スタイリッシュであり、雄々しくもあり、洒落てもいる。カンヌ国際映画祭では《ある視点部門グランプリ》《パルムドッグ審査員賞》をダブル受賞し、世界中の映画祭で36以上ノミネート、15以上も受賞してきたという話題作が9月19日から劇場公開中だ。
舞台は2008年、北京オリンピック開催が迫る中国。主人公はランという青年だ。友人を誤って死なせ、刑に服していた。殺す気がなかったとしても、結果的には殺人であり、出所して故郷に戻ると、刺さるのは冷たい視線、そして死んだ友人の家族からの強い恨みだ。その故郷も、彼が服役している間にすっかり変わってしまった。まるでゴーストタウンだ。そして捨てられた犬が痩せた体でウヨウヨしていた。基本的に犬は集団で行動する。が、ランは、単独行動で我が道を行く1匹の黒い犬と出会う。
だから題名が『ブラックドッグ』なのかという感じだが、なんというのだろう、ランとの関係は「飼い主と犬」、「人間と犬」という感じではないのだ。妙なバディ感がある。言葉を介してのコミュニケーションはないにしても、孤独な者どうしとして、どこかで共感している風。また、この犬が、シュッとしているのもいい。間違ってもペット雑誌の表紙など飾ることはないであろう、モフモフのモの字もない、ハードコアな犬だ。またこの映画、私の見た限り、「虎」も重要な役割を果たしているように思えた。何かのメタファーなのだろうか。コンサートでいうところの「アンコール」のようなパートや、英語によるロック調の主題歌も利いている。監督はグァン・フー、出演はエディ・ポン、トン・リーヤー、ジャ・ジャンクー等。
映画『ブラッグドッグ』
2025年9月19日(金)シネマカリテほか全国公開
出演:エディ・ポン、トン・リーヤー、ジャ・ジャンクー
監督:グァン・フー
2024年/中国/北京語/110分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/G/原題:狗阵、英題:BLACK DOG/字幕翻訳:河合彩子/配給:クロックワークス
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