正攻法の絵づくりが魅力！JMGOのフルHDプロジェクター2モデルをテスト

　ここでは充実したラインナップを誇るJMGOプロジェクターの2K（フルHD）モデルを実際の映像を確認しながら、紹介することにしよう。

　写真からもお分かりのように、両機種ともにスタンド一体型の外観、サイズは4KモデルN1S 4Kと同等で、実にコンパクトだ。本体を回転させるジンバルはなく、左右方向は本体ごと動かすことになるが、上下127度の角度調整機構を備えており、設置の自由度の高さは上級機並と考えていいだろう。もちろんJMGOの代名詞とも言える、シームレスの台形補正、オートフォーカス機構も搭載済。OS（基本操作ソフト）は多彩な動画配信サービスが本体だけで楽しめるGoogle TV、オーディオ連携が可能なARC HDMI端子も備わる。

LED光源採用のN1S Nanoは70インチ前後の投写が最適

　まずN1S Nanoだが、0.23インチサイズのフルHD仕様DMDとLED光源を搭載したDLPプロジェクターのエントリーモデルだ。レーザー光源に比べると、460 ISOルーメンとどうしても明るさは不利になるが、その反面、消費電力は小さく、USB Type C給電仕様のため、モバイルバッテリー（20V-3.25A、65W PD3.09）での駆動も可能だ。

　一般的なランプ光源のDLPプロジェクターの場合、円盤状のカラーフィルター（R/G/B＋Wの構成が多い）を高速で回転させて画面上でフルカラーの表示を行なうが、本機はR/G/B独立のLED光源を高速で順次切り替えていく方式で、回転ノイズは皆無。しかも応答性にも優れ、高速の切替えが可能で、単板式DLPプロジェクターにつきのものカラーブレイキング（色割れ）ノイズも少ないと言われている。

　90インチ前後のサイズで、その映像を確認してみたが、確かに色割れノイズは少なく、あまり気にならない。ただ画面の明るさは高出力の水銀ランプモデルあるいはレーザー光源モデルと同等とはいかず、ハイライトの伸びも控えめだ。

　中央、周辺の明るさムラは比較的少なく、マット調の穏やかな画調も悪くない。RGBの小型ブラウン管の映像をスクリーン上で重ね合わせて楽しむ3管式プロジェクターに近いテイスト感じさせる懐かしさもある。映像の明るさ、見た目の解像感、階調性などを鑑みるに、70インチ前後のサイズで楽しむのが好ましいように感じた。

RGBレーザーを採用したN1Sは明るく豊かな階調性が魅力

　続いて2Kモデルの上級機でRGBレーザー光源を搭載したN1S。仕上げは異なるがデザイン、サイズはN1S Nanoと変わらず、基本的な機能性、OSも共通。ただ心臓部のDMD表示素子は解像度は同じフルHD解像度ではあるが、サイズが0.33インチに拡大され、映像モードなどの画質調整関連の機能性、使いこなしについても、上位グレードのN1S 4Kに近い。

　スペックを見ても、コントラスト比（1,600対1）、色域（BT.2020色域比110％）とN1S 4Kと同等。明るさは850 ISOルーメン。表示解像度はフルHD止まりだが、HDR（HDR10、HLG）に対応済だ。

　さて実際の映像表現やいかに。映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』（米国盤UHDブルーレイ）、『大相撲中継』（NHK BSP4K）などのコンテンツで確認したが、RGBレーザー光源ならではの明るさ、鮮やかさを活かした見栄えのする絵づくりで、奥行方向に拡がる空間描写にも余裕がある。

　見た目の解像感、フォーカス感も良好。コントラスト感は中庸だが、意図的に輪郭を立てたり、黒を無理に引き込んだりするような人工的な補正はなく、正攻法の絵づくりに徹底しているあたりも好感がもてる。フルHD表示にはなるが、明るさ、コントラスト、色再現性と、総じて上位機種に迫る再現性が確認できた。

　そしてひとつ新鮮な発見もあった。それは髪の毛、フェイストーンの描き分けが自然で、微妙な肌の明暗、グラデーションがより鮮明に描き出されたことだ。特に『大相撲中継』では色調、階調性と、力士の肌が単調にならず、土俵の土の様子まで鮮明に感じ取れた。

　RGB独立のLED光源の採用により、色割れノイズの少ない、精緻な表現力を備えたN1S Nanoと、100インチ投写にも耐えられる明るさと豊かな階調性が持ち味のNS1。それぞれ個性は異なるが、4Kモデルに勝るとも劣らない魅力を備え持っていた。

＞本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』

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