7月30日に発売されたコルグのポータブルレコードプレーヤー「handytraxx 1bit」を、自宅で取材することができた。このモデルは同社独自の次世代真空管「Nutube」を使ったフォノアンプやスピーカーを内蔵、JICO製の「J44A 7」MM型カートリッジも付属しているので、製品を買ってきたらすぐにレコードを楽しめるという手軽さがポイントだ(単3乾電池による駆動も可能)。
さらに他にない機能として、コルグのハイレゾ音楽ソフト「AudioGate4」が付属しており、お気に入りレコードを高品質にデジタルアーカイブできる。今回はMacbook Air(M4)とUSBケーブルでつないで、レコードのハイレゾ録音に挑戦してみた。ちなみにhandytraxx 1bitのレコード再生のインプレッションについては、潮晴男さんによるリポートをお読みいただきたい。
録音の準備として、まずコルグのサイトから「AudioGate4」をインストールしておく。その状態でhandytraxx 1bitとUSBケーブルでつないでアプリを立ち上げると、認証を求める画面が表示されるので、ここで「KORG 1bit製品で認証」を選べば自動的にライセンス認証され、アプリが使えるようになる。
AudioGate 4では、DSD 2.8/5.6MHz、リニアPCMは44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz、16/24ビットと32ビットフロートでの録音が可能。それらの設定はメイン画面右側、ピークメーターの下にある「Rec Setting」(録音設定)から可能。さらにデジタルデータの出力先や録音ファイル名などもここで設定しておく。
レコードの録音を行う際には、handytraxx 1bitの本体右側面にあるUSB−B端子をパソコンにつなぎ、その左側にある「MODE」スイッチを「USB」にセットする
また「録音設定」メニューの一番下にある「入力の種類」では、Line(handytraxx 1bitの内蔵フォノアンプ)とPhono(AudioGate 4のソフトウェア・フォノアンプ機能)のどちらを使うかも選ぶことができる。さらにPhonoを選んだ場合は、RIAAを始めとする様々なカーブも準備されている。お持ちのレコードがどのカーブで録音されたのか分かっている場合は、この機能を使ってみるのもいいだろう。
設定が終わったらレコードを再生し、画面中央上側のRecボタンを押せば録音がスタートする。画面右上にはピークメーターも備わっているので、入力レベルの確認も可能だ。
「AudioGate4」のメイン画面。録音フォーマットなどの設定は右中段にある「Rec Setting」から行う
今回は潮さんの試聴用にウルトラアートレコードの、情家みえ『エトレーヌ』から「キャラバン」をDSD 5.6MHzとPCM 192kHz/24ビットで録音した。「キャラバン」は4分17秒の楽曲だが、DSD5.6MHzでは362.2Mバイト、192kHz/24ビットは298.1Mバイトのデータとして保存された(前後に若干の無音を含む)。なおフォノアンプはAudioGate4側でRIAAカーブに設定している。
こちらのサウンドインプレッションも潮さんが記事内で紹介してくれているので参考にしていただきたいが、DSDとPCMで微妙にニュアンスの違いがあったとのことで、handytraxx 1bitでデジタルアーカイブを行う場合は事前にどちらのフォーマットが自分の好みかを確認しておくといいだろう。なおAudioGateはそれぞれのフォーマット変換も可能なので、例えばDSDで録音したものをPCMに変換して比べることも可能だ。
録音するファイル形式やリニアPCMのビット数、内蔵フォノイコライザーとAudioGateのソフトウェア・フォノアンプ機能のどちらを使うかなども設定できる
さらに僕のレコードコレクションから、『STAR WARS ORIGINAL SOUNDTRACK』(輸入盤)を録音してみた。2枚組4面をDSD 5.6MHzで録音したところ、データ量は6.27Gバイトという結果に(同じく前後に若干の無音を含む)。そのファイルをUSBメモリー経由でヤマハ「CX-A5200」で再生してみたが、なめらかでアナログレコードのニュアンスを感じるような音が楽しめた。
これらの録音データは、片面まるごとひとつのファイルとして録音されてしまうが、AudioGateの「Devide」機能で分割が可能。分割したいところにマークを作成し、その位置で一気に分割できるのは嬉しい。分割したデータをPCMに変換し、独立したファイルとしてエクスポート可能なので、細かく編集したい場合はそちらを使うといいだろう。(取材・文:泉 哲也)