機の登場だ

 

 

>本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』