家庭用、業務用を問わず、様々なタイプのスクリーンを製品化しているGrandview(グランヴュー)から登場したブラックシャイン(B7)。幕面に施された特殊な反射コーティングにより、外部からの光を巧妙に制御し、ある程度、照明を残したような環境でも、高コントラストで色鮮やかな映像が楽しめるという耐外光スクリーンだ。
スクリーンのピークゲインは1.7(±10%)。同ゲインが最大値の半分になる半値角(1/2値角)は20度で、1/3値角は30度。スクリーンサイズは100インチと120インチの2種類で、電動巻き上げ式とパネル式の2タイプを用意している(パネル式の発売元/ブランドはキクチ)。
↑ 写真は視聴で使った120インチサイズの電動昇降式スクリーン、グランビューGVT-120HDB7-W。電動昇降式は「グランビュー」ブランドで、パネル式は「キクチ」ブランドで展開されている。サイズはそれぞれ100インチと120インチの16:9となる
Screen Material
KIKUCHI / Grandview
BLACK SHINE(B7)
●型式 : スクリーン生地
●材質 : 軟式塩化ビニール
●ピークゲイン : 1.7±10%
●半値角 : 水平20度
●最大寸法 : 120インチ16:9
●ラインナップ : 電動昇降式スクリーン(グランビューGVT-100HDB7-W[100インチワイド/オープン、実勢価格29万7,000円前後、税込]、GVT-120HDB7-W[120インチワイド/オープン、実勢価格38万5,000円前後、税込/写真])、パネルタイプスクリーン(キクチSPB-100HDUT[100インチワイド/¥231,000税込]、SPB-120HDUT[120インチワイド/¥275,000税込])
●問合せ先 : (株)キクチ科学研究所 TEL. 03(3952)5131
ダウンライトが残る環境でも明るく黒が締まる映像が魅力
今回は120インチの電動巻き上げタイプをHiVi視聴室に設置してビクターDLA-V90Rとの組合せで、そのパフォーマンスを検証した。
視聴前、明るい環境下でスクリーンを下ろして幕面を確認してみたが、生地の色は白というよりもグレイに近く、わずかに光沢が伴なう。素材はビニール系ということで、柔らかく、伸縮性があるため、サイドテンション機構との相性がよく、平面性は極めて良好だ。
まずダウンライト照明を残した状態で大リーグ野球、フィギュアスケート、大相撲など、主にNHK BS4Kや同BS2Kで放送された各種スポーツ中継でその映像を確認してみたが、明るさ、色再現、コントラスト感と、いずれも不満を感じさせない自信に満ちた映像が描き出された。
大リーグ中継では、十分な明るさを確保した上で、わずかに赤みを帯びたアンツーカー、新緑の鮮やかさを思わせる外野の芝生、そして紺碧色に近い、濃い青が映えるドジャーブルーと、様々な色調が曖昧にならず、明確に描き分けている。
ここで新鮮だったのは、ダウンライト照明が残っているにも関わらず、黒がよく締まることと色再現が濃密なことだ。高ゲインタイプのスクリーンの場合、黒の締まりはどうしても浅くなりがちだが、このブラックシャインはやや様子が違う。
グレイの特殊コーティングの恩恵なのか、黒浮きがほとんど気にならず、しかも色乗りが豊かで、色調もナチュラルだ。さらに高ゲインでありながら、輪郭が不自然に強調されるようなピーキーなところがなく、総じて穏やかな画調として楽しませる。
基本特性としては、反射型のパールスクリーンに近く、壁からの迷光の影響も受けにくい。この特性からして、スクリーン下から投影する超短焦点プロジェクターとの組合せは不可能と考えた方がいいだろう。
ブラックシャインは、「長焦点/通常焦点」と呼ばれる一般的なプロジェクターとの組合せを前提としたスクリーン幕面。入射光をコントロールし、外光が入る環境でも高コントラストな映像を描く(図左)。図右は、短焦点プロジェクター向けにレンチキュラー構造が設けられたスクリーンの構造図。キクチではSPB-UT(ウルトラ・ショートスロー)シリーズとして展開している
濃密かつワイドレンジで全暗でのパフォーマンスも見事
この再現性なら、全暗の環境でも十分に実用になるのではないだろうか。実際に試すと、その予想は的中。白ピークが気持ちよく伸びて、黒がキリッと締まるという、実に堂々としたワイドレンジの映像ではないか。
光出力が最高3,000ルーメンに達するDLA-V90Rとの組合せで120インチ投写となると、やや明るすぎるきらいはあるが、自然なフェイストーンが確保され、階調性も滑らか。わずかに光沢感を伴なった色再現は、濃密、かつ鮮やかで、ニュートラル。超大画面のMini-LED液晶テレビを見ているかのような感覚だった。
このまま映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』、『パラサイト 半地下の家族』(いずれも米国盤UHDブルーレイ)を再生したが、気持ちよく伸びる白ピークといい、見栄えのする濃厚な色再現といい、その持ち味は変わらない。明るさと色再現のバランスが良好で、120インチ再生でも薄味にならないのがいい。
ここまで高ゲインのスクリーンの場合、明るさによって微妙な色調が変化したり、明暗のグラデーションに不自然な色が乗ったり、副作用が散見されるケースが少なくないが、ブラックシャインにはこうした不自然さがなく、安定感がある。東洋人の肌の再現も違和感がなかった。
結論
明るさ、コントラスト、色再現と3拍子揃った耐外光スクリーン
明るさ、コントラスト、色再現と、3拍子揃った高ゲインスクリーン。しかも単に黒が締まるだけでなく、階調性が豊かで、明るさの変化に対する色再現にも癖っぽさがない。全暗環境でも安心して使える貴重な耐外光スクリーンと断言できる。
>本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』